機動戦士ゾック~太岁の風   作:スナ惡

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抛磚引玉

「レーダーに感あり!」

 

保安部はすでにオールドワンのブリッジに陣取っていた。

 

「ホログラフ出るか?」

 

リシュモンは宇宙戦ではあまり平面のディスプレイを読み取るのが得意ではないと自覚している。

 

「3方向からくるか。予想外だな。」

 

3機がやや角度を変えてオールドワンに突っ込んでくる。

具体的にスリングショットカタパルトが使われたのかは不明だ。

 

「核融合炉を自壊させてジュピトリスもろとも吹っ飛ばす作戦かもしれない。各部隊にできるだけ近づけずに叩くように伝達。」

 

リシュモンの指示に保安部とその応援部隊は即応した。

当然、ヒカリも同じ連絡は受けているが

 

『ヒカリさん、本当に俺たち出なくていいんですか?』

 

ヒカリはリシュモンから、合言葉がでるまで動くなと厳命されていた。

 

「まだ、俺らは動かなくていいみたいよ?」

 

ミノフスキー粒子が散布されているわけではないので、ゾック内からでも得られる情報はそこそこ多い。

3方向から飛んでくる飛翔体に向けて保安部の防衛部隊が3つに分かれて迎撃に向かう。

ちょうどその頃、ブリッジではリシュモンがスペーススーツのヘルメット着用を命じつつ、思索に耽っているところだった。

リシュモンの読みでは保安部にはまだ敵勢力がいる。

それが大枢党に属するものなのか木星船団公社に属するものなのか、はたまた両方かは分からない。

ただ、大枢党と木星船団公社の融和策を気に食わない者ではあるだろう。

 

「もしくは公社の成立を良く思わない者か?」

 

さらにその両者が手を組んだ可能性もある。

全長2kmあるジュピトリス級輸送艦なので、的としてはかなり大きいので相手の狙いを絞れないと保安もへったくれもない。

脅迫文も届いてない。

 

「あ」

 

そこまで考えたところでリシュモンは別の可能性に気づいた。

スリングショットカタパルトがあるならレーダーに引っかかりまくるボールなどではなく、楔形のようなステルス性の高い構造物を十分加速して投擲することでオールドワン本体を狙えるだろう。

その場合、推進機能を持つボールと違って真っすぐ飛んでくることになる上に、より強い加速に耐える可能性があるので下手するとボールを追い越して飛んでくるかもしれない。

リシュモンはスリングショットカタパルトの存在の可能性は公表せざるを得ないなあ……と今更ながらに考えた。

 

「保安部員、聞いてくれ。入った情報によると今回の襲撃には強力なカタパルトが使用されている可能性がある。現在補足したモビルスーツ以外に新たな飛翔体による質量攻撃の可能性がある。恐らくステルス性の高いブツなので、カタパルトの位置を特定する必要がある。現在のボールの軌道と接近速度から、出撃元になったカタパルトの位置を割り出してほしい。」

 

続いてリシュモンは通信でイェンを呼び出した。

 

「イェン党首。スリングショットカタパルトが用いられるとするとモビルスーツ以外の飛翔体による質量攻撃の可能性がある。意見を求めたい。ブリッジまで来てくれ。」

『了解した。すぐ向かう。』

 

保安部の人間から報告が上がった。

 

「部長、カリストから応援に来たモビルアーマー1体が動きません。」

「そのことなら心配するな、そいつを動かすには合言葉が必要だ。」

 

そこへイェンが保安部員の護衛数人とダランを連れてやってきた。

 

「オールドワンの艦内見学、なかなか楽しかったよ。」

 

リシュモンは早速イェンに尋ねる。

 

「イェン党首。早速だがこの中に裏切者はいるかい?もしくは怪しい人間。」

 

イェンはしばらく集中した。

 

「一番怪しいのはいつだってリシュモン部長、あなただ。全く心が読めないからね。隠し事をしているかどうかも分からないやつが一番怪しい。」

「すまない。自由に心を開けたり閉めたりできればいいのだが、俺は対ニュータイプ訓練を受けた中では劣等生なんだ。」

 

イェンは肩をすくめて見せた。

 

「リシュモン部長のせいではないよ。あと、カタパルトからの飛翔体のリスクの話を聞いてここにやってきたが、とりあえずここにその計画を事前に知ってる人間はいないだろうね。多分、何も飛んでこないよ。」

「それはありがたい。」

 

リシュモンは口だけではなく心底安堵した。

 

「その代わり、館内放送のマイクを借りていいかな?」

 

イェンはリシュモンの座るあたりにマイクがあるはずだと探し始めた。

リシュモンがカールコードにつながって宙に浮いている古びたマイクを指さした。

 

「これだよ。このボタンを押して喋るんだ。」

「ありがとう。」

 

イェンはマイクのボタンを押して「あーあー」と声を出した。

 

「現在、本艦はテロリストによる攻撃に遭っていると考えられる。予測される攻撃について述べていく。まずこちらがミノフスキー粒子を散布しないと見越した誘導兵器の可能性……」

 

イェンは一旦マイクを切って、リシュモンに小声で「これは違うようだ」と声をかけた。

 

「次に、カタパルトを用いた質量兵器による攻撃……あらかじめ艦内に仕掛けた爆弾……核融合炉のオーバーロードによる爆発による攻撃……」

 

イェンはまたマイクを口から離すとリシュモンに「他に何か思いつかないか?」とマイクをリシュモンに手渡した。

リシュモンが引き続き攻撃方法の予想を述べていく。

 

「……また、艦内に暗殺者を潜伏させての攻撃、プログラミング式の誘導ミサイル……」

「リシュモン、プログラミング式のところで艦内に動揺した奴がいる。マイクをよこせ。」

 

再びイェンがマイクを握る。

 

「プログラミング式の誘導ミサイルは現在接近中のボールから発射か?……それとも別のところか。これはボールから発射だな。ボールが発射したミサイルが迎撃されるのをどう防ぐ?……飽和攻撃か?……ちがうな、現在迎撃に参加している保安部員に内通者がいる?……これがビンゴか。では、攻撃目標はどこだ。……艦のメインエンジン……このブリッジ……発着場?……なるほど。発着場に我々を誘導するために陽動攻撃がある?……ということか。」

 

イェンがマイクをリシュモンに返す。

 

「リシュモン保安部長、敵の作戦が分かった。敵のボールの迎撃に向かっている保安部員の中に裏切者がいる。そいつが恐らくボールと一緒になってこちらへ攻撃を仕掛ける。そして、なんらかの陽動攻撃で脱出艇に向かう人間を狙ってプログラム式の誘導ミサイルで艇の発着場を攻撃だ。」

 

リシュモンはイェンがニュータイプであることは知っていたが、そこまで能力を使いこなしていることに驚いていた。

ニュータイプ能力があれば相当な数の人間を同時に尋問できるという事だ。

 

「今の尋問技術は?」

「大枢党で研究していた手法だ。逆に言えばこの方法にまんまと引っかかったという事は、内通者は大枢党員ではないか、下っ端か、そのどちらかだ。」

 

リシュモンは目を丸くした。

 

「今の尋問方法を逃れる方法があるのか?」

 

イェンもゴーグルの下で目を丸くした。

 

「いくらでもある。やることをやったらぐずぐずと居残らずに、艦から脱出すればいい。あとはあきらめて睡眠薬を飲んだり、尋問が始まったと思ったら耳をふさいで何も聞かないようにすればいい。」

 

リシュモンは心底感心した。

なるほど、徹底しているなと思った。

 

「ちなみに、裏切者……いや、そのバカ正直は何人いるんだ?」

「2人だと思う。……あくまでも『リシュモン保安部長が裏切者でなければ』と仮定すればな!」

 

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