朝倉さくら。
職業兼業小説家。
そんな私は小説家となって始めたことがある。
「よし。ドライブに行こう!」
ドライブである。
着替えと仕事用のノートパソコンを鞄につめて軽自動車で家を出る。
まずは近くのドラックストアにて水を購入。
車にはシガーソケット対応のポッドが積んであるので、コーヒーやカップ麺はこれで食べられるのだ。
そんな準備を終えたら一路九州道を南へ。
九州道を南に下り鳥栖ジャンクションから大分道へ。
この道が私のホームグラウンドである。
三車線に常に車があふれている九州道に比べて大分道は格段に車が減る。
自分のペースでお気に入りの音楽をかけながら車を走らせる。
「しっかし熱いわねー」
7月初めというのに九州は真夏日である。
車のエアコンがきかずに、買った水を水分補給としてはやくも飲む羽目に。
生ぬるい水を飲みながら車を走らせる。
九州道から大分道へ流れる場合、福岡都市圏から筑後平野、大分県に入ると山岳地帯へと景色を変えてゆくのがいい。
この道もかつては日田までしか届かず、大分県を高速道路が網羅する事をリアルタイムで眺めていた私からするといろいろと過去と思い出してたのしい。
山田SAのスタンドで給油とタイヤチェック。
高速を走る際には必ずチェックをするのだが、今日は忘れたのでここで確認である。
問題なし。かくしてさらに車を走らせる。
大分道の大分県側は山の畝を縫うように高速が走っているので標高が高く、やっとエアコンが涼しい空気を吐き出してくれる。
目的地は別府。
温泉にのんびりつかりつつ、冷麺を食べようかという気分である。
「こういう事ができるなんて思いもしなかったわ」
そんな事を運転中につぶやく。
小説家になって、何が変わったかというとお金の使い方。
人生すべてがネタになるのならば、お金を払うという事はネタを買う事と思うようになった。
昔は半額弁当を購入していた夜職の私が、平然と寄り道をして有名なレストランに寄り道するのもネタのため。
ネタにつながらなくても、こういう事を続けないとネタというのは目の前に来てくれない。
それを私は小説家になる前に、己に降りかかった奇跡として知っている。
「ステーキ定食お願いします」
遅い昼食は力を入れるためにこのお店の名物であるステーキ定食を頼む。
料理ができるまで、ノートパソコンを開いて原稿を書く。
こいつがなければ私は仕事ができないのだ。
タブレットやスマホで原稿を書くにはめんどくさく、原稿用紙とペンで原稿を書くには漢字を忘れ過ぎていた。
「お待たせしました」
という訳でいただきます。
……肉がやわらけー。そりゃ、2500円もする訳だわ。
かつて、私が愛用していた定食屋の980円のステーキ定食とか間違いなく違う。
その店も昨今の物価高で値上げして1200円になったとかなんとか。
「ごちそうさまでした。
領収書いただけますか?」
もちろん経費にする気満々である。
エネルギーも回復したので車を走らせて再度大分道を南下させる。
日田から天瀬高塚、玖珠、九重、湯布院と車を走らせると、このドライブ一番の楽しみである由布岳越えが待っている。
湯布院盆地を駆け下りて、そのまま一気に駆け上がるジェットコースターみたいなパノラマに私は思わず車内で叫ぶ。
「いやっほーーーーーーーーーーい!
これを味わいたかったのよ!!!」
もちろん軽自動車なので出しても時速100キロぐらいまで。
速い車たちが私の軽自動車を軽々と追い抜いてゆくが、今の私は青空と由布岳と高速の風を感じているのだ。
この大分道の最高高度がここで、海抜734メートルにもなる。
という訳で、由布岳パーキングエリアに到着。
ここの海抜は625メートル。
一般的に、標高が100メートル上がると0.6度下がるので、3度から4度下がっている訳で車を降りると明らかに空気が違う。
「うん。夏はやっぱり高原よねー」
知り合いの小説家天野はるかが高原のホテルで優雅なリセットをしていたので、うらやまし……げふんげふん。
という訳で、突発的にやってきたのである。
シガーソケットで沸かせるポッドに水を入れてお湯を沸かすと、インスタントコーヒーを入れて味わう。
ああ。世界はこんなにも広い。
ああ。世の中にはこんなにも物語があふれている。
思いついたことをノートパソコンでつづる。
高速は比較的電波が良いのもありがたい。
ネットがつながるから、作業は比較的楽に捗る。
「あ。夕方か。さて、宿を探すか……」
行き当たりばったりだが、観光地の別府だからこそなんとか宿がとれた。
のんびりと車を走らせて、ひとっ風呂という前に別府湾サービスエリアへ。
「やっぱりここの眺めは格別よねー」
大分市や別府市が一望でき、茜色の空から夜景に移り変わるのを堪能した後で温泉を堪能。
夕食に冷麺をすすりながら、宿についたら本格的に清書して投稿する。
投稿終了。
ついでにSNSで告知と。
朝倉さくらは小説家である。
こんな私がエンジョイリセットを始めたのは、天野はるかのせいである。
ありがとう。
こんなにも世界はネタに満ちている。
さくら「という訳で人格排泄ゼリー官能小説を……」
はるか「だからあんたは官能小説でデビューできないのよ!おばか!!」