機動戦士ゾック~太岁の風   作:スナ惡

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反省会

オエド大尉は上機嫌だ。

 

「これで我が連邦軍も、ガンペリーの有能さを認めざるをえまい!はっはっは!」

「さすが殿!」

「殿!最強!」

 

負けた直後、ヒカリはフォノンメーザーで早めに魚雷を迎撃するべきだったと考えていたが、あとからどう考えてもあの戦術には勝てない気がしている。

なお連邦軍内でも彼がなぜここまでガンペリーにこだわるのかを知る者はいない。

ヒカリはガンペリーを最初に落とすのが正解か?とも思ったが青いガンペリーはIフィールドを搭載しているかどうか見た目からでは分からないギリギリの大きさだ。

フォノンメーザー砲は一門しかない上に、主に水中用の武装なので空中でホバリングするガンペリーを落とすには役不足。

そうなると、使えそうなのは射角に余裕がある有線型ビットに実弾兵器を搭載するぐらいしか思いつかない。

下手をすると、ガンペリー単機でもやられていたかもしれない。

相手の魚雷は十分に小型だったため、模擬戦でなければゾックの装甲で防げたかもしれないが、音響魚雷による飽和攻撃にはどう対処すればいいのだろうか?

しかも、音響魚雷はミノフスキー粒子散布下でも問題なく誘導してくる。

ヒカリはふとここでオエド大尉から以前感じていた嫌悪感のようなモノが消えているのに気づいた。

そして、今はオエド大尉の思念がそこそこ読み取れる。

どうやら、あれは自由に出し入れできる類のモノらしい。

そうなると、以前発していた基地全体を包むようなサイコウェーブのプレッシャーは意図的に発せられていたのだと分かる。

ヒカリが不思議そうな顔でオエド大尉を見ていると、オエドとモンタギューがヒカリが何を考えているのかに気づいたようだ。

オエド大尉は尊大な笑みを絶やさぬまま負けたヒカリに近づく。

 

「以前は不快な思いをさせてすまなかったな。キャルフォルニアベース内で発生したアレコレを解決するために軍警の連中をとっとと退散させるために少し精神攻撃をさせてもらっていた。これが残念ながら相手を選べないんだ。」

 

モンタギューは横で頷いている。

 

「もしかして、オエド大尉もニュータイプ?」

「いや、違う。私はニュータイプではない。しかし、一方的に思念波をばら撒く技術は習得できた。私が本気を出せば上空の渡り鳥ですら嫌がって進路を変更するぞ。」

 

そういうや否や、オエドから不快なサイコウェーブがまき散らされた。

予備知識があるヒカリですら、一刻も早くこの場から立ち去りたい気分だ。

この能力はニュータイプ、オールドタイプを問わずに効き目があるらしく、明らかにニュータイプではないその辺の警備兵ですらイライラした様子を見せ始めた。

しかし、それもすぐ止む。

目の前には一変、穏やかな笑顔のオエドが立っている。

ヒカリは、先ほどの自分はあまりの不快さに周囲の状況にほとんど目が配れない状態だったことを、今更ながらに自覚した。

他人の集中力を欠く能力でもあるのだ。

 

「すごい能力ですね。」

 

ヒカリはやや青ざめながら素直に感想を述べる。

オエドは口角をゆがめてにやりと笑う。

 

「先ほどの模擬戦では使ってないぞ?」

 

ヒカリはなぜか無性に嬉しくなった。

自分の負けをすがすがしく認めるメンタルにたどり着いたのだ。

 

「模擬戦ありがとうございました!」

「我々も楽しかったよ!」

 

ヒカリはオエド小隊全員と握手すると、その後、模擬戦の反省会のようになって夜中まで話し込むことになった。

そこではオエド遊撃隊が予想して警戒していたゾックの戦術が全て明らかにされて、その大半がヒカリが想像だにしないような奇抜な戦術だった。

例えばオエド遊撃隊はゾックによる投石を警戒していた事実にヒカリは驚いた。

ゾックのマニピュレーターはそこそこ強力な上に、推進力は単独で大気圏を脱出できるレベルであるため、岩石をつかんだ状態で水中から浮上、空中で超音速まで加速し、そのまま岩石だけガンペリーにぶつけるような戦術がありえたというのだ。

これについては船足の遅いガンペリーでは回避する方法がほぼないらしく、岩を持ったのが見えた瞬間に降参する準備をしていたと遊撃隊は語った。

他にも、空中から海面に飛び込む水柱でガンペリーの回転翼を破損させる戦術などは、水柱が届かない高さまで急上昇する対処法をあらかじめ決めてあったらしい。

ヒカリは自分がゾック乗りとしてこれまで大した工夫もせずに、漫然とモビルスーツの兵装だけで戦っていた事実に気づいて、己の敗因を悟った。

その日から、ヒカリはゾックの潜在能力を引き出す戦術を、常時考えるようになった。

ふと、キャルフォルニアベースにやってきたガンダムタイプを見ると、昔、あんなにガンダムに乗りたかった頃が遠い昔のように感じられて、あの頃の自分は自分じゃなかったように感じた。

 

「俺がゾックだ!」

 

きっと、この現代、ゾックに乗っている人間はヒカリしかいないだろう。

だから、どんなに弱くともヒカリがゾックのエースパイロットという事になる。

そのヒカリが弱ければ、即ちゾックが弱いという事になってしまう。

北米西岸のこの海とももうすぐお別れだが、この海で学んだことはきっと木星の衛星でも役に立つ。

ヒカリはそう自分に言い聞かせた。




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