『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
35話目
遂に『H.J.I.F』の本戦当日になった。
あれからも月村さんの苦情処理に奔走したり、秦谷さんのサボりに付き合ったり、賀陽さんのレッスンを見たり、藤田さんの様子を見たりしていた。
事前の準備は万全に進み、当日の朝も誰も寝坊することなく、準備を終えることができた。
……月村さんから夜に電話が来たときはどうしたものかと思ったが、秦谷さんが寝かしつけてくれて助かった。
ライブの順番は事前にくじ引きで決まっており、Aブロックの賀陽さん、秦谷さん、Bブロックの花岡さん、月村さんの順番で行う。
奇しくも2回目の
そして、今は『H.J.I.F』本戦の開会式の前、賀陽さんの出番の直前だ。
その後の、賀陽さんと秦谷さんの間はあまり時間がない。
月村さんに限れば花岡さんのライブ中に話すことも可能だが、そのライブが終わった後すぐが出番になり、直前の準備を考えると話す時間は取れそうにない。
準決勝と決勝の間には、ユニット部門の準決勝もあるため、再度話す時間はある。
しかし、予定通りと言えば予定通りなのだが、準決勝の前に話せる機会は今しかないのだ。
そのため、準決勝前の最後に3人全員と打ち合わせをすることにしていた。
控室の中で、彼女たちと向き合う。
「それでは、皆さん準備は良いですか?」
「もちろんです」
「問題ないわ」
「いつでも」
そう言う彼女たちは、用意している衣装に身を包み、程よい緊張感は有れど、過度に緊張で固まるようなこともない。
それぞれのソロ曲の衣装を身にまとった彼女たちを見るのは初めてで、とても言いたいことがいっぱいあるが、感慨にふけている時間はないのだ。
「では改めておさらいを。
今から10分もしないで賀陽さんの出番です」
「いつでもいけるわ。
折角美鈴と本気でやれるんだもの、万全に整えてきたわ」
賀陽さんが頷き、意気込んだ。
私はそれを見て満足気に頷く。
「その次は、秦谷さんの出番です。
賀陽さんの出番が終わってから、ほとんど間を置かずに始まります」
「ええ、承知しております。
りんちゃん、本気できてくださいね。
完膚なきまでに叩き潰して差し上げます」
物騒なことを言っているが、賀陽さんも好戦的な笑みを浮かべている。
ここに藤田さんがいたら怯えて逃げ出すだろう。
月村さんも、普段なら怯えてもおかしくないほどの威圧感なのだが、今回は月村さんも一歩も引くような様子はない。
「その後、10分程度インターバルを置いてから花岡さんのライブがあります。
そして、最後に月村さんのライブです」
「準備は万全です。
二人のライブ、見てるから」
月村さんも力強く頷いた。
そして、私から視線を外し、二人に向き合う。
「見ていてください。
誰が一番上か、教えてさしあげます」
「そうね、美鈴が吠え面かくところ、見てみたいものね」
「どっちでもいいよ。
決勝に上がってきた方を、私が叩きのめすから」
3人のボルテージは最高潮だ。
バチバチに火花を散らしており、今の彼女たちならやり遂げるだろう。
ビジュアルそのものの意味もだが、ライブに向けての覚悟を向けた良い顔だ。
「やる気は十分ですね。
ご存じだとは思いますが、準決勝の結果は月村さんのライブが終わってから、まとめて発表になります。
賀陽さん、秦谷さん、月村さん楽しみにしています」
「お任せください、プロデューサーの期待通りにして見せますよ」
「任せなさい、あなたが見たいものを、見せてあげる」
「うん、誰がトップアイドルになる器か、きちんと見てて」
「それでは、ご武運を」
そう言って私は控室を後にした。
本来であればここで見ているつもりだったのだが、
曰く、折角とっておいたお楽しみなのだから、一番いいところで見てほしいとのことだ。
色々迷ったが、今回は全員が同じ控室を使うことになったこともあり、待っている間の邪魔をしても悪いと判断して甘えることにした。
それに、ここからじゃなくて、観客席から見ることで見えるものもあるだろう。
藤田さんが嬉しそうにしているのを見て、秦谷さんが間違えたかもしれません、と言っていたのは気のせいだろう。
関係者席に行くと、藤田さんがすでに陣取っている。
お互いに観戦の準備は万全に整えていた。
私はスーツの上に賀陽さんの法被を着こみ、ペンライトとうちわを装備している。
藤田さんも制服の上から賀陽さんの法被を着こんで、同じ装備をしている。
そして、二人とも賀陽さんの法被の下には秦谷さんの法被を着こんでおり、賀陽さんのライブが終わった後もすぐに秦谷さんの法被を着れるようにしている。
藤田さんは私に気づき、大きく手を振って呼び掛けてくる。
「お疲れ様で~す、プロデューサー♡」
「お疲れ様です、藤田さん。
最近、調子がよさそうだと、秦谷さんから聞いてますよ」
「そうなんですよ~!
最近、手毬にも歌がうまくなってきたって褒められたんです~。
……前よりはって前置きが付きましたケド」
最初は嬉しそうにしていたが、すぐに彼女は口を曲げた。
「急に全てのレベルが上がるようなら、誰も苦労はしませんよ。
今のままでも、藤田さんのステップアップは十分に進んでいます。
今は確実に実力をつけていきましょう」
「は~い!」
「さて、そろそろ開会式が始まります。
同年代のアイドルの中ではトップレベルのものになるはずです。
よく見て、よく学んでください」
「もっちろんです。
あたしも、
藤田さんの顔つきが、真剣な表情になる。
恐らく彼女は、今も前回と同じように、今
今はそれでいい。
成長していくためには、自分が奮起できる何かが必要だ。
悔しがることさえできない人間は、成長しようという意志さえなくなってしまう。
今の彼女なら、大丈夫だろう。
会場のライトが落ち始める。
開会式が始まる合図だ。
『会場にお越しの皆様、間もなく初星学園ジュニアアイドルフェスティバル、開会式を行います』
アナウンスが聞こえ始め、会場内に
『H.I.F』では学園長のアナウンスがあったはずだが、『H.J.I.F』では
学園長が決勝戦及び閉会式ではアナウンスをするそうだが、それ以外は極力中等部のアイドルコースに関係ある先生方で回しているのだから驚きだ。
そう、普段から『SyngUp!』に振り回されている彼女たちの担任の先生だが、学年主任も請け負っており、その業務は非常に多く多忙を極めている。
なので、少しでも心労を減らせればと思い、時折手伝いじみたことをしているが…今は置いておこう。
アナウンスが終わり、開会式が始まった。
中等部の生徒会長からの挨拶に始まり、各部門ごとのアイドルの紹介、
そして、ライブに関しての諸注意。
残念ながら?、途中の休憩はある。
前はよく聞いていた、『本公演では途中休憩を設けておりません』で会場が沸いていたのが懐かしい。
因みに、『H.J.I.F』と『H.I,F』は部門ごとのライブになるため途中休憩はあるが、途中休憩がないライブもある。
『それではさっそく始めましょう!
