どれぐらい沈黙していただろうか、シャオはやっと口を開いた。
「ヒカリ・フリース、頼みがある。笑ってくれ。」
「え……?ハハハ……こう?」
おっかなびっくりヒカリが笑うとシャオは大声で笑いだした。
「ハッハッハ!!笑ってくれ友よ!!」
「ああ……アッハッハ!!」
何も面白いことなどないが二人でひとしきりカラ笑いをした。
「……さて、今日から私は道化だ。今のヒカリの笑い声を一生私は忘れない。道化になった私を最初に笑ってくれたのは君だ。」
ヒカリは何か言おうとして言えなくてぐっと言葉を飲み込んだ。
泣けばいいのか、怒ればいいのか、感謝すればいいのか、どれも正解じゃない気がした。
その数日後、シャオ・イェンは地球に向けて動画を送った。
木星帝国の建国と、初代皇帝にシャオ・イェンが即位したことを知らせる動画だ。
木星船団公社の主要な施設は形だけの抵抗をして木星帝国へ恭順し、オールドワンは武力鎮圧されて木星船団公社の出張所として残された。
シャオ・イェンは数あるジュピトリスを帝国で接収せずに、木星船団公社の所有のままにした。
木星船団公社は地球連邦と木星帝国の間を顔色をうかがいながら行き来する運送業というわけだ。
評議会は解散し、木星船団公社の木星出張所所長にはマイラ・パルトロが就任した。
そしてカラスは地球に帰る。
「ヤンスのおじちゃん、また行っちゃうんでヤンスか!?」
「ワシは陽気な旅がらすでヤンス。お嬢ちゃん泣いちゃいけねえでヤンス。」
見送りに来たミライが宇宙港で号泣している。
レイブンマスター公カラスは地球連邦のエージェントの肩書を捨て、木星帝国駐ルナシティ領事となる。
テック企業のひしめくルナシティが、地球連邦にエネルギー資源の供給を脅かされるのを危惧して、いち早く木星帝国の建国を承認したのだ。
モビルスーツ産業をルナシティに握られている連邦は、ルナシティの動きを容認は出来ないが真っ向から非難もできない。
こうして次の宇宙世紀に向けた新たなパワーバランスが生まれつつある。
リシュモンもまた地球連邦の旧世代である穏健派から密命を受けて、地球連邦のエージェントから解任された。
そして皇帝シャオ・イェンの近衛隊長を押し付けられる。
結果的に、コードネームのリシュモン公は消えるので、リシュモンという名前は適当ではなくなった。
こちらも本名かは怪しいが、今後はナサニエル・バーソロミューとなる。
「バーソロミュー隊長、そういえば成り行きで帝国にしてしまった以上、貴族はいてもよかろう。世襲は無しで、一代のみだが……爵位は何がいい?」
アフロの近衛隊長は首を振った。
「爵位なんぞはどうでもいいんですが、最初に爵位を貰うべきなのが他にいるでしょ?アンタ、同世代の友達少ないんだから。」
シャオは指摘されて「あー」と間延びした声を出した。