童貞よ、女を抱け   作:リバプールおじさん

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膜を貫いた勇者

 

 

 伊藤翔馬です。今1人でパンツ洗って干してます。エイラは中で猫とニャンニャン遊んでます。ちょっと...いやかなり嫉妬心が芽生えているが、そこは我慢してます。マジでこのパンツ片付けたら、お前のご主人様奪い取ってやるからな。

 

 昨日の晩はかなりエキサイトというか、盛り上がってしまいまして。なんと一晩のうちに4回も致してしまいました。最初のうちは大丈夫かな?とか色々と戦々恐々していたのですが、全部終わった後のエイラの寝顔が満足そうだったので、多分及第点くらいではあったと思います。

 

 これから勇者と呼んでください。

 

「郵便でーす」

 

 そんなことを考えていると、玄関の方から配達員さんの声。はて?そんな予定無かったはずだけど。誰かが急に送って来てくれたのかな?マチルダは無理だろうし、冒険者の連中...魔導士さんやソードマスターさん、傭兵や盗賊とかはプレゼントなら家に直接来るだろうし、アビーあたりか?

 

「ちょっと待っててね?......はーい!」

「お疲れ様でーす!」

 

 トテトテとエイラが走って行く軽い音。とりあえず女の子1人だけじゃないんだぞって意味も込めて、俺も挨拶。それに防犯を抜きにしても挨拶ってすごい大事だし。古事記にも書かれているらしい。

 

「はい、ありがとうございま...え?なに?えっなんですか!?ちょっ、ちょっと待ってください!」

「どうした!?」

 

 困惑したようなエイラの悲鳴。すわ、一大事か。もしエイラに酷いことしたらタダじゃおかねえ、目にもの見せてやるからな!

 

 と、肩を怒らせて庭から家の中に入った時、フードを深く被った配達員さんが2人、なぜか居間にいた。荷物なんて持ってない、手ぶらの状態で。...なんで?

 

「な、なんでっ?なんで、こんな所まで入ってくるんですか...?」

「エイラ!大丈夫だった?」

 

 玄関の方から、息を切らしたエイラが現れた。すぐに駆け寄ってみるが、特に乱暴されたとかでは無さそうで、ひとまず胸をほっと撫で下ろした。

 

「おうおう、ずいぶん大切なツガイのようだのぉ」

「......陛下、今はそのような些事に......」

 

 エイラよりも小さい、子供のような配達員さんが呆れたように呟き、それを嗜めるように俺と同じくらいの身長で、バリキャリOLみたいな配達員さんが言葉を発した。その声を聞いて、俺は初めて2人ともが女性であることに気が付いた。

 

 大きい方の小言は聞き飽きているようで、小さい方はやれやれと言った感じで肩をすくめた。

 

 

「心得ておるわ。......さて」

 

 その小さい方の言葉と共に、まるで訓練に耐え忍んだ1流の衛兵のように一糸乱れることも遅れることも無く、大きい方は佇まいを正した。

 

「うぁ...っ」

 

 エイラが隠れるように、俺の背中にくっついてきた。よく分からないが、なんかしらの威圧感のようなものを感じているのだろうか?

 

 その様子に満足した様に大きく小さい方は笑みを深めると、片足を机に乗せて、そのまま尖った八重歯を覗かせて名乗りを上げた。

 

「我が名はアンバー32世、魔王その人である!」

 

 そう高らかに宣言して、彼女はカカと笑った。

 

 なるほど、魔王と来たか。

 

「お茶飲みます?」

「うむ、苦しゅうない」

 

 頭のおかしい奴が来てしまった。それか、宗教勧誘だ。......どっちも意味は同じか?とにかく適当にチヤホヤして、早めにお帰り頂かなくては。

 

 震える手で、エイラが杖を構えた。よく見たら足も震えてる。

 

「な、なんで魔王が...っ」

「やめろ刺激するなエイラ、マジなわけ無いだろ!」

「マジだわい!」

「マジですよ!このお方は正真正銘、こんなんでも魔王アンバー32世です!」

「今こんなんと申したか?」

「いえ」

「そうか...」

 

 言ってましたよね。

 

 というかなんで魔王がわざわざ変装して来るんですかって話だよ。やるなら王城とかに行くでしょ。俺たちみたいな小市民の家に、わざわざ来る理由なんてない。やっぱアホだこの2人。とりあえず、まずはエイラを落ち着かせなくては。

