『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される   作:プロデューサー科のもの

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序章 『プロデューサー』になるまで
初~プロローグ~


 

『学園アイドルマスター』

 

 2024年にリリースされた、ソーシャルゲームだ。

アイドルマスターシリーズの新シリーズであり、リリース当初から人気が凄まじく、セルラン1位を取ることもあった。

 2024年頃は掃いて捨てるほどあったソーシャルゲームのブームが最盛期よりも落ちつつあり、その中でセルラン上位に食い込むことができたこのゲームは、かなりの人気だったといえるだろう。

 

 『学園アイドルマスター』…通称『学マス』は端的に言うと、「初星学園」という学園のプロデューサー科(大学に相当)に入学した主人公が、同じ初星学園高等部のアイドル科に所属する、1年生or3年生の総勢12人とトップアイドルを目指す物語だ。

 12人それぞれ個別のストーリーがあり、それとは別に「初星コミュ」という主人公枠3人のユニットのストーリーがあり、サポートカード毎にもストーリーがある。

 最初は歌やダンスが下手だったアイドルが、プロデューサーやライバルたちと切磋琢磨し、成長していく様子が見られる点が好評だった。

 

 …その中で、「SyngUp!」というユニットがあっ()

 「月村手毬」「秦谷美鈴」「賀陽燐羽」の3人からなるユニットで、中等部No.1ユニットとして降臨したユニットだ。

 あった、と過去形だったことから察しているかもしれないが、「SyngUp!」は中等部で解散しているため、『学マス』でプロデュースすることはできない。

 ユニットメンバーだった、「月村手毬」と「秦谷美鈴」を個人でプロデュースすることはできるが、「賀陽燐羽」をプロデュースすることはできず、「SyngUp!」としてユニットをプロデュースすることはできないのだ。

 

 

 …前置きが長くなってしまった。

 何が言いたいのかというと、今私が見ているテレビには「SyngUp!」の3人が映っている。

 ゲームでは見ることができなかった、「SyngUp!」の3人が揃って「Campus mode‼」を、歌って、踊っているのだ。

 

 

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 私は目が覚めた後、

 いつも通り顔を洗って、

 いつも通り口をゆすいで、

 いつも通りに朝食を用意し、

 いつも通り朝のニュースを見るつもりでテレビをつけた。

 

 なぜか私が見ていたテレビは、昨夜見ていたはずのチャンネルとは異なっており、『初星学園』のアイドルのライブ映像が流れた。

 

 それだけでも意味が分からないような状況で、なおかつ映っていたメンバーが()()だったため、内心とても混乱していた。

 

 だが、そんな混乱している状況でもテレビから目が離せなかった。

 正確には「SyngUp!」のライブに釘付けになっていた。

 元々、「月村手毬」「秦谷美鈴」「賀陽燐羽」の3人ともキャラクターとして好きだったし、「SyngUp!」時代のライブを見てみたいとは思っていた。

 特に「賀陽燐羽」のライブは、私がゲームをしていたときは見ることができなかった。

 

 そんな願望が、ふとテレビをつけた瞬間に叶ってしまった。

 ライブでは「SyngUp!」が「Campus mode‼」を歌っており、ラストスパートに入るところだった。

 すでにバテつつある「月村手毬」のカバーに「秦谷美鈴」と「賀陽燐羽」が入っているのが見てわかる。

 だが、それを考慮しても「月村手毬」の歌唱力はすさまじく、聞いている私の魂を震わせるような歌声だった。

 「秦谷美鈴」と「賀陽燐羽」のパフォーマンスも素晴らしく、素人の私でさえもわかるレベルの高さだった。

 

 実際は、トップアイドルに比べたら劣るのだろう。『一番星(プリマステラ)』に比べたら劣るのだろう。

 だが、少なくとも今見ている私には、彼女たちこそNo.1だと感じた。

 彼女たちなら、「SyngUp!」なら初星学園の頂点である『一番星(プリマステラ)』になれる。

 気が付いたら、夢中でテレビを見ていた。

 もう少しで終わってしまうライブ映像を、少しでも見ていたいと思い、瞬きすら忘れて魅入っていた。

 

 そして、ライブ映像が終わりテレビは次のシーンへと移った。

 先ほどまでのライブが頭から離れず、しばらくそのまま動けなかった。

 

 

 

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 我に返った私は、冷静になろうと努めた。

 こういう時に慌てても何もならないのは、人生経験で分かっている。

 頭の中の熱はいまだ冷めていないが、無理やり思考の優先度を差し替えた。

 必要なことは状況を整理することだ。

 

