悪食少女のヒーローアカデミア   作:紅葉紫苑

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逆鱗

 頭部を踏みつけにされている青娥。

 青娥の頭を踏んでいる脚へと更に力を込めつつDRは語る。

 

「『新しい血族』の強大な悪意と能力が前代未聞の大量破壊を可能とした……これを使って、我々は『シックス』の望む世界を創り上げる」

 

 そう語るDRの右手が異様に鋭いものへと変化する。

 そして……青娥の首を切断する軌道で薙ぎ払われる。

 ボゴッと地面を深く、5m程抉り取るが青娥はそれよりも速く回避を行い避ける。

 

「この右手もなかなかの力だろう? 宮古芳香の中で熟成された強化細胞を移植してある、実験段階だが威力は上出来だ……尤もこんな細胞(モノ)に頼らずとも……私の性能は人間(ダニ)共より遥かに上だ」

 

 そう呟いて……青娥の懐へと潜り込み強化されている右手で鳩尾へ向けてボディーブローを叩き込む。

 一瞬、膝をついて荒い息を吐く青娥。

 しかしその眼光は欠片も衰えてはいない。

 

「生まれた時からずっと疑問だった、なぜ私は周囲の人間と比べてこれ程までに優れているのか……学業・運動・芸術……どんな能力も圧倒的に優れていた、水を自在に操り読み解く能力も私だけが持っていた……親ですら私の能力と強い悪意を神か化け物のように見る始末……」

 

 そう語るDRの脳裏に浮かぶのは60人を纏めてプールに沈めた際の記憶。

 何人殺っても罪の意識を感じない、私には見た目は同じ筈の周囲の人間が違う生物にしか見えなかった。

 その時……シックスが全てを教えてくださった、血族の末裔であり、また……龍の末裔である事も。

 

「納得したよ、道理で『龍』が人間(ダニ)と一緒に生活できるわけがない『シックス』のお望みを叶える為ならば……人間(ダニ)の居ない生態系を創る為ならば私は喜んで身を砕く、テロリストなどと言うチャチな汚名と敢えて背負おう」

 

 跳躍し一瞬の隙をついて青娥の首を右手で掴み地面に叩きつけながら河川の付近から土手へと移動していきコンクリートに勢いよく叩きつけ……ネックハンギングツリーじみた体勢にして片手で青娥を吊り下げる。

 その時……爆音と共に2人の真下で堤防が爆破され洪水は勢いを増していく。

 

「はははッ‼︎ 最後の堤防が爆破されたぞ‼︎ これでこの洪水はMAXになる‼︎ もう誰にも止められない‼︎ 見ろ青娥‼︎ 人間(ダニ)共が堪らず出てきたぞ⁉︎ 屋上で水をやり過ごすらしいな‼︎ いいアイディアだ‼︎ 建物さえ無事ならば助かるかも知れないな‼︎ ……はっ、馬鹿が」

 

 20m程離れた場所の建物……其処の屋上で10数人の会社員の男女が慌てふためき水をどうにかしてやり過ごそうと屋上へと避難している所であった。

 其処へ向けて……DRは懐から取り出したSIG SAUER M17を発砲していき誰1人残す事なく射殺していく。

 

「おとなしく死を選べ、人間(ダニ)に生死を決める権利などあるものか……人間(ダニ)人間(ダニ)が、ふふふ、はははは……」

 

 一頻り笑いながら弾倉内の弾丸を全て撃ち尽くすとSIG SAUER M17を投げ捨てて青娥を冷めた眼で見ながら任務完了に思いを馳せて呟く。

 

「さて青娥、あとはお前の始末のみ……実に楽な仕事だったな……『シックス』この女はなんら脅威ではありませんでした只今任務を完了致します……このまま首を捻り切って……」

 

 そう呟いたDR、だがそれが行われることはなかった。

 ボトッ……豪雨と洪水の中、短く響いたその音の発生源はDRの右手が地面に落ちた音。

 羽衣の両端ががまるで日本刀のように鋭くなっておりそれで切断したのは明らかであった。

 拘束から抜け出た青娥はコキッコキッと首を鳴らすと仙術を扱い20m程の大きさを有した巨大な泥の人形を造り出し、傍には解体作業員らしき死体人形を50体程出現させてから語る。

 

「大都市1つを軽く壊せる力を持った頑強な泥人形(ゴーレム)を実に勿体無いけれど分解して材料に回すわぁ……下流に流せばかなりの数の決壊箇所を塞ぐ事が出来るわぁ……」

 

 普段と同様にニコニコとした笑みを浮かべている青娥。

 しかしDRは右手が切断された激痛に悶えており青娥にまで意識が回らない。

 そんな事は知った事かと、青娥は仙術を行使して背中から大量の眼が付いた4対8枚の触手の様な形状をした翼を生み出してDRへと語る。

 

「万を超える罪状があるわ……今から貴方の身体中にそれを刻んであげる……泣こうが死のうが苦痛が去る事はないわぁ、貴方は私を怒らせたのよ? ダニが」

 


 

 DRはネクタイを止血帯代わりにして止血を施すと自分自身に言い聞かせる。

 落ち着けっ‼︎ 青娥が人間の常識を逸脱しているのは承知の上だ。

 だが相対してわかった……それも耐えられないものではない。

 残った左手で充分だ『龍』は間もなく本気で牙を剥くのだから。

 ……DRの眼に映るのは青娥の背中に装着されている羽のような何か。

 青娥はゆらりゆらりとDRとの距離を詰めながらゆっくりと語る。

 

「この仙術は私のお気に入りの1つよぉ……何ら特別な能力は持たないが私の脳波を読み取って私の最もしたい事を察して動いてくれる」

 

 そう語るがDRはそれを虚仮威しと判断して残った強化細胞を左手に集中させて突っ込んでくる。

 彼我の距離は20m程しかない、2人にとっては1呼吸おく間も無く潰せる距離。

 故に気づいた時には目の前にいる。

 だが、DRが振るう左手のそれよりも更に速く1枚目の翼が相手の攻撃を無力化させる為にDRの四肢へと絡みつき空中に固定する。

 

「1枚目の翼が敵の攻撃を無力化して……2枚目の翼が敵の体内に入り込んで体内で思い切り羽撃くのよぉ、もちろん急所には当てないから安心してね? その周辺の肉を丹念にミンチにするだけだから」

 

 そして……凄まじい勢いをつけてコンクリートへと投げ飛ばす。

 受け身を取らせる訳もなくうつ伏せの状態で叩きつけられ……バキバキッと肋骨が数本折れる音が響き渡ると青娥は残念そうに呟く。

 

「あら? 肋骨まで折ってしまったわぁ……まだまだ後で折る予定だったのに……」

 

「いっ痛い……痛すぎる……」

 

 主要な臓器は無事とはいえ……ハンバーグのタネレベルまでグチャグチャのミンチにされたのは流石に応えたのかよろよろとよろめいて土手を転げ落ちるDR。

 それを浮遊しながらゆっくりと追いかける青娥。

 

「おや? どこへいくのかしらぁ? 拷問はまだまだ始まったばかりよぉ?」

 

 青娥は屈託のない笑みを浮かべて更に追いかける。

 

(い……今のうちに得意になっていろ、化け物め‼︎ 逃げているのではない‼︎ 逃げているのではない‼︎ 誘い込んでいるのだ‼︎ 忘れたか⁉︎ 私が水の全てを理解していると言う事を‼︎ お前には雨や川の轟音に混じって察知できないだろう‼︎ 私にだけ分かるのだ‼︎ 今、この時、このタイミングで……来る‼︎)

 

「喰らえ‼︎ 青娥‼︎」

 

 DRが川へと飛び込んだ刹那……青娥の背後からは上流で破壊したダムの鉄砲水が巨大な瓦礫を引き連れて到着。

 青娥を背後から圧し潰す。

 ……凄まじい勢いの濁流を自由自在に泳ぎながらDRは思案する。

 

(左手一本残っていれば……私は自由自在に障害物を避けて泳ぎ切れる……万が一お前が生き延びれたとしても……その時には私はとっくにおさらばしている)

 

 そう思案して自在に泳ぎしばし安全地帯へと向かおうとするが、おかしい。

 何かに引っ張られる様な感覚が少しずつ強くなり……遂には水中から引き摺り上げられる。

 翼に上半身を締め付けられて……軋む肉体、メキメキと骨にヒビが入る音が鳴り折れた肋骨は肺に突き刺さり少なくない量の血が口から出る。

 

