童貞よ、女を抱け   作:リバプールおじさん

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性的欲求を芸術に昇華

「これ、なんですか?」

「あ、それは...子供たちの絵ですので...違います」

「......そっすか」

「......え、絵とか...描かれたり...するんですか?」

「いや、特には描かないっすね」

「で、ですよねっ!そうでしたもんね!へへ...」

 

 ......気まずいわぁ!手にとっている箱をぶちまけてやりたい衝動に駆られたが、子供の絵だというので我慢した。きっとこの中の絵には、性欲の発散目的ではない、幼児の純真無垢な自己表現の形がクレヨンとかで描かれているのだろう。羨ましいなぁ。

 

というか、一応初対面という設定で話を進めているので、頼むからそれを順守してほしい。なんだ「そうでしたもんね」って。初対面でそれを言うやつはストーカーかなんかだ。

 

「この豚の貯金箱みたいなのは?」

「あ、そ、そちらは聖遺物です。回収しちゃいますね」

「マジかこれ」

 

 こんな夏休みにハンマーでぶち割られて、臓物代わりの3000円分くらいの硬貨をぶちまけてくたばってそうな、デフォルメされた豚の陶芸品が?聖遺物ってもっとこう、数千年前の聖人が磔にされた十字架とか、遺骨とか、隕石とかそういうのじゃないの?めちゃくちゃな嘘八百並べ立ててアピールしたら、俺が洗った昨日の洗濯物とかも聖遺物認定されないかな。

 

 とりあえず聖遺物だということで、恭しく箱の中にそれを詰め込んだ。案内された倉庫の広さを考えると、どうやらまだまだこの作業は終わらなさそうだ。最悪だよ。

 

「にしても...なんでマチルダは急にこんな面倒くさいことを...」

「ま、マチルダ様とご知り合いなのですか!?」

「知り合ったというか、知り合わされたというか...うん、まぁ...1番近い関係としてはそうです」

 

 被害者と加害者と言っても良いかもしれない。

 

「素晴らしい事ですよ、ショーマさん!マチルダ様は本当に多忙なお方、昼夜問わず魔王討伐に奔走されていますから」

「友達いないんですね」

「言い方が...」

 

 だって知り合い少ないみたいなこと言ってたのは、そっちのほうじゃないか。というか聖女って友達多いもんなのか?聖女なんてもん、歴史の教科書かスマホかエッチなゲームでしか見たことの無い人間の勝手な想像だけど、そういう人って誰にでも分け隔てなく優しいけれど、あんまり個人的な繋がりは無いというか、お世話役の人以外は身の回りにいないイメージなんだけれども、これは俺が聖女エアプだからだろうか。

 

 聖女エアプってなんだよ、聖女ガチ勢とか存在したら怖いよ。

 

「しかしマチルダ様は真面目な方です。今もこうして、魔王討伐に向けての準備を進められていらっしゃいますし...私たちの様な無力な者にでも出来ることは、精いっぱいしたいですから」

「ん?あぁ、そういう要件だったんだ...そういや、返事してないな…」

 

 やばい今ようやく思い出した、その魔王討伐とかいうのに誘われてるんだった。忘れてた...気分的には友達からのLINEに、3日経ってようやく既読付けた時みたいな感じだ。やっべやらかした、許してくれないかなって感じの、すごく厚かましくて図々しい感じの。

 

「お返事、ですか?」

「はい。なんか...一緒に魔王討伐しようぜ!みたい、な...?」

 

 改めて口に出すと、尚のこと酷い。なんだこれ、ダメなルフィか?フーシャ村で大人しくしとけよ...。一緒に学食行こうぜくらいのノリで魔王のお膝元まで連れて行くのはやめていただきたい。これから道端でしゃがむときは、後ろにも目を付けよう。俺がニュータイプだ。

 

 しかし、そんな曖昧な記憶を辿っての俺の発言に、アビーは釣り餌に魅せられた魚みたいに強烈な反応を見せた。おっ引いてる引いてる!貧乏くじ。

 

「えぇっ!?ま、ままっま、マチルダ様に!?討伐のお誘いをっ!?......し、神聖魔法でも......」

「いらないっす」

 

 なんか悪しき者が掛けられたら蒸発しそうだし。

 

「しかしそれなら好都合です!ぜひお返事しに参りましょう!さぁ早くこのお勤めを終わらせましょう!」

「え、いや、別に俺は行くとは.......そんな早くできるなら最初からやってくださいよ!」

 

 テキパキと凄まじい勢いで片付け始めたアビーの背中を見て、これまた面倒ごとになりそうだなと落胆した。魔王ってなんなんだよマジで。暗殺とかして終わろうぜもう...。

 脚立を取り出して、よいしょと声出しながら棚の上に手を伸ばすアビー。しかし、身長が足りない。

 

「す、すみません...少し支えていただけませんか?あそこの箱が取りたくって...」

「うわそんなところにも。はいどうぞ」

 

 脚立に登るアビーの両膝に腕を回す。固定できるようにギュッと抱き寄せて...あっダメだこれ、太ももが耳に当たる!やわらかっ!ダメですダメダメ、教会ですここ。

 

「んしょ、よいしょ......っ!?あっ!?」

「いってぇ!」

 

 バランスを崩したのか掴み損ねたのか。ガタンと大きな音がしたかと思うと、箱が俺の脳天に直撃した。そのまま崩れてくるアビー。

 

 やっべこれ、死んじゃう!ダンジョンよりも命の危機を覚えて、とりあえず落ちてくる現場猫並みの安全意識をお持ちであらせる労災案件シスターを守るため、脚立を蹴り飛ばす。そんでもって、出来るだけ俺がクッションになるため床と彼女の間に移動。

 

 頑張ってる!頑張ってる!俺輝いてるよ!あとは優しく彼女を抱き止めるだけだよ、さぁあともう一踏ん張り!

 

「グエーッ!」

「あぁっ!?ごめんなさいごめんなさい!ショーマさん、大丈夫ですか!?」

 

 彼女は咄嗟に受け身として出したのは、なんと肘。そして驚異的なスピードを保ちつつ、全体重を乗せたその肘出しは、寸分違わす俺の鳩尾を貫いた。

 

 その結果、18号を吐き出した時のセルみたいにヨダレとかゲロとかが出そうになる口元を抑えながら、目尻に涙が浮かんでくるバカなアホの出来上がり。かっこわるぅ...。

 

「大丈夫、す...」

「あぁぁショーマさん!」

 

 心配そうに俺の顔を覗き込んでくるアビー。よし、とりあえず痛みの峠は越えた。深呼吸深呼吸...

 

 ......なんかいやらしいところに馬乗りになってない、この人?具体的にいうと股間の上。一見するとだいぶ細いところはエイラと同じなのだけれど、乗せている感覚はだいぶ違う。なんというか、ちょっと女の子特有のぷにっとした感じが強めに主張してくるというか...。

 

「くーれないに染まったこーの俺をぉー...」

「な、なんで急に歌い出したんですか!?ねぇ、なんでですか!?」

 

 これが1番良いって、あなたが言ったから...。

 

 しばらくして。一抱えくらいの箱の中8分目くらいに、雑多な聖遺物らしいもんが詰め込まれた。まるで大掃除の時の資源ごみ袋みたいだ。あれって時々屑鉄屋さんとかに売った時の方が儲かる時あるよね。使わなくなった銅線とか渡した日には、お兄さん泣いて喜んでたもん。正月の餅代ってやつ?

 

「えっ聖遺物ってこんなもんですか」

「まぁ...あまり多くても神聖性が損なわれてしまいますので」

 

 確かに。でもなぁ...こんなもんか...倉庫は超でかいのに...処分した方がいいんじゃないか?掃除下手くそなのか教会って?俺みたいで親近感湧くね。

 

「と、とにかくっ、お手伝いいただき、本当にありがとうございました!私はお渡しに行ってまいります!......その、治癒魔法が使える方がいますから......ゆっくりお休みください」

「いや良いですよ、俺持ってきます。もう治ったんで」

 

 嘘である。まだ手先が若干ジリジリと痺れてる。でもそれを言ったら、なんか体重めちゃくちゃ重かったですと言ってるみたいだったのでやめた。というか治癒魔法使えるし、俺。

 

「そ、そうですか...?え、えっと...では...お願い、しますね?」

 

 やめろ、モジモジ腰を動かしながら言うな!今度はソロアルバム売り出せるくらい歌い倒すぞ!

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