Fate/Blue Order 作:マスター先生
この話はブルアカ最終章とデカグラマトン編のネタバレを含みます
これは数多の世界の内の1つの人理修復の旅路。本来であればその旅路は長く、険しく、多くのものを得て、また多くのものを失っていく旅路である……はずだった。
しかし、とある透き通った世界との縁によりその運命は変わり始める。そう、これは
絆の力で苦難を乗り越え
努力がきちんと報われて
辛いことは仲間と慰め合って
苦しいことがあっても……誰もが最後は、笑顔になれるような
……そんなハッピーエンドを目指す物語である。
さて、それでは──彼らの話をするとしよう。
ごく普通の一般高校生藤丸立香の脳内にはここ1時間ほどの間、常に困惑の2文字が鎮座していた。
何故かというと、半ば強制的に連れてこられたバイト先の『カルデア』で突然の爆破事故(あるいは事件)に巻き込まれ、瓦礫の下敷きになって死にかけていた彼のことを先輩と称する少女の手を握っていたと思ったら、何故か燃え盛る街の中で
おまけに自分を助けてくれた後輩は巨大な盾を持ち、デミ・サーヴァントという人間を超越した存在になってしまったというので彼の頭はキャパオーバーしてしまった。
その後少し休憩をして、マシュと通信先のロマニの提案でこの特異点(細かいところはよくわかってない)を解決するために
召喚された英霊に見覚えがありすぎたのだ。そう、例えるなら毎日見る画面越しに見ていたような。
「パンパカパーン!勇者アリスがパーティに加入しました!」
そんな言葉と共に現れたのは地面につくほどの長い黒髪を持つ少女だった。
背には巨大な直方体型のレールガンを背負い、
そんなにこやかな笑顔を浮かべる英霊にロマニとマシュが話しかける。
『君のクラスは何だい?』
「アリスの今のジョブはセイバーです!」
「あなたはアリスさんというのですね。名前からすると……不思議の国に行った経験のあるアリスさんでしょうか?」
「いえ、アリスはキヴォトスから来た勇者です!」
その返答にマシュはしばし考え込んだ。彼女が知る限り、『キヴォトス』という地名は現在にも過去にも、果ては架空の世界にすら存在しないのだ。*1これは英霊として少しおかしい。*2そもそも英霊とは……
マシュがそんなことを思考している最中、藤丸は別のことを考えていた。
というのも、彼はこの英霊の正体を知っていたのだ。
彼女は彼がプレイしていたゲーム『ブルーアーカイブ』に登場する生徒で、ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部所属のアンドロイド……いわゆるメカっ娘である。(なお見た目は完全に人間)
そんな空想上の存在が実在していることに驚きを隠せない藤丸だったが、聞こえてきた自分たち以外に声にふと我に返った。
「ちょっと!どれだけいるのよこのスケルトンたちは!誰かいないの!?」
そこにいたのは大量の骨に囲まれながら助けを求める人物だった。
「あれは、オルガマリー所長!?」
襲われていたのはオルガマリー・アニムスフィア。マシュが呼んだようにカルデアの最高責任者たる女性であった。
その様子を見て藤丸たちは彼女を助けることを決める。
「マシュ、所長を助けるよ!アリスも協力してくれる?」
「はい、了解しました先輩。敵集団殲滅します」
「わかりました、救出クエストですね!アリスはあのNPCを助けます!」
こうして3人は戦闘に入った。
そして数分もしない内にスケルトンたちは全滅した。なぜならアリスの攻撃力が凄まじかったからである。
その巨大な砲塔から放たれるレーザーの威力は敵数体を軽々と貫通する勢いであり、マシュが敵数体を倒している間に其の数倍の数を塵にすることが可能だったのだ。
「助けてくれたことには感謝します。でもその前に……」
救出されたオルガマリーは一息置くと言った。
「なんで貴方がマスターになっているの、藤丸!?マシュもサーヴァントの力を使えているようだし何があったのか説明しなさい!」