初星学園ジュニアアイドルフェスティバル、ソロ部門準決勝、1回戦、賀陽燐羽さん、お願いします!』
さて、もう間もなくライブが始まる。
今のアナウンスを皮切りに、会場内の照明が完全に落ちた。
ステージ上では真っ暗な中でも誰かがステージの中心にいるのがわかる。
青いロングドレスタイプの衣装に身をまとって現れた賀陽さんは、とてもきれいで会場全体が彼女に釘付けだ。
スポットライトは白い光で彼女を照らしており、会場全体は青くライトアップされた。
まるで、太陽に照らされているかのように、会場全体が見えるほど明るい。
だが、明るいのは彼女を中心にしてであり、会場の端々の方は仄暗い。
そして、ステージの中心に立って白く照らされた彼女は、青い衣装と相まって彼女自身が青白く発光しているようにも見えた。
彼女はスタンドマイクに近づいた。
穏やかな曲が流れ始め、歌をその口から紡ぎだす。
『太陽』はローテンポの曲だ。
賀陽さんの歌唱力を最大限に引き出してくれると踏んでいたが、ライブが始まってものの数秒で私は自分の見立てが正しかったことを実感した。
ダンスの動きは大きくしない代わりに細かい動作が入っており、
激しさよりも優しさを、かっこよさよりもきれいさを、これまでの彼女のファンがびっくりするような変化かもしれない。
だが、それも全て
会場全体が彼女の歌に聞き入っており、ペンライトをゆっくりしたペースで振っている。
青いペンライトが会場全体で揺れて光っている様は、
会場の端々は先程まで仄暗かったのに、徐々にライトで照らされる場所が増えていることと、ペンライトの灯りも相まって、はっきり見える程度には明るくなっていた。
そして、ステージの中心はさらにライトが重なり合い、明るさを増している。
そう、少しずつ太陽が昇っているのだ。
賀陽さんは表情もしっかり作りこんでおり、やわらかい微笑みを会場のファン全員に見せていた。
それは、普段のグレてしまった彼女からは想像もできない柔らかさだが、
月村さんと最後に二人でレッスンをして、月村さんを撫でていたあの日も、同じように柔らかい表情を浮かべていたからだ。
普段の彼女とのギャップと、彼女の歌で脳が更に焼かれているのを実感する。
『SyngUp!』のライブを完全にしたい。
その一心でのプロデュースだった。
その中の鬼門である、賀陽さんの実力を取り戻し、『アイドル』を続けたいと思ってもらえるようにすること。
それが順調に実を結びつつあることを実感する。
ステージの上で光り輝き、その
今あそこに立っている彼女は、紛れもなく『アイドル』で、誰もが焦がれて、憧れさせる
私の頬を流れる熱いものが、その証だろう。
そして、彼女の歌声がいつの間にか聞こえなくなり、曲が終わりに向かっていることに気づいた。
ステージの上で既にマイクから離れて踊る彼女は、晴れやかな笑顔を会場全体に見せている。
終わらないでほしいと思うが、何事にも終わりはある。
いつもいつも思う。
夢のような時間はどうして一瞬で過ぎ去ってしまうのかと。
ライトが全て落ちた中で、曲が終わって放心していた私を揺り動かしたのは藤田さんだった。
彼女
私は彼女の目元にハンカチを当てて涙を拭き、私はポケットティッシュを取り出して同じように頬と目元を拭う。
そして二人で、この調子でこの先大丈夫だろうかと思っていた矢先、先生からのアナウンスが入り秦谷さんのライブが始まるまで、もう間もない。
そう、賀陽さんと秦谷さんの間にはインターバルがないのだ。
こんな状態で秦谷さんのライブをさらに浴びたら、死んでしまうかもしれない。
私は顔から血の気が引いていくのを感じながら藤田さんを見ていると、彼女も同じように思っているようで、顔を青褪めさせていた。
だが、観ない選択肢は元からないので、急いで上に羽織っている法被を脱ぎ変えて秦谷さんの法被が上になるように着なおした。
スーツの上から羽織っているため、
軽く汗を拭うが、すぐに噴き出すのはわかりきっていた。
『続きまして、秦谷美鈴さん、お願いします!』
半分ほど聞き流していたアナウンスが、やけに耳に入った。
そうこうしているうちに、秦谷さんのライブが始まる。
ライトは落ちているが、先ほどと同じように秦谷さんがステージの上に立っているのがわかる。
会場は青を基調とした光でライトアップされるが、先ほどと異なり会場全体は暗いままだ。
まるで、
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