『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
21話目
『藤田ことね』
『学マス』を語る上での重要人物であり、『月村手毬』とも『秦谷美鈴』とも何かと縁が多い人物だ。
金髪のおさげが特徴的で、お金が大好きな、『アイドルマスターシリーズ』の『学マス』で、俗にいう『信号機』の『黄色』担当だ。
色々と他にも重要なことはあるが、何よりも重要なことは彼女は、学マスのメインストーリーともいえる『初星コミュ』にて、『月村手毬』とユニットを組んでいるということだ。
それのせいで、元ユニットメンバーとなった『秦谷美鈴』とも諍いめいたものがあったり、『許しませんよ、藤田ことね』という実際は言ってない幻のセリフがネット上で横行していた。
何故、彼女のライブをチェックしていたのかというと、理由は簡単だ。
彼女を…『SyngUp!』を高めるための
そのための下調べとして、彼女の情報の精査と、ライブの確認をしたかった。
恐らく、完成自体は今回の『H.J.I.F』には間に合わないだろう。
だが、同年代で、素質があって、ライバルになれそうな人物を今の段階では他に知らない。
来年であれば豊作なのでいくらか見繕うことはできるだろうが、今の段階では彼女以外に適任を知らない。
彼女を仕立て上げるプランは既に立てている。
だが、問題を挙げるとするなら…。
「プロデューサー?
どうかされましたか?」
ほぼ間違いなく、今目の前にいる秦谷さんの逆鱗を剝がすことだ。
あのライブから、2日経った今日、当然の権利のように授業をサボっていた彼女を事務所に誘導して、事務所内で作業をしていた。
秦谷さんは相変わらず、のんびりとマイペースにレッスンや授業を流している。
そんな彼女は、ついに事務所内に自分用の毛布とクッションを持ち寄り、自分専用の寝床を作っていた。
毛布に包まりながら、クッションを枕代わりに目を瞑っていた彼女が、私を見つめている。
わかり切っていることだが、秦谷さんは独占欲が…
そんな秦谷さんに、
「プロデューサー?
何か、失礼なことを考えていませんか?」
勘も鋭い。
隠してことを進めて下手にバレるよりは、先に言っておいた方がいいだろう。
前回のこともあるので、もし、隠して進めてバレたりなんかしたら、冗談抜きで刺されかねない。
「…秦谷さん、仮に、の話なのですが」
「?
なんでしょうか?」
そう言いながら、毛布から出て私の隣に座った秦谷さんは、自分の毛布を畳みながら話を聞く姿勢を作っている。
「もし、私が担当アイドルを増やしたいと言ったら、どうしますか?」
「…へぇ…プロデューサーは、『
いまのこの、大事な時期に」
事務所内の空気が、夏も始まろうという時期なのに一層寒くなった気がした。
秦谷さんの目からハイライトは消えている。
もう慣れてきてしまったし、こんな状態でも秦谷さんは可愛いと思ってしまうのだから、大概私も頭を焼かれている。
軽く探りを入れるだけのつもりだったが、こうなってしまっては、秦谷さんに協力してもらうように動いた方がいいだろう。
上手くいくかどうかは…頑張るしかないが。
「隠し事をあまりしたくないので、もう言ってしまいますね。
『
「それは…何故でしょう?」
「ユニットメンバー同士で競うことも重要ですが、
最後に争う相手ではない。
むしろ、今回の『H.J.I.F』が終わったら、ユニットの練習に精を出してもらうことになります」
そう言うと秦谷さんは考え込んで、口を開いた。
「…なるほど、ユニットメンバー以外にも、競える相手が必要…百歩譲って、それは受け入れましょう。
ですが、それをあなたが担当する必要はないはずです」
「そうですね…普通に優秀なアイドルであれば、そうでしょう」
私の言葉に、秦谷さんの頭に疑問符が浮かんでいる。
「?
この前ライブを見せていただいた、花岡ミヤビさんではないのですか?」
…確かに、先の話だけでは、前に渡したライブ映像の件と連想するのは不思議なことではない。
危うく花岡ミヤビさんが秦谷さんに目を付けられるところだった…。
「ええ、その人ではありません。
彼女のことは、正直なところあまり詳しくないので」
「では…誰なのでしょうか?」
「ええ、担当したいと考えているアイドルの名前は、『藤田ことね』さんです。
ご存じですか?」
既に軽い下調べはしており、秦谷さんと関わりはあまりなさそうだと確認しているが、直接聞いてみることで、客観的な印象も確認しておいた方がいいだろう。
秦谷さんは思い出すように頭を捻っていたが、少しして人物像が浮かんだようだった。
「……クラスメイト…なのはわかりますが、関わりはないですね。
彼女は…あまり言っていいのかわかりませんが、成績はよろしくなかったはずです。
わたしたちと競い合えるレベルにはないと思いますが」
「そうでしょうね」
秦谷さんの評価は、現状の『藤田ことね』の正当な評価だ。その評価は今のところ正しくはあるが、そのまま終わることはないと確信めいたものがある。
私が秦谷さんの評価に同意すると、秦谷さんは少しの苛立ちを隠しながら続けた。
「それでは、担当する理由はないでしょう」
「このままでは、藤田ことねさんは中等部で、特に何もできることもなく、成績も底辺のまま、下手すると高等部に進学することすら怪しいかもしれません」
後半は可能性がある程度だし、もしその方向になるようなら、『十王星南』あたりに話をつけなくてはいけない。
何もしなくても、高等部に進学した後で勝手に才能を開花させることも、十分考えられる。
だが…こんなわたしでも
「ですが、才能で言えば、秦谷さんや賀陽さん、月村さんにも匹敵するレベル…いえ、下手するとあなた方を超える可能性すらある逸材です」
さらに秦谷さんの瞳から色が消え、漆黒の闇が私を見ている。
室内の温度も、さらに下がったように感じ、これを任意でできるなら冷房なんていらないなと場違いなことを考えていた。
目のハイライトが消えた秦谷さんが、ゆっくりと口を開く。
「…いま、なんと?」
ただ、それだけの言葉なのに言葉に秘められた圧が尋常ではない。
だが、ここで引いてしまっては意味がなくなってしまう。
「才能だけなら、あなた方を超える可能性のある逸材です」
「……へぇ…わたしたちよりも、才能があるアイドルをスカウトしたい…と」
…何を言っているのだろうか。
私は、何が起ころうと、彼女たちの担当をしていく以上、彼女たちが一番輝けるためのプロデュースをしていくつもりだ。
それは、担当が増えたとしても、例外ではない。
「そういうわけではありません。
どれだけ『
仮に才能が相手の方が秀でているとしても、『
こういう時はストレートにそう言った方が、秦谷さんへの効きがいい。
言っていて少し恥ずかしい気もしたが、説得できる可能性を少しでも上げられるなら構わない。
案の定、攻勢に出ているときは強い秦谷さんだが、受けに回ると弱いのか、照れているようで顔を赤くしていた。
「………それぐらいでは、誤魔化されませんよ」
「嘘偽りのない本心ですよ。
それに、担当すると言ってもそこまで全部が全部面倒を見るつもりもありません」
「それは、些か不誠実ではないでしょうか?
担当するなら」
「一生面倒を見るつもりでいろと、秦谷さんならそう言いますよね」
「わかっていただけているようで何よりです」
秦谷さんの言うことは尤もだ。
本来、担当アイドルとしてプロデュースをするのであれば、いま彼女たちにしているように、全身全霊でプロデュースしていくのが、正しい姿なのだろう。
秦谷さんは、担当プロデューサーとの関係を、かなり重たく考えているので、猶更反感を買うのはわかっていた。
だが、『藤田ことね』の問題をすべてを解決させるには、私じゃない、
あくまで私は、そこまでの
「彼女の問題に関しては、
「結ぶだけで…どういう意味でしょうか?」
「プロデュース契約をする上で、あなた方には不要だったものが、彼女には必要だということです。
それに、残りのうち2割は、秦谷さんが解決してくれます」
秦谷さんは身内に甘い。
幼馴染の月村さんだけに飽き足らず、ユニットメンバーになった賀陽さんも甘やかしている。私に膝枕をしようとしたこともあるぐらいだ。
『秦谷美鈴』の話でも、2組全員の体重を増加させるぐらい、全方面に甘やかす攻撃を行っていた。
打算だが、藤田さんが私の担当アイドルになった場合、何だかんだ甘やかすのは彼女だろう。
「わたしに、藤田ことねさんの面倒を見ろと…?」
「正確には、面倒を見ざるを得ない状況になると思います。
秦谷さんから見ると、それだけ酷い状況だと思いますので」
打算めいた話をして秦谷さんの眼を見る。
そこには普段通りのハイライトが戻っていたが、ジト目で私を見ていた。
「……プロデューサー、さっきから煙に巻こうとしていませんか?
