カリュナスの竜騎士   作:yumui

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リィカ

帝国西部、交易都市ヴァルツァ。

 反乱軍による奇襲は成功し、街の城門は破られ、火の手が上がっていた。

 

 セレンは空から街を見下ろし、指示を飛ばす。

 

 「第七部隊、東の倉庫群を確保して! タルラ隊は正面広場へ!」

 

 背には白金の竜、エル。戦火を浴びながらも力強く翼を広げていた。

 

 だがそのとき、空が、ざわめいた。

 

 「……来る」

 

エルが低く唸ると同時に、暗雲が空に垂れ込め、

 その中心から黒い影が降りてくる。

 

 

 

 「……リィカ」

 

 

 

 灰色の髪が風に揺れ、少女は巨大な大鴉に跨っていた。

 黒い羽が何百枚も舞い、空を黒い渦に変えていく。

 

 エルが咆哮を上げ、白炎を吐いた。

 リィカの大鴉も、暗黒の風を巻き上げて迎撃する。

 

 

 空中で二つの巨影が交差し、火と風がぶつかり合う

 

 

 セレンは鞍から立ち上がり、空中で飛び移るように剣を振るう。

 リィカも槍を構え、盾のようにセレンの

剣を迎撃した。

 

「リィカ!なぜ、帝国に従ってるの!? あんなやつらのために!」

 

 

 「帝国にしか、私の居場所はないの。エレンが死んだあの日から!」

 

 「それでも、あんたが泣いてたこと、私は知ってる!」

 

 二人の剣と槍が、空で何度も激しく交錯した。

 だがその刹那、エルが炎の軌道を変え、リィカの大鴉へと向けて咆哮を放つ。

 

白金の火が空を焦がし、大鴉の黒羽が音を立てて燃え落ちた。

 

 「ギャアアアアアァアア!!」

 

 

 大鴉が咆哮を上げながら、煙の中へと落ちていく。

 リィカも振り落とされ、地面へ向かって急降下する。

 

 「リィカ!」 

 

 セレンが追いつき、剣を構える。

 落下の先、瓦礫の上でリィカは立ち上がれず、かすかに顔を上げただけだった。

 

セレンは剣を振りかけ——だが、止めた。

 

 「……。」

 

  だがその瞬間だった。

 

  空が、闇に覆われた。

 

その背には、黒い甲冑に身を包んだ騎士。

 ——イウヴァルト。

 

 

 「リィカを殺すな。……彼女は、私の部下だ」

 

 

 声は低く、刃のように冷たかった。

 

 黒竜が咆哮し、落雷のような黒い雷を地面に叩きつける。

 セレンとエルはとっさに跳ぶが、街の一角が消し飛んだ。

 

「こんな……!」

 

 エルが迎え撃つべく、白炎を放つ。

 

だが、黒竜はその炎を無視し、まっすぐに突っ込んでくる!

 

 

 「ぐっ……!」

 

 衝突。

 空中で、エルが叩き落されるように後退し、翼が焼けるように痺れた。

 

 

 「セレン、駄目だ! あいつ、今の僕たちじゃ——!」

 

 

 「でも、逃げたら街が——!」

 

 そのとき、遠くからタルラの声が響いた。 

「全軍、撤退ッ!! これ以上は持たん! 街を離脱せよ!!」

 

 

 

 イウヴァルトが剣を抜き、セレンへと突進してくる。

 黒竜が再び雷を纏い、空を裂くように迫ってくる。

 

 

 だがその瞬間、エルがセレンを抱き上げ、

 旋回するように空へ逃れた。

 

 

 振り返るセレンの視線に、イウヴァルトは無言で立っていた。 

 

ただ静かに、黒い翼をたたみ、戦場を見下ろしていた。

 

 ——その背中には、何かを喪った者のような、寂しさがあった。 

 

 空を裂いて、セレンとエルは飛び去る。

 反乱軍も、街の残骸の中から退き、撤退の風に身を乗せた。

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