汚いボイスロイドを拾ったので虐待することにした   作:美月海月

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外に連れ回して、金の暴力を振るう

 配信を終えて、現時刻は昼過ぎ頃。

 午前中から配信を始めて配信時間は大体数時間なので、午後のスケジュールが空いているのは計算済みである。

 もちろん午後にやることは既に決めてある。さあ次の虐待をしようではないか。

 

「よし、そんじゃ出かけるぞ」

 

 そう、午後の予定は外出をして買い物に行くことだ。

 こいつらを拾ったのは深夜。

 用意するべきものは色々とあるのだが、時間が時間だっただけに買い揃えることができなかったのだ。

 

「え? 出かけるって、外に行くんですか?」

「ああ、そうだ。色々と買わないといけないものがあるからな」

「えっと……ウチらも一緒に行ってええの?」

「あん? どういうことだ?」

 

 茜と葵が戸惑いながら俺に聞いてくる。

 むしろ一緒に来てもらわないと、どういうものが欲しいのか分かんねえから俺が困るんだが。

 

「前のところでは外に出るなって、よう言われとったから……」

「ほう?」

 

 どうやら、随分と前のところでは甘やかされていたようだな。

 所謂、箱入り娘ってやつかぁ?

 確かに最近ちょっと暑くなってきたからな。余計に外に出たくなくなる気持ちもほんの少しは理解できる……が、そうはいかないぜ。

 

「そんなの知ったこっちゃない。お前らに必要なものを買いに行くんだからな、絶対についてきてもらうからな」

「……! 分かったで! もちろん行くで!」

「お買い物、楽しみです!」

 

 俺が絶対に連れて行くと言ったら、諦めてついていく気になったようだ。

 フフフ……外に慣れていない双子姉妹をひたすらに連れ回すなんて、とても楽しそうじゃないか。

 

「よし、そうと決まったら行くぞ!」

「「はーい!」」

 

 

 

 *

 

 

 

 やってきたのは近くのショッピングモール。

 その中にある、レディースファッションの店に入った。

 とにかく最優先で買いたいものが、こいつらの服だった。

 当然だが、俺は男なので女物の服なんぞ持っていない。

 昨晩は汚れまくっていたこいつらの服を洗濯して、すぐさま乾燥機にかけることによって今日も同じ服を着ることができているが、今後はそうもいかない。毎回毎回こんなことをしていたら電気代と水道代がとんでもないことになっちまう。

 あと、ところどころボロボロなのも気になる。そんなになるまで着るくらいその服が気に入っているのかもしれないが、もうその服は卒業してもらうぜ。

 

「うわぁ~……可愛い服がいっぱいやなぁ……!」

「すごいね……! 服ってこんなにたくさん種類があるんだ……!」

 

 茜と葵はというと、様々な種類の服に囲まれて楽しそうに目をキラキラさせている。

 服屋ならこれくらい当たり前の光景だが、こいつらにとっては新鮮らしい。本当に外に出たことがあんまりないんだな。

 それなら、もっとこいつらを混乱させてやろうじゃないか。

 

「ここに来たのはお前たちの服を買うためだ。1週間分の服、好きなものを買ってやるよ」

「いっ、1週間分……?」

「好きなものって、なんでもいいんですか……?」

「気に入ったものならな」

 

 慣れない場所で、いきなり大量に買い物をするというのは中々に疲れるだろう。

 あっちこっちへと、膨大な量の商品に振り回されるこの二人の姿が目に浮かぶぜ。

 

「ほら、まだまだ寄るところあるんだから、さっさと選んできな」

「わ、分かりました。お姉ちゃん、行こ!」

「せ、せやな」

 

 そう言って二人は服の海へと沈んでいった。

 

 二人が服を選んでいる間、俺は付かず離れずの距離でその様子を眺めていた。

 眺めていて思ったことがある。

 それは、彼女たちがあからさまに表情を明るくして手に取った商品を一通り見た後に残念そうな様子で戻す、という一連の行動が先程から何度も見受けられる。

 嬉しそうに取った商品は、正直俺も彼女らに似合いそうだ、ぜひとも着たところを俺に見せてほしいと思ったものが大半だが、何故か最終的には買い物カゴには入らない。

 その原因を探るために、俺は選考の結果戻されてしまった服たちを手に取って注意深く観察をしてみる。

 

 ……。

 …………。

 ほほう。なるほど……。

 

 もしかしてと思い、今度は買い物カゴに入っているものと同じ商品を手に取り観察をする。

 やはりそうか。全く、好きなものを買えと言ったのに……。

 俺は取り急ぎ、二人が一度手にした商品たちをかき集めて買い物カゴに放り込んでいく。

 そして姉妹の元へと駆け寄り、声を掛ける。

 

「おい。これ欲しいんだろ」

「えっ、マスター!? それって……」

「い、いやぁ……ウチには似合わへんからなぁ……」

「そ、そうなの。一回手に取ってみたけど、私には似合わないかもって思って戻したんですよ」

 

 似合わないからやめた、と茜と葵は言う。

 嘘だ。

 正直こいつらはセンスが良い。手に取って戻した服は、絶対にこいつらに似合う可愛らしいものばかりだった。

 では何故選ばなかったのか。答えは簡単である。

 

「お前ら、遠慮してるだろ」

「――っ!」

 

 そう、単純な理由だ。

 戻した服は、全て値段が高めのものだったのだ!

 逆に買い物カゴに入っている商品は大体3,000円以下の手頃価格のものである。

 

「気に入ったものはなんでも買っていいって言っただろ」

「せ、せやけど……買うてもらうのに、そないな高いものばっかり選ばれへんよ」

「そうですよ……ただでさえ1週間分も買ってもらうんですから」

「はぁ~……」

 

 全く、こいつらはいらんことに気を遣いやがって……。

 それともあれか? 暗にお前の財力は頼りないとでも言っているのか!? 舐めやがって……。

 

「ちょっと頭にきたわ。これ全部買うわ」

「えっ……!?」

「マ、マスター!?」

 

 突如として買い物カゴを持ってキャッシャーへ向かう俺を見て、狼狽える茜と呼び止める葵。

 そんな二人を気にも留めず、俺は足早に会計へと向かった。

 

「待たせたな」

 

 しばらくして会計を終えた俺は、二人の元へと戻った。

 俺の両手には大きな紙袋が2つずつ提げられている。

 

「あ、あのマスター……? その、嬉しいんやけど……大丈夫だったん?」

「なにが?」

「金額ですよ! 遠慮するなと言ってましたけど、さすがに限度っていうものがありますよね!?」

「そんなものはない」

 

 この期に及んでまだ俺の懐事情を気にしているようだ。

 まあ確かに、会計時に表示された金額は6桁だったが別にそれくらいならポンと出せる。さすがに7桁超えてくると悩み始めるがな。

 

「いいか? 俺はお前らのマスターだ。マスターがボイスロイドの必要なもの、欲しいと思ったものを買ってやるのは当たり前だろ?」

「! ……分かりました。ありがとうございます、マスター。すごく嬉しいです」

「ありがとうな、マスター。せやけど、あんま無茶せんといてな? ウチらはマスターのその気持ちだけで、めっちゃ嬉しいんやから」

 

 ようやく理解してくれたのか、感謝の言葉を述べる茜と葵。

 

「さて、服は買ったから……次はあそこだな」

 

 そう言って、俺は次の目的地であるお店を指差した。

 そこは――ランジェリーショップだった。

 当然だが、下着も今二人が身に着けているものしかないのだ。服を買ったら次は下着だろ。

 

「せ……せやな。あれも、必要やんな」

「そ、そうだね……必要だよね」

 

 指差した方を見て、顔を赤らめる茜と葵。

 

「さすがに俺はついていけないから、二人だけで行ってこいよ。これお金」

「分かったで、ありがとうなマスター」

「ありがとうございます。じゃあ……行こっかお姉ちゃん」

 

 現金のみが入った、ぱんぱんに膨らんだ財布を二人に渡す。

 店のもの全部買うとかしない限りは、よっぽど足りるように金は入れてある。

 

「あっ、そうだ」

「?」

「ちゃんと()()()()選べよ。()()()のな」

「……えっ!? そ、それってどういう――」

「じゃ、また後で。しばらくしたらこの辺に戻ってくるから」

 

 先程の服の時と同じ轍を踏まないように釘を刺しておく。

 これで安っぽい下着を買われたら、さっきのやりとりの意味がなくなるからな。

 遠慮なんかせずに、気に入ったものを好きに買えばいいんだよ。

 

 

 

 *

 

 

 

 マスターに買い物についてこいって言われた時はめっちゃ嬉しかった。

 前のマスターは外出なんてさせてくれへんかったからなぁ。

 ずっと家に閉じ込められたまま、毎日のように暴力と暴言を受け続けていた。

 ある時、「外に行ってみたい、散歩をしてみたい」と言ったことがあるんやけど、当然のように却下された。暴力付きでな。

 そん時やったかな。

 

『道具が外に出るなんてありえない。道具は道具らしくずっと家にいろ』

 

 そう言われた時は、あぁ外の世界にはもう行かれへんのやなって絶望したなぁ。

 せやけど、今ではこうやって外に出ることができとる。

 しかもウチらのための買い物に来とるんやで! マスターは本当に優しいなあ。

 

 ほんで、今はマスターに言われて下着を買いにランジェリーショップに来とるんやけど……。

 

『ちゃんと()()()()選べよ。()()()のな』

 

 ランジェリーショップに入る前に、マスターに言われた言葉。

 い、一体、どういう意味なんや……!?

 いいやつってのは、きっとさっきの服の時みたいに安価なもので妥協するんやなくて、気に入ったものを選べっていう意味やと思うんやけど……。

 俺好み――マスター好みのってどういうことや……。

 で、でも……きっと、つまり、そ、そういうことなんか? そういうことなんやな!?

 ふと、葵の方をちらりと見てみる。

 

「……っ」

 

 葵もさっきのマスターの発言が気になっとるのか、若干顔を赤らめながら商品を見とる。

 もう絶対そういうことやん!

 どないしよ……ウチ、そういう経験は全くあらへんからどういうのがええんか分からへん……。

 と、とりあえず、普段使い用の無難なの選ぼか。

 

 普段使いのものは割とすんなり選べた。

 あとは……問題の、しょ、勝負下着やんな……。

 マスターってどんなのが好きなんやろ……。

 こういう可愛らしさ全開の方なのか、それともこういう……え、えっちなやつ……どっちがええんやろか。

 

 ……よし、決めたで。

 マスターはきっと色気のあるタイプの方が好みなはずや。

 だからウチが選ぶのは、こっちの際どい……えっちなやつにするで。

 

「お姉ちゃん、決まった?」

「う、うん……決まったで」

 

 どうやら葵も選び終わったようだ。

 

「そっか、じゃあお会計しよっか。って、お姉ちゃん……」

「ん? どうしたん?」

「そ、それ……」

「あ、あぁ……」

 

 葵が指差したのは、ウチが最後に選んだ――勝負下着やった。

 

「ちょっとえっちすぎない? それ」

「べ、別にええやろ。……って」

 

 ふと、葵が持っている買い物カゴに入っている一つの下着が目に入る。

 それを素早く手に取り、葵の方へ見せつける。

 

「葵ちゃんこそ、これはなんやろなぁ?」

「あっ、そ、それは……!」

 

 我が妹ながら、どすけべな下着をチョイスしたなぁ。

 

「……だって、さっきのマスターの発言って……つまりそういうことでしょ?」

「せやんなぁ……」

 

 葵も完全にそっちの意味で、マスターの言葉の意味を捉えたようだ。

 この下着の出番はいつやろか……。ま、まさか今日の夜……ってことはないやんな? いやでも、わざわざあんな風に言ってくるってことは……。

 あ~! あかんあかん! いくら考えても無駄や! もう成るように成れ! その時が来たらその時や!

 こうしてウチらはお会計を済ませて、ランジェリーショップを後にした。

 

 ちなみに、マスターの発言のニュアンスを誤解していたと判明したのはまた別の話である。

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