知り合いの小説家天野はるかが枕にこだわりだしたと聞いて、私もと思ったが実は彼女より前に枕については良いものに手を出していたりする。
そのあたりも含めて、今日は夜の睡眠の話にしようと思う。
私が夜の仕事を公言しているのは理由があって、低血圧でとにかく朝起きれなかったというのがある。
この時点で人様と違う人生を歩む事を迫られ、最初は昼出勤のネットカフェや家電店で働いていたりするのだが、就職氷河期の真っ只中ただでさえ少ない椅子を争うつもりもなく、流れ流れて夜嬢としての生活へ。
酒も煙草もしない身のせいか、体調不良の原因はほぼ間違いなく睡眠時間の逆転に合った。一時期12時間勤務20日とかやっていたのだから、そりゃ体壊すよなーと今だからこそ思ったり。
で、そういう生活で持病と言っていい睡眠障害を抱え込むことになる。
片頭痛に体調不良、その時の生活のせいか強い栄養ドリンクを飲むと体が拒否反応を示したりと結構苦労する羽目になり、結局整骨院経由で医者の世話になる事に。
これも笑い話なのだが、元々整骨院に行ったのは腱鞘炎のせいだったのだ。
原稿をパソコンで書き、マウスを動かしていた右手親指と人差し指の間が痛いという事で開院したてのサービス期間にものは試しと行ってみたら、あれよあれよと出るわ体の不都合な真実が。
「これ、指の腱鞘炎よりも肩こりの方がひどいですよ。
片頭痛とか起きていませんか?」
本当にこの整骨院の先生の言葉は運命だったと思う。
それまでの私は、片頭痛を頭痛と判断し風邪として病院に行っていたのだから。
頭痛で吐き気がするので吐き気止めのナウゼリンとあとは風邪薬(鎮痛作用あり)をもらっておしまいの病気が、まさか肩こりや腱鞘炎と繋がるなんて普通の人は分かる訳もなく。
で、ここで普通の人ならば「そーですかー」と流しながらそのままにする処だが、夜職で時間だけはあった私は、何かのネタになるかーという事で片頭痛対策という事で脳神経外科へ。
MRIなるもので頭の中を輪切りにされつつ、ここで睡眠障害というものをはっきりと意識したのである。
睡眠が原因の片頭痛というのは、実は種類が二つある。
寝過ぎと睡眠不足の二つでどっちも悪いというのだから人の体というのものは上手くできていると感心したものである。
何でこんなことになるかというと血管が問題で、寝過ぎると血管が広がって脳神経を圧迫するケースと、その逆で血管が収縮して血の巡りが悪くなって炎症を起こすケースがある。
一般的に片頭痛と呼ばれるのは最初のケースで、後者は緊張型頭痛なんて呼ばれたりもする。
で、その説明を聞いた私なのだが、困った事に片頭痛なのか緊張型頭痛なのか分からなかったのである。
お医者さん曰く、
「あなたの場合原因が多すぎるんですよ。
まずは、薬を飲んで状況を改善しつつ、どちらの頭痛か判断しましょう。
あと、睡眠時間を何時間取っているか記録をつけてくださいね」
と言って渡されたのが頭痛ダイアリーである。
で、月一の診察時にこのダイアリーを見つつチェック。
薬で片頭痛を抑えつつ整骨院に通いつつ一年ばかりか。
小説家になって、お金に不自由しなくなったあたりで夜嬢の仕事を減らしだしたとたんに片頭痛の回数が減りだしたのである。
記録は雄弁に物語る。
夜嬢の時の睡眠時間は昼夜逆転もあってか、酷い時は五時間を切っていた。
それが、記録をつけだして、昼寝や二度寝も駆使してなんとか七時間を確保しだした瞬間と一致したのだから。
「あー。寝ないと死ぬんだな」
当たり前のことを当たり前に悟り、ようやく枕の話に入る。
それまでは睡眠の質なんて気にする事もなく、ディスカウントストアの980円の枕を使っていたのだが、肩こりを軽減し、良い眠りを約束しますなんて言われたらそれは買うしかないでしょう。
我が人生で、行く事なんてなかった寝具店にやってきて、これこれこういう事でこういう枕をと言えば、じゃあこれですねと勧めてくれた枕で寝る事……どうなのだろうか?
とはいえ、睡眠時間は七時間を維持しており、整骨院や整形外科に行く事もなくなるぐらい片頭痛が減ったのだから意義はあったのだろう。うん。
そして、ここまで改善してやっと己の片頭痛が片頭痛であると自覚できたのである。
なぜかというと、夜嬢生活で徹夜をするとその前後で睡眠負債を解消する為に寝貯めが発生するのだ。
結果七時間睡眠平均でそこだけ十時間とかになって片頭痛が発生というメカニズムがやっと自覚できることに。
「先生!片頭痛の理由がわかりました!!」
と笑顔で脳神経外科に行って嬉しそうに報告する私に先生はなんともいえない笑みを向けていたのだった。
という訳で、枕にまつわる話だが、前置きが長いって?
そりゃ枕の話だから枕が長いと。
おあとがよろしいようで。
なお、私が使っている枕はおよそ5000円ほどするのだが、現在は二代目である。
痛んだので初代を買った寝具店に同じのを買いに言った時の店員さんの言葉が強烈だった。
「この枕少し変わったんですよ」
「何が変わったんですか?」
「材質がぼろくなって、値段が上がりました」
SNSで紹介した所そこそこ受けて、その店は信頼できるからと長い付き合いをしようと決めたりするのはまた別の話。