「いただきます」

 

 他人がいない空間で一人呟く。

 クロワッサンを口にくわえながら、スマホを見る。

 ホーム画面に設定していた画像がデフォルトのものになっており、予想どおり『学マス』のアプリはない。

 

 …重課金とはいかないまでも課金していたんだけどな。

 

 などと、思いつつ、コーヒー牛乳を口に含む。

 クロワッサンでパサついた口の中に水分が満ちていくことを感じながら、自分の口座をネット照会で確認した。

 口座の情報は何も変わらず、残高も覚えていた金額と変わらなかった。

 

 流しっぱなしにしていたテレビは、「初星学園」特集が終わり、通常のニュースが流れていた。

 時々CMが流れているが、見たことない企業のCMばかり流れている。

 予想はできていたので、もうあまり驚かなかった。

 

 クロワッサンの最後の一つを口に入れ、よく噛み、味わう。

 最後にコーヒー牛乳を飲んで、手を合わせる。

 

「ごちそうさまでした」

 

 全てのことに感謝をとまではいかないが、

 今の状況を整理する上で、朝食を摂ることはそれなりに私を落ち着かせてくれた。

 

 次に確認するべきことは、身分証明書だ。

 スマホケースに普段入れている自動車の免許証を探すが、普段ある場所に刺さっていない。

 代わりに、「初星学園の学生証」が入っていた。

 そこには、「プロデューサー科 1年」と記載されており、その下に自分の名前が書かれている。

 

 心臓が「ドクンッ」と跳ねた。

 それと同時に、私の胸に1つの野望が灯る。

 …だが、今はまだそれを気にかけている場合ではない。

 

 次に確認したいことのため、改めて洗面所に行って鏡を見る。

 寝ぼけ眼で顔を洗っていたときは気づかなかったが、幾分か幼い顔つきになっているような気がした。

 元々童顔とは言われていたので気のせいかもしれないが、免許証の代わりに学生証が入っていたことからして確定だろう。

 

 

 …どうやら私は『学園アイドルマスター』の世界に転移してしまったらしい。

 

 

 

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 状況を整理しよう。

 

 

1.寝て起きたら、『学マス』の世界に転移していた。

 よくある()()()()のように思えるが、ここまで何も音沙汰なく転移することがあるのだろうか。

 こんなことなら、好みではないが神様転生のほうが良かったかもしれない。

 

2.「SyngUp!」が「Campus mode‼」を歌っているライブ映像が流れてた。

 「秦谷美鈴」のストーリーから察するに、今の「SyngUp!」は中等部2年か、3年といったところだろう。

 恐らく1年では「Campus mode‼」を、対バンで勝利して自分たちのものにする段階まではいけてないはずだ。

 案の定、スマホで軽く調べたところ、現在「3年」だということがわかった。

 

3.肉体年齢が若くなっている。

 昨日までは仕事に行かなければならない年齢ではあった。

 それが、高校卒業したての大学1年生になっている。

 顎を触っても、少しも髭が伸びていない感覚が懐かしかった。

 

 元々多少童顔で、髭も1日くらい剃らなくても気にならない程度しか伸びなかったが、最低限のエチケットとして薄く伸びる髭を毎日剃っていた。

 その、毎日髭を剃るルーティーンから解放された。

 

 …なお、洗面所にはいつも使っている電気シェーバーが取り残されていた。

 髭が伸びるようになるまで、しばらく封印だな。

 

4.昨日まであった企業やアプリが軒並み変わっている。

 『学マス』がなかったことは確認したが、よく見たらそれ以外のソーシャルゲームも全て消えていた。

 アプリストアを確認すると、そこには見たことないソーシャルゲームの群れ。

 どこかで見たことあるような内容ばかりのものだったが、どれも聞いたことがない。

 以前までプレイしていたアプリを検索しても当然引っかからず、消えていったアプリたちに黙祷を捧げつつ涙を流した。

 

 企業…会社も全て名前が変わっていた。

 聞いたことあるような無いような名前になっており、完全に元いた世界とは異なっていることがわかる。

 喜ぶべきは以前働いていた企業がなかったことだろう。

 お世辞にもホワイト企業ではなかったので滅んでしかるべきだ。

 …似たような企業は数多くあるから、実際のところ何も変わっていないのだろうが。

 

5.私は「初星学園のプロデューサー科1年生」らしい

 学生証が偽物だったら話は別だが、初星学園のプロデューサー科に所属している1年生らしい。

 …プロデューサー科は狭き門だったはずだ、こんな異物がいていいものなのかとは思う。

 とりあえず、学園には行かなければならないので、ボロを出さないようにしないといけない。

 それに社会人として働いていた私が、今の学生の授業に追いつけるのかは疑問ではある。

 相応の努力が必要になるのは間違いない。

 

