『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
花岡さんのライブが終わり、月村さんのライブが始まる。
花岡さんのライブも素晴らしく、
そう思わせるだけのライブだったし、会場に来たファンも『初星学園』と言えば『初』と思っている人も多かったようで、コールも盛り上がっていた。
今考えると、『H.J.I.F』のソロ部門で『初』の方が少ない本戦も珍しいのかもしれない。
『H.I.F』であれば、ソロ曲を持っている生徒も多いが、中等部ではソロ曲を持っている生徒はほとんどいない。
その上、『初』は『Campus mode‼』と同じように『初星学園』を代表する曲。
中等部の生徒は『Campus mode‼』を解禁されていないため、『初』が必然的に多くなる。
過去には、『ENDLESS DANCE』や『がむしゃらに行こう!』などをやった者もいたようだが、今年はしている者はいない。
つまり、
逆に、ここまで持ち歌のソロ曲をやっている方が珍しいだろう。
参考までに見た去年の『H.J.I.F』も、夏で一人、冬でも二人しかソロ曲をやっていなかった。
他は全員『初』だ。
それが、今年は夏で3人がソロ曲を持ち込んできている。
そんな中で、王道の『初』を完璧に限りなく近い形でやりきった花岡さんのライブは、かなり盛り上がった。
それこそ、賀陽さんと秦谷さんにも負けない盛り上がりだったと言ってもいい。
彼女が、プロデューサーもつかないでここまで仕上げてくるとは思わなかったので、正直なところを言うと驚いた。
その後に、月村さんのライブがほとんど間を置かずに始まった。
私たちは大丈夫だろうという確かな自信はあったが、この空気の中で再度ソロ曲を初披露することに少しの不安を感じていたのは確かだ。
だが、それはステージ上で照らされた彼女の顔を見て、杞憂だったと確信した。
真っ暗なステージの上で、断続的に照らされる彼女の顔からは、不安の色は一切見えない。
私には
ライトに照らされた袖は青く光り、片耳だけ見えるイヤリングが光る。
太ももを見せるような短い裾に、腰からは大きい網目のスカートのようなものが伸びている。
秦谷さんの網状のインナーとは対照的だ。
初見でキヌガサダケのようだと思ったのは内緒にしておこう。
そして、イントロが始まり、この曲の代表ともいえる歌詞で幕を開ける。
『あのね。』
テンポのいいBGMとともに、暗闇の中、断続的に光るスポットライトの光に照らされてリズムに合わせて踊り始める。
『太陽』とも『ツキノカメ』とも違い、勢いのある気持ちいいテンポで始まった曲は長めのイントロから始まった。
そして、大事そうにスタンドマイクに下から手を添え、ゆっくりとマイクに手を持っていく。
スポットライトが彼女を正面から照らした。
『I say “私、⼤丈夫?”』
彼女は自分に言い聞かせるように歌う。
スタンドマイクの前で、マイクを持たずに手振りだけで自分の感情を表す。
『
会場全体は暗いのに、彼女の周りだけは優しく明るい。
賀陽さんの時のような眩しさではなく、秦谷さんのような会場を支配するようなものでもなく、
だんだんと勢いが増していき、最初のサビに入るところで、私の涙腺はすでに崩壊していた。
『“信じて” 』
会場全体が、一際明るさを増し、ステージ上の月村さんを優しく照らす。
曲のテンポに合わせてペンライトを振る。
走り続けた歌詞は一度テンポを落とし、
とはいっても、この曲はずっとサビかと思うほど走り続ける曲だ。
サビが一度終わっても、休むことを知らない。
『⾔葉⾜らず、失くしてしまう物ばかりだ
Luna say maybe… 』
少しのイントロの間、彼女はスタンドマイクからマイクを取った。
スタンドマイク君の出番はここまでらしい。
マイクを持ったまま再び歌い始める。
ゆっくりとステージを歩きながら、歌詞に感情を込めて歌う少女に会場の誰もが釘付けだ。
そのまま2回目のサビに入る。
まだまだ行けると言わんばかりに、彼女の歌声は深みを増し続けていた。
月村さんは、集中力が高まりすぎると本来の実力以上の力を発揮してしまう欠点があった。
だが、体力不足を解消しつつある彼女は、その欠点を利点に変えつつある。
そして、転調が始まった。
『どこまで
いけるのか』
走るように歌っていたペースから一変、さらに勢いよく歌声が伸び、曲調が変わる。
