機動戦士ゾック~太岁の風   作:スナ惡

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面白さのスタートラインとは

娯楽が少ない木星圏では……は先に述べたので、あまり深堀するのは避ける。

レースの企画に関わった人間たちは一様に、その準備段階で予想外の体験をしていた。

準備段階からして徹頭徹尾面白いのだ、

木星圏の人間は基本的に有能な人間がそろっているのも前に述べた通り。

カーンとクルマタニもその部類だが、しかし、その有能な二人が綿密に作成した企画書は散々に叩かれた。

 

「この段階の企画書は評議会が直接議論するレベルではない。」

「なんだこの杜撰な計画は。」

「まずは立案して企画書を作るための企画書準備委員会を設立するための企画書が必要だろう。」

 

という事で、ほぼ満場一致で企画書は突っ返されたのだが、それと同時に「ジュピターGP企画室」という部署が評議会によって設立された。

中には地球圏でカーレーサーの経験がある人間まで混じっている。

ジュピターグランプリ企画室は早々に「木星大気圏内でのレースをしない」案を廃案にした。

 

「木星大気圏内は人工頭脳によるレースにするのです。」

 

カーンとクルマタニは企画室のホワイト室長に言われてはっとした。

そして、同時に自分たちの出る幕ではないとも悟った。

二人の出した企画書はその内容のほとんどが実現しなかったが、肝心かなめの「木星圏でレースをやる」という部分は生き残った。

かくして、大会の企画はあっという間にカーンとクルマタニの手から離れてしまった。

そして、一カ月もするとカーンの元には衛星カリストでレーシングチームを結成して参加しろとメッセージが届いた。

カーンはクルマタニ所長の管轄する作業機械試験場をホームに「チーム・カリスト」の組織を宣言すると、レギュレーションを読み込んでメンバーを集めた。

機体は正式にボールに限られるものとされ、コースはイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストのそれぞれの周辺宙域、及び木星大気圏内のアガリクス基地にほど近い場所にもコースが作られるという事になった。

同時にカリストの作業機械試験場は各チームの機体がレギュレーションに合っているかをチェックする審査を行う事にもなった。

ヒカリは大会の準備段階でコースを飛ぶテストパイロットをすることになった。

これはヒカリが早々にレースに出ないことが決まったからだ。

木星の人間たちにとってもヒカリはゾック乗りなのだ。

とはいえ、ヒカリは木星圏内では数少ない英雄の一人であるので、その「コースチェックをヒカリがやった」というのはそこそこに意味があることだ。

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