『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
わたしたちのプロデューサーは、あまりいい噂を聞かない。
それは、『
根も葉もない、『コネ入学した』『親のコネで入って、好き放題している』といった噂は、わたしたちのプロデューサーになってから聞いた話です。
…プロデューサーがわたしたちの担当になってから2日目に、りんちゃんが話しに行ったのは、そういった噂を聞いたからでしょう。
りんちゃんは、誰よりも優しくて、義理堅くて、そして、わたしたちを誰よりも心配している。
りんちゃんがアイドルをやめたいと思ったのは、恐らく1年生の最後、
でも、わたしは、それに踏み込むことが怖くて、これまでの関係性が壊れてしまうんじゃないかと思ってしまって、踏み込めなかった。
踏み込んでも、わたしにできることなんて高が知れてる…りんちゃんの心を動かすまでには至らないと、そう思っていました。
そんな、りんちゃんの様子が変わったのは、プロデューサーが担当についてから3日目。
まりちゃんのお手本に歌ってあげる、と言った時は、まだ微睡んでいるのかと疑うほどでした。
どうしてそうなったのかわからなくて、どうやったらそう気持ちが変わったのかを知りたくて、プロデューサーのことを少し調べようとしたんです。
そんな時、プロデューサーの噂と、
そこで、良くない、
プロデューサーは
そうでなくても、まりちゃんか、りんちゃんに聞いたら、わかるように屋上でお昼寝をすることにしました。
屋上は、わたしたちがよく集まる場所でしたから。
案の定、プロデューサーは屋上に来られ、目が覚めたらすぐそばにいました。
そこから、まりちゃんのご飯についてお話しをした後で、りんちゃんを連れ込んでいた噂の件を確認して、そしてどうやって、りんちゃんの心を動かしたのか聞きました。
りんちゃんのプライバシーと言われて、詳しくは聞き出せませんでしたが、その時聞いた話は、今でも一言一句覚えています。
りんちゃんの心を少しでも開いてくれたことと、全てを『
だから、世界中全ての人を、わたしで塗りつぶす前に、
そうすれば、必然的に『
プロデューサーはまりちゃんが一番かわいいようで、まりちゃんの面倒を重点的に見ていました。気持ちはとてもよくわかります。
わたしが一人でもできてしまうから、ということもあるのでしょうが、まりちゃんのレッスンの状況をよく聞かれていました。
プロデューサーがそばにいてほしいと言ったのは、少し驚きましたし、理由を聞いたら用心しすぎではないかと思いましたが…。
ソロ部門に出ることを決めたのも、まりちゃんの成長する機会を増やすためだと、すぐに気づきました。
わたしはユニットで出たかったので反対しましたが、りんちゃんも巻き込まれては頷かざるを得ません。
あの時反対しきれなかったことを後悔したのは、まりちゃんのライブを見始めて、10秒もしない時でした。
完全装備でまりちゃんのライブに臨んだ、わたしとりんちゃんを待っていたのは、歌いながら消えていく、まるで流れ星のような月。
歌いながら、体を燃やし尽くしているかと錯覚するほどの激しさで、すべてを完全燃焼させながら歌っているまりちゃんを見て、どうしてあの時反対しきれなかったのかと、プロデューサーに丸め込まれてしまったのかと。
楽屋に飛び込んだ私は、そこで轟沈しているまりちゃんに駆け寄りました。
そして、プロデューサーに詰め寄ったのですが………わたしが正しいのか、プロデューサーが正しいのか、わからなくなったのです。
ですから、今日、ここで、まりちゃんとりんちゃんと、話をしないといけません。
誰が正しいのかではなく、お互いの気持ちをすべて吐き出すことが…ぶつかり合うことも時には必要だと知ったから。
もう、目を逸らしてはいられなくなったから。
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「まりちゃん…」
「美鈴…」
1回目の
眠たげな眼をこすって、ママ…もっと寝かせて…と言った月村さんを、私から引き継いでそっと優しく起こした秦谷さんは、目を覚ました月村さんと目が合った。
自分が寝ぼけて言ったことを自覚したのか、飛び起きた月村さんは、秦谷さんと相対した。
「……あれ、私どれぐらい寝てたの…?」
「2時間ぐらいです」
私が言った言葉を、寝起きの月村さんは咀嚼するのにたっぷり時間を要して、目を丸くして賀陽さんを見た。
「え、じゃあ、美鈴も燐羽も、もうライブ終わってる…?」
「当たり前でしょ。
すやすや眠っているあなたを叩き起こすのはかわいそうだったから、そのままにしておいてあげたわ」
「プロデューサー!
