「第一試合、始め!」
合図と同時に、切島くんが大きく踏み込んだ。
全身が岩のように硬化する。
「行くぜ、幻乃さん!」
「うん、よろしくね」
私は一歩下がり、呼吸を整える。
(硬化。真正面は無理)
(なら――削る)
装備 E.G.O『レティシア』
パチン、と空気が切り替わる感覚。
人形めいたE.G.O衣装が私の身体を包み、
手にはライフル。
可愛らしい見た目とは裏腹に、
照準は静かで冷たい。
「……銃か」
切島くんは構えを崩さない。
私は狙いを定め、引き金を引く。
乾いた銃声。
BLACK属性の弾丸が、切島くんの胸部に命中。
「ぐっ……!」
硬化が衝撃を受け止める。
だが、完全ではない。
(効いてる。
肉体じゃなく、意識の奥に)
「この距離なら!」
切島くんが距離を詰める。
拳が振り下ろされる。
私は後ろへ跳びながら、E.G.Oを切り替えた。
装備 E.G.O『懺悔』
十字架のメイスが、ずしりと現れる。
WHITE属性。
「……それ、鈍器?」
「心に響く方、かな」
私は踏み込み、真正面から振るった。
懺悔がブンッ、と音を立てて振り下ろされる。
直撃。
切島くんの身体が揺れ、
一瞬、硬化の集中が乱れる。
「……っ!」
歯を食いしばる切島くん。
「これ……気合だけじゃ、キツいな……!」
距離を取って《レティシア》。
BLACK射撃。
踏み込んで《懺悔》。
WHITEの打撃。
肉体 → 精神 → 肉体 → 精神。
単純だが、
硬化という個性には確実に効いていく。
「……それでも!」
切島くんが叫ぶ。
「ここで負けたら、
漢が廃るだろ!」
硬化を維持したまま、最後の突進。
(……強い)
でも――
私は一歩も引かず、
《懺悔》を振り抜いた。
WHITE属性の一撃が、
切島くんの集中を完全に断ち切る。
「……っ、く……!」
硬化が解け、
切島くんの膝が地面についた。
「――勝者!
幻乃!」
歓声が上がる。
私はすぐにE.G.Oを解除し、
切島くんに駆け寄る。
「大丈夫?」
「……ああ」
切島くんは悔しそうに、でも爽やかに笑った。
「参った。
真正面じゃなく、ちゃんと考えてきたな」
「切島くんが強すぎるだけだよ」
「想夢さん、勝った!」
「でも無茶してないよね……?」
「幻乃、やるじゃん!」
「……でもあれ、地味に怖くなかった?」
私は少しだけ苦笑した。
(まだ、見せてないだけ)
勝利はした。
でも、分かっている。
次の相手は――恐らく、あの爆豪勝己。
(このままじゃ、押し切られる)
私は、
"まだ使っていない"奥の手の存在を、
胸の奥にしまい込んだまま、次の試合を見据えた。
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