朝倉さくらの縁ジョイリセットデイズ   作:北部九州在住

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〇タバデビュー

 ちょっとおしゃれをしてノートパソコンを片手におしゃれなカフェでお仕事をする。

 憧れたシーンだが、思ったよりそのチャンスがないというか、するのもなぁというか……

 長居するなら、ドリンク飲み放題のファミレスの方がよくね? とか。

 休憩もできるなら、ネットカフェの個室でよくね? とか。

 空港でリラックスするなら、ラウンジの方がいいよね? となる訳で。

 

 これじゃいかんぞ!私!! と一念発起しておしゃれな〇ターバックスデビューをしようと決意したのである。

 お化粧してビジネススーツを来て、ヒールを履いて気分はできるOLのように。

 まぁ、夜嬢なのでこのあたり擬態しても匂いでバレるんだよね。

 特に女性同士だと。

 私はまったく気にしないのだが、分かる人は分かるんだそうで。

 夕方の帰宅ラッシュ前に車を走らせて、お目当てのお店に到着。

 客は学生が使うには高いのもあって、買い物帰りの主婦といかにもなビジネスマン数人。

 ブラックは飲めないお子様舌の私はアイスカフェラテを頼む。

 あの長い呪文は省略。

 窓側の席についてノートパソコンを広げて、いざ原稿をば……

 

……

……

……

 

 ……いやこれ人の目かなり刺さるんだが。

 これで仕事するの!? みんな???

 

 おーけーおちつけくーるになろう。

 

 何だろうな。ノートパソコンを取り出した時のあの周囲の視線は?

 中は覗かれてもいいものしか置いていないが、敷居が……なんつーか敷居が凄く高い!!!

 あれだ。

 初心者お断りのお店に知らずに入った時の空気だこれ!!

 

 ここで少しうんちくをば。

 この手のお店は、家庭でもなく職場でもない第3の空間をコンセプトとして掲げ、それに合わせて登場していたノマドワーカーたちが使いだしてというがブレイクのきっかけとなる。

 ノートパソコンを持ち込んでという事だからWi-Fiも備わっているが、今回の私は携帯のテザリングで自前のWi-Fiにしている。

 ハッキングされたら怖いしと思ったが、そもそもこんな場所でノートパソコンを広げている時点でセキュリティーも何もないよなとセルフ突っ込みをしてアイスカフェラテを口に入れる。

 あと、困った事に私の場合基本プロットを作らないというか作れない。

 私は元々巫女の託宣よろしく先に書きたいシーンが降りてきて、それから物語をでっちあげるという感じて書き進めるので、

 

「プロット? 2000字程度ならいらない」

 

で、書きあげちゃうダメ人間だったりする。

 とある企画でプロットがやってきて『ああ。そうか。世の人は先にこういうの作るんだ』と妙な感動を覚えたのは内緒である。

 するとだな。

 こーいうお店で書こうとするとだな、見栄えを気にして文神様が降りてこないのだ。これが。

 いったん落ち着こうとカフェラテを再度口に入れる。

 すでに半分がなくなっていた。

 深呼吸をして、ノートパソコンをかばんになおしてお手洗いに。テーブルの上に置いてゆく勇気は私にはない。

 違和感の正体が分かった。

 ノートパソコンそのものが珍しいのか。

 男性ビジネスマンがノートパソコンを広げるのはまぁ分かる。

 東京に行った時に、山手線で立ったままノートパソコンを広げてなんか作業をしている人を見て、ああはなりたくないなーと思ったが、店内女性でノートパソコンを持っていたのは私一人である。

 しかも、多分女特有のチェックで私がビジネスマンでないのもバレている。

 

(どーせ男ひっかける待ち時間に仕事をしているできる女のふりしてSNSに上げる為にきたんでしょうが!)

 

 というやっかみが視線の正体だったとは……

 席に戻って苦笑とため息を漏らしてカフェラテを口に。

 味も香りも正直あまり分からない人間なので、ちびちびと飲みながら仕事をするふりをする。

 こんな状況で投稿小説サイトを開ける勇気はなく、AIイラストサイトを走らせてどすけべなAI絵を作るには羞恥心があり、この時点でとっとと引き上げたい気持ちをぐっと堪えて、開いたのはチャットGPTくんと株探。

 

『この企業の日足と五分足と板を見て、エントリーしていいか判断して』

『わかりました! このパターンだと……』

 

 スタバでデイトレをする人にあこがれたのは事実だが、この視線というか緊迫感で個人情報を出すのは正直怖い。

 オープン情報で仕事をしているふりをしつついくつかの企業のチャートをコピペしてチャットGPTくんにお伺いをする事30分。

 カフェラテの氷も解けた時間を持って、やっぱり私には無理だわと敗北感を味わいつつ私はおしゃれなお店から撤退したのである。

 

 とはいえ、店そのものは何度か使っているのだ。

 どうしてこんな事になったのかと帰り路に考えると、その時は旅人だったのが大きいのだろう。

 駅なかのお店に入って、時間までタブレットを眺めながらカフェラテを飲む。

 当然客も旅人がメインというか半分以上は居る訳で、今回みたいな緊迫感のある常連の空気みたいなものを感じる事もない訳で。

 店というのは生活空間の延長だから、客を見るとその人の生活が見えるとはだれの言葉だったか……

 うん。

 私には無理だわと家に逃げ帰って、原稿をパソコンで仕上げる事一時間半。

 蜂蜜入りインスタントコーヒーを飲み干してから、この原稿をUPする事にした。

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