イオ・ヴォルケノPtPはスタートからゴールまで一本道で進むだけのコースで、周回要素がない。
イオの引力を利用した方がタイムが稼げるコースデザインになっていて、効率を突き詰めると結果的にイオの地表スレスレを攻めることになるのが特徴だ。
チェックポイントも最小限で単調なコースかと思いきや、レースの中継を見ることでイオの自然を間近で見ることができる風光明媚なコースになっている。
ただし、唯一の難点は
「兄ちゃん、ここ最近、結構噴火してるけど大丈夫?」
イオは噴火するのだ。
「いやぁ……どうでしょう……ハハハ……」
推進剤(プロペラント)の補充を引き受けてくれたプロペラント・ステーションのオッサンの問いかけにヒカリは乾いた声で笑うしかなかった。
「まあ、俺も噴火に突っ込んだやつは今まで一人しか見たことねーから!気をつけてな!!」
嬉しくない送り出され方をしてゾックを発進させる。
レースの準備段階でのテスト走行を免除されたコースとほとんど変わらないルートを、ゾックで走る(飛ぶ)事になった。
「本当に大丈夫なんですか!?」
保安部に通信を送る。
この場所からだとそろそろダブルスターがイオの陰に隠れる為、通信用のレーザーが届かない。
先ほど立ち寄ったプロペラント・ステーションを経由することになる。
また、そこそこに距離も離れてきたので若干のタイムラグを感じる。
「まあ、火口の真上を通るコースではないので大丈夫でしょう?」
「じゃああれは何!?」
ヒカリはイオの希薄な大気が輝いているのを見た。
「それは多分、オーロラです。」
「イオってオーロラ出るの!?」
ゾックの色が黄色く染まり始める。
イオが何かしているわけではなく、イオの大気に腐食されないようにFCCがゾックを耐酸性塗料で包んでいるのだ。
イオに立ち寄る予定はなかったが、なんとなく積んでいたようだ。
「ヒカリさん。」
「はい?」
「左前方をご覧ください。10時の方向です。」
言われた通りに見てみるとえらい量の噴出物が空に向かって吹き上げていた。
「あれが噴火です。」
「やっぱり大丈夫じゃないじゃん!!」
とはいえ距離は結構ある。
イオの小さい引力では、降ってくるまでに相当時間がかかりそうだ。
それまでにはイオの引力圏を抜け出せそうな気もする。
「ちょっと進路を修正してください。火山噴出物を避けましょう。」
「あ、はい。」
ヒカリの勘は外れたようだ。
少し遅れて修正されたコースが送られてきた。
当初の予定よりずいぶん加速Gがキツいプランになるようだ。
「こなくそぉ!!」
コースの指示通りにハナ先を上に向け、ゾックをイオから見た空に向かって上昇させる。
「ぐ!!」
恐ろしい加速Gだ。
そして、この先でゼータガンダムとランデブーする予定だ。