童貞よ、女を抱け   作:リバプールおじさん

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命短し早よしろ童貞

 

「その...お恵みに感謝しますご主人様...!」

「気持ちの悪い言い方をやめろ」

「あぁんっ...♡」

 

 喘ぐな。

 

「いやぁこれで一件落着じゃな!それではショーマよ、帰るとしよう!エイラとやら、お主料理は何が得意じゃ?」

「陛下、しばらくはまだ私が...」

「......待て、なぜ一緒に帰ろうとしている」

「だって、魔王城多分乗っ取られとるもん。それに討伐隊来るんじゃろ?ワシ死にたくない」

「陛下に同じく」

「いやな魔王だ...」

「そんなヘタレだから四天王に見捨てられるのよ」

 

 見捨てたのお前だけだったぞ裏切りドラゴン。魔王に対し見下しの構えを取るドラゴンを白眼視していると、エイラがおずおずと口を開いた。

 

「......その、ここで一緒に過ごせばいいのでは?魔王様と四天王の関係なら、そんなに違和感もないですし...」

「確かに!それもそうじゃ!だって翻訳玉渡したのワシじゃし!」

「いやよ冗談じゃないわこんな弱虫!一つ屋根の下にいるのを考えただけで虫唾が走る!土の下に埋もれて死ね!」

「口が悪すぎますよ超絶最強アルティメット・ドラゴンさん」

「うるさいわね!そもそも、そのクッソダサい名前を付けたのがそこの弱虫じゃない!私にはモスク―マ3世っていう、立派な名前があるのよ!」

 

 それの名付け親テメェかよ!マジで討伐した方が良いんじゃねえかなこの魔王。災害級のネーミングセンスだ。

 

「いや...だって、そっちの方がカッコいいかと思って...ワシ...結構頑張ったんじゃけど...」

「頭沸いてるのかしら!?もういいわ、あなたを今ここで殺して、私が魔王になる!それくらいは容易い事よ!」

 

 甲高い充填音を響かせて、辺りに風を撒き散らし始めた超絶最強アルティメット・ドラゴン改めモスク―マ3世さん。まともな名前を名乗ればやっぱりやる気が出るんだろうかと思いつつ、エイラを背後に隠す。普通に怪我しそうなのでやめてほしい。

 

 その時、おばあちゃんが翻訳玉に何かをささやいて、俺に渡してきた。どうやら聞かせてこいとの事らしい。あんな爆発寸前の爆弾女に近付きたくないが、爆発されても困る。

 

 いやいやながらそれを受け取って、モスク―マ3世の耳に当ててやる。かなり小さい声ではあるが、確かにそこから聞こえてきた声。

 

『モンちゃん、落ち着きなさい。強さだけの理屈ではなく、その人達の一族に仕えると私たちは遠い昔に誓ったんだよ』

「おばあちゃん......」

『その格好の付かない名前だけは撤回してもらいなさい』

「おばあちゃん......!」

 

 おばあ様、大変なご英断だと思います。

 

 

 

 

「...んで、あんたらここに残るのか」

「まぁ人里よりは、ここの方が殺される心配はなさそうじゃしのぉ」

「私は陛下のおられるところであれば、どこにでも...」

「ハッキリ言って、まだ私は納得いってないけれどね」

 

 突き放すようにモスク―マ3世が顔を背けた。ツンケンな彼女の言葉に、しおれた顔になる魔王様。そればっかりは慣れてもらうしかない。もし瞬間移動魔法とかで、もう一度我が家とかに逃げてこられてはたまったもんじゃない。

 

「まぁそこは頑張れとしか...」

「ふん!でも、もし、もしもよ?もし私がご主人様の家まで突然やってきたら...」

「見つけ次第殴る」

「エイラさん?」

 

 そんなお口の悪い子じゃなかったでしょアンタ。やっぱりこんな治安の悪い所の空気ばかり吸っていて、悪影響が出てしまったんだろうか。早急に人里に帰らなくては。

 

「んんっ...!こんな、こんな雑魚に...くっ...負けないんだからっ...」

「コイツ無敵か?」

「なぁこいつもう戦力にならないんじゃないかの」

「こ、これでも一応はドラゴン最強ですから...」

 

 あんまりそういう認識したくないなぁコイツを...。ドラゴンってもっと気高く強くあってほしかった...。

 

 

「んじゃ、帰るね俺たち」

「あ、お邪魔しました......」

「おぉ、息災での。また遊びに行くわい」

「もう良いです」

 

 ドラゴンがなんか顔を赤て何か宣おうとしていたが、もうここまでくると面倒くさかったので、瞬間移動魔法を使って逃げ帰ってきた。

 

 

 

 

「ただいまー!」

「いやぁ...お疲れ様」

「もうしばらく家出たくねぇ」

 

 移動してきたのは家の玄関前。頭の芯にズシンとのしかかってくる重たい疲労感に悩まされつつ、家の鍵探す。しばらくの間、クエストにも行かなくて良いと思う。だってそろそろ......

 

「あれっ?ショーマさん!探しましたよ。どこか行かれてたんですか!?」

 

 おっと!良いタイミングで帰ってきたみたい!ちょうど家の前に、冒険者協会の職員さんがやってきていた。どうやら、家に不在だったので一度帰ろうとしていたようだ。危なかった危なかった。すれ違い恋愛は今の時代古すぎる。

 

「えっとですね...あ、すみません。ちょっとお話がお話ですので、出来れば中で......」

「はい分かりました。んじゃどうぞ」

「え?なに?......あ、もしかして、そういうこと?」

 

 はい。そういうことでございますエイラさん。大体ねぇ、こんな四天王まとめてぶちのめした英雄に舞い込んでくる話なんて1つしかないじゃございませんか。

 

「その......基本的に冒険者の方には現金支払いではあるのですが、今回あまりにも報酬金が莫大でして.....小切手という形に......」

 

 まぁそうなるよね。めちゃくちゃやっちまったもん。職員さんが山吹色のお菓子でも渡してくる時みたいに、机の上にスッと出してきた小切手。なんかジンバブエドルか第一次世界大戦後のドイツでしか見たことないような数の0が並んでいる。しかも贈与税に関しては非課税なのだ。相続税とか考えても、多分これ孫の代まで遊んで行ける。行かす訳ねぇだろ、働け。

 

「はいはいはい、ありがとうございます本当に。換金って銀行でいいんですかね?」

「えぇ...ただできればお早めに現金化したほうが...」

「そうしときます」

 

 だってこの世界、俺が元いた世界よりフリーダムだし。国立銀行でもぶっ潰れたりしそうで怖い怖い。

 

「えっと...四天王討伐、誠にありがとうございました。それでは......」

 

 そう短く言い残して、そそくさと職員さんは消えてしまった。うん、いい心がけだ。話が早くて大変助かる。どこかのアホみたいに冗長な魔王様やドラゴンにも見習っていただきたいものだ。やっぱり人間は素晴らしく賢い生き物だ。

 

 ただし、俺を除く。

 

「あれ?もう帰っちゃった?」

 

 お茶を汲んできたらしいエイラが意外そうな顔をしながら台所の方から現れた。お盆には2つの湯呑みが置かれている。

 

「うん。話が早くて助かる本当に。......まぁこっち来て座りなよ。疲れてるでしょ?」

「まぁ、ね。じゃあ、お邪魔しまーす......」

 

 ポスンと軽い音を立てて、エイラが俺の隣に腰を落とす。

 

 初めに言っておくが、俺の性癖は大体オールマイティだ。男以外ならほとんどなんでもいけます。ただ、どれが好きかっていうと、やっぱり巨乳の年上お姉さんが1番好みというか、原点だった。......ヤバい、今になって心配になってきた。自分の部屋の無線イヤホン、お姉さんに甘やかされるASMR垂れ流しのまま転移してない?

 

「いやぁ...もうこれで食うには困らんね」

「そう、だね。ふふふ、しばらく冒険者やめちゃう?」

「まぁ今まで以上にエンジョイ勢にはなりそう」

 

 ......気にしていても仕方がないので、話を元に戻す。隣にいるこのエイラという女の子は、その点は真逆と言ってもいい。俺より年下だし、胸もそんなにない。というか肉付きが良くない。もう2回りくらい太くても健康だと思う。

 

 確かにハーレム願望があって転移してきたはずだ。異世界だし良いだろとか、そんな軽い感じだった。だけれど生身で過ごす異世界は違っていて、確かに生きて、考えて、血の通っている人がいた。

 

 隣を見る。こちらを見上げて、ニコニコと笑う女の子。......良い子だ。素敵な子だ。元の世界では全く縁も無かったような、そんな人が、目の前にいる。

 

「うーん...明日から何しよう?牧場警備?」

「アリだねぇ。お昼代浮くしな」

「ふふっ、そんなこと気にするの?」

 

 あぁ、いっそこのまま言わないで、今の暮らしをダラダラと、死ぬまで続けてしまおうか。そうも考えたが、すぐにその考えは吹き飛んだ。土台無理な話である。どうせ、どこかで我慢できなくなる時が来る。しかし、その時までエイラか俺か、あるいは両方が健全である保証は無いのだ。

 

 命短し、早よしろ童貞。見習うべきは、夏というクッソ暑い時期、1週間の短い間だけの命を燃やし尽くしてパートナーを誘うセミ先輩である。俺もまた、叫ばなくてはならない。

 

 エイラの手を、両手で包む。スベスベで、細くて、白くて、しっとりしている。意外そうにほっそりした品のいい眉を跳ね上げる彼女の、青い瞳をじっと見据える。強張った喉から、なんとか声を絞り出した。

 

「あ、あのっ...お、俺と...け、結婚!し、して...いただけない...で、しょうか...」

 

 

 

 

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