「まだ探してる人がいるの??」
ジュピトリスが地球圏を離れて少々、木星船団の人間たちもずいぶん打ち解けてきた頃、食事の席で意外な話が飛び出した。
ジャーナリストと名乗った男の名前はボウイだそうだ。
英語で綴ると「Boy」ではなく「Bowie」とスペルが違うらしい。
ともかく、その男性はミノフスキー断章を入手すべくあらゆる手を尽くす秘密結社があるとヒカリに語った。
ボウイはフリース一家が同じ船に全員乗っていることを知っての上でそれを話したのだった。
当然、ボウイは公開されたミノフスキー断章の続きがあるなどと考えてはいない。
これは世の中の大半の人間がそうであろう。
しかし、狂信者はいつの時代にもいるようだ。
ボウイは火星から木星に差し向けられた攻撃隊がいた事実も知っていれば、その陰で手を引いていたのもミノフスキー断章同胞団だという。
「俺もはっきりと知ってるわけではないんだが、火星から木星に派兵するときに秘密裏に資金を集める段階で、現在の同胞団の姿かたちがくっきりしたみたいな……そんな雰囲気らしい。」
そして驚くべきことに、同胞団は地球圏から木星圏へ独自に軍艦を飛ばす準備段階だという。
「連中にはジュピトリスほどの船足はないが、まず地球圏を出て、火星圏で補給を行い、そこでタイミングを待ってアステロイドベルトの資源基地を経由して木星に到達するルートを考えているっぽい。ルートについては大半は俺の想像だが、実際かなりの資金を集めているらしいぜ。」
ヒカリ含めニュータイプの乗船者が数名いる為、このジュピトリス内には同胞団はいなさそうだ。
そして、皆一様に呆れた顔をしている。
「無駄な金だなあ……」
しかも、ボウイが挙げた「恐らくコイツは同胞団」というメンバーを聞いて、一同はより一層の呆れた表情を浮かべた。
どいつもこいつもミノフスキー物理学を齧ってもいなさそうな政治家や資産家、そして活動家たちだ。
しかも、そいつらはフリース一家が地球にいたことを全く知らなかったらしい。
一応、機密扱いではあるが、普通にキャルフォルニアベースで仕事をしていたため、いつどこからリークされてもおかしくなかった。
よほど孤立しているのだろうか。
一応、リシュモンには連絡を入れておくと、忘れた頃にリシュモンから「知ってた」と返事が来た。
同胞団が木星到達に成功すると、「地球圏から木星圏へ到達した、最初の純民間団体」という事になる。
動機はどうあれ、それはそれで偉業なのかもしれない。
ヒカリはそんなことをぼーっと考えながらプレイルームでミライを遊ばせていた。
両親がそうであるからか知らないが、ミライもやはりニュータイプらしい。
泣くのがめんどくさいときに思念波だけを飛ばして両親に怒りを伝えてくる時がある。
例えば靴下を履きたくないとか、お風呂に入りたくないとかそういう怒りだ。
外で何があろうとも今のところこの船は安全だ。