『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される   作:プロデューサー科のもの

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1話目

 

「『SyngUp!』の情報が欲しい…ですか?」

 

「はい、差し支えなければ、可能な範囲で情報提供をいただければと思います。根緒先生。」

 

 学園についた私は、さっそく「根緒亜紗里先生」を訪ねた。

 彼女は、初星学園のプロデューサー科における教師であり、『学マス』ではプレイヤーであるプロデューサーのサポートをしてくれていた。

 

 調べたところ、プロデューサー科は人数が少ない。そのため、恐らく入学してからの数日は彼女からガイダンスを受けていただろうと推測した。

 それなら、質問しても不自然ではないだろうと判断してのことだ。

 

 …他の教師についての情報をほとんど持っていないというのも大きな理由ではあるが。

 

「あさり先生でいいですよ。そうですね…先生から話せることはそう多くはありません。アイドル科の生徒さんたちとは、そこまで関わりも多くありませんので…。ネットでもわかるような情報以上のことはお話しできませんね…もし、プロデュースしたいのであれば、自分で直接確かめたほうが良いですよ」

 

「…そうですね。確かに、そのほうが確実ですね。ありがとうございました。根緒先生」

 

「あさり先生でいいですよ」

 

「尊敬するべき先生を、いきなり名前では呼べませんよ。またお聞きしたいことが出たら、伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 他の教員を同じように呼んでしまわないように、距離感は大事だと判断して敢えて断った。

 

「他のプロデューサーくんたちは呼んでくれるんですけどね…ええ、もちろん、いつでも先生を頼ってくださいね」

 

 そう言って根緒先生は去っていった…と思っていたら、再度こちらに振り返った。

 振り向いた後に少しの沈黙があり、話そうか迷っていそうな顔をしていた。

 少しして根緒先生が口を開く。

 

「…プロデューサーくんは、『SyngUp!』のプロデュースをしたいんですか?」

 

「はい。彼女たちのライブを見て、私が言うことはおこがましいかもしれませんが、まだまだ伸びると思いました。その輝きは、次期『一番星(プリマステラ)』にも届くだろうと」

 

「そうですか…彼女たちのプロデュースを試みたプロデューサーくんたちはそれなりの数いましたが、()()()()()()()と言っても、ですか?」

 

「諦めたというのは…」

 

「素行不良、暴言、他生徒との不和…まあそのあたりですね。特に、去年行われた対バンライブから、高等部や卒業生たちの不興を買ってしまったようです」

 

「…なるほど」

 

 去年おこなわれた対バンライブ…恐らく、「秦谷美鈴」のストーリーであった「Campus mode!!」を歌う権利と「SyngUp!」解散をかけた対バンライブのことだろう。

 歌を教えに来てくれた卒業生に、「でも、先生より燐羽のほうが歌上手いですよね?」と3回も言い返して行われてしまった対バンライブ。

 それに勝利したであろう、「SyngUp!」は得るものも多かっただろうが少なくない代償を払ったということだ。

 

 プロデューサーがつかなくなったのもそれが理由だろう。

 実際、周囲との関係が危うく、ちょっとしたことで燃え上がりそうなアイドルのプロデュースは怖いとしか言いようがない。

 

 だが…しかし…それでも…

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()*1

 

 根緒先生の目を見て、そう返した。

 意図して、力強くはっきりとそう宣言する。

 『学マス』でプロデュースしていた時に心を動かされた台詞を意識した言葉だったが、今の私に言い聞かせるために、ちょうどいい言葉だった。

 

 先輩たちが諦めたからと言って、私が諦める理由にはならない。

 あの輝きをより輝かせるために、もしかしたら()()()()()()()()()()()()だとしても、今度こそ悔いがない道を選びたい。

 

 根緒先生は、少し驚いた様子でこっちを見る。

 目を合わせて、そのまま満足そうに頷いた。

 

「その想いがあるようなら、余計な心配でしたね。プロデュース、頑張ってください!」

 

「はい、ご助言ありがとうございました」

 

 そう言って頭を下げた。

 そして、根緒先生は今度こそ去っていった。

 

 

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 その後は普通に講義を受けるために教室に向かった。

 講義と言っても人数が少ないため、高校の授業と大して変わらない形式でのものだった。

 

 その際に知ったことだが、どうやら私は俗にいう『ぼっち』という奴らしい。

 少人数規模の講義ではあるものの、仲の良いプロデューサー科の生徒たちは、自由な時間などではそれぞれ自由に話していた。

 私が教室に入る際も、入る前までは楽しそうに雑談していた。

 

 …まさか、私が部屋に入った瞬間に誰もが一言も話さなくなるとは思わなかった。

 

 最低限、「おはようございます」とだけ言って入ったのだが、誰からも返されないとは思わなかった。

 周囲に目を向けたが、誰もが目を合わせようとしない。

 

 …一体、私は何をしてしまったのだろうか?

 

 まだ、入学してから1週間程度しかたっていない期間のはずだが、その僅かな期間にここまで避けられることがあるのだろうか。

 考えても仕方がないことだが、私は記憶がない昨日までの私を呪うしかできなかった。

 

 改めて横目で周囲を確認する。

 よく見ると、同じ大学生とは思えないような人もいたので、恐らく年上なのだろう。

 そういえば、現役学生以外にも、仕事でプロデューサーを実際にしていた人がプロデューサー科に入学しながら仕事をするみたいな場合もあるってどこかで書いてあった気がする。

 

 同級生にあたる人が、既に働いていて実際に働いていた時の知見を持っているのは、とても恵まれていることかもしれない。

 何せ、先達から得られるものは多く、プロデュースする上で有益な情報を得られるに違いないからだ。

 

 …問題は、その同級生と話すことが難しい点なのだが。

 

 その後も、講義が始まるまで沈黙が続き、そのまま教師が入室して講義が始まった。

 

 私は初めてプロデューサー科の講義を今回から受ける形になってしまったため、他の生徒たちから何歩も遅れをとっている。

 他の生徒たちに聞くこともできない中、できることは教師が配布した資料とにらめっこし、必死にルーズリーフに書き綴ることだけだった。

 

 

 

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「この数日で何かあったのでしょうか?」

 

 私、根緒亜紗里は先程まで話していたプロデューサーくんを思い返した。

 そこまで多くない、プロデューサー科での現役入学。

 成績優秀で、プロデューサーとしての知識はあるものの、熱意に乏しい生徒というのが、教師間での彼の評価でした。

 他の生徒に比べ、積極的に教師に聞きに来ることもなく、プロデュースするアイドルの目星も立てておらず、それどころかアイドルたちの情報収集もしているように見えない…。

 成績優秀なだけのやる気がない生徒と評価している人もいたぐらいです。

 

 でも、それ(成績優秀な)だけでは、初星学園プロデューサー科に現役合格なんてできない。

 彼は学園長との面接で高い評価を受けており、それが合格の大きな要因になりました。

 ですから、彼はコネ入学が疑われたこともありましたが、他ならぬ学園長から否定の言葉があったため、その噂も立ち消えたといいます。

 

「彼には光るものがある…それが、アイドルたちをより輝かせるための、重要な助けになるはずじゃ」

 

 学園長のその言葉に否定的な方も多かったのですが、今なら理解できるかもしれません。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のも、こうなることをわかっていたからかもしれませんね。

 彼がいきなり、「SyngUp!」のことを聞きに来た時は驚きましたけど、その眼には昨日までなかったやる気に満ちた決意に溢れてました。

 

「『男子三日会わざれば刮目してみよ』とは言いますが、それにしても急すぎますね…」

 

 優秀なプロデューサーくんが増えてくれたほうが、アイドルたちをより輝かせてくれる。

 私ができることはそのサポートなので、今日も一日頑張ろう。

 そんなことを考えつつ、ふと思い出した。

 

「そういえば、彼、コネ入学が疑われた上に、やる気のない態度で他のプロデューサーくんたちから嫌われていたような気がしますが…大丈夫でしょうか…?」

 

 「SyngUp!」の娘たちと同じような状況になっている、彼女たちのプロデューサーを希望している彼を思って、私はそう呟きました。

 

 

 

 

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 針の筵とはこのことを言うのだろう。

 

 かろうじて講義を乗り越えた私は、講義時間中になんとか他の生徒たちと和解できないか試すべきだと考えた。

 これから、短くない時間をこのプロデューサー科で過ごす以上、不和を生んだまま過ごすことは好ましくない。

 また、プロデューサーとは主に人を繋げる仕事だ。

 

 アイドルとファンを、アイドルと作曲家を、アイドルと音響を、アイドルとスタイリストを

 それらを繋げて、売り出す。

 そうしてさらに大きな輪を作っていく。

 

 …そんなプロデューサーが、ボッチのままでは必要な時に助けになってくれる人もいなくなってしまう。

 それだけは何としても避けなければいけない。

 

