ヒカリ達が地球へ到着したのは宇宙世紀0088年の事だった。
ヒカリは地球へ向かう航路の途中で、約一年先に地球へ向けて旅立ったシロッコが地球圏で大暴れをはじめた報せから、一年もかからずに落命したという報せまでなんやかんやで受け取っていた。
余談だが幸運にも、木星船団公社CEOであるコンバヤシは、その時にはすでに木星圏に帰りついていたため、地球圏で吊し上げに会うこともなかったそうだ。
さて、ヒカリが地球に来た表向きの理由は地球の海中でゾックを運用する実験の為だ。
なのでヒカリと一緒に、木星で開発されたジュピターゾックとも言うべき機体が地球に運ばれてきた。
そして、海に面したキャリフォルニアベースの中に入っている木星船団公社キャルフォルニア支社に配属となった。
ヒカリたちはあまり意識していなかったが、木星船団公社の職員というのは地球圏ではかなり特殊な立ち位置らしい。
このキャルフォルニア支社であっても、ほとんど大使館のような扱いだった。
シロッコ艦長のやらかしにより木星船団公社への風当たりはやや強くなってはいたが、それであっても地球圏のほぼ全域が木星のエネルギー資源に頼っている現状、誰も文句など言えない。
エネルギー資源の供給を安定するために木星船団公社が行うべきは、木星圏の経営の安定だ。
物資の余剰がまだまだ少ない木星圏は、いまだに原始的な共産主義のような仕組みで成り立っている。
その状況を打破するためには、木星圏の発展が必要だと公社は考えている。
現在、木星圏の最大拠点であるアザニア基地は、衛星カリストの氷の上に半ば強引に建てられた基地だ。
そのため、未だに生物学者たちから「カリストに生命があった場合、絶滅させかねない」と強めに非難されている。
なので、カリスト、ガニメデ、エウロパの内部海を持つ衛星は開発前に調査が必要だ。
ちなみにイオも大きな惑星だが、単に火山活動が活発過ぎるのが怖くて、誰も地表に下りない。
貴重な衛星探査に使える船を、イオの気まぐれな地殻活動で失ってはいけないのだ。
例えば大枢党もイオを掘れば物資が手に入ることは知っている。
リスクが高すぎてやらないだけだ。
だから3か年計画で資源小惑星をアステロイドベルトから引っ張ってくる計画を立てたのだ。
ヒカリは海面に頭を出して浮かんでいるゾックの上に立つと、キャリフォルニアの青い海と空を見ながら、今後の木星圏について考えていた。
そして一つの結論に達する。
「みんな頑張れー!」
大きな空に叫ぶ。
今の時期なら青い空のどこかには木星が隠れているんだろう。
ただ空が明るくて見えないだけだ。
「ゾック潜ります!」
そう言って、ヒカリはゾックの中に吸い込まれると、ゾックも海中に潜っていった。
それから1年余り、宇宙世紀0089年、ヒカリとクロエは念願の第1子を授かった。