『少し落ち着いてくれ!ちゃんと説明するから!』
『……というわけさ。君の方からなにか情報はあるかい?』
「特にないわよ。気づいたらこの特異点にいたんだから。ところでそこのサーヴァント……アリス、だっけ?その子についての情報はないの?」
「ちょうど今召喚したばかりなので……そういえば所長はキヴォトスという地名について知っていますか?」
「知らないわね、というか詳細も真名もわからないのに戦闘に出してたの!?いくらマスターといえどもその行為は危険なのよ!わかっているの、藤丸!」
「ええっと、すいません所長」
真名どころかどんな人物かまで一通り知っている藤丸にとってはわりかし理不尽な怒りなのだがそれを口に出すわけにもいかないのでとりあえず謝罪の言葉を述べる。流石に目の前の人物がゲームの中のキャラクターです、なんて言っても信じてもらえないだろう。
「まあいいわ、所詮は魔術のまの字も知らない一般人だものね。とりあえず貴女は本名と宝具について教えなさい」
「はい!アリスは天童アリスといいます。宝具はこの光の剣:スーパーノヴァです」
そう言って背中のレールガンを地に下ろす。その際の振動から常人では持ち上げることも困難であろうことがわかった。
『なるほどね。さっきのすごい威力は加減しているとはいえ宝具によるものだったからか。……あれ?君のクラスってセイバーだったよね?』
「はい!アリスは光の”剣”を持っているのでセイバーです!」
堂々と言葉遊びのようなことを言い張るアリス。まあ実際自身を勇者と呼称するような性格をしているのでまあアリスらしい、と納得する藤丸と違い、オルガマリーはそれを認められずに叫ぶ。
「大砲みたいな宝具を持っているのにセイバーだなんて認められるわけないじゃない!本当のことを話しなさい!」
「まあ剣を使うアーチャーもいるんだし銃を使うセイバーがいてもいいんじゃねぇか?」
その場にいた全員(通信越しのロマニは除く)が声のした方へ顔を向けた。さらにマシュは戦闘態勢をとり、声をかける。
「どなたですか」
「なぁに、怪しいもんじゃないってのは無理があるにしろ敵ってわけじゃないぜ。話だけでも聞いちゃくれないか」
「敵でないというのならまずは名を名乗りなさい」
「わかってるよ。俺はクー・フーリン。クラスはキャスターだ」
「クー・フーリン!?あのアイルランドの光の御子だって言うの!?」
思わぬビックネームに衝撃を受けるオルガマリーと違って、藤丸はただ恐れ慄いていた。
スケルトンが子供に見えるほどの気配の圧。それでも動けない程度ですんでいるのは、ひとえにあちら側に敵意がないからだろう。もし敵対していたのならば、ここにいる全員なすすべもなく殺されていただろうことを感じ取ってしまった。
そんな恐怖に囚われてしまったマスターを横目にアリスは自己紹介を始めた。
「はじめまして!アリスはアリスです!あなたはパーティーに合流しに来ましたか?」
「パーティーねぇ、まあそうだな。俺はお前らと協力がしたくてきた。教えてやるよ、この街で何が起きたのかをな」
こうして話された内容は魔術士にとっては重要な情報だったらしい。といっても藤丸に理解できたのはこの地に召喚されたサーヴァントがおかしくなったこととその元凶がセイバー――アーサー王であることぐらいである。
「つまりそのアーサー王を倒せばいいってことですよね」
「まあまとめりゃそういうことだがそう簡単に勝てる相手でもねぇぞ」
それはそうだろうと藤丸はキャスター(サーヴァントはクラス名で呼べと言われた)の言葉に首を縦に振った。アーサー王――
そこにさらに問題が積み重なった。
「すみません先輩、実は1つ報告が……」
なんとマシュがまだ自信に宿る英霊の力を使いこなせておらず、宝具が使えないというのだ。
さらなる問題に総員が頭を回しているところでとある人物から声が上がった。
「嬢ちゃん、俺と「マシュに藤丸、アリスと戦ってください!」ちょっ!?」
