リシュモンは副官たちを集めて素直に悩みを打ち明けた。
「ミイワ隊に関してだが、私はミイワ大佐を生かして帰すつもりは毛頭ない。しかし、ここで木星に送られた地球連邦軍の部隊が全滅となると、聞こえが悪すぎる。木星船団公社の支社は地球にも月面にもあるんだ。あまり地球人の機嫌を損ねて現地の連中がテロの目標になったりしてはいけない。」
リシュモンがここまで胸中を話したのには理由がある。
保安部の中でミイワ隊をせん滅するべきだという声が大きくなっているからだ。
この辺りで「なぜミイワ隊を殲滅してはいけないのか?」をはっきりさせておく必要もあると感じたのだ。
意見を出し合った結果、①ミイワは潰す、②ミイワ以外の兵士は出来るだけ地球圏に無傷で帰す、という二つの目標が出来た。
「よし!できるだけ細かく圧力をかけては、相手を逃がす……これを繰り返してアチラさんの瓦解を狙うぞ。作戦名は『ちょっかいかけては逃がす』作戦だ。」
リシュモンの号令にダブルスターに残った全員が頷いた。
「また今回の作戦では、先日のジュピターカップでも好成績を残しているこちらのストークくんにもモビルスーツパイロットとして参加してもらう。チンペーがいない穴を埋めてもらう。」
「ストークです。よろしくお願いします。」
ヒカリはこのストークという青年が並大抵のニュータイプではないと感じた。
「搭乗機はサイコボールを予定している。」
「任せてください。」
ストークは背筋を伸ばして敬礼した。
ヒカリは改めてオーラがずば抜けていると感じた。
味方として立っているだけなのにプレッシャーがものすごい。
恐らく相当な手練れだろう。
「あとヒカリ、お前は少し休め。」
「……了解しました。」
ヒカリは多分、やれる……と自分では思ったが、命令に従う方が重要だと感じてすんなり引き下がった。
*****
「ミイワ隊長!!敵襲です!!」
「くっそ!貧弱なくせにちょこまかと!!ゼータを出せ!!」
ミイワ隊はクルーザーは放棄して自分達の船であるカルバペネムに戻っていた。
そのリシュモン率いる保安部所属J-VOIDの面々は、そのカルバペネムにちょこまかとちょっかいをかけていた。
ハンガーにスタンバイしている2機のゼータガンダムは脅威だが、地球圏からの流れ者のストーク青年はゼータガンダムに詳しかった。
彼曰く、距離を取って上手く対処できるという。
カタパルトを蹴るようにして発進した2機のゼータを保安部が確認した。
「それじゃあ、いっちょやりますか!」
威勢よくボールで発艦するストークは明るく気さくでムードメーカー的なところがある。
ヒカリはゾックを出しながら異様に頼もしいその青年を眩しく感じていた。
サイコボールはダミーの操縦席を付けただけのボールとパイロットの乗ったボールの組み合わせでしかない。
それらをサイコミュとして動かしているだけだ。
ボールはジェネレーターを内蔵しているのでエネルギー切れがなく、特に何もパイロットから命令がなければパイロット機の近くを漂っている。
問題は足が遅いことだが、ストークは恐ろしく早くこの機体とシステムに順応している。
やり口はシンプルだ。
遠目からヒカリのゾックが敵艦カルバペネムに威嚇射撃を行って、ゼータを釣りだす。
そして、出てきたゼータはサイコボールが主に相手する。
しかし、一定以上、ゼータがカルバペネムから離れると、ゼータも艦を守り切れなくなるため、ゾックがそろそろ当たりそうな射撃を行う。
そうするとビビッてゼータが下がるので、そこでJ-VOID側も矛を収める。
これを延々と繰り返している。