『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
『H.J.I.Fソロ部門、準決勝。
Aブロックの勝者は、秦谷美鈴さん。
Bブロックの勝者は、月村手毬さんです。
繰り返します-------------』
静寂で満たされた室内で、アナウンスが響き渡る。
一瞬の静寂、最初に動き出したのは月村さんだった。
「プロデューサー!
勝った!
私、勝ちました!」
「ええ、おめでとうございます。
そして、秦谷さんも」
飛び跳ねている月村さんとは対照的に、秦谷さんは勝ったことを噛み締めるように呟いた。
「……わたし、勝ったんですね」
「そうです、秦谷さんの勝ちです」
噛み締めるように呟き、勝利の味を噛み締める秦谷さんとは対照的に、負けた賀陽さんの表情は暗い。
「………負け…ね」
「あ…燐羽…」
勝って喜んでいた月村さんだったが、勝つ者がいるということは、負ける者もいる。
勝負なのだから、当然と言えば当然だ。
「気を遣う必要はないわよ、手毬。
今できる全力を出した、それで負けたのは……いや、やっぱり悔しいわね」
取り繕うとしたが、やはり悔しいものは悔しいのだ。
無理に取り繕うよりは、負けた悔しさを噛み締めて、次に生かしてほしいとは思う。
だが、それは周囲が勝手に期待しているだけで、本人がそれを落とし込むには時間がかかるだろう。
そんなことを思っていたら、秦谷さんが賀陽さんの前に立ち、座っていた賀陽さんを見下ろす形になった。
「りんちゃん」
「……何よ」
…これは、もしかして…。
「今日は『SyngUp!』の格付けをする日でしたね。
これではっきりしました。
わたしが上で、あなたが下です」
やはり言った。
言う宣言をしてはいたが、まさか『ストーリー』通りにそのまま言うとは…。
彼女と『秦谷美鈴』が別人だとは思っていても、やはり本質は同じなのだとわかる。
因みに、隣の藤田さんは「『SyngUp!』の格付けをする日」の段階で、それは違うけどナーと言っていたが、その後のセリフで絶句していた。
月村さんも思わず呟く。
「うわ…本当に言った…」
「…!!
言われるとやっぱりムカつくわ…!」
隠そうとしていた悔しさが良い感じに出てきたらしい。
自業自得ではあるが…いや、元々は私が撒いた種だな。
気づかないでほしい。
「お望みだったようなので……前はよくもからかってくれましたね。
どうですか、実際に言われた気分は?
見ての通り、今はわたしの方が上です」
「…そうね。
負けるつもりはなかったけど…流石に美鈴に勝つには、リハビリが足りなかったわね」
「そうですよ。
わたし、頑張ってレッスンに取り組んでいますから。
サボってばかり
「それ、あなたにだけは
言われたくないんだけど!」
「まぁ…負け犬の遠吠えがうるさいですね。」
「こ、この…!」
すごい見覚えのある会話が、今目の前で行われている。
やはり彼女たちは『秦谷美鈴』と『賀陽燐羽』でもあるのだ。
少しの感動を覚えながら、それでも目の前の彼女たちは『別人』なのだと言い聞かせる。
そうじゃないと、また下手に混同してしまいかねない。
『参考』にはすべきだが、『真似』をしすぎてはいけない。
「……ですが、陰った太陽を越えたところで、大した自慢にもなりません。
次やるときは、もう一度
わたしたちが憧れた……遥か高みへ。
その上で、
最後の言葉は、彼女からの心からの言葉だ。
昇りきった太陽も、『
「本当に生意気…言われなくても、次は勝つわ。
……はぁ、暫くは
ため息を吐きながらも、その言葉が嬉しいのか表情は晴れやかだった。
「…!
燐羽、またレッスンに付き合ってあげてもいいよ!」
そして、その言葉を聞き逃さなかった月村さんが、賀陽さんに詰め寄る。
「あなたが一緒にレッスンしたいだけでしょ」
「うっ!」
図星を指されて少し怯むが、そんな月村さんを賀陽さんは優しく撫でた。
「まあいいわ。
ムカつく美鈴をぶっ倒すために、共同戦線でも張ろうかしら?」
「うん!」
「え…りんちゃん、まりちゃん…冗談ですよね…?」
まさか二人揃って秦谷さんを刺しに来るとは……いや、よくあることだ。
秦谷さんが不安そうにオロオロしている姿はとても可愛らしいが、少し助け舟を出そう。
「ダメですよ。
気持ちはわかりますが、冬はユニットで出てもらいます。
なので、これが終わったらユニットでの練習をしてもらいます」
「プロデューサー…!」
「なんだ、つまらないわね」
目がキラキラしている秦谷さんと、少し不貞腐れたような賀陽さんは対照的だ。
……だが、これで賀陽さんに下手にモチベーションを落とされても困るし、秦谷さんも先程は調子に乗りすぎていたので、少しはいいだろう。
「ですが…『冬のH.J.I.F』まで、
あなた方
そっちでは、ソロでライブをしてもらう可能性があるので…やるならそこで決着をつけてください」
「プロデューサーぁ…」
「流石プロデューサーね、期待してるわ」
涙目になる秦谷さん、嬉しそうに私を見ている賀陽さんと月村さん。
やはり、涙目の秦谷さんは特に可愛い。
まだガンには効かないがそのうち効くようになる*1。
「いいなー…あたしもライブしたーい」
そう思いながら秦谷さんのかわいい顔を見ていたら、藤田さんがそうボヤいている。
だが、彼女は勘違いしているようだ。
「何勘違いしてるんですか、藤田さん*2」
「ひょえ?」
「サブプランでは、
今のうちに、覚悟の準備をしておくことをお勧めします」
一人だけ仲間外れにするわけがない。
その頃には、彼女もさらに仕上がるはずだ。
後は、
そのための第一歩として、彼女には弾けてもらう必要がある。
『
藤田さんは私の言葉に、露骨に顔を顰める。
「うげっ!
プロデューサーがそういうってことは、めっちゃきつい奴じゃないですか!!」
まだ付き合いは浅いが、もう把握されてしまったようだ。
楽しいライブ
「プロデューサー、もちろん、私もだよね?」
嫌そうな顔をしている藤田さんの隣で、月村さんが問いかけてくる。
「当然です。
詳細は時期が来たら話しますが…
上手くいかなかったら申し訳ないですが」
「期待してるわ」
賀陽さんからも期待されてしまった以上、期待に応えるしかない。
…だが、話しが少し逸れすぎてしまった。
「さて、それでは、次に備え『コンコンコン』」
私が彼女たちに次の準備をしてもらおうとしたところで、控室がノックされる。
どうぞ、と声をかけるとドアノブが回り、花岡さんが現れた。
「失礼します。
ご機嫌よう、『SyngUp!』のお三方に、そのプロデューサーさん」
「花岡ミヤビさんですね。
先程は素晴らしいライブでした」
「お褒めにあずかり光栄です」
私が本心からの賛辞を贈ると、彼女はスカートの端を摘まんで会釈した。
所作が奇麗で、どこかの令嬢かと思うほどだ。
猫を被っているのだろうが、初対面の人に対する対応としては正しい。
だが、なぜ今このタイミングで来たのだろうか。
「それで、どのような要件でしょうか?
今は三位決定戦、決勝前の重要な時間です。
それはあなたも同じでは?」
「月村さんに用があるのです。
少々、お借りしてもよろしいでしょうか?」
…月村さんに用?
今まで、月村さんから彼女の話を聞いたことはなかったが…実は仲良しだったりするのか?
それならそれで、秦谷さんや賀陽さん、藤田さんが何も言わないのも珍しい気がするし、現にその三人も驚いているようだ。
だが、月村さんは
つまり、『用』に心当たりがあるということだろう。
「…月村さん、いかがですか?
タイミングがタイミングですので、無理にとは言いませんが」
「…いいよ、休めるなら休みたかったけど、あっちも時間を作ってきたのは同じ。
大事な話なんでしょ?」
月村さんはそう言って花岡さんと目線を合わせる。
「…
「じゃあ、そういうことだから。
プロデューサー、燐羽、美鈴、ことねも、また後で」
「ええ、また」
花岡さんの回答に満足したのか、彼女を連れて控室から出て行った。
そう変なことにはならないと思うが…少し不安はある。
それに、秦谷さんは決勝前に月村さんとも話したかったはずだ。
そう思い、秦谷さんの方を向く。
「良かったのですか、秦谷さん?」
「…思うところはありますが、まだ時間はあります。
それに…まりちゃんは無駄なことだと思ったら断るはずです。
そうしなかったということは…どこかでお友達になっていたのかもしれません」
月村さんが…友達…?
「……月村さんが、ですか?」
「あの手毬がね」
「ええ…?
手毬が花岡さんと仲良かったなんて、聞いたことないけどナー」
「ふふ、もしくは、直接ぶつかったからこそ、かもしれませんね。
まりちゃんの歌には、心を奪われてしまいますから」
「なるほど。
ありえない話ではないですね」
「まあ、いいんじゃない。
手毬だって、私たちがいつまでも見てなくちゃいけないわけじゃないでしょう」
「……本当に大丈夫なのかナー…」
少し不安はあるが、直接ぶつかった者同士でしかわからない何かがあるのかもしれない。
後は彼女を信じよう。
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中には誰もいないので、彼女に椅子に誘導され、お互いに向かい合うようにして座った。
「こちらをどうぞ」
「ありがとう」
座ったらペットボトルのお茶を一本渡された。
未開封だったので、さっそく封を開けて口をつける。
あっちでも水を飲んでたけど、やっぱりライブ後は水分補給が大事。
花岡も目の前で同じように飲んでいた。
そうして一息ついたところで、彼女の方から話は始めた。
「まずは、おめでとうございます、と言って差し上げますわ」
「ありがとう。
花岡も、すごいライブだったから…燐羽が勝つとは思うけど、三位決定戦頑張ってね」
本当にすごいライブだったし、勝つと確信を持てなかった。
プロデューサーが強敵だって言っていたのも、今ならよくわかる。
そう思っていたら、また花岡はため息を吐いた。
「……はぁ、本当に、毒気が抜かれてしまいますわ」
「?
なんで?」
さっきもだけど、なんで花岡はそんな残念なものを見るような顔で私を見ているのかがわからない。
何も間違ったことは言ってないはずなんだけど…・
「…もういいですわ。
正直『SyngUp!』が強いことはわかっていましたが、ここまでとは思いませんでした…。
しかも、賀陽燐羽でも、秦谷美鈴でもない、あなたに負けるなんて…」
諦めたように、そう漏らした彼女はかぶっていた猫を捨てたのか、少し弱弱しい。
「ふーん…私には勝てるって思ってたんだ。
当てが外れて残念だね」
「…違いますわ。
あなたぐらいにしか勝てない、と思っていたのが正直なところです」
そう呟く彼女は、さっきまでの自信満々な表情はなかった。
…それに、彼女は気づいているみたい。
「…私が『SyngUp!』のセンターなんだけど?」
「でも、賀陽燐羽と秦谷美鈴の方が実力は上でしょう?」
当時の燐羽の実力を知っている人は多くないはずだし、美鈴だって最近の授業以外では表立って実力を見せてなかった。
なのに、そう思っているってことは、それだけ『
…私なら、そこまでできなかった。
「…流石にここまで来るだけのことはあるね。
他の有象無象は、そこまで気づいてない人ばかりなのに」
「きちんとライブを見たら、誰でもわかりますわ。
だからこそ、ここで勝たなければ上位入賞にさえ入らないと思っておりましたのに…」
でも、
彼女は、あのライブは本当にすごかった。
そんな彼女が、こんな弱音を吐いているのが、
「…私は今日、挑戦しに来た。
燐羽と美鈴に挑戦状を叩きつけて、私が一番上だって証明するために。
だから、
「…!
それは…」
目を見開いた彼女に、更に発破をかける。
「悔しかったら、次はもっと本気で勝つ気で来なよ。
どうせトップアイドルになりたいんだったら、全員なぎ倒さなくちゃいけないのは一緒でしょ?
だったら、
これで立ち上がれないなら、もう言っても無駄だけど…それは余計な心配だったみたい。
顔を上げた花岡…
「…どうして『SyngUp!』がユニット部門じゃなくて、ソロ部門でエントリーしていたのか疑問に思っていましたが、
…わたくしに勝ったのですから、絶対に優勝してください。
わたくしは、せめて賀陽燐羽に勝って三位には入ってみせますわ」
「言われなくても、全身全霊でぶつかってくるよ
…あなたの…
あ、でも燐羽が勝つから四位で我慢した方が良いよ」
「本当に生意気ですわね!?
はぁ…それではもう行ってくださいまし。
わたくしも次に備えて集中します。
…優勝しなかったら、許しませんから」
彼女はそう言って私に背を向けたから、私は部屋を出た。
…負けられない理由は元々あったけど、増えちゃった。
でも、今ならもっともっと高く飛べそう。
美鈴との決戦の前で、ライブをしたばっかで体力だって持つかわからないけど、
楽しみな気持ちで胸をいっぱいにして、私は、私たちの控室に戻った。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
-
アプリをそもそも入れていない
-
どのキャラも親愛度10未満
-
特定のキャラのみ親愛度10まで
-
特定のキャラのみ親愛度20まで
-
全キャラ親愛度20まで
-
特定のキャラのみ親愛度27まで
-
解放可能なキャラ全て親愛度MAX