「どうしたのアリス?急に戦うなんて」
急に味方同士で争うなんて言ったアリスに対して藤丸が理由を伺う。
「アリスわかりました!マシュのジョブは
「なるほど、一理あるな。やっぱサーヴァントなら戦って思い出すのが1番てっとり早い」
サーヴァント2人で進んでいく話にマシュは不安そうな顔を見せる。そんな彼女に藤丸は話しかける。
「大丈夫だよ、マシュならやれるって」
「……ですが先輩、こんな未熟な私で先輩をお守りできるでしょうか……」
「それを言ったら俺だって未熟なマスターだよ?それにさ……」
彼は思い出す。この燃え盛る街に突然投げ出されて誰が助けてくれたのかを。
「俺を最初に助けてくれたのはマシュだったからさ、その時すっごい安心したんだ。俺は1人じゃないって。だから俺なんかじゃ頼りないと思うけど」
そう言って決意を固めた少年は笑いかける。
「俺がマシュを1人にはさせないから。一緒に頑張ろう!」
その時、彼女は思い出す。燃え盛る建物の中でこんな自分の手を握ってくれた存在の事を。そして思ったのだ。この力を彼のために使うと。
「ありがとうございます、先輩。不肖このマシュ・キリエライト、この身に代えても先輩をお守りします!」
そう言って、少女は少年の手を取る。
その顔にはもう一欠片も葛藤は残っていなかった。
2人の少女が構え合う。その場には戦場にふさわしい緊張感が張り詰めていた。
「それではいきますよ、マシュ」
「いつでもどうぞ!アリスさん!」
アリスは一息置くと、その手に持つ己が獲物にエネルギーをチャージしていく。
「これは光の剣を抜きし勇者の一撃、我が敵を滅す大いなる光」
「魔力充填……。100%――
目が潰れるほどの極光がアリスの持つ光の剣から放たれる。
しかしそれはあくまで副産物。本当の脅威はそれに紛れて襲い来る膨大なエネルギーの流れである。
それを全力で抑えながらも、マシュは感じ取ってしまった。
このままでは確実に押し負ける、と。
(それでも負けるわけにはいきません!私の後ろには先輩がいるんですから!)
なおも自身を奮い立たせるマシュ。そこに1人の思いが届いた。
「マシュ!」
肩に温もりをを感じる。これが誰のものかなんて考えなくても分かる。そう、先輩は自分を信じてくれている!
「……っっ!宝具、展開します!」
マシュの持つ盾が光を帯びる。それは彼女の"守る"という決意の表れ。
「はあぁぁぁぁっ!!」
極光が止む。守りの戦士の全力は確かに大事なものを守りきった。
「はぁはぁ……私……」
「すごいよマシュ!アリスの攻撃を防ぎ切るなんて!」
「私……やれたんですか?」
「ええ、上出来よマシュ。今貴女はマスターを守るサーヴァントとしての役目を果たしたのよ。」
『すごいじゃないかマシュ!デミ・サーヴァントになってすぐなのにもうそんなに力を使いこなせるなんて!』
「パンパカパーン!マシュはレベルアップしました!」
「やるじゃねぇか嬢ちゃん。あれを止めるのは並の英雄にできることじゃねぇぞ」
マシュに駆け寄った藤丸達が祝いの言葉をかける。
「そういえばマシュ、あの技の名前って何?」
「それがまだ私の力になってくださった英霊の本領を発揮できていないので……名前もわからないんです」
申し訳なさそうにマシュが言う。
「なら所長、いい案とかないですか?」
「貴方が決めればいいんじゃないの?」
「えっと……俺あんまりネーミングセンスとかがなくて……」
どこかバツの悪そうにいう藤丸を見て、オルガマリーは少し悩んだ後マシュの方を見て言った。
「
『素直じゃないなぁ』
「貴方帰ったら覚えてなさいよ」
そんなやり取りを横目に藤丸とマシュは言葉を交わす。
「ロード・カルデアス……これが私の力……これがあれば先輩を守ることができます!」
「頼りにしてるよ、マシュ」
「はいっ!」
やり取りが一段落ついたところで藤丸達はキャスターの案内のもと、セイバーがいるという洞窟を目指すことになった。
道中でスケルトンやらアサシンやらに絡まれたものの、損害はほぼ皆無。マシュが守り、キャスターが誘導し、アリスがトドメの一撃を入れるという藤丸の考えた策と呼べるかも怪しいシンプルな作戦が功を奏したのである。
やがて一団は洞窟へと到着した。
そこで待ち構えていたのは長身の黒い影だった。
よく見るとその影は体を覆い隠すようになっており、時折見える肌は浅黒く、髪は白髪である。
「出やがったな、アーチャー」
「あれが貴方の言っていた?」
「ああ、セイバーのとこに行くなら十中八九いると思ってたが、やっぱりいやがった」
嫌悪感をにじませるキャスターに対して、あちらもやれやれといった風に口を開く。
「そうはいってもこちらとしてもやらねばならんのでね。立ち去ってくれるとありがたいのだが」
「オレに
「君ではない。そこのマスターに言っている」
藤丸の……この場で唯一のマスターの方を見据えるアーチャー。その目には、確かな殺意が宿っていた。
「見たところまだ成りたてだろう。楽に死にたいとは思わないのかい?戦場ではそうもいかないぞ」
「ちょっと貴方、藤丸のことを何だと思ってるのよ!」
自分のために憤ってくれるオルガマリーを見て、藤丸は心を落ち着かせる。
少し前の自分なら怯えていただろう。いや、性格には今も怖い。
それでも
今の自分には仲間がいる。
頼れる盾がいる。強い砲がいる。歴戦の魔術師がいる。自分のことを思ってくれる所長がいる。
だか藤丸は啖呵を切った。この勝負に勝つために。
「楽に死ぬ気はないさ。お前に勝てばいいだけだしな」
「私に勝つ、か。なめられたものだな。では、やってみるがいい!」
そう言い放ってアーチャーは動く。手に双剣を持ち、マスターを目掛けて走る。
それをよしとしない者達もまた動き出した。
「なかなかカッコいいこと言うじゃねぇか、ボウズ!なら俺も気張らねぇとな!アンサズ!」
アーチャーに向けて灼熱の火の玉が射出される。
それを躱し、時には斬り落とすアーチャーの頭上に影が覆い被さる。
「マシュ、いきます!」
その手に持った大質量を、落下の勢いのまま叩きつける。それをバックステップで躱したアーチャーに、勇者の砲口が向けられた。
「光よ!」
それを今度は上に跳んで回避すると同時に、先程まで持っていなかった洋弓に矢代わりの剣を番えて射る。
「マシュ!アリス!」
「はい、マスター!」
「魔力充電30%、いきます!」
それを防ぐと同時にアリスが再び砲口を向ける。ただし、さっきと違うのは敵が空中にいること。空中で大きく動く方法などないだろうと一瞬気を緩めてしまった藤丸だが、それをキャスターが叱咤する。
「まだ終わりじゃねぇぞ!」
その言葉通り、アーチャーは僅かなチャージの隙を突き剣を軽く投擲、その剣を爆破させてその余波で光線を紙一重で躱す。
「今のはなかなかに危うかったな」
「ちっ、そう思うならあそこで死んどけよ」
さっきのアサシンには通用したパターンが破られた。2度目はおそらくだめだろう。
そう思考を加速させる藤丸。
(あれならいけるかも…!)
得たひらめきを思考伝達で共有する。
「来ないのならこちらから行くぞ――
アーチャーが自身の投影魔術にて刀身の捻じれた剣を生み出す。
その正体に咄嗟に気づいたキャスターが叫んだ。
「おい!ありゃやばいぞ!」
それを矢として番え、射る。
「
かのケルトの英雄の持つ魔剣は
「マシュ、宝具を!」
「はい!――真名、偽装登録――行けます!」
「
盾に張られた光輝く結界が空間すら破壊する魔剣を止める。
その守りは最後に行われた
「よくやった!盾の嬢ちゃん!今度はこっちの番だぜ、アンサズ!」
爆炎が今度はアーチャーではなくその周囲の地面に向かい爆ぜ、土煙を上げる。
(目くらましか。ということは本命は……大砲を持つ少女!)
手に持った剣を爆破させ、視界を開く。しかしその時にはもうアリスが目の前に迫っていた。
(まずいっ!しかし溜めの隙を突けばまだ脱出は……くっ!)
アリスによる高威力の射撃を警戒するアーチャーだったが、アリスによって振るわれたのはその手に持った
吹き飛ばされるアーチャー。その隙を狙って今度はキャスターが宝具を発動させる。
「焼き尽くせ、木々の巨人。炎の檻となりて――
そこに現れしは炎の巨人。その身を燃やす巨人は眼前の敵めがけて歩み寄る。そして
「――――――――!!」
アーチャーを踏みつぶし自らを檻として閉じ込める。
「アリス!」
「魔力充電50%、光よ!」
そこに追撃として光線を叩き込む。
(……ああ、これで今回の仕事は終わりか)
こうして藤丸達はアーチャーを倒すことに成功したのだった。
「よくやったわねみんな。体力や魔力の消耗も激しいでしょうし、少し休みましょう」
激戦を終えた藤丸達は所長の提案で少し休むことにした。
「そういえば、アーサー王ってどんなサーヴァントなの?」
藤丸がキャスターに尋ねる。自分がこれから戦う相手のことは知っておきたいのだ。
「そうだな、まず第一にアーサー王は女だ」
「え?女、ですか?」
マシュは疑問を浮かべる。といえば伝承上は男のはずだ。
「王として国を治めるには男として振る舞った方が都合がよかったんでしょ。不思議な話じゃないわ」
オルガマリーが見解を述べる。男尊女卑な魔術師的にも思うところがあったのだろう。
「まあそんな感じの理由があったんだろ。後はエクスカリバーを持ってたり、魔力放出ってスキルでロケットみたいにぶっ飛んできたり、直感で色々と見破ってきたりするんだが……あいつが言ってたことが気になるんだよなぁ」
そう、アーチャーが消える間際にこう残したのだ。ここにいるセイバーは君が知っているものと違う、と。キャスターはその言葉が気にかかっていた。
一方藤丸も、同じくアーサー王について考えていることがあった。彼はアーサー王の要素を持つキャラを知っていたのだ。
普段であれば考えなくてもいいことだ。しかし、アリスという前例がいる以上、その存在を考慮しなければならない。
といっても馬鹿げた話には違いないので誰かに話したりもしないわけだが。
『バイタル正常値を確認。みんな、調子はどう?』
カルデアのドクターたるロマニが彼らに問う。
「問題ありません。先輩はいかがですか?」
「俺も問題ないよ。アリスとキャスターは?」
「アリスはHP,MPともに全回復です!」
「オレも問題ねぇよ」
「それでは改めて任務の確認よ。アーサー王を倒し、この特異点を修復する。そのためには貴方の力が必要よ、マスター藤丸。覚悟はいい?」
「はい。覚悟ならできてます」
「そう、なら問題ないわね。さあ、皆でカルデアに帰りましょう!」
「「はいっ!」」
こうして彼らは戦場へと赴く。
そこに彼女はいた。
水色と紫色の入り混じった髪色に、手にはなぜか傷だらけのアメリカのショットガン・DP-12を持っている。
表情は暗いものの確かな敵意に染まっており、頭上にはボロボロに砕けた星形の輪が浮かんでいる。
藤丸は彼女を見て、一目でその正体に気づいてしまった。
(あれ宇沢レイサじゃん!しかもなんかテラー化してるっぽいし、どうなってんの!?)
そう、彼女の名は宇沢レイサ。正確には
「あれがアーサー王ですか?」
「まあオレの知ってるのとは違うがアーチャーが言ってた以上あれもそうなんだろ」
「ええ、そうです。私こそがアーサー王の神秘を持つもの。そして……あなた達の敵です」
彼女から発せられる殺意が増す。
「さあ、私を超えてみてくださいよ。……できないでしょうけど」
「言ってくれるじゃねえか。お望み通りぶっ倒してやるよ!」
戦闘の火蓋を切ったのはキャスターの放ったルーン魔術だった。
「……効きませんよ、そんなもの」
それをレイサは剣を一振して無効化する。
「ちっ、対魔力か」
「アリスもいきます!光よ!」
今度はアリスが砲撃を行う。しかし
「遅いです」
「アリスさん!」
魔力放出によって超スピードで接近してきたレイサの一撃をマシュがかろうじて受け止める。
(まずい……レイサなら大丈夫だと一瞬思ったけど普通に強い…!)
今の攻防を見た藤丸は思った以上の強さに驚愕する。
キャスターの魔術は対魔力で無効化ないし軽減され、アリスの砲撃は隙を作らなければまともに当たらず、マシュはそもそも防御メインで攻め手に欠ける。
(高速アタッカーみたいなのがいれば話は別だけど今のパーティーじゃまずい……せめて宝具を撃ってくれたら……)
この現状を打破すべく、藤丸は指揮を取る。
「アリスとキャスターは前に出て近接戦メインで!」
「はい!"ガンガンいこうぜ"ですね!」
「おうよ!」
2人の英霊は前に出る。1人はその銃身を振り回し、1人は杖を槍のように用いて、レイサに詰め寄る。
「クラスに合わない特攻……あなた達ももこの程度ですか」
それらを相手にショットガンを巧みに操り斬り結びながら、呆れたようにため息をつく。所詮はこんなものか……と。
「それはどうかな!キャスター!」
「おらっ!これでどうだ!」
レイサの足元の地面が隆起し、足を絡めにかかる。しかしそれを直感で読んでいた彼女はそれを躱し、続いて襲い来る銃身をそれを踏み越えることで避ける。そこに
「今です!」
巨大な盾が飛来した。マシュが獲物を投擲したのだ。
(自らの守りを捨てる指示を?……少しはやりますね。でもっ!)
攻撃を食らい落下する自身に向けた射撃を同じく射撃で相殺する。
「……訂正します。少しはやりますね……いいでしょう…何が狙いか知りませんが……私の宝具、見せてあげましょう」
レイサが手に持つショットガン――シューティング☆スターが仄暗い光を放つ。最も有名と言っても過言ではないアーサー王の代名詞たる宝具が解放される。
「『卑王鉄槌』、星は崩れ落ち、星屑となる…!
全て呑み込め!
放たれるのは仄暗き極光。その実態は光に変換・増幅された魔力の塊。大いなる光が全てを呑み込もうと藤丸達に迫りくる。
「今だマシュ!アリス!」
「「はい!」」
「宝具、行きます――
マシュの宝具がかろうじてその光を受け止める。そこにアリスは重ねて宝具を発動させる。
「この光は収束し、あらゆる闇を討ち滅ぼす!この光に意思を込めて、貫け!バランス崩壊!
放たれたマシュとの戦闘の時よりも細く鋭い光は暗闇の中を切り裂くように進み、レイサのもとへとたどり着く。
勇者の放つその光は騎士王の持つ聖剣を弾き飛ばした。
(……くっ、武器を弾かれましたか。しかし、まだ取りに行く時間くらいは「取りには行かせねぇぞ、とっておきをくれてやる――
――
事前に詠唱していたキャスターの宝具が、燃え盛る人形の檻がレイサを閉じ込める。自身の肉体を焼かれるのを感じながら、彼女は次の攻撃に備える。
(しかし、この宝具では私を倒し切ることはできない。となればあちらの本命は……っ)
「令呪をもって命ず!セイバー!魔力を充電せよ!」
「はい!魔力充電……100%――必殺技連発します!
――光よ!!」
再び放たれた極太の光線がレイサへ向かう。それに対し彼女は魔力を全力で放出することで抵抗を図る。
しかし、いちスキルと宝具のぶつかり合い。その結果は明確であった。
薄水色の光が炎の中から噴き出る暗がりを押しのけ、騎士王を撃ち抜いた。
「……やった、の?」
ともすればフラグになりそうな言葉を口にする藤丸。それに応える声が響く。
「……ええ、あなた達の勝利です。あなた達の力は、連携は、この私を上回りました」
そう言うと、レイサはその仮初の肉体を光の欠片へと変えながら消えていく。
(……これで良かったんでしょうか、キャスパリーグ……杏山カズサ……)
その姿を最後まで見送ってから、藤丸は口を開いた。
「や、やったあ!俺達、勝ったんだ!みんなのおかげだよ!」
それを皮切りに、仲間達も喜びの声を上げる。
「敵生態生命反応なし、やりました先輩!」
「パンパカパーン!アリスたちは戦闘に勝利しました!」
「終わったか……なかなか悪くない戦いだったぜ」
「よくやったわ、皆!任務完了よ!」
「あれ、キャスター、体が……」
藤丸がふとキャスターの方を見ると、先程倒した彼女のように体が消えかかっていた。
「特異点が修復されたからな。オレの仕事も終わりってことだ」
「……そっか、ありがとね、キャスター……クー・フーリン」
「はいっ、大変お世話になりました!」
「ははっ、そんな顔すんなよ。まあそうだな、礼がしたいってんなら次会うときはランサーとして喚んでくれよな」
そう言い残すとキャスターは消滅した。
「さて、聖杯も回収したし、カルデアに帰るわよ」
そうオルガマリーが号令を出したその時だった。
「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容さの許容外だ。48人目のマスター適正者。全く見込みのない子供だからと、善意で見逃してあげた私の失態だよ」
そう言って現れたのはモスグリーンのシルクハットとタキシードを身にまとう、紳士然とした男。
アリスを除く彼らはその名を知っていた。
「あれは――レフ教授!?」
『レフ教授だって!?彼がそこにいるのかい!?』
カルデア内での爆発で死んだと思われていた彼が生きているという事実に困惑する者達に、
「その声はロマニ君かな?せっかく管制室に来るように伝えたのにまったく――」