具体的に、どういうことか説明していませんよ?」
「そういうわけではないのですが……直接見てもらった方が早いかと」
「……午後の授業に、久しぶりに出てきますね」
そう言って秦谷さんは椅子から立ち上がると、膝に畳んでいた毛布を椅子の上においた。
荷物を持って、久しぶりに午後の授業に参加しようと事務所を出ようとする彼女に声をかける。
「それでは、その時に藤田ことねさんに予定が付く時間と日程を聞いてもらえますか?」
「……今度の夕食、まりちゃんとりんちゃんも入れてどこかに連れて行ってくれるならいいですよ」
「ええ、もちろん。
高級料亭とかじゃなければ、どこでも好きなところに連れていきましょう」
「楽しみにしてます。
それでは、失礼しますね」
「ではまた後で…秦谷さん」
秦谷さんはにっこりと笑いながら、事務所の出入り口に向かって歩き始めていた。
そんな彼女を送り出そうとして、呼び止める。
「?
どうかされましたか?」
「誰でも簡単にダメになる方法があるのですが、知っていますか?」
私の質問に対して、意図を図りかねているようだが、考えて秦谷さんは答えを出した。
「そうですね……精神状態が悪くなる…とかでしょうか?
お友達と喧嘩をしてしまったとか。
焦ったり不安になったり……もし、まりちゃんと喧嘩してしまったらと思うと……ダメになってしまうかもしれません」
「それも方法としてはありかもしれませんね。
ですが、お友達がいないような人でも、誰でも簡単になる方法があるんですよ」
暫く考えていたが、そこまで興味がないのか、すぐに首を振った。
「……それは、なんでしょうか?」
「答えは、寝ないことです*1。
睡眠時間が短いと、人間は簡単にダメになります」
私の答えを聞いて、頷きながら理解を示していた。
「なるほど…わたしには縁がないことですね。
たっぷり睡眠をとっていますので」
「ええ、
「……ああ、なるほど。
秦谷さんには、と強調して言うと、秦谷さんは私の意図を汲んでくれたようで、目を細めながら私を見た。
「わかってくれたようで何よりです」
「あなたの担当アイドルですので。
それでは改めて、失礼しますね。
「ええ、
そう言って今度こそ事務所を出る秦谷さんを見送る。
彼女は不服そうではあったが、私の頼みを無下にはしないはずだ。
他の二人にお願いすることも考えたが…賀陽さんも月村さんも、クラス内で喧嘩を売りまくっている張本人たちだ。
それよりは、まだサボっているだけの秦谷さんの方が話をしてくれやすいだろう。
いくつか『藤田ことね』について調べたことで、気になったことがある。
まず、この世界では
考えてみたら当然ではあるのだが、高等部の1年初期でバイトを掛け持ちするということは、普通に考えて相当難しい。
そうなると、中等部時代からアルバイトをしていたという方が、現実味があるだろう。
『藤田ことね』はコミュニケーション能力が非常に高いこともあり、お金にかける意欲はすさまじいものがあるため、入学式の直前にアルバイトを数個まとめて受けていたとしてもおかしくはない。
だが、『学園アイドルマスター GOLD RUSH』でも、『中等部時代から同じような生活を送っていたのだろう』という推測があったことから、中等部の生徒でもアルバイトができることを示唆していた。
これは、
芸能関係の仕事や、後継人の承諾など特殊な事情がある場合は認められるはず…だが、成長期のその時期にアルバイトをしながら、アイドルをしていくことは生半可なことではない。
そうしなければ、アイドルになれないのだとしたら、その事情を知ってしまっている以上、少しでも改善させるべきだ。
『プロデューサー』として、『一人の大人』として、そう思った。
全ての人に平等な機会を、などと大それたことを言うつもりはないが、少なくとも見える範囲で大成する予定のアイドルが潰れていくだけの姿を見ていたくない。
そんな自分勝手なエゴを胸にしまいながら、私は秦谷さんからの連絡が来るまで、事務所でプロデュース業務を進めることにした。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
-
アプリをそもそも入れていない
-
どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX