『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
賀陽さんが満足して二人を開放するまでに30分かかった。
解放された二人は、少し物足りなさそうな顔をしているが、私が見ていることを思い出したのか顔を耳まで真っ赤に染めている。
「それで、わざわざ来て何の用かしら?」
そう言う賀陽さんも誤魔化しているようだが、耳が赤くなっている。
テンションが上がって勢いでやってしまったのかもしれない。
恐らくだが、最後にレッスンをつける日だったから、
自分の縛りも無視して、封じていた特技を使って。
その結果…月村さんが賀陽さんが欲している言葉を全て言ってしまった結果、起こってしまった事件と言っていい。
しかし、今日のレッスンの時間がもうそろそろ終わるということは、時間が迫っているということだ。
伝えなくてはいけないことがいくつかあるため、とりあえずはスルーすることにした。
…そうしないとまた中等部の生徒を夜遅くまで連れまわした疑惑が生まれてしまう。
「まず、今日で月村さんと賀陽さんの共同レッスンが終わるので、仕上がりを確認しに来ました。
月村さん、どうでしたか?
最初に話していた通り、コツは掴めましたか?」
「…何事もなかったかのように進めないでください…。」
「手毬、掘り返される前にきちんと説明したほうがいいわよ」
賀陽さんに囁かれ、月村さんは恥ずかしそうにしていたが、意を決して話し始めた。
「……燐羽とのレッスンで、大体のコツは掴めたと思います。
感情的に歌った方がいいところは感情を全面的に押し出し、そうじゃないところで少し温存気味に歌う。
体力づくりは継続してますが、今の段階でも『Luna say maybe』だけなら、最後まで歌い切れるようになりました」
「上々です。
予定していたよりも大分進捗がいいですよ」
「これぐらい当然です」
そう言って月村さんは胸を張っている。
さっきまでのしおらしい感じはすっかり消え、いつもの月村さんに戻っていた。
「賀陽さんはどうですか?
月村さんとのレッスンの総評は?」
「…そうね、得られるものが多かったのは事実。
…久しぶりに思い出したわ。
ふふ、思ったよりも、まだ、私はアイドルでいたいみたいね」
やはり、月村さんと賀陽さんはとても相性がいい。
少し場をセッティングするだけで、問題を改善させてしまった。
賀陽さんが、アイドルそのものを嫌いになってしまったわけではないということを知れたのは、大きな収穫だろう。
「そう思っていただけたのなら、何よりも勝る成果です」
「…りんちゃん…」
「美鈴、安心しなさい。
「…ちっとも安心できません」
「? 燐羽、どこか悪いの?」
「何でもないわ」
事情を大体察している秦谷さんは、賀陽さんを心配そうに見ている。
その心配する秦谷さんを流しながら、賀陽さんは月村さんを誤魔化した。
秦谷さんからすれば、まだまだ心配しなければいけない状況だろう。
だが、私からすれば少し猶予が伸びてやる気を出してくれたのなら御の字だ。
「ありがとうございます。
大体の進捗は把握しました」
そう言って三人を正面から向き合う。
今日の本題はここからだ。
「それでは、今月行われる『H.J.I.F
その言葉にどこかフワフワしていたような空気が、一気に緊張感にあふれ張りつめたものになった。
三人とも表情が真剣なものになっている。
「知っての通り、後2週間ほどで、1回目の
「それは…何故なんですか?」
「主な理由はいくつか挙げられますが、一番大きい理由は、
私の言葉に納得したように賀陽さんが頷いた。
「…なるほどね。
初星学園のアイドルコースの生徒なら全員が習得している、『初』を完璧にすることで、他の中等部の生徒との格付け代わりにするってこと」
「他の方がいる前では言い方を変えてほしいですが、意味は合ってます。
そして、それができないようであれば、『自分の持ち歌がないと勝てないアイドル』のレッテルを張られかねません。
変な難癖をつけられる可能性もあるので、
「はい」
「どうぞ」
挙手した秦谷さんに質問を促す。
「
「その通りです。
スケジュールの確認ですが、5月中旬と6月初旬に
6月最終週に『H.J.I.F』の本戦があります」
改めて確認するとかなりタイトなスケジュールに思える。
『H.I.F』より前倒しにしているからだろうか。
これでは1年生は参加できても、すぐに落選するだろう。
今度は月村さんが不安そうに問いかけてきた。
「…大丈夫なんですか?
楽曲の音源、まだできてないんですよね?
ダンスの振りは、この前教えてくれたので問題ありませんし、音源が直前になっても本戦には完璧にできるよう仕上げるつもりですけど…」
確かに予定では、来週完成する予定だった。
だが、アイドルたちが頑張っているのに私が何もしないわけにはいかない。
「現在、急ピッチで仕上げてもらっているところです。
授業中にもやり取りをさせてもらっているので、今週には仕上がります」
「本当ですか!?」
あの変人とのやり取りを授業中にも行うことは手間だったが、何とか先生の許可も得ることができたため、今週には仕上がる形にできた。
…友情だなんだと言うなら、学園に来てもらって直接やり取りしたいのだが、
秦谷さんから目を離せなくなっている以上、休日にお礼も兼ねて会いに行くしかない。
まあ、そんな私の苦労は、私だけに収めておけばいい。
嬉しそうに目をキラキラさせている月村さんを見れば、苦労した甲斐もあったというものだ。
「はい。
出来上がったらすぐに送りますが、その前に『初』を改めて習得…いえ、
いくら三人の実力が上位とはいえ、相手も
油断していると足元を掬われてしまいます」
「了解よ」
「わかってます」
「わかりました」
そう言って、意識を『初』に向かせる。
何せ
だが、一つだけ例外があるので、それについても伝えておく必要がある。
「後、先程、
もしそうなってしまったら、持てる全力を出してお互いに潰しあってください」
今回の『H.J.I.F』の目的は、月村さんがメインだが、ユニットメンバー個々人の能力強化だ。
ないとは思いたいが、どうしても潰し会いが発生してしまったらそこで成長してもらうしかない。
そうすれば、最低限の目的は達成できるだろう。
そんな目論見を立てていたら、月村さんがジト目で見ていることに気づいた。
「…担当アイドルに潰しあってなんて言うの、プロデューサーとしてどうなんですか?」
「あなた方好みの言い方をしたつもりですが」
「私たちをなんだと思っているんですか!?」
『
「…『SyngUp!』は中等部ナンバーワンユニットと問題児両方の性質を併せ持つ♣*1」
「ぶっ飛ばすわよ」
少しふざけてそういうと、賀陽さんにツッコまれてしまった。
だが、言わせてほしい。
「そう言うのであれば、もう少し素行に気を付けてください。
私が中等部の先生にこの1週間で何回呼び出されたか、わかりますか?」
最近、もはやルーティーンになりつつあるのだ。
中等部への呼び出しが。
自分でも起こしてしまっていたが、それにしても彼女たちの件で呼ばれることが多い。
「…そんなの…1回ぐらい?」
「それの5倍は呼び出されてます。
むしろ、最近、私は中等部の生徒だったんじゃないかと思うぐらい、中等部に出入りしてるんですよ。
わかりますか? 中等部の先生から、またあいつかと見られる気持ちが」
最初の3週間はそうでもなかったのだ。
呼び出されることもそう多くなく、月村さんの発言内容に気を付けるように注意を受けたぐらい。
だが、この1週間は別だ。
吹っ切れたのか、猫を被るのをやめたのか、精神的に安定して本性を出したのか、勝負と決まって気を張っているのか。
何が原因かはわからないが、授業をサボり、喧嘩を買い、輪を乱す発言を繰り返す。
これらによってほとんど毎日呼び出されているせいで、プロデューサー科に足を運ぶよりも、中等部に通っている気さえしてくる。
「うぐっ」
「月村さんもですが、秦谷さんも賀陽さんも、どうしてそんなに毎回問題ごとを起こすんですか?」
月村さんは周りに喧嘩を売るような発言をすることが多く、更に自分の努力量を他人にも強要する節がある。
秦谷さんは言わずもがな。
賀陽さんは発言が過激で顰蹙を買うことが多い。
「わたしは…プロデューサーが好きにしていいとおっしゃったので」
「別にそんな変なことを言っているつもりはないわよ。
ただ、ソロ部門に出ることが決まって、喧嘩を売ってくる子が多いから相手してあげてただけ」
反省の色が欠片もない彼女たちの様子を見て、くらくらしてくる。
まだ月村さんはばつが悪そうにしているが、他の二人は自分が悪いとはこれっぽっちも思っていない。
恐らくだが、元々中等部の先生方は、『
だが、圧倒的な実力の前に文句を言えなかったのではないだろうか。
いくら多少猫を被っていても、ここまで問題を起こすような素質があれば、文句の一つや二つは言いたかったはずだ。
そこに、これ幸いとばかりに
…ソロ部門の参加にしたのは失敗だったか…?
「…頭が…頭が痛い…」
「大丈夫ですか、プロデューサー?
ほら、こちらへいらしてください。膝枕をしてあげますよ」
「…気持ちは嬉しいですが、遠慮しておきます」
誰のせいで、と出かかったが、言っても意味がないことを悟ってひっこめる。
…大分脱線してしまったのでそろそろ方向性を戻そう。
「ふぅ…まあいいでしょう。
話を戻しますが、あなた方の今後の方針は2つ。
1つ目は『初』を完璧に仕上げ、他の中等部の生徒を蹂躙すること。
2つ目は各々のソロ曲を仕上げ、お互いに格の違いを見せつけること。
シンプルにまとめると以上になります」
「わかりました」
「了解よ」
「わかってます」
「あなた方であれば、全員が『H.J.I.F』の本戦に臨めると思っています。
ですが、相手もまた同世代のアイドル。
油断せずに、全力を出し切れるように調整していきましょう」
「「「はい」!」」
「それでは今日はこれで解散しましょう。
寮まで送ります」
そう言ってレッスン室を後にする準備を始める。
荷物を片付けてもらうように促し、戸締りの準備をする。
「別に送らなくていいよ。
大した距離でもないし」
「既に日が落ち始めていますし、面倒事に絡まれても困ります」
月村さんはレッスン帰りに送ることを伝えると、ほとんど毎回要らないと言ってくるが、そういうわけにもいかない。
納得できないようにむすっとしているが、こればかりは譲れない。
「プロデューサーって、本当に心配性だよね。
美鈴といい勝負してるんじゃないの?」
「こんなことで大事な担当アイドルがこけても困りますから」
出来る範囲で未然に防げることは防いだ方がいい。
それに、中等部の生徒を遅い時間に帰らせたとなっては、プロデューサー科の生徒としては失格だろう。
「そんなことありえないよ」
そんな私の心境は知らないであろう月村さんは、呆れたようにため息を吐いて反論した。
「もし、帰り道に他の生徒に喧嘩を売られたとして、売り言葉に買い言葉で喧嘩を吹っ掛けた様子をSNSに上げられたりしたら炎上するリスクが生まれます。
絶対しないと言い切れますか?」
100%あり得ない話ではない。
そして、今日の昼に中等部に行ったのは、月村さんが
「何? 『
なんでわざわざそんなこと言う必要があるの?
別に誰が相手でも勝てばいいだけなのは同じでしょ。
あ、それとも自信がないの?
と、同級生に言い放ったことが原因だ。
それに対して他の二人が止めなかったことも拍車をかけたらしい。
当然のように私の昼休みは説教につぶれ、3限目に危うく遅刻しかけた。
「………美鈴、今日の晩御飯は何?」
「ふふ、今日のお夕飯は鳥の照り焼きですよ」
それを思い出したのか、わざとらしく話を逸らした。
こんな調子で大丈夫だろうかとは思うが、彼女たちならやり遂げるだろう。
…既に後2週間に迫っている
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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アプリをそもそも入れていない
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どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX