いつも通りの日々に死を添えて   作:アナザー世界

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第4話

月曜日に学校に着くと、早々に雄一に絡まれた。

「光さんや、どうやら土曜日に野村と二人でどこかに行ってたらしいじゃないか。いつの間にデートなんて行くような仲になったんだよー」

「デートじゃなくてただ遊びに行ってただけだよ。自分が恋愛してるからって他の人もそうとは限らないぞ」

雄一は明らかに動揺した。今の雄一は弱点をこちらに握られているのだ。下手にこちらを攻撃出来まい。

「でも実際、俺も森口も誘われてないのは邪推されても仕方なくないか」

ぐうの音も出ないくらいの正論だ。だが、野村の寿命のことを話すことはできない。このまま誤魔化すしかない。

「少し相談に乗ってただけ。勉強の仕方とかを知りたかったみたい」

「まぁそういうことにしとくわ」

あまり納得できてないようだが、これ以上の追及はされなかった。勉強ができる方でよかった。実際は野村の方が賢いとは思うけど。

野村の方はどんな感じかと思い、辺りを見渡すが一向に見つからなかった。

「今日野村って来てるか?」

「いや、まだ来てないな。もしかしたら、休みかもな。今までも体調不良で度々休んでたし」

それを聞いた瞬間に察した。野村は今日通院の日なのだ。

「野村もタイミングが悪いな。今日の七時間目はクリスマスパーティなのに」

そういえばそうだった。今までの学校行事は雄一との雑談タイムと化していたから、あまり興味がなかったのだ。

「本当に千尋って運がないよねー。よりによって今日とはねー」

森口がそう言いながら話しかけてきた。

運がないか‥

確かに、この年で余命宣告を受けるのだから相当に運がないのだろう。先生が教室に入ってきてホームルームが始まる。予想通りに、野村は今日体調不良で休みとのことだった。

ここで、頭の中に疑問が生じた。

野村は一体誰に余命のことについて話しているのだろうか。家族はもちろんだが、先生には話しているのだろうか。自分の存在はどれほど野村にとってイレギュラーなものだったのだろうか。

 そんなことを考えているうちにクリスマスパーティの時間となった。 

「ほら光もちゃんと食えよ」

そう言って雄一は学校に配達された安いピザを一切れ差し出してきた。

「これ海老入ってるから食べれないんだけど。分かってて持ってきたよな?」

「あーエビ食べれないんだっけか。それは悪かったな」

そう言いながら、雄一は先程差し出したピザにかぶりついて「うまい、うまい」とわざとらしく見せつけてきた。そんな雄一だったが、森口が近づくと体を硬直させた。

「あれ、ピザ食べないの?食べないなら私がその分もらうけど?」

「取ってくるのが面倒なだけ。今取ってくるよ」

そう言ってこの場を離れた後に、雄一と森口を遠目で見る。二人ともとても楽しそうに笑っていた。すごく戻りづらい雰囲気だった。

だから、戻らずに立ったままピザを食べていた。

そうしていると、一人の女子生徒が話しかけてきた。

「ねぇ、土曜日に千尋と駅で一緒にいるの見かけたんだけど、付き合ってるの?」

野村といたことがバレていると知った時からこの質問をされることは覚悟していた。逆にここまで何も訊かれなかったのは奇跡だ。

「付き合ってないよ。たまたま駅で会って話してただけ。」

「なぁーんだ、そうなんだ。ありがとね」

そう言って彼女は立ち去る。どうして誰も彼もすぐ恋愛に結びつけるのだろうか。そんなに恋愛な興味があるなら他人じゃなくて自分でその欲求を満たして欲しい。

また同じことを訊かれるのは、精神的に負担がかかるため二人のもとへ戻る。

「やっと戻ってきたか。」

せっかく気を遣ってやったのに、まるで感謝のかけらもない言葉だ。

「今、森口と冬休みどこか四人で行こうって話しててな。どこか行きたいところはあるか?」

「家」

「訊く相手を間違えたみたいだな。」

こちとら十六年間インドアで生きてきたんだから、しょうがないだろ。

「私スノボ行きたい!」

その言葉で動揺したが、悟られないように無表情を繕う。 

「スノボいいな、俺も行きたい」

雄一も賛成の意を伝える。圧倒的に劣勢だが、野村は拒んでくれるだろう。だから、結局二対二になる。後はこちらの力量次第でスノボはなかったことになるだろう。

「千尋にも訊いてみるね」

そう言って、森口はスマホを操作する。メッセージを送っているのだろう。

「あっ、千尋オッケーだって!やったー!」

その言葉に耳を疑った。

「本当に?スマホ見せてもらってもいい?」

森口のスマホを見ると、そこには賛成している野村のメッセージが写っていた。

一体何を考えているんだ。激しい運動はできないはずなのに。

「ん?何で全員賛成していることになってるんだよ。賛成してるのは雄一と森口だけだろ」

「細かいことは気にしない、気にしない」

「ちゃんと光も来いよ」

雄一のその言葉と共に七時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。

 

「何でスノボ行くって言ったんだ」

電話越しで野村に詰める。

「流石に三人が賛成してるとなると、断りづらいからね」

「さらに寿命が短くなるかもしれないんだぞ」

「何もしない自堕落な生活を送って寿命をまっとうするのと、思い出を作って早めに死ぬのだったら、どっちを取るかなんて一目瞭然だよ」

「一目瞭然ではないだろ…」

「寿命よりも友情だよ。目の前で友達が車に轢かれそうになったら助けるでしょ?」

「そんな漫画の主人公みたいなことできないよ」

「そんなことよりも古川が賛成したことに驚きだけどね。猛反発すると思ってた」

「勝手に賛成にさせられたんだよ。森口によって」

「確かに彩菜ならやりそうだ。いやークリスマスパーティ行きたかったなー」

「今日通院だったんだよね。寿命は縮んでなかった?」

「ありがたいことにね。ワカサギが効いたのかも」

ワカサギにそんな効果はない。あったらもう少し盛況していただろう。

その後も五分程度話して、電話を切った。

 

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