そして、また走り始める。
もう、止まることはないと言わんばかりに。
ステージの上で輝く彼女は、とてもいい表情をしている。
最初の時の
その事実に、私はまた涙を流した。
気持ちのいいハンドクラップとともに、ラスサビが始まる。
『どうか、正⼼正銘のこの思いが
君の
彼女はステージの上に用意していた、台の上に立ち、ステージで一番高いところから会場全体を見渡す。
そこで、会場にいるファン全員に、自分の全力を届けるのだ。
ここからは、これまで以上にずっと彼女から目が離せなくなる。
そして、彼女の魂の叫びとも言える歌が、会場に響き渡る。
『これが、正真正銘の私だ!』
そう歌う彼女は、晴れた夜空にくっきり映る月のように晴れやかで、清々しい。
素直になれない少女が、ありのままの自分を曝け出す。
それにどれだけの勇気がいるのかは、本人しか知る由はない。
そんな彼女が、これこそが自分だと証明するかのように叫ぶ。
彼女の内面を、内心を吐露するかのような歌詞を、叩きつける。
そのまま最後まで歌い続け、走り続ける。
もう一人でも大丈夫だと、
それは、『月』が『太陽』がなくても、『
『聴いて欲しいの
あのね、』
どこで息継ぎしているのかもわからない勢いで、彼女は歌い切った。
満足そうに、歌い切った彼女の表情からは、見る人が見ればわかる疲労の色がある。
だが、それでも表情を作ったまま満足げに舞台袖に掃けていく彼女は、間違いなく
相変わらず涙は止まらないし、藤田さんも号泣しているが、ふと見ると他にも涙ぐんでいる人がいる。
彼女の歌は、会場に集まった観客の心を、更にかき乱していた。
この後は、ユニット部門のライブが始まるが、
名目上は休憩ではないが、少しのインターバルを挟むので今のうちに控室に戻ろう。
『
何せ、今は準決勝。
勝っても負けても、
……干からびてないといいのだが…。
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藤田さんと控室に行くと、死にかけの月村さんを介抱している賀陽さんと秦谷さんの姿があった。
「はぁ………はぁ……あ、プロデューサー!
見てましたか!?
私、一人でもやり切りました!」
まだこれからもライブがあるのに、椅子に座り込んで動けなくなっている彼女は、それでも思ったよりは余裕があった。
今すぐ、ライブをやるとなったら難しいだろうが、この分なら回復しているだろう。
「ええ、もちろん見ていましたよ。
思わず涙ぐんでしまうほどに、良くここまで成長しました」
「てっまり~! おっ疲れ~。
ライブ! めっちゃよかった!」
私が労うと、藤田さんも同じように労いながら月村さんを撫で始める。
疲れ切った月村さんは、珍しく抵抗しないで受け入れていた。
「えへへへ…」
「秦谷さんと賀陽さんも、良いライブでした」
まだ余裕があるものの、顔に少し疲労の色が見える二人も労う。
月村さん程ではないが、二人にも普段なら休息を促す必要がある程度には疲れているのがわかる。
「今出せる全力を出したわ。
……あなたが、号泣していたのもよく見えたわよ」
「ええ、わたしも少し驚きました」
「え、そうなの?」
月村さんは恐らく自分の全力を出すことに集中していて、そこまで見れていなかったのだろうが、二人には見えていたらしい。
「そうそう、プロデューサーってば、気づいたら泣いててびっくりしちゃった!」
少し気恥しく思っていたら、裏切り者に背後から刺された。
「……少々、感極まってしまいました。
そう言う藤田さんも、泣いていましたよね?」
「それは言わないでくださいよ!」
大人げなく刺し返したら、藤田さんは顔を真っ赤にして声を上げる。
秦谷さんは満足そうに微笑んでいた。
「入念に準備した甲斐がありました。
後は…結果を待つだけ、ですね」
「この後すぐ発表されるんだよね?」
「そうです。
発表後は、ユニット部門のライブが始まるので、その間に決勝、三位決定戦の準備を行う形になります。
その後は、三位決定戦、決勝の順で行い、最後に閉会式の中で順位の発表。
そして、ユニット部門、ソロ部門の順で優勝ライブです」
月村さんの質問に、改めて今後の流れを説明する。
改めて考えるとタイトなスケジュールだ。
「ふふ、楽しみですね。
『
まずは、りんちゃんから、ですね」
「負けたつもりないんだけど?
