JーVOID一同、ダブルスター内部の生活もだいぶ板についてきた。
元々、J-VOID乗組員には軍人が多い。
残念ながら元MSパイロットは物故者が多かったり、人材として希少なため木星圏にわたってきた絶対数が少ない。
地球圏でまともに戦闘用モビルスーツの訓練を受けたことがあるのはぶっちゃけチンペーぐらいのものだ。
ただ、本人はパイロットとしては落第だったことを認めている。
ところが先のテロリストとの戦いではチンペーは保安部員外で唯一戦功をあげた。
そこから「チンペーはモビルアーマーの方が向いてないか?」説が出ているのだ。
ボールはモビルアーマーではないが、ぶっちゃけモビルスーツと呼ぶのは気が引ける。
という事でそれっぽい機体を探したところカリストでそこそこ使い古されたルナタンクに白羽の矢が立った。
そこにダブルスターに所属するほとんどのメカニックエンジニアが集まっている。
「おっかしいな……」
首をひねっているのはMS課長のホジョだ。
「1機のモビルスーツにメカニック二人ずつって計算のはずなのに……」
「艦務の整備士の方までジュピタータンクの仕様変更を手伝ってくれてるみたいで……なんか機械屋の文化祭みたいですよね。」
実際にルナタンク改めジュピタータンクのパイロットになるチンペーも困惑気味だ。
よくよく見てみると砲雷課と機関課の連中までいる。
「文化祭ってこんな感じなんですか?俺、木星に来たの早かったもんで、学校とかあんまりよく分からなくて。」
「私も知らないです。」
ヒカリとブリジットも野次馬にやってきた。
「しかし改めて見ると、デカいですね。装甲も厚い。」
ホジョがジュピタータンクを仰ぎ見る。
リック・アッガイの身長が約19㎡、リック・ゾックの身長が約23m、ジュピタータンクは25m近くある。
その上ほとんど球形なので、さらにデカく感じられるのだ。
無限軌道は取り外され、代わりにボールとほとんど見た目の変わらないアームが2本1対取り付けられている。
「あとめちゃくちゃデカいジェネレーター積んでますね。」
ブリジットが漏らした声に釣られて、機関課長のチャンドラがやってきた。
「ナマステ、ナマステ、パイロットチームの皆さんじゃん。ジェネレーターが気になるの?」
チャンドラは返事を待たずにしゃべり始めた。
「ちょうど良いサイズのジェネレーターがなかったから船舶用の大型のヤツ持ってきたんだよ。チンペーさんは家電でも何でも使い放題だよ!持ち込むスペースがないってだけでね!ハハハ!」
言いたいことだけ言ってMSの整備区画から艦内へ戻っていった。
「俺だけ操縦訓練させてもらえてないんですよね……」
「でしょうね。」
チンペーが控えめにぼやいた。
急にホジョが「パン」と手を叩く。
「4人集まったところでミーティングやりましょうか?」
「やりましょうか?」
「やりましょう。」
「了解。」
4人も整備区画を後にして艦内へ消えていく。
その中で、チンペーだけは最後に一度、完成しないジュピタータンクを不安そうな顔で振り返ったのだった。