結論から言うと、エウロパの内部海探査が遠隔で可能なアイディアが出た。
答えは光ファイバー制御だ。
有線型サイコミュのような方法はアイディアとしては出ていたのだが、30km以上離れた観測装置の載った機体を思念波で安定して制御できるわけがなかった。
地球で使われるようなメタルケーブルで電気信号を送って制御するのは、木星に近いカリストでは嵐のような電磁波のせいで不可能だ。
理屈の上ではミノフスキー場はその電磁波の嵐を遮断できる。
でも実際には30kmの細長いケーブルをシールドしきれない。
この問題に内部海探査プロジェクトのチームは長い間悩んでいた。
ところが最近、チームの中から光ファイバーケーブルを使おうという意見が出た。
被覆された光ファイバーケーブルを通る可視光には電磁波嵐は影響を与えない。
30kmの光ファイバーケーブルというと一見気が遠くなるような長さだが、人類は宇宙世紀以前からもっと途方もない長さのケーブルを大陸間の海底に這わせて情報通信に使っていた。
なので、その技術が流用できるということだ。
「長らくお待たせしました。これが今回の計画です。」
ヒカリに与えられたミッションは光ファイバーケーブルを接続した探査用のゾックを遠隔で操作し、氷床の下でサンプル採取しつつ、ゾックもろとも地表で回収するミッションだ。
その準備段階として、現在のゾックを遠隔操作できるように改造しつつ、ヒカリはシミュレーターで遠隔操作の訓練を開始、その後、改修後のゾックを実際に遠隔操作するトレーニングを経て段階的に深い穴を掘って内部海を目指す計画だ。
計画を話し終えると、チームは顔を見合わせた。
これはお互いに「計画に穴はないよな?」と無言のプレッシャーをかけあっているのだ。
そして、ヒカリを含めて誰も異論は挟まなかった。
ヒカリの訓練はまたもやカリスト作業機械試験場を使うことになった。
そうしてヒカリは再び、定時出勤、定時帰宅のサラリーマン生活となったのだ。
アザニア基地の自宅に帰ってくるとやはり落ち着く。
ヒカリはそろそろ人生の半分ほどをカリストで過ごしたことになるのではないか?と計算をしようと思ったが、ミライに邪魔をされた。
「なんかいいことあった?」
ヒカリが家で家事を済ませてくつろいでいると、クロエが仕事から帰ってきた。
「いいこと……だね。なんか思ったより仕事が安全に済みそう。エンジニアの連中は難しいことになってるみたいだけど、危険が少ない方法を思いついたから皆ほっとしてる。」
クロエの帰宅を察知してミライが部屋の奥の方から飛び出してきた。
「ママー!!」
ヒカリはクロエをミライに奪われたので、それまで眺めていた仕様書に視線を戻した。
「なにそれ?」
「ジオン公国軍が1年戦争の戦前と戦中に開発したとされるモビルスーツの資料。最近、木星船団公社が手に入れて参考にコピーさせてもらってきた。」
クロエも横からのぞき込む。
「なんか、このへんのモブルスーツ、見た目が不格好じゃない?」
「そうね。でも、ここらのモビルスーツって戦争用じゃなくて、鉱山で使うのが目的だったりするの。」
「あー、なるほどね。」
クロエは納得してのか、ミライを引きずったままダイニングの方に移動していった。
「戦うための機械はカッコ良いんだよな。」
そう呟きながらヒカリは、木星にカッコ良いモビルスーツは似合わないなと改めて思った。
そして以前、ガンダムに乗りたがった自分を思い出して一人で苦笑いした。