…プロデューサーはどうかしら。
私と美鈴、どっちが上だったと思うか、言ってもらおうじゃない」
「それは良い提案ですね。
プロデューサー、はっきり言ってあげてください」
いつの間にかバチバチににらみ合っていた二人に挟まれてしまった。
…どちらの方が良いライブだったか、それに対する答えは…。
「………私からは、どちらが良いとは言えません。
どちらもよかった、なんてありきたりの感想しか言えませんので。
自らが光り輝き会場全体を照らす『太陽』となった賀陽さんも、会場全体を呑み込み『
そして、自分の輝きで会場を優しく包み込みありのままの自分を叩きつけた月村さんも、全員、素晴らしいライブでした」
そう言いながら、ライブを思い出す。
賀陽さんのライブも、秦谷さんのライブも、月村さんのライブも。
本当に素晴らしかった。
今から、次のライブが楽しみで堪らなくなってしまう。
「……あなた、そんなに涙脆かったの?
また泣いてるわよ」
賀陽さんに指摘されて、私はようやく自分が涙を流していることに気づいた。
ライブを思い出すだけで、そうなってしまうとは思わず、自分でも驚いた。
ポケットティッシュで目元を拭き取りながら、再び彼女たちに向き合う。
「…そんなつもりはなかったのですが……いけませんね。
見たかったものを、一番いい形で、それも
プロデューサーとして、『
申し訳ありません」
「…別に、いいんじゃないですか。
普段の仏頂面のプロデューサーよりも、そうやって感情に振り回されているプロデューサーも新鮮です。
それに、『担当アイドル』と成長していく『プロデューサー』も…いてもいいと思います」
その言葉で、私は大切なことを思い出した。
私は『プロデューサー』として振舞おうとしていたが、『学マス』のプロデューサーだって、『完璧』なだけではなかった。
時にプランが崩壊し、時に担当アイドルに振り回され、時に周囲の大人に振り回されている。
それでも、『彼』は担当アイドルと共に『プロデューサー』として成長していった。
『担当アイドル』だけが成長しても、『プロデューサー』だけが成長しても、『アイドル人生』が成功するとは限らない。
お互いがお互いを正しい意味で、信頼して成長していくことこそが、必要だったのだ。
「そうですよ。
まりちゃんの言うとおりです。
プロデューサーは少々抱え込みすぎだと、
もっと、わたしたちを頼ってもいいんですよ」
秦谷さんの言葉に、賀陽さんと藤田さんも頷いている。
私は担当アイドルに恵まれているらしい。
手がかかかることは間違いないし、私も『プロデューサー』として未熟な点が多かった。
今までも、
だが、それが何よりも誇らしい。
『皆様、大変お待たせいたしました。
これより、H.J.I.Fソロ部門、準決勝の結果発表を行います』
そうして、私が担当アイドルとの信頼を深めあっているうちに、いつの間にか時間が過ぎていたらしい。
アナウンスが室内に響き渡る。
『H.J.I.Fソロ部門、準決勝。
Aブロックの勝者は------------------------』
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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