6.今は俗にいう原作開始の約1年前らしい。

 「2」を確認している最中に気づいたが、現在は「月村手毬」たちが高等部の1年生になる、約1年前の4月初め。

 つまり、私は入学してから数日しか経っていない状態のようだ。

 今日は月曜日。会社に行くつもりだった私は、朝6時に起きて準備するつもりだったが、現状確認だけで既に7時を回ろうとしている。

 

 さらに調べたところ、今いる場所は初星学園の敷地のすぐ近くだった。

 歩いて5分もすれば着くような距離なので、もう少し調べ物をする時間はありそうだ。

 

7.これからの方針

 これまでの情報を踏まえ、これからの方針を決めていこう。

 まず、元の世界に帰りたいかと言われれば、そんなことはなかった。

 両親は既に他界しており、親戚付き合いも少なかったのでこれといった未練はない。

 

 ソシャゲ関係に悔いはあるが、どっちにしろ戻るのに日数がかかるようであればログボも途切れるのでモチベが落ちるのは明白。

 

 何よりも、プロデューサー科の生徒という立場を捨ててまでブラック企業に戻りたいかと言えばノーだ。

 それぐらいならこのままこっちで過ごすのがいい。 

 

 …とりあえず、初星学園に行く準備をしよう。

 大学生なら、スマホと財布、ルーズリーフと筆記用具、後は資料あたりがあればそれでいいだろう。

 

 机の中に何かないかと漁ると、初星学園プロデューサー科のガイダンス資料があった。

 とりあえず、それらを持って学園に向かうことにした。

 

 

 

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 数分の距離しかないが、歩きながら思案する。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 端的に言うとそれだけだが、それだけのことが今の私にとっては何よりも難しい問題だった。

 

 

 …正直に言ってしまおう。

 ()()()S()y()n()g()U()p()!()()()()()()()()()()()()()()()

 元々「SyngUp!」のメンバーが好きだったのはある。

 

 だが、色々考えているときでも、頭の片隅にさっき見たライブ映像が焼き付いて離れないのだ。

 「月村手毬」の歌が、「秦谷美鈴」の歌が、「賀陽燐羽」の歌が、頭の中で何回も繰り返される。

 少ししか見ていないはずのライブ映像が頭の中で何回も繰り返され、気を抜いたら「Campus mode!!」を口ずさんでしまいそうな気がする。

 

 …だが、あのライブはまだ完全なものではない。

 「月村手毬」は全力を出し切っていたが、1曲通して歌いきれる状態ではなく、後半は失速していた。

 「秦谷美鈴」はそんな「月村手毬」のサポートに回っており、とても全力には見えなかった。

 「賀陽燐羽」は「月村手毬」のサポートに入っていたこともあるが、本人から前に出ようという意識が感じなかった。

 

 私は、すでに「SyngUp!」に脳を焼かれてしまったのだろう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何を持って完全と呼ぶかは人によって異なるだろうが、彼女たちの伸びしろは凄まじい。

 中等部No.1として名を馳せる彼女たちは、高等部に行ってからもその実力を発揮し、『一番星(プリマステラ)』になることだろう。

 

 …そんな彼女たちの手助けをしたい。

 このまま何もなければ、「SyngUp!」はこれから1年未満で解散してしまう。

 『学マス』の…ストーリー通りに事を進めるのであれば、「SyngUp!」の解散は必須事項だ。

 

 それに、()()()()()()()()()()だけで、何もプロデューサーとしての知識がない私がプロデューサーになったところで、彼女たちの手助けになれるかはわからない。

 

 もっと言うと、足を引っ張ってしまい殺されるかもしれない。

 

 彼女たちはこれまでプロデューサーがついていなくても、中等部No.1になれる実力をつけてきている。

 そんな中で、新入生の私が突然プロデューサーをさせてほしいと頼んだところで、受け入れてもらえる可能性は低い。

 

 …下調べをしながら、色々教師に聞いて回ったほうがいいな。

 そう判断しながら、私は初星学園の門をくぐった。

 

 

学マスのストーリーはどの程度進めていますか

  • アプリをそもそも入れていない
  • どのキャラも親愛度10未満
  • 特定のキャラのみ親愛度10まで
  • 特定のキャラのみ親愛度20まで
  • 全キャラ親愛度20まで
  • 特定のキャラのみ親愛度27まで
  • 解放可能なキャラ全て親愛度MAX
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