大枢党は活気に満ちていた。
火星からやってきたガンダムの残骸だけではなく、ジムの残骸、その旗艦の破壊された残骸や、ガンダムに迎撃されたタグボートの残骸までが全て拠点に曳航されている。
それらの中には木星圏では貴重な資源も混ざっている。
それらがすべて分別されて、再資源化されていく。
大枢党は木星大気圏内拠点フライング・アガリクスの完成にゆっくりではあるが着々と近づいていた。
大枢党はフライング・アガリクスの建造資材について計画を立て直していた。
現状でも、拠点の一部を解体するなどすれば建造に必要な資源は入手できるが、フライング・アガリクスと低軌道の連絡船を結ぶインフラを考慮すると、もっと莫大な資源が必要だと判明したからだ。
結果的に大枢党は「使い慣れた」方法を使うことにした。
火星と木星の間のアステロイドベルトで手ごろな資源の多い小惑星を見つけて、その小惑星を木星圏まで引っ張ってくる方法だ。
そのための熱核パルスエンジンは彼らの拠点のジュピトリス級から引きはがすことにして、その計画に必要な工作船の建造が始まっていた。
「こういうタイミングで土星に行ったリー大人が『今帰ったぞ!』とか言って木星圏に帰ってくると頼もしいのだがな。」
イェンは建造中の船を見ながら微笑んだ。
そんなことがあり得ない事は百も承知だ。
リーの一行が木星圏を離れたタイミングは、木星と土星が近くなるタイミングだ。
そのタイミングを逃すと、土星から木星は遠くなる。
そうした事情でリーは土星での調査を終えた後には地球に帰る計画を立てていた。
「船の名前はコールフィールド号としよう。」
イェンはダランにそう言うと、その場を離れて行った。
計画は4か年計画、計画名はそのまま船の名前で「コールフィールド計画」となった。
*****
大枢党のコールフィールド計画は木星圏全体に知らされた。
作戦のクルーは大枢党で構成されるが、資源については木星船団公社にもある程度流入すると発表されている。
これによって先の大枢党がジュピトリスを私掠している状態である事実をお目こぼし願おうという魂胆らしい。
そして、その魂胆はあっさり受け入れられた。
木星船団公社内にも大枢党員がそこそこ紛れ込んでいるため、彼らがロビー活動したのだ。
さらに大枢党でなくても「木星の子」であるシャオ・イェンがまともに生き延びるのには、ジュピトリス級の船や居住区が必要だったことは容易に想像できるだろう。
彼らはシャオの名前は知らなくとも、「木星の子」について知っている者は多い。
皆が心のどこかで「木星の子の幸福」を気にして生きてしまうのだ。
自分たちが作った世界が「木星の子」を育む様子を、遠巻きにでもよいので感じていたいのだ。