『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
「失礼するわ」
「失礼しますね」
呼び出ししてから10分程度で、賀陽さんと秦谷さんはノックもせずに事務所に入ってきた。
月村さんはきょとんとして隣に座る二人を見ている。
「え? え?
何で美鈴と燐羽がここにいるの?」
「プロデューサーから大事な話がある…と連絡が来ましたので」
「同じくよ、あなた達も来ているとは思わなかったけど」
そう言ってため息をつきながら、月村さんを挟んで見つめあっている賀陽さんと秦谷さん。
それに挟まれた月村さんは混乱して二人をきょろきょろ見ているが、やがて矛先は
「…プロデューサー!?
いつの間に二人を呼んだんですか!?」
「今さっきですよ。
さっきの話をするにはちょうどいいと思って呼んでおきました」
「普通相談して決めませんか!? そういうことは!?
プランの説明とか言って雑談している暇があったら!!」
「相談したところで、早くいった方がいいことには変わりないでしょう。
決意が揺らがないうちに、さっさと言った方が楽ですよ」
「他人事だと思って…!!」
「ねえ、用があるのなら早くしてくれる?
別に暇だから来たわけじゃないんだけど」
言い合っている光景に嫌気がさしたのか、賀陽さんがそう吐き捨てた。
秦谷さんはいつも通り、月村さんの方をニコニコしながら見ている。
「…ふぅ~~~~…はぁ~~~~…
…よし」
覚悟を決めたのか、月村さんはたっぷりと深呼吸をして立ち上がった。
椅子から少し距離を取り、挟んでいた秦谷さんと賀陽さんを両方一瞥できるように、回り込む。
私から見て左側、二人から見て右側に回り込んだ月村さんは、二人を睨みつける。
「燐羽! 美鈴!
二人に決闘を申し込む!!」
「…はぁ…また何か変なテレビでも見たのかしら…?」
「まりちゃん、それでは、わたしもわかりません。
もっと詳しく説明してくれますか?」
色々端折って決闘を申し込んだ月村さんを、二人とも首を傾げながら見ていた。
その反応を見て、更に月村さんは怒りを抑えるように俯きながら震えている。
そして、一瞬息をおいてから爆発した。
「…それ! そういうところ!!
二人のそういうところに、私は怒っているの!!」
「そういうところとは…、どういうところでしょうか?」
「言わなくちゃわからないわけ!?」
「言わないで伝わるわけないでしょ。
私たちはあなたじゃないんだから、きちんと説明しないとわからないわよ」
「二人っていつもそう!
私のことをいつまでも子ども扱いして…私とはいつも真剣にぶつかってくれない…」
月村さんが言いたいことを理解し、思いあたる部分があるのか、ばつが悪そうに賀陽さんは顔を背けた。
秦谷さんは、それでも心配そうに少しオロオロしながら月村さんを見ている。
「…まりちゃん…」
「だから、私はあなた達に決闘を申し込むんだ!
夏の『H.J.I.F』のソロ部門で、勝負しよう!」
そして、改めて決闘の内容を正確に言った月村さんに、秦谷さんと賀陽さんは一瞬呆けていたが、意味を理解して声を荒げた。
「…はぁ!? 正気!?
わざわざ『H.J.I.F』でユニット同士の潰し会いをしたいってわけ!?」
「まりちゃん、いくらなんでも、それはわたしも看過できません。
『H.J.I.F』は中等部の生徒にとって、とても重要な意味があります。
そんな貴重な機会を棒に振ってしまったら、わたしたちもプロデューサーの評価も落ちてしまいます」
「へぇー、美鈴でも怖いんだ。
そうだよね、貴重な機会を棒に振っちゃうんだもん。
それもそうだよね」
二人の反論に対しても、一切引かずにむしろ煽るように意味深に言葉を紡ぐ月村さん。
珍しく、秦谷さんが苛だったように月村さんを睨んでいた。
「…何が言いたいのですか?」
「プロデューサーがそこにいるってこと。
その意味が分からないわけじゃないよね?」
「…!!
まさかとは思いましたが、プロデューサーも承諾済みなんですか!?」
「むしろ、プロデューサーからの提案だよ」
月村さんの言葉で、二人とも私の方を向く。
秦谷さんは驚きの顔で、賀陽さんは少しの怒りを滲ませていた。
「あなた、そんなに死に急ぎたいの?
死にたいなら一人で死になさい
…私たちを巻き込まないで」
「燐羽、提案したのはプロデューサーだけど、乗ったのは私だから。
そこは勘違いしないで。
あなた達に決闘を申し込んだのは、私自身の意思だから」
賀陽さんの言葉にどう返そうかと思っていたが、意外なことに月村さんが私を庇う形で言い返した。
「…そう、手毬がそこまで言うなら……いいわ、少し遊んであげる」
「りんちゃん!
そんなあっさり…」
それを聞いて、賀陽さんは諦めたようだ。
…いや、正確には諦めたというよりは納得した様子だった。
だが、秦谷さんは納得できていないようだ。
それもそうだろう、彼女は月村さんと賀陽さんが、ユニット『SyngUp!』が大好きだ。
それが、別々にライブオーディションに参加するなんて、嫌がるのは当然だろう。
しかし、既に王手はかかっている。
「美鈴、こうなった手毬は意地でも言うことを聞かないの、わかってるでしょ?」
「…それは…」
「プロデューサーに何を吹き込まれたのかは知らないけど、どうせやるんだったら、とっととやるって決めたほうが建設的よ」
月村さんと賀陽さんが、ソロ部門の参加に進んでいる以上、秦谷さんがどれだけ嫌がっても、今回はソロ部門の参加になるだろう。
月村さんが本気でわがままを言ったら、賀陽さんは頷くしかない。
だから、月村さんを焚きつけて直接挑戦状を叩きつけてもらったのだ。
そっちの方が、
予想通りに事は進んでいるが、それでも秦谷さんはまだ納得していないようだ。
「…プロデューサーは、本当にいいのですか?
『H.J.I.F』は中等部の数少ない外部の目が大々的に入るライブオーディションです。
ここまでの規模のものは、中等部ではそう簡単に参加できることではありません。
当然、私たちの担当プロデューサーである、あなたの評価にも大きく関わってきます。
既に知っているとは思いますが、去年の冬の『H.J.I.F』のユニット部門で優勝した『SyngUp!』を、ソロ部門に参加させたとなっては、プロデューサーの評価が落ちるでしょう」
…秦谷さんは、私の心配もしているのかもしれない。
月村さんに向ける顔と同じように、私に心配そうな顔を向けている。
月村さんの説得のためもあるだろうが、確かにプロデューサーが付いたのにそのプロデュサーの評価が下がっては、彼女たちの活動にも影響が出かねない。
だが、
「そうでしょうか?」
「そうなります!」
「私はそうならないと思ってますよ」
「…何を根拠に言ってるのですか?」
秦谷さんは納得いかない様子で私を見ているが、私はこれをしたところで下がるような評価はもとよりない。
それに、彼女たち『SyngUp!』は
なぜなら、彼女たちは既に中等部の最上位層にいるのだから。
「一つ質問しますが、あなた方は、中等部の他の生徒にオーディションで負けるつもりはありますか?」
「そんなことはありません」
「誰であろうと、絶対に勝ちます」
「さあ? …手毬と当たるまでは負けるつもりはないけど」
「これが答えですよ」
「…どういうことですか?」
「ユニット全員が、お互いに当たるまで負けるつもりがない。
つまり、
それで、中等部で誰が一番上か、はっきり格の違いをわからせてください。
可能であれば、高等部の生徒たちにも思い知らせる勢いで、『私たちが上で、あなたたちが下です』と。
そうすれば、あなた方も私も評価が落ちることもないでしょう」
実力の高さを見せつければ、周囲は自然と黙らざるを得ない。
これが、よその会社やよそ学園を巻き込んでの勝負であれば、大炎上して叩かれてもおかしくない。
だが、学園内で燃えるぐらいであれば、私が叩かれれるぐらいで済む。
それよりも、彼女たちがアイドルとして大成することの方が圧倒的に重要だ。
そのためには、彼女たちに見せつけてもらわないといけない。
誰よりも彼女たちが輝くべきアイドルたちだと。
「…本当に性格が悪い…倫理観とかないんですか?」
「失礼ですね。
ありますが、実利を優先しているだけですよ」
「余計にタチが悪いじゃない」
賀陽さんのツッコミを聞き流しながら、秦谷さんの反応を窺う。
無言でこちらを睨みつけている。
「…」
「どうかしましたか、秦谷さん」
「…ぷいっ」
いつぞやの時みたいに、わざとらしく言いながら、顔を背けている。
「秦谷さん?」
「つーん」
再度話しかけるも、同じように顔を背けた。
「あっ美鈴が拗ねた」
「あなた、何か美鈴の地雷を踏んだでしょ。
何をしでかしたのかしら」
「地雷…あっ」
やっぱり秦谷さんは拗ねているらしい。
特に思いあたるようなこともなかったのだが…いや、さっきの説明の中のセリフにあった気がする。
「『わたしが上で、あなたが下です』ってコト?!*1」
「そんなことわたしは言っていません!!」
以前に言っていた台詞を根に持っていたらしい。
いや、さっき言ったことで思い出したと言った方が正しいかもしれない。
そして、
「…ああ、なるほど、そういうこと。
確かに美鈴なら言いそうね」
「りんちゃんまで!?」
「…言いそう、美鈴なら、燐羽に勝ったら絶対に言う。
賭けてもいいよ」
賀陽さんの言葉にショックを受けている秦谷さんを、更に追撃するように月村さんも追い込んだ。
二人の親友から後ろから刺されたような形になった、秦谷さんは肩を落として轟沈した。
「まりちゃんまで…わたし、そんな風に思われていたんですか…?」
「だって美鈴、凄い傲慢だし」
「勝った後で、わざわざ直接赴いて正面切って言うわね。傷心中の相手に」
二人からの更なる攻撃を受けて、秦谷さんは机の上に崩れ落ちた。
「…しばらく…立ち直れないかもしれません…」
…流石に意地悪しすぎたかもしれない。
まさか、二人とも乗ってくるとは思わなかったので、ここまで轟沈するとは思わなかった。
「秦谷さん、そんなに落ち込むことはありません。
秦谷さんのその自信に満ち溢れている精神性は、アイドルをしていく上で立派な長所です。
月村さんにも見習っていただきたい」
「プロデューサー…」
「プロデューサー!!??」
秦谷さんにフォローするのと同時に、調子に乗り始めた月村さんに釘を刺した。
そして、全員に言えることを再度忠告する。
「まあ、全員に言えることですが、言葉を選んでもらう必要はあります」
「…プロデューサーぁ…」
「2度も言った! プロデューサー、私は常に気を付けてますから!」
「…ファンの前では気を付けてるわよ」
三者三様の反応をしているが、全員化けの皮が剥がれるのは一瞬だろう。
だが、今はそれでもいい。
ビッグマウスが許されるのは、実力者だけだ。
最低限ファンの前では取り繕ってくれれば、それもアイドル業界内だけで抑えられるだろう。
「よろしい。
それでは、いいですね。
『SyngUp!』は、今回の『H.J.I.F』でソロ部門で参加します。
そこに参加している全ての人間のド肝を抜いてやりましょう!」
「当然です!
二人も抜き去って、私が優勝します!」
「はぁ…やる気はそこまで出ないけど、久しぶりに手毬と遊んであげないといけないから…ちょっとだけ、本気を出してあげる」
「…はぁ…仕方ありませんね。
でも、ちょうどいい機会かもしれません。
わたしも、
プロデューサーも言わせたいみたいですし、二人もそう思っているなら、言って差し上げます。
『わたしが上で、あなたが下です』と」
改めて今後の方針を共有したうえで、各々の意気込みを確認した。
これで後は変なことをしなければ大丈夫だろう。
…その変なことが往々にして起きるのが彼女たちだが。
「ありがとうございます。
それでは、今日は私が出しますので、ご飯でも食べに行きましょうか」
「いいの!?」
士気を挙げるためにも、ご飯を食べに行くことにしたが、その言葉にいち早く反応したのは月村さんだ。
だが、彼女の良いようにはならないかもしれない。
「ええ、ですが、秦谷さんが行きたいところにします。
少々、意地悪しすぎてしまったみたいなので」
秦谷さんを意地悪しすぎてしまったのは、他の二人も自覚があったようで、ばつが悪そうにしている。
秦谷さんは少し考えた後、月村さんを見てにっこり微笑んだかと思ったら、こちらを見て顔に影を作った。
「…前に雑誌で見たのですが、精進料理のお店があるみたいで、一度行ってみたいと思っていたんです」
「え!?」
今度は秦谷さんのターンらしい。
月村さんは目に見えて動揺して、秦谷さんに縋りついた。
「精進料理!?
美鈴! お願いだから他のところにして…!!」
「…まりちゃんが、わたしのこと大好きって言ってくれたら許します」
「美鈴大好き!!」
ノータイムで月村さんがそういうと、秦谷さんはにこにことほほ笑みながら縋り付いた月村さんの頭を優しくなでている。
その二人を見て、顔をしかめているのは賀陽さんだ。
私の表情がどうなっているのか、客観的に見てみたい気になるが、恐らく真顔になっている。
「うわぁ…キッツイわね…
…こんなことしてるから、子供に見られてるってわかっているのかしら…?」
「…ふふふ、プロデューサー、さっきの発言は撤回です。
この前、まりちゃんが好きそうなラーメン屋を見つけたので、そこに行ってみませんか?」
「ありがとう! 美鈴!!」
「…はぁ…まあ、たまにはいいわ」
どうやら話はまとまったらしい。
プロデューサーとして、アイドルユニット全員と初めて食事をするのがラーメン屋というのも、ちょっとあれだが、彼女らしいと言えば彼女らしいだろう。
「わかりました。
わかっていると思いますが、月村さん。
食べ過ぎたら明日以降で調整しなければいけないので、気を付けてください」
「わかってます!
…二人に勝つためにも、それぐらいクリアしてみせます」
そう言って博多豚骨のラーメン屋に行ったが、月村さんは調子に乗ってチャーシュー麺とチャーハンと餃子を頼んだ挙句、秦谷さんに唆されて替え玉を2回頼んだ。
…提示したプランの穴があるとしたら、月村さんが
それだけは何としても避けなくてはいけないので、食事の後、秦谷さんと協議して何とか月村さんの食事を調整することにした。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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アプリをそもそも入れていない
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どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX