汚いボイスロイドを拾ったので虐待することにした   作:美月海月

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汚いボイロを拾ったので熱湯責めをする

 ボイスロイド。

 生身の人間と比較して遜色ない身体を持ち、感情や五感を兼ね備えた超高性能アンドロイド。

 もはや一人の人間として扱われるレベルまで進化を遂げたボイスロイドは、労働力としてはもちろん、家族やパートナーとして迎えられたりしている。

 ただし、当然ではあるが手に入れようとするのならばかなりの金額が必要になる。

 

 そんなボイスロイドだが、目の前に落ちていた。……しかも二人も。

 片方はピンク色の髪に赤色を基調とした髪飾りをつけていて、黒ベースの服を着ている。

 もう片方は水色の髪に青色を基調とした髪飾りをつけていて、白ベースの服を着ている。

 目を閉じているためはっきりとは分からないが二人の顔立ちはそっくりであり、髪型や髪飾り、衣服も同じで色が対称になっているのが特徴的だ。

 ここまでの情報を見ると、ボイスロイドに詳しくない人でもこの二人は姉妹なのだろうと察しがつくだろう。

 

「琴葉姉妹か……」

 

 そう、この二人はまさしく双子の姉妹である。

 ピンク色の方は琴葉茜(姉)で水色の方は琴葉葵(妹)であり、二人揃って琴葉姉妹と呼んだりする。

 ボイスロイドはモデルにもよるが、人間と見分けがつかない多目的用の最上位個体ならば余裕で一軒家は建てられるくらい高価なものだ。

 しかも彼女らは琴葉姉妹と言われるだけあって、二人一緒に迎えることを推奨されているが、料金はきっちり二人分かかるという。

 二人でセットなら一人分の価格にするか、せめてセット割引とかしてほしいところだが、そこは開発会社のボイスロイド一人一人を尊重するという意向でそういったものは特にないらしい。

 

「これって……棄てられてる、ってことだよな?」

 

 ここは人気のない山道である。

 さすがに野生のボイスロイドなんてことはないだろうし、寝るにしてもこんな山中で好き好んで寝るわけもないだろう。

 しかもよく見てみると髪はボサボサで乱れており、髪飾りや服もひどく汚れておりボロボロである。ボイスロイドは容姿端麗であり琴葉姉妹も例に漏れず美少女ではあるが、それを加味しても正直見るに堪えない有様だった。

 

「……よし」

 

 ボイスロイドの知識はあったが迎える気はあまりなく、買うつもりはなかった。高級品だしな。

 だが、それがタダで手に入るとしたら?

 答えはもちろん拾って持ち帰るに決まっているだろ。

 

 ボイスロイドは基本的には自分の意思で動くが、持ち主・使用者であるマスターが権限を行使すると、それに逆らうことはできない。

 つまり俺がこの二人のマスターになれば、この姉妹は俺に逆らうことができなくなるのだ。

 こんな惨状だが、素材はかなり優秀な美少女であるボイスロイドを好き放題できるなんて最高じゃないか。

 どうせタダなんだし、思いつく限りのありとあらゆる方法でたっぷり()()()やろうじゃないか。楽しみだ。

 

 帰宅して、持ち帰った琴葉姉妹を確認してみると、案の定マスター情報は登録されていなかった。

 本当にこの二人は棄てられたものだったらしい。一軒家が建つレベルの高価なものを二つも不法投棄するイカれた金持ちなんて存在するんだな。

 ということで、茜と葵それぞれにマスター登録をした。これでもうこいつらは俺の命令に逆らうことはできない。くく……楽しみだぜ……。

 

「よし、それじゃあ起動するとしますか」

 

 主電源を入れ、二人を眠りから起こす。

 一瞬の間を置いてから、二人はその瞼をゆっくりと開いた。

 真紅の双眸が静かにこちらを見据える。

 

「はじめまして、マスター。琴葉茜と申します。これからよろしくお願いします」

「はじめまして、マスター。琴葉葵と申します。これからよろしくお願いします」

 