 そう思って私は周囲を見渡すが、誰も目を合わせようとしない。

 それどころか、嫌悪感を持った目で見ている者もいる。

 私は、これが根深い問題になると感じ、すぐに解決させることはできないだろうと察した。

 

 …諦めて、今後のことを考えよう。

 現在は俗にいう1限目と2限目の間の時間。

 10分休憩を挟んだ後に、午前最後の講義を受ける。

 今日は4限目まであるため、全部が終わるころには中等部では放課後のレッスンになっているだろう。

 

 「SyngUp!」は「月村手毬」がレッスン狂いな面があるため、恐らく放課後に会いに行けるはずだ。

 問題があるとすれば、義理堅い「賀陽燐羽」はレッスンに付き合っているかもしれないが「秦谷美鈴」はいない可能性があることだろう。

 高等部の時なら、晴れ空が広がる今日は確実にいない。中等部の時はまだそこまでサボり癖がなかったはずだが、もしかしたらサボっていても不思議ではない。

 

 これからやることは、講義を受けて遅れを取り戻しつつ、放課後の『交渉』に向けて思考をまとめることだ。

 確実なものは何もないが、できる限り最善を尽くしていかなければ、「SyngUp!」のプロデューサーにはなれないだろう。

 肩書だけでは意味がない、本当の意味で彼女たちのプロデュースを行うのであれば、足を止めていられる時間はない。

 

 私は2限目の講義の教師を視界に収めつつ、新しいルーズリーフを()()取り出した。

 

 

 

 

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 講義が全て終わった。

 相変わらず針の筵のような状態で、昼食も当然のようにボッチ飯だった。

 学内にある購買でパンを購入し、自販機でお茶を購入してルーズリーフと睨めっこしながら昼食を摂った。

 

 コミュニケーションに必要な時間を取られなかったおかげか、『交渉』についてある程度まとまったと思う。

 『交渉』のための材料も作ったが、これが必要になるかはわからないし、渡してもプロデューサーになれるとも限らない。

 

 …それに、これは『ズル』だ。

 私が持っている知識があったからできることであって、私が作り上げたものではない。

 だが、彼女たちの手助けになるかもしれないし、私が考えているプランでは必要になるかもしれない。

 

 時間も足りなかったし、技術も当然足りなかったから完全なものにするためには、専門家の協力が必要なのは間違いない。

 できる範囲でのことはやったと信じて、私は中等部へ足を運んだ。

 

 …終ぞプロデューサー科の生徒たちと言葉を交わすことがないまま、プロデューサー科を後にした。

 

 

 

 

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 初星学園中等部、普通科。

 1~5組で構成されているこの学科は 各クラス30名程度で構成されているが、普通科の中にはアイドルコースがある。

 

 アイドルを目指すためのアイドルコースの者は、1組にのみ在籍しているため、1組の生徒は事実上アイドル科と言っても過言ではないだろう。

 

 中等部に入り、念のため職員室で教師の許可を得てから、校内を回る。

 持ってきたガイダンス資料にも、大体の見取り図は乗っていたが実際に足を運び場所を覚える。

 放課後ではあるが、まだ校内に生徒は大勢残っており、それぞれ思い思いの時間を過ごしているように見えた。

 

 その中でも特徴をあげるとするならば、どの学年も1組の生徒だけ教室に誰もいない。

 他のクラスの生徒たちは、教室に残って雑談などをしている生徒が多いが、1組だけもぬけの殻の状態だった。

 

 やはり、中等部からアイドルを目指すような子たちはやる気が違うんだろうな。

 

 そんなことを考えながら、レッスン室に足を運ぶ。

 レッスン室と一口に言っても、ダンスレッスンやボイスレッスン、ビジュアルレッスンなどで分かれている。

 さらに、それぞれのレッスン室に①、②と番号振りがされており、レッスン室の多さに驚かされる。

 

 外からレッスン室を眺めながら歩いているうちに、目当ての部屋を見つけた。

 

 「ボイスレッスン室③」

 

 そう書かれた教室に、「SyngUp!」の3人が揃っているのを見つけたのだ。

 

*1
葛城リーリヤの代表的な台詞『わたしに、才能なんてない。でも、それは前提だから。--諦める理由には、ならない』

学マスのストーリーはどの程度進めていますか

  • アプリをそもそも入れていない
  • どのキャラも親愛度10未満
  • 特定のキャラのみ親愛度10まで
  • 特定のキャラのみ親愛度20まで
  • 全キャラ親愛度20まで
  • 特定のキャラのみ親愛度27まで
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