 

「なんでと申したな小娘!知らぬというなら教えてやろう!」

 

 無い胸をピンと張り、ズビシッと尖った爪で俺のことを指差したアンバー32世陛下。爪が黒色なのは元からなのかネイルなのか。

 

 バッとフードを脱ぎ捨て、顕になった頭部には、まるで羊のような形の曲がった、黒いツノが2本、側頭部のあたりに付いていた。

 

「そこのっ......そこの!『最近なんだかちょっといい感じだし、実はもう少し押してみたらこのメス案外ヤレるんじゃね?』みたいなこと考えておるオスブタが!昨日、一晩でワシの四天王をぶっ潰したからじゃあっ!」

「ヤッベバレてた」

「えっ!?ショーマ、そんなこと思ってたの!?」

「いやそっちじゃな......殺ぉす!」

「やめてください陛下!あなたの読心術精度低いんだから!」

 

 マジで殺す!

 

 

 

「落ち着いて...頂けたでしょうか」

「なんとか」

 

 一つ深呼吸して、お姉さんの方に向かい合う。俺はアンガーマネジメントができる男だ。ただし、30秒かかる。

 

 子供の魔王様は、彼女の背中に隠れて、時々俺の方を見てはすぐに身を隠すのを繰り返している。そっちの方がよっぽど腹立つのでやめてほしい。

 

「え、えっと...ボク、本当に知らないんですけれど...」

「順を追ってお話ししましょうか。魔王城というのは結界が張られていまして、それがある限り魔王様は無敵です」

 

 ステージギミック的なやつね、分かる分かる。だってなんかお城を囲うみたいにギラギラ光ってて、いかにもそこから攻略してくださいって感じだったもん。

 

「その結界の四隅に配置されている配下を、人間達は四天王と呼ぶわけです。そして昨夜遅く、その四天王が...」

「急にやられたんじゃ!同時に!ワシが寝てる間に!」

「そういうことです。全くの同時に、同人物に、撃破されました。その者は圧倒的な魔法を使い、四天王を瞬殺したそうです。......伊藤翔馬さん。あなたですね?」

「......バレねぇと思ったんだけどなぁ」

 

 ちゃんとマスクつけてたのに!あれ付けて走り回るのすごい息苦しかったのに、意味無かったんじゃん!はーアホくさアホくさ。今深呼吸しとこ。

 

「あれ分裂魔法じゃろ!?なんでステータスが1/4になってるはずなのに、あんな一方的にやれたんじゃ!」

「いや、違う」

「ん?」

「1/5だ」

 

 クックック、魔王様でも算数は苦手と見える。1/4と1/5、違いは何%でしょう?アラビア数字で答えなさい。配点5点。

 

「は?いや、だって四天王なんじゃから4人に...」

「いや、5人だった。四天王分に4人と、あとエイラと一緒に寝る用の1人」

 

 昨夜のエイラと一緒に寝る用の分身を決めるじゃんけん大会は白熱だった。全員が全員同じ思考回路をしていたので、あいこが続いて終わらない。14回目という完全に同じタイミングで、5人同時に無敵の手を出した時が1番面白かった。

 

 口元を引き攣らせ、眉を八の字に曲げる配達員2名。あっとこれは完全にドン引きされてますね。エイラは...すごい目を輝かせてる!そしてちょっとこっちににじり寄って来てる!絶対分裂魔法に反応してるこれ!

 

「ご、ごぶんのいちで...四天王を...?」

「でもさぁ、魔王って四天王より強いじゃないですか。だったら四天王なんて即殺出来るくらいの強さの方が......」

「............い」

「うん?」

「弱いんじゃっ!四天王より!魔王のくせに弱くて悪かったのぉ!わああああんエンディいいいいいいいい!!!」

 

 びーびー泣き喚いて、エンディと呼んだお姉さんに泣きつく魔王陛下。まるで慣れた手つきで胸元に飛び込んでいった魔王を抑え込み、角の生えた頭を器用に撫でまくるエンディ。魔王様の銀髪が、どんどんグッシャグシャになっていく。それでいいのか本当に。

 

「あぁ陛下!あまり魔王たる者が泣いてしまっては示しが付きません!それにあんな鬼畜男の前で弱みを見せてしまっては、挙げ句の果てには大変なことに...!」

「お前ら俺のことなんだと思ってんの?」

「ショーマ、一応謝っておいた方が...」

 

 納得いかねぇ!

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