ヒカリは意外に早く出てきた相手を見て目を丸くしたが、焦りはなかった。
「君とやりあうつもりはないんだ。」
ヒカリのゾックはつい最近まで両腕が換装されていたが、本来は両手両足すべてに高出力のバーニアが付いている。
「腕にバーニア!?」
4つのバーニアが一斉に光芒を放ちゾックは恐ろしい加速度で目の前から離れて行く。
「逃がすかあ!」
ゼータがビームライフルを構えようとした瞬間、その腕が焼き切れた。
「え?」
ゾックの肩から飛び出した有線サイコミュだ。
そのビームがゼータガンダムの片腕を焼き切ったのだ。
前回お世話になったのはキャリフォルニアだったが、この一基だけのサイコミュはちょいちょい役に立つ。
ーーお前はそのままついて来いよーー
片腕を落とされたゼータのパイロット、ルーク二等兵は「ついて来いよ」と語りかける思念波の送り主が目の前でどんどん小さくなっていくゾックだと気付いた。
たしかに、2機しかないゼータの内、1機を半壊させたとなると、半殺しでは済まないかもしれない。
「待てぇ!!」
ルークは通信機に聞こえるように絶叫すると、MA形態に変形してゾックを追った。
ミイワに嬲り殺されるぐらいなら捕虜になる方が全然マシだ。
遅れてもう一機のゼータが飛び出してきたが、2機はだいぶ遠くに離れている。
「!?」
遠くに目を凝らしていると何か飛んできて反射的に盾を構えたら、盾の向こう側で何かが爆発した。
ストークの乗るボールに積んである無反動砲による長距離狙撃だ。
しかも、ボールのマニピュレーターで操作したのだった。
「この距離を実弾兵器で!?」
驚いたのは敵のパイロットだけではない。
ボールの非力な砲弾ではゼータガンダムには焦げ跡ぐらいしかつけられないが、確かに当てたのだ。
ダブルスターの艦内もざわついていた。
ストークは無反動砲の砲身を放り投げると、ボールの頭の上についているメガ粒子砲で畳みかけるように砲撃をはじめた。
サイコミュ制御のボール群が連動して散開し、ビームによる波状攻撃を仕掛ける。
当然、ストークに当てるつもりは毛頭ないが、さっき一撃くらったゼータのパイロットは血の気が引いた。
盾に隠れてがむしゃらに回避行動を取る。
普通に避け切れるのだが、パイロットは完全に血の気が引いている。
「保安部長、ゾックを追ってるゼータのパイロットから投降する意思を感じるぜ。」
リシュモンはストークからの通信にこたえる。
「ヒカリからの通信でもそうやって聞いている。でも助かるよ。ありがとう。……それと」
「まだ何かある?……ありますか?」
リシュモンはフフっと笑った。
ストーク青年はモビルスーツに乗ると地の言葉遣いが出るのだろう。
「いや大したことじゃない。木星にようこそ……歓迎するぜ!ストーク!!」