『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
決勝のライブはあっという間に終わってしまった。
秦谷さんの歌とダンスは、これまでに見たことがないほどで、確実にこれまでで一番完成度が高いだろう。
先程まで、賀陽さんと花岡さんのライブで動いていた会場内にいるすべての人の心を、彼女が塗りつぶした。
準決勝のライブの段階で凄まじいと言わざるを得なかった歌とダンスは、より先鋭化しており、彼女が本気だということを嫌でも理解する。
準決勝のライブも凄まじかったが、今のライブはそれよりもはるかにレベルが上がっており、最近サボりがちな彼女を見ている学園の関係者は、思わず目を丸くさせただろう。
歌に込められた思いは、会場にいる全員に伝わっており、ライブが終わった後も静寂で暫く物音ひとつ立たない程、余韻が凄かった。
その余韻を味わった後に、会場全体を揺らすほどの歓声が響く。
文句なしに大成功と言っていいだろう。
暗い中で良くは見えないが、藤田さんと賀陽さんも涙ぐんでいるように見えた。
そして、その余韻から冷めやらぬ間に、『学園長』のアナウンスで会場のライトが落ちる。
次にうっすらとライトがつく頃には、ステージ上には、月村さんが立っていた。
そのまま月村さんのライブが始まり、
月村さんも、秦谷さんと同じように準決勝の時も十分に凄まじかった歌唱力に磨きがかかっている。
数刻前に全力でライブをしていたとは、到底思えないほどの歌。
会場全体にいる観客は気づいていないかもしれないが、学園関係者、アイドル関係者が驚いているのが手に取るようにわかる。
月村さんの客観的な評価は、歌唱力は素晴らしいが、体力が少なく一人で歌うのは少し不安があるというのが、これまでの
その評価は
現に、1回目の
2回目の
なので、下馬評では月村手毬は、良くて2位。若しくは、4位になるという予想が多かった。
プロデューサー科の生徒からは
また、中等部の先生方からも、直接的には聞いていないがそういう話があったということは耳にしていた。
要するに、準決勝で力を出し尽くして、決勝、三位決定戦では力尽きているというのが大方の予想だ。
だが、今その予想は大きく覆った。
『背景』を手に入れた彼女の覚悟は、彼女の
それは、彼女に足を止めさせることを許さない。
確かに、準決勝で力の大半を使っている彼女は、それでもなお会場全体を優しく照らす月として、その存在を刻み付けた。
歌声には深みが増し、正真正銘、全身全霊で歌を歌う。
叫ぶように、寄り添うように、導くように。
それは奇しくも、彼女が彼女の本心と
ステージで歌う彼女の表情は晴れ晴れとしている。
あのペースで歌っているなら、体力はもう
恐らく、彼女は
辛い表情を隠しているわけではなく、歌うことそのものを楽しんでいるのが見てわかる。
…『ランナーズハイ』というものがある。
長距離走の選手が、走っている中で疲労や痛みを感じにくくなり、高揚感や幸福感を感じ、集中力が高まるというあれだ。
今の彼女はそれに近い状態だろう。
後のことを考えると怖くなるが、今の彼女が秦谷さんを本気で超えるならばこれしかない。
これをライブが終わるまで維持できるかが問題だが…
潤んだ視界の中で、彼女がラスサビに入ったのがわかる。
そして、彼女が最後の歌詞を叫ぶように歌いきった。
秦谷さんの時とは違い、終わった瞬間に爆発するような歓声が沸き、会場を揺らす。
決勝戦に恥じない、完璧なライブだったと言えるだろう。
秦谷さんも、月村さんも、どちらのライブもとても中等部の生徒が行ったとは思えないほどのクオリティ。
これで、『SyngUp!』のファンも増えるだろう。
---------------------------------------
決勝戦が終わり、控室に戻ると秦谷さんが月村さんを膝枕していた。
月村さんは、全ての力を使い果たしたようで、ぐったりしている。
対照的に、秦谷さんは生き生きと月村さんを膝にのせて撫でまわしていた。
「プロデューサー、いかがでしたか?
ご期待にこたえられたとはおもいますが…プロデューサーから、直接お聞きしたいです」
「素晴らしいライブでした。
本当に…楽しみにした甲斐があったというものです」
「ふふ、そういってもらえたなら、頑張ったかいがあったというものです」
そう言って秦谷さんを褒めていると、ぐったりして秦谷さんに膝枕されていた月村さんも私の方を振り向いた。
「プロデューサー…私も、頑張りました」
「月村さんも完璧なライブでしたよ。
最初の時の
「えへへへ…」
弱っている月村さんは、秦谷さんに甘やかされていることもあってか、甘えん坊モードになっているらしい。
ぐったりとしてはいるものの、最初の
さて、素直な彼女も可愛らしいが、この後も彼女たちは順位発表のためにステージに上がる。
そのため、少しは緊張感を持ってもらわないといけないな。
「今は同じような状況になっていますけどね」
「一言余計です。
…でも、ありがとうございます、プロデューサー。
あなたがいてくれなかったら、私は…私たちはここまでこれませんでした」
良く思うが、彼女たちは誤解している。
私がいなくても、中等部でナンバーワンユニットとして名を馳せることは既定路線だ。
「そんなことはありません。
月村さんは、あなた達は才能にあふれた素晴らしいアイドルです。
私がいなくても、いずれは頂点に立つべくして立つ存在です」
それに、そうじゃなくても高等部に進学したら勝手に芽が出るような逸材。
それは心の底から思っているのだが、私の言葉で面白くなさそうな顔をしているのは月村さんだ。
「…プロデューサーって素直じゃないですよね。
おとなしく受け取ればいいのに」
「担当アイドルに似たのかもしれませんね」
ファンはアイドルに似ると、『秦谷美鈴』は言っていたがプロデューサーも似たようなものなのかもしれない。
『学マス』のプロデューサーも、担当アイドルによって性格は多少なりとも変わっているように見えた。
「言われてるよ燐羽」
「あなたのことよ手毬」
「燐羽のことだって」
「あたしからすれば、両方な気がするナー」
互いに押し付けあう二人に、藤田さんがどっちもどっちだと窘める。
秦谷さんは月村さんを撫でたまま、微笑んでいた。
「二人とも、そこがかわいいんですよ」
「それは同意します。
素直になれないツンツンしているところが可愛いんですよね。
そして、こうやって時々見せる本心が可愛くて堪らない」
秦谷さんが言っていることはよくわかる。
ライブの時の二人も素晴らしいが、素の二人も素敵だ。
「さすがプロデューサー。
よくわかっていますね」
「そこ。
恥ずかしい話をするのはやめなさい」
すぐ隣で可愛い可愛いと言っていたのが良くなかったのだろうか。
顔を真っ赤にした賀陽さんに止められてしまった。
だけど、それぐらいで留められるような私たちではない。
「恥ずかしがっているところも可愛いんですよね」
「わかります」
「わからなくていいから!」
今度は月村さんは秦谷さんの膝の上から飛び起きて、顔を背けた。
顔を背ける一瞬、見えたその表情は頬を赤らめていた。
それは、ライブの熱気が冷めてないからだけではないだろう。
月村さんは暫く復活しないだろう。
その間に顔を赤くしている賀陽さんに向き合った。
「賀陽さん」
「何よ」
「先程はライブ会場の中だったので改めて、三位決定戦のライブ素晴らしかったです。
賀陽さんが決勝に立っていても、おかしくないと思うほどに。
今回は残念でしたが…次こそは期待しています」
賀陽さんにも改めてきちんと褒め讃える。
やる気がなかった彼女がここまでこれたのは、彼女をその気にさせた月村さんと秦谷さんの貢献が大きいのは確か。
だが、彼女の尋常ではない努力なしでは成しえなかったことだ。
これでまだ実力を戻し切れていないというのだから恐れ入る。
「……わかってるわ。
いつになるかは任せるけど…次は勝つ。
それと、プロデューサー…私からも礼を言うわ」
「礼を言われるようなことをした覚えはありませんよ。
あなたの努力の賜物です」
「あなた…はぁ、いいわ。
手毬と同じことを言いたくないけど、大人しく受け取りなさい。
じゃないと、今ここでぶん殴るわよ」
「…そういうことなら受け取りましょう。
殴るのは、全てが終わってからにしてください」
流石に最後の最後に暴力沙汰になっては困る。
そう思って止めると藤田さんがジト目で私を見ていた。
「殴られるのは受け入れてるんですね…」
「自業自得なので。
それに、あれはファンサービス*1なのでファンであるなら嬉しいものですよ」
「マジで言ってます!?」
「マジです」
「そういえばこの人も変人だった…」
頭を抱える藤田さんと、先の藤田さんのようにジト目で見ている秦谷さん。
「りんちゃんがするのはいいですが、わたしはやりませんからね」
秦谷さんがそういうキャラで売り出す…
顔を真っ赤にして、恥ずかしがりながら相手を団扇で叩く秦谷さん…イイ…。
「残念です」
「プロデューサー!?」
思わず本心を零してしまった。
驚いている秦谷さんも可愛らしい。
さて、楽しく話しているうちに良い時間になってしまった。
ぼちぼち彼女たちを送り出さなくてはいけないが…その前に確認しなければいけないことがある。
「皆さん、先ほどのライブはお疲れさまでした。
これから、順位発表、その後に優勝ライブになります。
まだどっちになるかはわかりませんが…秦谷さんは大丈夫でしょう」
私がそう言って視線を向けると、当然と言わんばかりに頷いた。
反対に不安そうな顔になっているのは月村さんだ。
「なので、率直に聴きます。
月村さん、優勝ライブ、できますか?」
「………多分…途中で力尽きると思う」
「素直にそう言えるようになったのも成長です。
ですが…そうなると困りましたね…」
あのライブを見た瞬間に、彼女が優勝したとしても、優勝ライブを
それは、彼女の
今の彼女はガス欠で、とても最初から最後まで
「プロデューサー…なんとかしてください」
「………運営の方には話を通しておきますし、後で何かあっても私が責任を取ります」
不安そうに私を見る月村さんに、私は努めて平静に返した。
掟破り、ルール破りにはなるが、致し方ないだろう。
ここで月村さんに無理をさせすぎて、彼女のアイドル生命を奪うわけにはいかないのだ。
「何をするんですか…?」
だから、そんな今にも泣きそうな顔をしないでほしい。
大丈夫、あなたには
「賀陽さん、秦谷さん」
「何?」
「はい」
「ソロ部門に出ておいて言うのもなんですが…月村さんのフォローはできますか?」
「当たり前でしょ。
何回一緒にライブしたと思ってるの」
「おなじくです。
優勝を譲る気はありませんが…まりちゃんの隣で歌うのが、わたしは大好きですから」
二人とも私が言いたいことを察したようだ。
これをすれば、また私の評価は下がるだろう。
担当を無理にソロ部門に参加させた挙句、体力コントロールもさせられなかったマヌケと。
挙句の果てには、ソロ部門の優勝ライブに
だが、
そんなことは、彼女たちの今後に比べれば些細なことだ。
二人の物言いから、月村さんも察したのか驚きと、嬉しさで表情を明るくした。
「まさか、プロデューサー」
「『Luna say maybe』を『SyngUp!』で歌ってもらいます。
流れはーーーーーーーーーーーー」
そうして、私は月村さんが優勝した際の流れを話し始めた。
話した後、急いで会場の運営側にアポを取る。
杞憂になるならそれに越したことはないが…最悪を考えて、動き始めた。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
-
アプリをそもそも入れていない
-
どのキャラも親愛度10未満
-
特定のキャラのみ親愛度10まで
-
特定のキャラのみ親愛度20まで
-
全キャラ親愛度20まで
-
特定のキャラのみ親愛度27まで
-
解放可能なキャラ全て親愛度MAX