『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
あの日から1週間が経つ。
月村さんはなんとか体重を元に戻し、歌を藤田さんに教えながら、自分の歌もさらに磨き上げた。
秦谷さんはいつも通り、自分のペースでレッスンに取り組み……月村さんだけではなく、藤田さんの世話も焼くようになった。
賀陽さんは、本人からの報告だけだが、
月村さんの様子も少し見ているらしいが…あの日の別れ際に、
ようやく、私が見たいものの一端が見れるかもしれない。
藤田さんも……教室でひと悶着あったようだが、今は問題なく過ごせているようだ。
生活リズムも、意外なことに秦谷さんが率先して整えるようにしているようで、バイトで遅くなる日は藤田さんのご飯を用意しておいているらしい。
藤田さんの同室の生徒とも、仲良くやれているようだ。
私の方も色々な準備ができたことと、興味深い『夢』を見た。
これは今後のプロデュースの役に立つはずだ。
そんな1週間が過ぎて、ついに2回目の『H.J.I.F』
今更だが『H.J.I.F』のレギュレーションについて、再確認しておこう。
今回の『H.J.I.F』の本戦は、4名が出場できる形だ。
2回目の『H.J.I.F』
本戦では、それぞれのブロックを勝ち上がったアイドルがパフォーマンスを行い、
そして、最後にそれぞれのブロックを勝ち上がった代表者と、惜しくも勝ち上がれなかったもの同士でライブを行い、集まった観客からの決選投票で順位を決める。
つまり、今回の
そして、前日にブロック分けが発表されるのだが……幸いなことに、秦谷さんと賀陽さんがAブロック、月村さんはBブロックに振り分けられた。
全員が同じブロックに固められた場合は、『初』ではなく、用意していたソロ曲を披露してもらうつもりだったが、予定通り『初』をやってもらう形だ。
花岡さんもBブロック…月村さんと同じブロックなので、恐らくその4名が抜ける予想だ。
事前調査も念入りに行ったが、他のダークホースになりそうな人物も見つけられなかった。
後は……彼女たちの成長具合を見せつけてもらうだけだ。
「で、プロデューサーは誰が勝つと思ってるんですか?」
『
秦谷さんと賀陽さんは早めの出番なので、自分たちの出番が終わってから合流することになっている。
月村さんは最後の方の出番で、見たいけど精神集中したいから控室から見てるとのことだった。
月村さんに以前のような緊張がなかったから大丈夫だとは思うが、念のため直前には一度見に行く予定だ。
そして、隣にいる藤田さんが、私に問いかけてくる。
「もちろん、彼女たち全員が抜けると思っていますよ。
もっと言うと、残った枠は『花岡ミヤビ』さんが勝ちとるとも予想しています」
「今日の話じゃなくて、本戦の話ですよ。
あたしも、今日はみんな抜けると思ってますけど、優勝ってなると誰になるかな~って」
難しい質問だ。
何せ、彼女たちを担当していて、思い通りに行くことの方が珍しい。
強いて言うなら…。
「……難しいですね…誰が勝っても、『SyngUp!』の成長に繋がるとは思っています。
それを抜きで敢えて言うなら……勝ってほしいのは、月村さん。勝つだろうと思っているのは、秦谷さん。勝っているところを見たいのは、賀陽さんですね」
実力が想定通りに伸びて、勝つなら秦谷さんだろう。
誰が勝っても嬉しいものだが、『SyngUp!』の成長だけを考えた場合を考えると、少し話が変わる。
「う~ん…それ、手毬と燐羽の違いって何かあるんですか?」
「わかりづらくて申し訳ありません。
『SyngUp!』の今後を考えて勝ってほしいと思っているのが、月村さん。
私が個人的に勝っているところを見たいのが、賀陽さんですね」
月村さんが勝つことができれば、賀陽さんと秦谷さんに良い刺激になるだろう。
だが、リハビリを行った賀陽さんが、『
それは、月村さんと秦谷さんにとっても嬉しいはずだ。
「プロデューサーの言いたいことが良くわからないんですケド~。
勝ってほしいのは手毬と燐羽で、勝つ可能性が高いのは、美鈴ちゃんってことでいいんです?」
「その認識で構いません。
成長速度を考えると、恐らくそうなるでしょう。
もちろん、誰が勝っても嬉しいのは当然ですし、アイドルが…人が、そう思い通りにいかないことはよくわかっていますが」
「なるほどナ~」
「逆に、藤田さんは誰が勝つと思いますか?」
同じ質問を返すと、藤田さんは少し悩むように顎に手を当てた。
「う~~ん………。
手毬…かな?」
「その心は?」
「あたし、あんまり美鈴ちゃんと燐羽、手毬のライブって知らないんですよね~。
前回の
で、手毬とは直接勝負したから、負けてほしくないっていうか…美鈴ちゃんと燐羽にも良くしてもらってますけど……」
「直接ぶつかり合ったからこそ、勝ってほしいと」
「そういうことです~。
恥ずかしいから、手毬には言わないでくださいね」
恥ずかしそうに顔を背ける藤田さんは、耳まで顔が真っ赤だ。
もう少しで開演されたらあたりが暗くなるためわからないだろうが、まだ人が入ってくる途中の時間帯。
辺りはまだ明るく、藤田さんの顔もよく見える。
「ええ、もちろん言いませんよ。
どうですか?