どうして起してくれなかったんですか!」
そう言って怒鳴る月村さんだが、私も可能な限り起こそうとはした。
「起こしましたよ。
あまりにも疲労困憊だったようで、ピクリともしませんでしたが」
「うぐっ」
泥のように眠っていた彼女は、体をゆすったぐらいでは起きなかったし、観客席で賀陽さんが秦谷さんのライブを、秦谷さんが賀陽さんのライブを見ていたため、月村さんを見ていたのは私だった。
要するに、私はソロデビュー初日の彼女たちのライブを観客席で見ることはなかったのだ。
「それと、結果がすでに出ています。
全員、『1回目の
「‼…当然の結果です。
心配なんていらなかったでしょ?」
「…心配しかなかったですよ」
「うっ!」
そうして、反論できなくなっている月村さんに、普段圧を出しているときよりもさらに強い圧を出している、秦谷さんが話しかける。
「…まりちゃん、お話があります」
「…美鈴……もしかして怒ってる…?」
怯えている月村さんは、ライブであれだけ輝いていた人物と同一人物には思えないほど弱弱しかった。
「ええ、とても。
どうしてあんなに…あんな…すべてを出し尽くして、いつ死ぬかもわからないような全力のライブをしたんですか?」
秦谷さんのその質問には、彼女の想いが詰まっている。
無理をしないでほしい、傷つかないでほしい、心配かけないでほしい、と秦谷さんの月村さんを想う優しさがその質問には詰まっている。
「…アイドルが、ファンに一番いいライブを魅せようとするのは当然のことでしょ?
それに…そうでもしないと、あなたたちは私を置いて行っちゃう。
だから、全身全霊の全力で挑んだんだ。
そうじゃないと、挑んだ意味がない」
だが、月村さんの返答は、それを受け入れるものではない。
「いつもそうやって…自分勝手に暴走して…わたしが…どれだけ心配しているか…」
月村さんの返答を受け止めたくない秦谷さんは、そう月村さんに詰め寄る。
だが、月村さんには月村さんの想いがある。
秦谷さんが月村さんを想うのと同じように。
「…美鈴には、悪いと思ってる。
燐羽も…心配してくれてるの、最近やっとわかってきたし、悪いとは思ってる。
でも…私は止まらないよ。
ううん、止まれないんだ。
憧れに、あなた達に勝って、一緒に…胸を張ってトップアイドルになりたいから」
「…! まりちゃん…」
一緒にトップアイドルになりたい。
これは、月村さんと秦谷さんの共通の想いだ。
そこに至る過程に、方向性に違いがあろうとも、お互いの終着点は同じ。
「それに、プロデューサーも、もっと頑張れって言ってくれるから、その想いに応えたい。
私を、私なんかを、信じてくれるから、それの応え方を、これしか知らないから」
そう言って私の方を見ている月村さんと目を交わす。
まだ私じゃなくて、二人に言いたいことがあるだろうと、二人に視線を向けて、続きを促した。
「あと…今じゃないと言えないと思うから言うんだけど、美鈴、燐羽、今までいっぱい助けてくれて、ありがとう。
今日、初めて一人でライブをして気づいたんだけど、私、二人に助けてもらってばっかりで…今日も一人だけだったら、多分失敗してたと思う。
プロデューサーが発破をかけてくれたんだけど、普段は燐羽と美鈴が、緊張しないように助けてくれてたんだって、やっとわかって…ステージの上だけじゃないところでも、いっぱい助けてくれてたんだってわかった」
「…まりちゃん…わたしの方こそ、いつもまりちゃんから色々貰ってるんですよ。
ですから、それはお相子です」
「…やっと気づいたの?
まあ、でも私も好きでやってることよ、気にしなくていいわ」
「……はぁ、二人とも素直じゃないよね。
折角お礼言ってるんだから、素直に聞けばいいのに」
「手毬にだけは言われたくないわ」
「どういう意味!?」
そう言って騒ぎ始めた月村さんを見ながら、月村さんの想いを受け、諦めたかのように、すべてを受け止めた秦谷さんは、ゆっくり、大きく頷いた。
「…なるほど…よくわかりました。
プロデューサーは、わたしたち3人、全員がそれぞれ求めている求め方をしてくれていたんですね」
「そうなるようには努めてきました。
それがどれだけ難しいことであるかは、さっきやっと理解したところですが」
あんなに胃がねじ切れそうになるかと思うライブは初めてだった。
後の二人のライブを、楽屋で見ていた時はほとんど心配するようなことはなかったことが、せめてもの救いだ。
「まりちゃんの全力のライブは、見ているだけで辛くなるでしょう?
それでも、全力を出させ続けるのですか?」
「それが、月村手毬の、『SyngUp!』の成長に繋がるのであれば、当然してもらいます。
私は、『
…ですが、本当に危険な時は止めますよ」
それでも、私は月村さんに同じようなライブを強いるだろう。
それが、彼女にとって一番輝ける方法だから。
「あなたにその判断ができるのかしら?
今日のライブだって、どうせステージから掃けたら崩れ落ちたんでしょう?」
そこに横やりを入れたのは、さっきまで月村さんを窘めていた賀陽さんだった。
「よくわかりましたね」
「どれだけ手毬を見てきたと思ってるのよ。
ライブの終盤なんて、本当にフラフラだったじゃない」
「ですので、舞台袖でスタンバイしてました。
崩れ落ちた彼女を支えられるように」
私の言葉に賀陽さんの表情が険しくなる。
「…いつもそれができると思ってるの?」
「いつもするつもりはありませんよ。
弱点をそのままにされたのでは困りますから。
ですが、支えられる場面では支え続けます。
それに、まだまだ頑張り足りないようですから、もっと頑張ってもらわないといけません」
当然、こんなに上手いこと毎回支えられるわけはない。
今回はたまたま上手くいっただけだ。
だから、月村さんにはもっと頑張ってもらって、欠点を克服してもらう必要がある。
「…そう、その言葉、忘れないように気をつけなさい」
とりあえずは納得したのか、賀陽さんの矛先が月村さんに移った。
「手毬、私が言いたいこと、わかる?」
「…心配かけてごめんなさい…。
でも」
「必要だったんでしょ?」
月村さんの言葉を、賀陽さんが拾って続ける。
「うん」
「はぁ…言いたいことは、山ほどあるけど、とりあえず置いておいてあげる。
私には余計なこと、と思ってても、あなたには必要なんでしょ?」
「…うん」
「なら、せめてもうちょっと見ていられるライブにしなさい。
美鈴がライブ中に泣き出したりなんてしたら、折角のライブが台無しよ」
「りんちゃん!?」
いきなり振られた秦谷さんはびっくりしながら、賀陽さんの方に振り向く。
「…ごめんなさい」
月村さんがそう弱弱しく言うと、賀陽さんは笑った。
「別に怒っているんじゃないわ。
ただ、あなたを心配している人がいるってこと、しっかり理解しておきなさい。
そうじゃないと、いつか大舞台で盛大に失敗することになるわよ。
足を引っ張ったら」
「殺すんでしょ」
今度は賀陽さんの言葉を、月村さんが拾って続ける。
「そうよ。
よくわかってるじゃない」
そう言って月村さんを撫で始めた賀陽さんを、秦谷さんが睨み始めた。
「りんちゃん、あんまりまりちゃんに変な言葉を教えないでください。
最近、クラスでトラブルが多いのは、りんちゃんがまりちゃんに変な言葉を教えたからでもあるんですよ」
「勝手に真似しているのはこの子よ。
美鈴だって、授業サボってばかりで怒られてるじゃないの」
「ねえ、子ども扱いしないでほしいんだけど」
反論する賀陽さんだが、撫でる手を止めない。
撫でられながら月村さんが反発しているが、二人とも相手にしていなかった。
「わたしはいいんです。
授業で教わるようなこともないですし、プロデューサーからも好きにしていいと言われていますので」
「美鈴って本当に傲慢よね。
教わることなんてないから授業出ないでサボるって、先生が聞いたら泣くわよ。
プロデューサー、本当にいいわけ?
美鈴、高等部に行ってもサボり続けそうだけど」
「言って聞くようなことはないとわかっているのですが…もう少し…こう…何というか…手心というか…*1」
「まぁ…プロデューサーともあろう方が、自分の発言に責任を持たないなんてこと…ありませんよね?」
「無視しないでよ!」
怒る月村さんだが、撫でられながら言っていても説得力は皆無だろう。
「ほらほら、まりちゃんはこっちですよ」
撫でる賀陽さんの手を止めて、月村さんを引き寄せた秦谷さんは、賀陽さんがしていたのと同じように撫で始めた。
「子ども扱いしないでってば!!」
「諦めなさい。
文句があるなら、私たちに勝ってから言えばいいでしょ?」
「そうですよ。
まりちゃんを撫でる権利は、誰にも、まりちゃんにも譲りません」
「この…人が真剣に話しているときに…!」
そう言いながらも無理やり引き剝がすことをしない月村さんは、事務所に戻るまでされるがままだった。
…体力を使い果たしていたので、もしかしたら引き剝がせないだけだったのかもしれないが、顔が綻んでいたので多分違うのだろう。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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アプリをそもそも入れていない
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どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX