機動戦士ゾック~太岁の風   作:スナ惡

41 / 147
融和策

フリース家に向かう途中、ヒカリもクロエも動揺していた。

移動する二人の様子をイリーナが眺めているが、二人は気づかない。

イリーナには二人が両思いであることががっちり読めていた。

 

「見るだけでも十分わかるんだけど、こういう時、逆に悔しいな。」

 

イリーナの独り言を聞いたチンペーが自分の頭頂部を気にしている。

 

「そんなに薄くなってます!?」

 

イリーナは無言でチンペーの端末を取り上げると、カメラを起動して、チンペーの首根っこをつかんでイリーナとチンペーのツーショットを撮影した。

かなり俯瞰気味だ。

 

「ほら」

「あー!地球出た時よりもさらに薄くなってる!!」

 

イリーナもなんでそんなことをしたのかは分からないが、チンペーの複雑な男心を読むのは面白かった。

 

*****

 

その頃、大枢党の本拠地、コンティキ号では新たな方針を打ち立てるべく会議が続いている。

太岁球2号は木星大気圏突入を重ねるごとに大枢党に様々なデータをもたらした。

そのデータは単に大気圏内で観測されたデータだけではない。

太岁球2号と名付けられたボールのメンテナンスによっても得られる。

そのデータをもとに大枢党の党員たちは若き党首シャオ・イェンの次なる野望に向けて邁進している。

その結果がこの会議だ。

 

「木星大気圏内拠点は、このマッシュルーム型を採用しよう。異議ある者は?……よし、決定。」

 

ディスプレイに大写しになったマッシュルーム型と呼ばれる図面は、確かに軸の長いキノコのような形をしている。

 

「いずれにせよ、大量の資材が必要になる。」

「やはり、リーが予見した融和策しかないか。」

 

議場となっている食堂に重い空気が立ち込める。

リーの準備した「融和策」は出来れば未来に残しておきたいカードなのだ。

 

「迷うほどのことでもあるまい。いずれにせよリーは木星に直接戻るのはあきらめている。融和策のカードを切ろう。」

 

もう一人の党首であるQがそう告げる。

何処にも反対者はいないようだ。

 

「幸運にも我々には木星大気突入実験で進化したFCC技術がある。下手するとリー師匠の根回しを使わずとも融和策を成功できるかもしれないぐらいだ。」

 

イェンが力強く語る。

 

「万全を期すために、リー大人には捨て駒にはなってもらいますがな。」

 

大枢党の幹部らしき人間が釘をさす。

イェンは嬉しそうだ。

 

「それは勿論そうだ!リー師匠の策、FCC、あとは木星……船団公社になったんだったな?木星船団公社に潜伏する献身的な同志諸君の力があれば、融和策は成る!」

 

船内にパラパラと拍手が響く。

決定のようだ。

 

「それでは閉会を宣言する。各委員会は報告を怠らぬように。起立!」

 

Qが号令をかける。

 

「すべては木星の子のために!!」

 

その号令をきっかけに皆が口々に叫ぶ。

 

『すべては木星の子のために!!』

 

大枢党の融和作戦がはじまった。

 

*****

 

さて、本来ならばエピソードを割いて大枢党の掲げる融和策が何かをお伝えすべきだろうが、ここは手間を省いて説明したい。

木星圏では大枢党は略奪者として知られていた。

ただし、船団公社内にも大枢党員は多数潜伏している為、略奪行為は計画的で、迅速に行われた。

ほとんど人命が失われることもなかったが、それでもならず者に違いはない。

今回、大枢党は木星大気圏内に基地を建造する計画を立案し、実行へ移すにあたって、略奪行為ではとても間に合わないほど大量の物資を必要とする。

そこで、船団公社と取引をして物資を調達することにした。

そのためには、大枢党は船団公社と仲直りする必要がある。

今日の会議で大枢党は

 

略奪行為の黒幕はリーであったと発表

完成したFCC技術の発表

船団公社に潜伏する仲間の協力

 

の三つの方法で船団公社と和解し、正式なルートで資材を入手する。

全てはここからだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。