「まぁ……それはともかく、拷問を続けましょうか?」

 

 瓦礫など意にも介していないのか、凄まじい笑顔でDRを見つめる青娥が瓦礫となったコンクリート片を足場にして立っていた。

 

「おぉ、そういえば……貴方は水が大好きだったのよね? ではたっぷりと飲ませてあげるわぁ、3枚目の翼はそう言うのが大好きだもの」

 

 口腔内に無理やり侵入してくる触手の様な翼、そして濁流を無理やり流し込まれて息が続かなくなり眼から涙が零れ落ちる。

 窒息しかける瞬間に腹部を思い切り叩かれて胃の内容物と共に濁流が全て吐き出される。

 

「なんと汚い水芸だこと……あんな所まで飛んで行ったわぁ……ふむ、まぁ幾らかは気が晴れたわぁ……私に対する命知らずの暴行への罪の裁きはこの辺にしときましょうか?」

 

 そう語り、翼による拘束を解き瓦礫の上へとDRを解放する青娥。

 DRは……やっと拷問が終わったと安堵するが、青娥の姿が無い。

 キョロキョロと辺りを振り向くと背後から青娥の声が聞こえてきた。

 

「では引き続いて……万を超える人間を殺し私の餌場を荒らした罪を裁かないとねぇ……拷問はまだまだ続くわぁ」

 

 肩に優しく手を回してそう語る青娥。

 それが……DRには恐怖でしかなく、新しい血族としての誇りも矜持も投げ捨てて逃走を図る。

 だが……青娥の逆鱗に触れておいて逃げるのは神が許しても青娥が赦さない。

 残った左手も綺麗に切断し、痛みに悶えるDRへと優しく語りかける。

 

「おぉ〜痛い痛い〜……勢いあまって残った手も切ってしまったわぁ……」

 

 激痛に悶えつつDRは己が過ちを遅まきながら理解する。

 

(仙人……これが本気になった仙人)

 

「だけど安心するといいわぁ……可能な限り綺麗に切っておいたから早く病院に行って付けてもらうといいわぁ……貴方たち『新しい血族』には優れた技術や『私の』芳香から抽出した強化細胞があるのでしょう? 十二分に元通りにできるわぁ」

 

 そう和かな笑みでDRへと語りかける青娥。

 DRは手を切り落とされた両腕でどうにか左手を拾おうとしたが……その刹那、青娥がDRの左手を踏み潰す。

 左手は無数の肉片へと姿を変えてしまい……治療も望めないのは明白であった。

 

「おっと……気付かなかったわぁ、ダニの手は小さすぎて目立たないわねぇ」

 

 わざと聞こえる様にそう呟いて……顔面へ鉄拳を1発見舞う。

 その威力のまま……濁流に呑まれる瞬間、青娥が足場としている瓦礫のコンクリート、その瓦礫の鉄柱の破片に腕を何とか伸ばして身体を引き寄せるDR。

 だが、身体の傷は限界であった。

 青娥が浮遊しながら必死にしがみついているDRへと近づいて語る。

 

「泳げないでしょうねぇ、その傷では……命乞いをしたら助かるわぁ……心の底からこう言いなさい? 『私はダニです』と」

 

 それは人間を人間(ダニ)と見下し、殺してきたDRにとっては屈辱極まりない言葉。

 しかし命には替えられないのか苦痛に塗れた声音で言い放つ。

 

「わ……私はダニです」

 

 そう、心の底から語ったが……青娥はこれ以上ない程の屈託のない笑みを浮かべて、DRへと語る。

 

「豪雨や川の轟音が五月蝿くて聞こえないわぁ」

 

 そう呟いて……DRがしがみついている鉄柱の破片に手を翳して呟く。

 

「私が人間でも……恐らく貴方をこうするでしょう」

 

 鉄柱の破片を砕き割り濁流に呑まれるDRを見つめながら青娥は豪雨に濡れた衣服を乾かしながら語る。

 

「七割方スッキリしたわぁ……残りは塚内くんをいじめて発散しようかしらぁ」




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