朝倉さくらの縁ジョイリセットデイズ   作:北部九州在住

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ド修羅場に本を送ってくれた人の話をしよう

「駄目よ……これ郵政解散並みの無党派の大波が来る……」

 

「イランの状況が分からない……ここが動かないと話が作れない……」

 

「議員がまとめて支持者全部ぶった切ったんですけどぉぉぉぉぉぉ!!!

 沖縄と反原発見捨てたってマ?????」

 

 何をとち狂ったのか現代社会で悪役令嬢ものを書いて小説家デビューしたわたくし朝倉さくら。

 絶賛政局脳シフトなのだが、二月に小説8巻とコミカライズ4巻が出るのでそちらの作業も追われていたりする。

 もちろん小説を書いているだけで生活できる訳もなく、

 

「電灯が壊れたぁぁぁぁ!修理呼ばないと……」

 

「車検が来月だけど、車は廃車して実家の使っていない車を陸送して名義変更と手続きを……」

 

「確定申告用に領収書を税理士さんに送って……」

 

「あああああ……頭が回らないから甘い物食べ過ぎたらあすけんのおねーさんが悲しそうな目でみてるぅぅぅぅぅ!!!」

 

「本が多すぎて部屋の掃除が終わらないんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

ぴんぽーん♪

 

 

 何よ頃忙しい時に荷物ってと受け取ったら見覚えのない荷物。

 ん? 何か頼んだっけと宛名を見ると月ノ瀬観音先生からだった。

 ああ。そういえば、本が出るとSNSで呟かれていたなという事で、ちと中をめくるとサイン付きだった。

 とりあえず、お礼を呟いてさてお返事と考えたが、読んで本の感想をというのが王道。

 とはいえ、現在ド修羅場中でお礼を言う時間を遅らせるのもよろしくないので、月ノ瀬観音先生の別の本の話を交えながら速攻でお礼を送る事にする。

 何しろ蒲田の食事の席で、

 

「2000字ぐらいなら即興で書けるわ」

 

なんて大見えを切った私。

 守らねばというか、支持者ぶった切った議員たちの大炎上をSNSで眺めているのだから己の吐いた唾は飲み込めないという訳で、この原稿を仕上げている。

 

 

 

 ちなみに、月ノ瀬観音先生には実は当人の知らぬ所で恩があったりする。

 私も小説家を名乗る身ゆえ、小説を見てアドバイスをしてほしいという相談が来たのだ。美味しいお寿司と天ぷらご馳走様でした。

 で、そのアドバイスに際して、問答無用で押し付けたというか「買え」と言い切ったのが月ノ瀬観音先生の『世界観を創る クリエイターのための設定・考証入門』である。

 重版決まったそうで羨ましいぞこんちくしょう……おっと話がそれた。

 

「悪いこと言わないから、この本買いなさい!

 地図を作るというのは、作者側においての情報整理でもあるの」

 

「情報整理?」

 

 その話は、飛ばされたパーティーが故郷に帰る話だった。

 話の起承転結も問題がないけど、私がとにかく気にしたの地図だったのである。

 

「地図?」

 

 依頼者が首をかしげる所、私はテーブルの上に端を一本置いた。

 これが地図の代わりである。

 

「ここからここに行く。

 これを視覚化するだけで作者にとっては物語が生まれるわ。

 じゃあ、ここに山を作るわね」

 

 その橋の上におしぼりを置く。これで山ができたわけだ。

 依頼者の納得した目を確認しながら私は話を続けてゆく。

 

「道の途中に山がある。登る? 迂回する?

 ほら、物語が生えた」

 

 ここまでなら、私でも本を使わずに説明できただろう。

 この本の真骨頂はその地図、地形に情報という色をつけて作者に物語世界を可視化してゆく所にある。

 

「更に情報を足してゆくわね。

 この山はどれぐらいの高さかしら?

 高いなら山頂部に雪が残っているかもね?

 その上で、四季ってどうなっているかな?」

 

 これは私の実体験だが、山形県酒田の取材で6月にも関わらず、鳥海山山頂には雪が残っていた。

 北部九州の山々だと昨今の暑さで雪はほぼ見る事はできない。

 私は更に話を続ける。

 

「ある程度の高さの山は雲がぶつかるから雨が降るわ。

 という事は川が流れる。

 川が流れるという事は、その川を渡るという物語ができる。

 こうやって世界を、作者という神は作ってゆく訳」

 

 いや本当にこの依頼楽だった。

 ぶっちゃけ『世界観を創る クリエイターのための設定・考証入門』の紹介とその活用方法を語るだけで、美味しいお寿司と天ぷらをご馳走になったのである。

 私が小説講座を受けるなら、遠慮なく観音先生のこの本を片手におしゃべりするだけでできると確信できるほどこの本はいいのだ。

 その上で、今日頂いた本を取り急ぎパラパラと。

 

「……ですよねー♪」

 

 素直に感心するのが、昨今のラノベ枠なのにちゃんと戦況が分かる図が書かれている所。

 これがあるのとないので、読者の情報認識が格段に違うのだ。

 更に芸が細かいのがラノベらしく、キャラの顔が描かれており、その顔に喜怒哀楽がついてどんな感じなのか分かる所が本当にすばらしい。

 個人的に大好きなのは、図にするのも微妙な図を「凸」で表記するあたり。

 ああ。この人は読者が戦況を読み込みやすいように苦心しているんだなと感心するしかない。

 という感じで2000字程度の原稿もできたので、投稿しつつお礼を改めて告げる事にしよう。

 いい息抜きになったし、このあたりさすが天野はるかの師匠だなと感心しながら、私は投稿ボタンを押した。

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