イリーナはキャルフォルニアベースはとてもナイーブな状態にあることを理解していた。
まず、湾岸警備隊がヒカリを葬ってゾックを強奪しようとして失敗、2つある小隊の内の1つが返り討ちに会って壊滅。
もう1つの部隊は故意に仕掛けられた通報で出動中。
その隙を突いて、軍警が湾岸警備隊の詰め所を制圧したが、軍警にも湾岸警備隊に加担してそうな人間が居て、現在、チンペーがモンゴリアンクローで押さえこみ中。
さらにイートン家の息がかかった軍人が何人かキャルフォルニアベースをうろうろしている事にキャルホルニアベースを構成する他の軍人や民間人も気づいていて、ピリピリと空気が張り詰めている。
基地の沖ではヒカリが半壊した湾岸警備隊の艦でゾックと共に待機中。
基地に隣接した宿舎の中、木星船団公社に割り当てられた区画には湾岸警備隊の射殺体が2体転がっている。
基地の外では木星船団公社とイートン家が軍警に圧力をかけている事だろう。
さらにイリーナを悩ませていることがある。
未知のニュータイプがこの基地に近づいてきているのだ。
イリーナは過去にはジオン公国の中にいながらニュータイプ狩りを躱してきた過去がある。
それはニュータイプ狩りに狩られない程度に優秀なニュータイプだったので、ニュータイプ狩りが来る前に逃げることができたからだ。
さらにモルモットにされるのも嫌だった。
それも、木星圏に来るまでの話で、それ以降はニュータイプであることを無理に隠してはいない。
木星船団公社の肩書を手に入れた現在、そう簡単にどうこうされることもない。
ただ、自分より劣るモルモットにされてしまったニュータイプはそこそこ見てきた。
彼らが発する負の思念はなかなかに苦痛で、感度の高いイリーナにとってはなかなかに苦痛だった。
イリーナには一つ持論があって、ニュータイプの中には受信が得意なタイプと送信が得意なタイプがいるのだと考えている。
送信が得意なタイプはサイコミュ兵器を動かしたりするのが得意なタイプ。
受信が得意なタイプは思念を読む方に長けているタイプ。
イリーナは自分は後者だと自覚していて、それも人の意識を精密に読むよりも、より遠くから感知する力に長けていると思っている。
そして、今、基地に近づいているのは送信が得意なタイプで、ずいぶんと負の感情をため込んでいる。
「コレが噂の人工ニュータイプとか強化人間?」
イリーナがつぶやいて、基地の窓から思念波をまき散らしている方を見ると、小型の輸送機が近づいてくる。
あの感じはモビルスーツを持ってのお出ましだろう。
このキャルフォルニアベースにはわざわざ外から持ってこなくても、モビルスーツはいくらでもある。
誰かの専用機か、よほど特殊な機体か。
「チンペー、あんたのところの兵士に警戒するように言って。」
「了解!」
チンペーはイートン家の息のかかった軍人たちに警戒を呼び掛ける。
すると下士官の一人が輸送機に見覚えがあるとチンペーに伝え、記憶を頼りに内情も教えてくれた。
それを聞いて、チンペーはすぐにイリーナに声をかける。
「イリーナさん、なんか鹵獲したゲーマルク?ってモビルスーツが載ってる可能性が高いって。」
「何それ?」
イリーナの問いかけにチンペーは首を傾げた。
「僕も知らないんですよね。」
ゾック(ヒカリ専用機)
正式名称:ゾック木星圏探査仕様
型式番号:未設定
所属:木星船団公社
製造:ジュピトリス第2世代型改修艦
頭頂高:28.8m
重量:約400t
装甲材質:超硬スチール合金セラミック複合材
出力:70,300kW(理論値)
推力:約8000t
最高速度(地球大気圏内):170km/h(地上)、250km/h(水中)、マッハ20(推定される最高飛行速度)
武装:メガ粒子砲8門、フォノンメーザー砲(超音波砲)1門、グースネック型有線ビット1台、クロー
搭乗者:ヒカリ・フリース
備考:地球であれば水中から飛び立って大気圏外の低周回軌道まで飛ぶ能力がある反面、小回りが利かない。また、サイコガンダムが実装していた物と同水準のミノフスキークラフトを搭載している。