機動戦士ゾック~太岁の風   作:スナ惡

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50回記念

そんな日々、大枢党から発表があった。

シャオ・イェンの映像が木星圏内を駆け巡る。

 

「皆さん、本日は我々、木星船団公社所属の大枢党から皆さんに発表があります。本日、木星大気圏内基地アガリクスと低軌道の往復回数が50回に到達しました。軽微な故障で数度、ランデブーを断念いたしましたが、ここまで50往復、一度たりとも死傷者を出すことなくやってまいりました。ひとえに木星開発の歴史の中で、文字通り命がけでくみ上げ作業を行ってこられた先達の知恵と経験、そしてその惜しまぬ継承が成し得たことです。低軌道上の同志のバックアップにより、私、シオ・エンの基地滞在日数も合計300日を超えました。」

 

ヒカリはその発表を自宅の居間で見ながら面食らった。

すっかり忘れていたのだ。

なにも起きていないから上手くいっているのだろうとは思っていたが、シャオが木星と大気圏内に拠点を移してからレースやら調査活動やらに忙殺されている間に、1年近い日数が経っていたのだと、今更ながら実感した。

そのまま配信を見続けていると、今後、アガリクス基地と低軌道を自動操縦の船で結ぶ実験中だという事、また現在の基地で得たデータを解析するためのチームが、木星船団公社内に作られるという事、そして、現在のアガリクス基地は引き上げられて木星の低周回軌道へと引っ越すらしいという事だ。

 

「この引き上げについては我々も悩んだのですが、研究者が木星の大気圏外に引き上げた上で、分解し、木星大気圏内の情報をさらに得たいそうです。第二の木星大気圏内拠点はすでに建造中ですが、我々は現在の拠点の解体によって得られるデータを新たな拠点の改良に活用しようと考えております。」

 

ヒカリは「うーん」と唸った。

おとぎ話のような木星大気圏内拠点がさらに進化するというのだ。

 

「そして、我々大枢党が目指すのは、汲み上げパイプを拠点に直結する技術です。これが実現すれば濃縮済みのヘリウム3を直接汲み上げ船に送り出すことができます。但し、この方法はコストパフォーマンスが高くなりそうに見せかけてそうならない可能性もあります。核燃料の臨界点にも配慮する必要がありますので、『小分けになったタンクのような状態で持ち上げる』か、『少量ずつ持ち上げる』といった配慮も必要になります。その点については現在もシュミレートが続いております。この先の技術的な話については木星船団公社技術開発部に映像を変えさせていただいて、そちらからご説明を願いたいと思います。」

 

配信の映像が切り替わり、ヒカリはぼうっとその配信を見ていたが、ふいに映っているのが誰か気付いた。

最初に木星に来た13歳の頃、ジュピトリスの中で出会ったホアン女史だ。

あれから10年以上たっている。

髪型や見た目は変わっているが、全体の雰囲気や口調は変わらない。

解説されている技術的な話は断片的にしか分からなかったが、ヒカリはこみあげてくる懐かしさに少しだけ泣きそうになった。

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