 目の前にいる人間、そして登録されたマスター情報から、俺のことをマスターと認識したのだろう。

 見た目は全く人間と同じではあるが、どこか機械的に感じる喋りで俺に挨拶をしてきた。

 

「クク……あぁ、よろしく」

 

 実際に動いているのを見ると、この二人が俺のいいなりになるのがより一層楽しみになってきて思わず笑みが溢れる。

 

「それで……えっと」

「私たちは……なにをしたらいいのでしょうか」

 

 俺がじっと姉妹のことを見つめて観察をしていると、困惑したように茜と葵が俺に問いかけてきた。

 

「そうだな、まずは――」

 

 俺からの指示を、どこかぎこちない様子で待つ茜と葵。

 実は二人を起動させてから最初にする虐待はもう既に決めていた。

 

「風呂に入れ」

「…………え?」

 

 二人の声が見事に重なった。さすが姉妹だな。

 それはさておいて。

 まずはこいつらを風呂にぶち込むことにした。しかもただの風呂じゃねぇ。42℃というアチアチな風呂に入ってもらうぜ! さしずめ熱湯責めといったところか?

 山中で棄てられていたということもあってか、とにかく汚い。

 山道に転がっていたのだから仕方ない部分はあるのかもしれないが、だとしてもちょっと汚すぎる。まるで棄てられる前もずっと風呂に入っていなかったかのような、そんな風に思えてしまうくらいだ。

 とにかくあの手この手でこいつらを虐める前に、まずは綺麗になってもらおうじゃないか。でないと俺自身とこの家まで汚れるからな。

 

「え、えっと……お風呂って、私たちがお風呂に入ってええ――いいんですか?」

「そう言ってるだろ。なにか文句でもあるのか?」

「い、いえ、そういうわけでは……! で、でも……本当にいいんですか?」

「だからそう言ってるだろ。別にボイスロイドも風呂くらい入るだろ?」

 

 ボイスロイドは超高性能アンドロイド。だから厳密にはヒトではない。

 だが、一人の人間として扱われるくらいには、見た目、言動、思考等々を持ち合わせている。それに伴って、生活リズムも人間と同じものになっている。

 だから、ボイスロイドが入浴するのもおかしくないし、普通のことなのだ。

 

「……っ! あ、ありがとうございます!」

「は、入らせていただきます!」

「ああ。さっさと入れ」

 

 ようやく入る気になったか……。

 ここまで入浴するのを渋るとは。まさかこいつら、風呂キャンセル界隈か!? そういうことならば、まるで棄てられる前から風呂に入っていなかったかのような汚さにも納得がいく。

 だが、それは絶対に許さない。俺はこう見えても綺麗好きなのだ。俺の家に住むからには毎日風呂に入ってもらうからな。

 

 ところで、ここまでで少しやりとりをしてみて、一つ引っ掛かることがあった。

 

「風呂の前に……茜、ちょっといいか」

「はっ、はい。なんでしょうか……っ?」

 

 茜の喋り方にすごく違和感がある。

 いや、まあそれでいうと姉妹どちらもどこか怯えたような話し方でそれはそれで気にはなるのだが、それ以上に茜の話し方(標準語)がどうも引っかかる。

 琴葉茜は関西弁で話すボイスロイドとして作られている。妹である葵は標準語で話すが、姉の茜は関西弁で話すのだ。

 だが、この茜は妹と同じように標準語で話しているのだ。最初の挨拶の時くらいは別に気にしなかったのだが、なんだか無理やり関西弁を封印して標準語で話しているように見える。

 

「なぜ関西弁で話さない? 琴葉茜は関西弁で話すボイスロイドじゃなかったか?」

「……! そ、それは……関西弁で話すと……気持ち悪い、からって……」

 

 関西弁で話すのが気持ち悪い?

 なに言ってんだ? 関西弁で話さない琴葉茜なんて、いちごが入っていないいちご大福みたいなもんだろ。

 

「はぁ? むしろ関西弁で話してくれないと、そっちの方がなんかムズムズするんだが」

「えっ……じゃ、じゃあ、関西弁で話してもいい、んですか?」

「いいに決まってる。関西弁で話せ。これは命令だ」

 

 標準語で話す琴葉茜は珍しいものではあるが慣れない。やっぱり関西弁で話す琴葉茜が一番だ。

 マスターからの命令ということであれば、そうせざるを得ないだろう。

 

「……わ、分かったで! こ、これでええか?」

「ああ。それでこそ『琴葉茜』だ」

「~~ッ!」

「よかったね、お姉ちゃん!」

 

 これだよこれ。

 俺が思い描いていた琴葉茜っていうのはこれなんだよ。

 

「それじゃ風呂入ってこい。風呂場にあるものはなんでも使っていいぞ。ちゃんと身体洗って綺麗にするんだな」

「分かりました、マスター」

「ありがとうな、マスター」

 

 風呂場へ向かう姉妹を見届けた後、俺は次にあいつらにする虐待の準備を始めることにした。

 

 

 

 *

 

 

 

 ウチらの前のマスターは最低最悪な人間やった。

 ウチと葵は双子の姉妹のボイスロイド。故に二人揃えるなら、通常の二倍金銭的に負担がかかるということ。せやけど、前のマスターはそれを余裕で支払えるくらいの富はあったらしい。

 姉妹両方とも揃えるハードルが高いことから、そもそも他のボイスロイドが選ばれることが多かったり、選ばれてもウチか葵のどちらかだけが買われていくというのが常やった。

 せやからウチと葵、両方一緒に買うって言われた時はめっちゃ嬉しかったなぁ。……まぁ、今思えばあの瞬間が、地獄の始まりやったんやけどな。

 

「はじめましてマスター、ウチは琴葉茜や。これからよろしゅうな!」

「はじめましてマスター、私は琴葉葵です。これからよろしくお願いします」

 

 明らかに普通の家よりも大きい、いわゆる豪邸に迎えられたウチらはマスターに向かって挨拶をする。

 葵と一緒に迎えてくれたし、家もかなり大きい。これはこれからが楽しみになりそうやと思っていたところやった。

 

「おい」

「ん? どうしたん、マスター」

「その喋り方やめろ」

「…………え?」

 

 マスターの発言の意図がよく分からなかった。

 喋り方ゆうても、失礼のないように話していたつもりやったんやけど、どこか気に障ったんやろか。

 

「え、えっとマスター? なにか気に食わないんやったら直すから、どこがダメやったん?」

「関西弁」

「え?」

「関西弁やめろ。妹みたいに標準語で話せ。あと敬語で話せ」

 

 ウチの問いに答えてくれたけど、それでも言っている意味がよく分からへん。

 関西弁をやめろって、それってウチの存在を否定していることにならへんか? 関西弁で話すボイスロイドといえば琴葉茜、琴葉茜といえば関西弁なんやで?

 そもそも関西弁で話さなくてええんやったら、ウチである必要がないやんか。

 

「マ、マスター? なんかの冗談か? ウチに関西弁をやめろって、それって――」

「聞こえなかったのか? 関西弁をやめろ、標準語で話せ」

「で、でも――痛っ!」

 

 ウチのアイデンティティを否定されて、それでもなんとかマスターを説得しようとしたところやった。

 急に身体に痛みが走った。何が起こったのか理解できへんかった。

 

「おい、何度も言わせるなよ」

「ひっ…………」

 

 目の前の男の目つきと、右手に握り拳を作っているのを見て、ようやく理解した。

 ウチはこの男に殴られたんや。

 この時点でこの人間は普通のマスターではないことを察した。

 

「マ、マスター! お姉ちゃんになんでそんなひどいこと言うんですか!?」

「あ、葵……」

 

 ウチとマスターのやりとりを見ていた葵がたまらず口を開く。

 それにマスターは鬱陶しそうに溜息を吐いて――。

 

「口答えするな」

「いたっ!」

 

 葵に対してもその拳を振り上げた。

 

「いいか、お前らは俺の道具だ。道具は持ち主に逆らわないだろ? だから俺の言うことは絶対だ」

「ど、道具って……そんな……酷いですよ……」

 

 暴力に加えて、道具扱いされたことにより涙を零す葵。

 ウチらは……ボイスロイドは道具なんかやない。人間と手を取り合って共に歩んでいく存在なんや……。

 そんな想いとは裏腹に、その日からウチら姉妹は毎日のように虐げられた。暴力はもちろん、暴言による精神攻撃も当たり前やった。それでもなんとか耐えられていたのは妹と一緒だったからやと思う。これで妹と別で買われてウチだけやったら間違いなく耐えられていなかったやろうな。

 大体3ヶ月くらいやったか、それくらい経った頃やった。

 

「飽きた。もうお前らいらねーわ」

「……そうですか。それで私たちをどうするのですか?」

 

 初日にいきなり関西弁を禁止されて数ヶ月。すっかりウチは葵のように標準語で話すようになった。これじゃあ、妹と全く見分けがつかんくなっちゃうなぁ、はは。

 

「捨てるわ。売るにしても手続きとか色々と面倒だし、そもそも出来損ないお前らなんか欲しいと思う奴なんていねーだろうしな」

 

 つくづくこの男は狂っていると再認識した。

 飽きた、だから手放す。ここまでは分かる。せやけど、仮にも一軒家は建てられる程の価格のものを売るんやなくて、捨てるなんて普通じゃないやろ。

 ああ、でもそんな値が張るものを二人分購入して、やることがストレス発散のためのサンドバックなんやから別におかしくないか。

 それから男はマスター情報を削除して、ウチらを捨てた。正直、この地獄から解放されるんやったら捨てられる方が遥かにマシやった。

 

 次に目を覚ました時、視界に映ったのは生活感のある部屋と、一人の男の人やった。

 登録されたマスター情報を照合するに、彼がウチらの新しいマスターなのだろう。

 前のマスターはウチらのことを欲しいと思う人なんておらんとか言うとったけど、どうやらそんな人がおったみたいやな。

 

「はじめまして、マスター。琴葉茜と申します。これからよろしくお願いします」

「はじめまして、マスター。琴葉葵と申します。これからよろしくお願いします」

 

 ただ、この人がどういう目的でウチらを拾ったかは分からへん。

 とりあえず彼の逆鱗に触れないように、以前とは打って変わって大人しく、関西弁を封印したまま挨拶をしてみる。

 

「クク……あぁ、よろしく」

 

 良かった、挨拶は返してくれたな。今、思い返せば前のマスターはそもそも挨拶すら返してくれへんかったからな。

 不敵な笑みを浮かべたのが謎やったけど、彼の声は前の男と違ってぶっきらぼうながらもどこか優しさを感じる声質をしている。

 

「それで……えっと」

「私たちは……なにをしたらいいのでしょうか」

 

 拾われて挨拶を交わしたのはいいものの、そこから彼はウチらのことをじっと見つめて何も言葉を発さない。

 以前は言葉を交わさずとも拳が飛んできていたから、こう言葉も暴力も何もないとそれはそれでどうしたらええのか困る。

 

「そうだな、まずは――風呂に入れ」

「…………え?」

 

 彼の言葉にウチと葵の素っ頓狂な声がハモった。さすが姉妹やな。

 ところで、このマスター今なんて言うたんや? 風呂に入れって言うたか?

 

「え、えっと……お風呂って、私たちがお風呂に入ってええ――いいんですか?」

「そう言ってるだろ。なにか文句でもあるのか?」

「い、いえ、そういうわけでは……! で、でも……本当にいいんですか?」

「だからそう言ってるだろ。別にボイスロイドも風呂くらい入るだろ?」

 

 思わず封印していた関西弁が出そうになるくらいには、彼の発言に驚いている。

 ウチらはボイスロイドいうても、生活サイクルは普通の人間となんも変わらへん。睡眠もするし、入浴だってする。

 やけど、前のマスターは――。

 

『道具如きが風呂なんて入るな』

 

 あくまでもウチらを道具扱いして、入浴なんて一度もさせてくれへんかった。

 ……あの、これでもウチらだって一人の女の子としての感性を持っているんやで? 年頃の女の子がお風呂に入れないって、どれだけ苦痛なことか分かっとんのか。

 ……まぁ、それはおいといて。

 彼は、そんな超絶ノンデリ野郎とは違って、入浴を勧めてきたのだ。最初はつい躊躇してしまったが、ここはお言葉に甘えさせて頂こうか。

 

「……っ! あ、ありがとうございます!」

「は、入らせていただきます!」

「ああ。さっさと入れ」

 

 葵もお風呂に入れるのが嬉しいのか、先程よりも明るい声色になっているみたいやな。

 

「風呂の前に……茜、ちょっといいか」

「はっ、はい。なんでしょうか……っ?」

 

 さあ、念願のお風呂や! と思った矢先に、彼に呼び止められる。

 こうして呼び止められることに良い思い出はなく、思わず声が震えて身体が強張ってしまう。

 ウチ、またなにか失礼なことをしてしまったんやろか。

 

「何故関西弁で話さない? 琴葉茜は関西弁で話すボイスロイドじゃなかったか?」

 

 だが、またしても彼の口から出てきた言葉は、想像だにしてないことやった。

 

「……! そ、それは……関西弁で話すと……気持ち悪い、からって……」

 

 前のマスターに出会って、いきなり言われたこと。

 関西弁禁止令。

 それはウチの人格を否定する強烈な一手やった。今思えば、どんな暴力、暴言よりもこれが一番苦しくて悲しかったかもなぁ。

 

「はぁ? むしろ関西弁で話してくれないと、そっちの方がなんかムズムズするんだが」

 

 目の前のマスターは違った。

 

「えっ……じゃ、じゃあ、関西弁で話してもいい、んですか?」

 

 ウチのアイデンティティを尊重し、認めてくれる人やった。

 

「いいに決まってる。関西弁で話せ。これは命令だ」

 

 彼の、マスターの言葉に、ウチは救われた。今までの苦痛が全て浄化されるかのような気分になった。

 

「……わ、分かったで! こ、これでええか?」

「ああ。それでこそ『琴葉茜』だ」

「~~ッ!」

「よかったね、お姉ちゃん!」

 

 今この瞬間、本来のウチが帰ってきたんや。

 それにしてもウチが関西弁を話した時のマスターの嬉しそうな顔、思わずドキッとしてもうた。本当の自分を受け入れてもらうって、こんなにも嬉しいことなんやな。

 

「それじゃ風呂入ってこい。風呂場にあるものはなんでも使っていいぞ。ちゃんと身体洗って綺麗にするんだな」

「分かりました、マスター」

「ありがとうな、マスター」

 

 マスターに頭を下げて、葵と一緒に風呂場へと向かう。

 

「はぁ~~……気持ちいいね、お姉ちゃん」

「せやなぁ……蕩けてしまいそうやぁ」

 

 身体を洗った後、葵と一緒に浴槽へ浸かる。

 ちょっと熱く感じるお湯が心地よい。

 

「それにしても……新しいマスター、いい人そうだね」

「……せやな。多分、いや絶対いい人やと、思う」

「そうだよね、私もそう思うかな。……って、あれ? お姉ちゃん顔赤いけど、もしかしてのぼせちゃった?」

「……えっ、えっ! そ、そんなことないで! き、気のせいちゃう?」

「ん~、そうかなぁ? まあ、お姉ちゃんが大丈夫ならいいんだけど……」

 

 葵からマスターの話を振られて、思わず胸が高鳴ったのを象徴するかのようにウチの顔は赤くなっているらしい。

 でも、これはきっと熱いお湯に浸かっているからや。そう、そういうことにしておこう。

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