「どいつもこいつも統制のとれないクズばかりで、吐き気がとまらないな。人間というのはどうしてこう、定められた運命からズレたがるんだい?」
彼はこう言い放った。
「マスター、下がってください!あれは……我々の知るレフ教授ではありません!」
この時点でなんかもう嫌な予感が止まらなかった藤丸や明らかにおかしいことに気づいたマシュをよそに、オルガマリーは安堵の表情を浮かべながら彼の下へ歩み寄る。
「レフ……ああレフ、生きていたのね……!私一人でも頑張ったのよ?頑張って特異点を修復したのよ?ねえ、レフ……!」
「所長、いけません!」
マシュの警告も耳に入らない様子でオルガマリーはレフと話し始める。
「やあ、オルガ。君も大変だったようだね」
「ええそうよ!何故かカルデアは爆発するし廃墟に飛ばされるしカルデアには帰れないし!」
「でもあなたがいればもう安心よね?いつもどうり助けてくれるんでしょ?」
「ああもちろんだとも。予想外のことばかりで頭にくる」
レフはオルガマリーに寄り添うように
「その中で最も予想外なのが君だよ。まさか爆弾を君の足元に設置したのに生きているなんて」
最悪の事実を述べた。
(爆弾を設置した!?てことはあの爆発の犯人って……)
「え?……れ、レフそれはいったいどういう意味?」
「いや、生きているというのは違うな。君はもう死んでいる。肉体の方はね」
そしてさらに最悪を超えて絶望的な内容を話し始める。
「トリスメギストスはご丁寧にも残留思念となった君を転移させてしまったんだ。だからカルデアにも戻れない。戻ったら君の意識は消滅してしまうからね」
「え……?嘘よ……消滅?私はカルデアに帰れない?そんな……そんなこと……」
オルガマリーが事実の暴力に押しつぶされそうになっている中、レフがゲートを開いて今のカルデアを映し出した。
そこには真っ赤に燃える地球儀――カルデアスが映っていた。
こんなものは虚像であると言うオルガマリーにこれは真実だとレフが告げる。これがお前たちの愚行の末路であると。
藤丸にその意味は読み取れないが、オルガマリーの焦燥具合からしてろくなことが起こっていないと悟る。
「良かったねぇマリー?、君のいたらなさが悲劇を呼び起こしたわけだ」
「わたしの責任じゃない、わたしは失敗していない、わたしは死んでなんかない……!あんた、どこの誰なの?!わたしのカルデアスに何をしたっていうの?!」
「アレは君の、ではない。まったく、最期まで小娘だったなぁ、君は」
レフがそういい放つとオルガマリーの体が宙に浮き、カルデアスの方に近づいていく。
「ただ殺すのでは芸がないのでね。最期に
「……嘘、でしょ?だってカルデアスよ?高密度の情報体よ?次元が異なる領域なのよ?」
「ああ、ブラックホールと変わらない。それとも太陽かな。まあどちらにせよ、生きたまま分子レベルに分解される、無限の死を味わいたまえ」
それは無慈悲な処刑であった。高飛車で、依存対象以外の誰かに頼ることが出来なかった、誰かに認められたかった彼女の物語はここで終わる――
「いや……いやっ!助けて、誰か助けて!まだわたし、死にたくない!」
――はずだった。
「アリスっ!」
だがしかしその運命は、この場に人並みの善性ととあるゲームの知識を持つ少年がいたことで変わりだす。
「ケイが入ってたロボットのキーホルダーって持ってる?」
「はい、持ってますけどなぜ今急に……」
「それがあれば所長を助けられるかもしれない」
その少年は”希望の未来”を提示する。誰かが泣いてしまうような、暗くて憂鬱なお話を否定するために。
藤丸はずっと頭を動かし続けていた。オルガマリーを救うために。
(今ここで所長を助けても、肉体がない所長をカルデアに帰すことができない……!考えろ考えろ考えろ……精神だけになった所長をどうにかする方法を……!)
(精神……情報……データ……データ?……アリス……ケイ……あれなら!)
そこに浮かんだのはブルアカ最終章とデカグラマトン編の記憶。いろいろあってわずかなデータだけになってしまったキャラ、ケイは自身のデータを入れた器を用いて後に復活した。
そして話は変わるが、サーヴァントには”逸話の再現”という一種の仕様というべきものがある。簡単に言えば、生前に起きたことをそのままなぞればその通りの結果が起こせるというものである。
藤丸は、この二つの事象を組み合わせることによって所長を救おうと考えた。
「所長!これを!」
アリスが人外の膂力を持ってUSBメモリの入ったキーホルダーを投擲する。それは腰の辺りまでカルデアスに呑まれているオルガマリーの手に届いた。
「それに自分を込めてください!」
「はあ!?」
恐怖で錯乱していたオルガマリーも思わず聞き返してしまうほどの意味不明なお願い。彼女の死に様を嘲笑っていたレフも疑問を浮かべている。
「所長ならできます!」
それでもなお彼は叫ぶ。
「俺なんかより色んなことを知っていて、頭も良くて、魔術も使える所長ならきっとできるから!」
それしか彼に彼女を救う術はないのだから。
「だから所長……死なないでください!」
彼の心からの言葉は、確かに彼女の中に届いた。
「……そうよ……まだ死ねないわ……」
目に生きる気力が 蘇る。まだ動かせる上半身を使って今できることをなす。
「だって……だってわたしを認めてくれた人の前で無様に死にたくない!」
自分を込める、正直何をすればいいかわかっていないが、自分なりの方法でやってみる。
魔力を込める要領で自分の全てを込める。焦りも、不安も、思い出も、苦痛も、死にたくないという思いも。
そんな努力を重ねるオルガマリーを見てレフは嗤う。
「彼女をその中に入れて持ち帰る、などというつもりか?そんなことをしても無駄だ。精々残滓とも呼べぬ一粒の何かが入り込むだけ、復元など不可能だ!」
データを器に入れること自体はできる。その確証が取れた藤丸は笑って答える。
「感謝するよ、レフ教授。一番知りたかった答えを教えてくれてさっ!」
やがてオルガマリーが消滅した後には、彼女が祈りを捧げ続けたキーホルダーだけが残った。
「さて、茶番もすんだことだしことだし、改めて自己紹介でもしようか。私はレフ・ライノール・フラウロス」
彼、レフ教授改めフラウロスが言うには未来は、人理は焼却されたという。これから先の時代はもう存在しないのだと、我らが王の寵愛を失ったがゆえにこうなるのだと、カルデアもこのままでは消滅すると。
それだけを言い張ると彼はこの特異点から姿を消し、そしてこの特異点は崩壊した。
特異点から戻って来た藤丸はロマニやマシュと合流し話を聞いた。要約すると、世界を救うために7つの特異点を修復しなければならないといけないということだった。そしてそれを成せるのが自分しかいないことも。
「その覚悟はあるかい?君にカルデアの、人類を背負う力はあるか?」
「俺一人なら無理だと思います。でもマシュが……みんながいてくれるなら、俺はやり遂げて見せます!」
世界を救うという宣言を行う。その顔は覚悟で染まっていた。
「ところで例のキーホルダーって回収しましたか?」
「ああ、回収したけど……あれでどうにかなるのかい?」
「後は大容量の機材さえあればなんとかなる……と思います」
「先輩?!どことなく不安そうなのが気になるんですが?!」
どこか確証のない表情で曖昧に笑う。本人もあの時はどうにかなる可能性を信じるしかなかったわけで……少し落ち着くと不安になってくる。
「というかそもそもどうしてああいう案をだしたんだい?僕にはさっぱりわからないんだけど」
「えっとそれは……話しますけど、嗤わないでくださいね……」
そして彼は話し出す。遥か遠く、透き通った世界の記録を。
そして物語は動き出す。青春譚と人理を救う旅路が交差するとき、新たなるストーリーがはじまる。
藤丸立香
ブルアカユーザーな主人公
プレ先のカードは残しておく派
オルガマリー・アニムスフィア
カルデアの所長
この後電脳生命体として復活した
体が作られるのを待機中
ロマニ・アーキマン
カルデアの心優しきドクター
本編に比べて仕事が少し減る……かもしれない
マシュ・キリエライト
みんな大好き後輩
純粋なので多分キヴォトスに来てもやっていける
ご覧いただきありがとうございます
誤字脱字・キャラ崩壊等ありましたらお知らせください
最後に感想・高評価いただけるとバカみたいに喜びます
ちなみにここからの案が何もないので誰か続き書いてください