地球から木星までおよそ2年の旅路、それがだいたい13か月に1回、物資や資材を満載してやってくる。
ヒカリが木星へやってきて4年半が経過して19歳を過ぎ、4回目の船が地球からやってきた。
この時に、船に乗っている乗組員たちは、ヒカリが17歳の頃に地球を発った人間だ。
そして、ヒカリが20歳になる頃には、恐らくミノフスキー断章の陰謀論者たちが木星圏へ乗り込んでくるであろう。
ところが、火星から木星がタイミング次第でやや近いのを利用して、火星から陰謀論者たちが攻め込んでくる運びとなった。
本件について、木星船団公社は地球連邦に仲裁を一応頼んだが、援軍は頼まなかった。
今から地球を出たところで間に合わないからだ。
太陽系の惑星は太陽から近い順に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星の順に並んでいるが、それぞれが太陽を中心として回っているので、木星と地球の間よりも木星と火星が遠いタイミングもある。
しかも、惑星はかなりの速さで回っているので、火星から木星にたどり着こうとするときに、一旦地球をかすめる方が早いなど、様々な可能性がある。
さて、そうして運ばれてきた地球からの物資は、仮に価格をつけるととんでもなく高価になる。
インスタントのカップ麺ですら地球から木星間の運賃が上乗せされるので、地球の高級レストランで食事するより高くなる。
そうした事情で、地球圏と木星圏は通貨を用いた交易は基本的に行わない。
基本的には木星船団公社に地球圏から持ち込まれた物資は木星船団公社によって分配される。
ただし、通貨がないのはあまりにも生活がしにくいので、木星圏は木星圏で閉じた通貨を持っている。
木星圏を引退して地球圏に戻る人間などは、一応、木星圏で資材を売り払って地球圏で使える通貨に換えるが、そのレートも自由経済によっては決まっていない。
地球圏から木星に来る場合も、地球での蓄えを真面目に木星に持ち込んでも、壮絶な物価の高さの前で地球圏の貯金など無きに等しいモノとなってしまう。
そうした事情で、木星圏は社会主義的に運用せざるを得ないのが現状だ。
ダブルスターの乗組員たちは、13か月に1回の地球航路の船の出迎えの応援に駆り出されている。
今回は人間は少ないらしいが物資は多い。
そして今回、その物資の大半はM型小惑星捕獲事業の補填に使われる。
M型小惑星とは鉄や岩石からなる比重の大きな小惑星で、火星と木星の間の小惑星帯や木星の軌道上の太陽から見たL4、L5のラグランジュ点などに散在している。
過去にも岩石型の小惑星が地球に曳航されたことがあったが、木星圏も資源の充実のために独自にM型小惑星を捕獲して木星圏に曳航する計画を立てていたのだ。
その時に資材が回らなくなった部署に順次補填しつつ、またそれ以外の分野にも回していこうというハナシだ。
その中には大枢党が計画する木星大気圏内浮遊拠点のフライング・アガリクスも含まれるが、まだそこまで本格的ではない。
どちらかというとM型小惑星から得られる資源がフライング・アガリクスの資材として有望視されている。
本当はイオを掘れば資源があることは分かっているのだが、イオは木星大気圏内以上に不確定要素が多く危険だ。
いずれにせよフライング・アガリクスは着工こそしたものの、完成というとまだまだのんびりした話なのだ。
「オーライ、オーライ」
ダブルスターのパイロットたちは到着したばかりのジュピトリス級から荷物を降ろして各輸送船に載せなおす作業に駆り出されていた。
「やっぱりタンクはいいっすね!」
他3人がボールを操縦しているところ、チンペーだけは出来たばかりのジュピタータンクを使っている。
マニピュレーターの基本設計はボールと同じなので、いうなれば出力も図体もデカいボールなのだ。
しかし、この出力と図体がデカいというのはかなりのアドバンテージで、荷物をつかんだ時の反作用が小さいので運搬もしやすい。
しかも、戦闘用に作られているのでボールよりデカいくせにボールより機敏だ。
「チンペーさん!調子に乗ってぶつけないでくださいね!!そいつで突っ込んだらジュピトリスの居住区ぐらいなら木っ端微塵なんですから!」
ホジョがチンペーに注意を呼び掛けた。
これは嘘でも誇張でもない。
むしろ、チンペーのタンクの出力があればジュピトリス級ですらそこそこ解体できてしまう。
「了解!隊長!」
チンペーは威勢よく返事したが、見慣れないモビルアーマーの貨物作業は見るものすべてをハラハラさせ続けた。