月村さんとのレッスンは?」
まだ時間があるし、あまり藤田さんと二人きりで話す機会が取れなかったので、聞き取りにはちょうどいい機会だ。
藤田さんは私の方を見ているが、その可愛い顔が少し歪んでいる。
「あたしの歌が下手だって思い知らされてばかりです……。
手毬、本当に中等部のトップなんだなーって、『歌姫』なんて言われてるのが、納得できるぐらい上手くて、あたしなんかを教えてる暇があるのかって思っちゃうんです」
そして私は、自己肯定感が低い彼女のケアが足りていなかったことを痛感した。
まずは誤解を解いていくところから始めよう。
「月村さんは、見ての通りストイック…に振舞おうとしている、普通の少女です。
そして、賀陽さんと秦谷さんに挟まれている彼女は、
最近は少し追いついて、落ち着きましたが根本的な解決はできていません」
「そうなんですか?
あまりそういう感じには見えなかったんですけど」
月村さんも月村さんで、教える側になった自覚が芽生えているのかもしれない。
ありのままの彼女であれば、恐らく藤田さんでも察するぐらい、焦ってレッスンをしているはずだ。
それがないということは、彼女に教える側になったことで、弱いところを見せないようにしているのだろう。
若しくは……月村さんに自信を持たせることに成功していたのか?
この『H.J.I.F』で優勝したらそうなるだろうとは思っていたが、まだその段階ではないはずだ。
いずれにしろ…。
「今日の秦谷さんのライブを見れば、恐らく理解できます。
何故月村さんが余裕がなく、焦っているのかが。
それは置いておいて、そんな月村さんが、藤田さんに歌を教えているのは、優しさだけではありません」
「というと?」
「まず、見込みがない人を教えることはしません。
ダンスバトルで、見込みがあると思ったから教えることにしたのはわかりますね?」
これは事実に基づくことだが、藤田さんの表情はまだ晴れない。
「それは…そうですけど、あれは美鈴ちゃんとプロデューサーが整えてくれたからですし、実質あたしの負けですし、あたしの実力じゃ「いいえ、あれが藤田さんの本来の実力です。
それも、まだ100%ではない…恐らく、藤田さんが今の生活で本来の実力を取り戻すには、後1ヶ月はかかると思った方がいいかと思います」
藤田さんの話に割り込む。
秦谷さんでさえ、まだ完璧に疲労抜きができていないと言っていたぐらいだ。
藤田さんのポテンシャルはまだまだこんなものではない。
「ええ~~…。
実感ないですけど…」
「ただ休んだだけで、トップアイドルの卵とタメを張れるなら、誰でもトップアイドルになれるでしょう。
そうなれるだけの、素質、センス、才能、それらがかみ合って、ようやく土俵に上がることができるんです」
「プロデューサーは素質~とか、才能~とか、センス~とか言いますけど、実際、あたしにどんな才能があるんですか~?
きちんと言ってもらわないとわかりませんよ~」
確かに、私は藤田さんのことを抽象的に言いすぎているかもしれない。
ここまで自信がないのであれば、全部言ってしまった方がいいだろう。
「まず、言うまでもなくダンスの才能、これは月村さんに勝ったことからも明らかです。
藤田さんは自分の負けだと思っているかもしれませんが、月村さんが負けを認めた以上、あの勝負は何を言おうと藤田さんの勝ちです。
そして、ダンスもキレが良い上に、そのパフォーマンスをほとんど落とすことなく、2時間踊り続けた根性も含めると、今の中等部で相手になる方はそう多くありません。
高等部にだってそう多くはないでしょう。
次に顔、以前に自分でも顔は良いと言っていましたが、仰る通り顔が非常に整っています。
世界一かわいい顔をしていますよね。『SyngUp!』はみんなクール、清楚系ですが、藤田さんはかわいいという言葉が似合っています。
それこそ、ビジュアルレッスンを重ねなくても、顔だけで食っていけるほど整っていますし、今後はそういう写真のモデルなどの仕事もとってきたいと思っています。
また、秦谷さんから伺っていますが、交友関係を広く持っていることも才能です。
『
事前に敵を作らないに越したことはないですし、誰からも好かれるということは、アイドルをしていくうえで重要です。
それに、家族思いなところも藤田さんの良いところですね。
いえ、中等部の生徒に限らず、自分を殺してまで他の人に尽くすことは、誰にでもできることではないのです。
1つの信念に従って、それを貫き通すことができるということは、立派な才能です。
もっと自分の体を大事にしては欲しいですが、家族のため、自分の夢のために結果が伴わなくても、努力を積み重ね続けられることは、誰でもできることではないんです。
結果が伴わなければ、努力を止めてしまうことだって普通です。『私』がそうだったように
後はダンスをしているときの表情の「ストップストップストップ!!」
「……どうしたんですか、藤田さん?
まだまだ伝え足りないのですが」
「十分! もう十分ですから!!
周り! 周り見て! 周りの視線!
凄いやさしい目でみんな見てきて、めっちゃ恥ずかしいんですけど!!」
顔を真っ赤にして無理やり止められて、周囲を見ると、関係者席ということもあり周りは学園の生徒や教師などの関係者だけだ。
みんな一歩引いて、生暖かい目で私たちを見ていた。
よく見ると彼女たちの担任の先生もいて、手を振っていたので振り返しておく。
周囲からの視線が散ったのを確認してから、藤田さんの方を向いた。
「失礼しました。
ですが、どうですか?
自己肯定感、少しは上がりましたか?」
「……自己肯定感は上がりましたけど、プロデューサ~あたしのこと好きすぎじゃないですか~?」
何を当たり前のことを言っているのだろうか。
確かに、憐憫の感情や打算がないと言ったら嘘になるし、元々そういう話で担当をしている。
だが、それだけでアイドルをプロデュースできるわけではないことは、『アイドルマスター』をしていたものなら、誰でもわかり切っている事実だ。
「打算的な目的を以前言いましたが、それだけで担当をしようと思ったわけではありません。
担当したいと思えるだけの魅力があるから、藤田さんの担当を買って出たのです。
プロデューサー科の生徒で担当アイドルを持っている方なら、全員同じように答えられるはずですよ。
断言できます」
「本当ですか~?」
「本当です。
恥ずかしいので、普段は言いませんが」
「でも、今言ってくれましたよね?」
「担当の自己肯定感を上げられるなら多少の恥は呑みこめます」
表情に出さないようにしているが、私の表情はクールを保てているのだろうか。
そんなことを思っていると、藤田さんが再度声を荒げる。
「プロデューサーも恥ずかしいんじゃないですかあ!!」
「あまり大きな声を出すと、また周りから見られますよ」
「く、くぅ~~~~」
そうして藤田さんが唸っていると、会場のライトが落ちる。
気が付いたら、もう開演の時間になっていたらしい。
いくら関係者席とはいえ、既にマナー違反だし、これ以上は本格的に怒られてしまう。
「そろそろ始まるようです。
今から始まるライブは、
そのライブを見て、半年後にあそこに立つ者として、イメージし、糧としてください」
「うう~~~…。
いや、切り替え切り替え、うっし、しっかり目に焼き付けて、あたしの成長の糧になってもらうゾ~!」
そうして2回目の『H.J.I.F』
既に私たちの準備は万端だ。
控室に戻れば、『SyngUp!』のそれぞれの法被、うちわ、ペンライトを用意している。
今用意しているのは……最初の出番がある、秦谷さんのものだ。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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アプリをそもそも入れていない
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どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX