『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される   作:プロデューサー科のもの

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42話目

 

 順位発表が始まった。

 屋外のステージ上には、花岡さん、賀陽さん、秦谷さん、月村さんが立っており、会場は満員の観客で埋まっている。

 私は藤田さんと一緒に観客席側で見ることにした。

 既に必要な布石は打ち終わった後だ。

 

 そして、会場内に学園長のアナウンスが響き渡る。

 

『Hatsuboshi Junior IDOL FESTIVAL !

 ソロ部門、すべてのステージが終了した。

 選び抜かれた精鋭(アイドル)たちよ!

 見事な激闘であった。

 そして……ご来場の方々。長らくお待たせした。

 これより----順位発表を行う!』

 

 会場内に緊張が走る。

 

『まずは3位からの発表をさせてもらおう!

 中等部とは思えない、圧倒的な歌唱力で会場全体を盛り上げた、賀陽燐羽!

 対して、初星の伝統を引き継ぐかのようなライブを見せてくれた、花岡ミヤビ!』

 

 その言葉で、花岡さんと賀陽さんはステージの中央に歩き、隣り合うようにして中央に並んだ。

 ステージ上で、スポットライトに照らされた二人の視線がぶつかり合う。

 どちらも、自分が勝ったと思っているだろう。

 

『審査員の中でも意見が紛糾したが----……

 発表しよう!』

 

 会場内のざわめきが、消えアナウンスに全員が耳を傾ける。

 

『3位決定戦の勝者は賀陽燐羽!』

 

 そのアナウンスで思わずガッツポーズをしてしまう。

 隣にいる藤田さんも、思わず叫んだ。

 会場からも爆発するように叫び声が上がった。

 『燐羽様~!』と黄色い声が会場中から上がっている。

 

 ステージ上では、賀陽さんが当然と言った表情をしながらも、少し安堵したように見えた。

 対して、花岡さんは悔しそうに顔を歪めながらも、賀陽さんに手を差し伸べる。

 それに賀陽さんは健闘を讃えてお互いに手を交わした。

 

「次は勝ちますわ」

 

「次も勝つから、精々腕を磨いてから向かってきなさい」

 

「本当に生意気な方たちですわね」

 

 そのやり取りはマイクに拾われて会場中に響いていた。

 だが、嫌味に聞こえるその会話はからは刺々しい雰囲気はなく、お互いに相手をリスペクトしていることがわかる。

 

『二人の健闘を讃え、もう一度大きな拍手を!』

 

 会場内のいたるところから、拍手が響き渡る。

 二人とも向かい合っていた顔を会場の観客に向けており、それは会場内の拍手が小さくなるまで続いた。

 そして、会場の拍手の勢いが落ち始めたあたりで、彼女たちは手を放し、最初にいた位置に戻る。

 

『そして、本当に長らくお待たせした。

 -----優勝者の発表に移ろう!』

 

 疎らになっていた拍手が止み、会場内を妙な静寂が満たす。

 そして、ステージの秦谷さんと月村さんにスポットライトが当たる。 

 

『すべてを呑み込むようなダンスと歌で、観客を虜にした、秦谷美鈴!

 もう一方は、激情に身を任せて歌い、観客の心を奪っていった、月村手毬!』

 

 二人が前に出てくる。

 先程の二人と同じように視線が交わるが、違うのは秦谷さんはぶつける視線に敵意の色はなく、嬉しそうにほほ笑んでいることだろう。

 月村さんは最初こそ先の二人のように睨みを利かせていたが、秦谷さんの視線に気づくと毒気を抜かれたような顔をした。

 そして、秦谷さんと同じように、決勝戦(ここ)でぶつかり合えたことが嬉しいとばかりに笑顔を浮かべる。

 

『方や、圧倒的な技術力と歌唱力でここまで上りつめた秦谷美鈴君。

 方や、感情に任せながらも成長を続けてここまで上ってきた月村手毬君。

 同じユニットメンバーでありながら、ソロ部門というステージに立つにあたって、両者が行ったアプローチは異なっている』

 

 秦谷さんも月村さんも、ステージの上で胸を張って立っている。

 自分が歩んできた道は間違っていなかったと、証明するかのように。

 

『実力で見れば、秦谷美鈴君が上という意見が多かったが、月村手毬君の歌に心奪われたものも多く、秦谷美鈴君に負けない感動を生み出したことで、意見が分かれた。

 議論はかなり白熱し、様々な意見がでた』

 

 私の贔屓目だけではなく、審査員の方々も拮抗していると感じたのだろうか。

 予定が少し後ろ倒しになったと聞いていたし、実際にスケジュールの遅れが出ているが、もしかしたら審査に時間をかけすぎてしまったのかもしれない。

 

 ステージ上の二人は、不安そうな顔は欠片も見せず、(わたし)が勝ったと言わんばかりに自信満々だ。

 

『さて、それでは発表させてもらおう!

 Hatsuboshi Junior IDOL FESTIVAL !

 ソロ部門の優勝は--------------……………

 

 ドラムロールと共に、モニター上に『H.J.I.F』のロゴが表示される。

 そして、遂に優勝者の名前がモニターで表示された。

 

 

 月村手毬!!』

 

 ………思わず叫びそうになるが、その衝動を爪を掌に食い込ませて無理やり抑える。

 藤田さんは観客と一緒に歓声を上げた。

 釣られないようにしていたが、藤田さんが手を取って喜びを分かち合おうとしてきたので、諦めてこの流れに身をゆだねることにした。

 

 ステージ上では、月村さんが一瞬呆けた後に歓喜の声を上げた。

 秦谷さんは、残念そうにしながらも月村さんを見て、月村さんの方に近寄る。

 

 会場中に歓声が響いているが、マイクはきちんと二人の会話を会場内に届けていた。

 

「まりちゃん、おめでとうございます」

 

「美鈴!

 ……ごほん、私の勝ち、だね」

 

 嬉しそうに秦谷さんに飛びつくのを静止して、咳払いをする月村さんはいつも通りにも見えるが、勝利の余韻で嬉しいのは見て明らかだ。

 

「ええ、負けてしまいました。

 やっぱり、まりちゃんはすごいんですね」

 

「また上から目線で…でもいいよ。

 私が勝ったことには違いないんだから」

 

「これでも、本気でやったんですよ。

 ゆっくり歩いて、私のペースで、のんびり、全力を出したんです」

 

「……はぁ、美鈴は本当に変わらないね。

 勝ったら、全力で走って追いかけてきなよって言うつもりだったんだけど…」

 

「それでは、また置いてかれてしまいますから。

 わたしの想いは変わりません。

 背伸びをして、無理をして、そうしてたどりついた場所が心地の良いところだとは思えませんから」

 

 秦谷さんは、他の人が言ったら怒られてしまいそうな言葉をステージ上で言い放った。

 本当に勘弁してほしいのだが、それでここまで勝ち上がってきたのだから口出しできるものはほとんどいないだろう。

 そして、一息ついてから、月村さんに宣言した。

 

「次は、ゆっくり、徒歩で追い抜いて勝ちますね」

 

「この傲慢~~~!!」

 

 会場内が笑いに包まれる。

 月村さんのクールなイメージには合わないかもしれないが…もうメッキは剥げかけているし、ここまで観ているようなファンなら、もうバレてしまっているだろう。

 それに何より、今の彼女たちの語らいの邪魔になってほしくはない。

 

 にこにこしながら、興奮する月村さんを見ている秦谷さんが、改めて月村さんに向き合った。

 

「ふふ、まりちゃん」

 

「何!」

 

「優勝、おめでとうございます。

 これからも…良きユニットメンバーとして、()()()()として、一緒に頑張りましょうね」

 

「…!!

 うん!」

 

 ……秦谷さんが、一番月村さんが欲しかった言葉を、最後に言ってくれた。

 『認められること』、これが月村さんがこの『H.J.I.F』を通して、求めていたものだ。

 ユニットメンバーから、子ども扱いされているというのは…まあ、月村さんの今までの言動を見ていると仕方ないところもあるのだが。

 それでも、()()()()()()()()()と思い込んでしまえば、それはユニット間の不和に繋がる。

 

 だから、遅かれ早かれ、こうやってぶつかることが必要だったのだ。

 それを最高の形で終えることができた。

 

 万雷の拍手と、歓声が彼女たちを祝福している。

 

 …これから、優勝ライブだ。

 その後のことは…おいておこう。

 今は、ここまで付き合ってくれた会場のファンの方々に、最高のライブを届けることだけを考えよう。

 

 

------------------------------

 

 

 会場の照明が落ち、ステージ上では月村さんだけが立っている。

 そして、テンポのいい曲に合わせて、彼女が断続的に照らされる。

 イントロが始まり、いつもの歌詞で終幕を開けた。

 

『あのね。』

 

 そのまま月村さんが一人で歌い始める。

 出だしは好調だが、少しでも彼女に詳しい人が見れば、普段よりも苦しそうに歌っているのがわかる。

 表情に出さない辺り成長したことを喜ぶべきだが、そう長くは持たないだろう。

 

 多少休めたとはいえ、順位発表でも少しはしゃいだ後だ。

 その直前には、2回も全力のライブをしている。

 体力の限界は、もう目前だ。

 

 だが、彼女はサビに入っても、初見の人にはそれを気づかせない程の歌を歌った。

 それは、彼女がファンに最高のライブを届けたいと思う一心からくるものだろう。

 

『⾔葉⾜らず、失くしてしまう物ばかりだ

 Luna say maybe…

 降るのは、

 迷be,rainy 』

 

 あるいは限界を超えたその先へ、一歩踏み出そうとしているのかもしれない。

 でも、それは()()()()()()()()

 彼女たちのアイドル人生は、まだ道半ば。

 そんなところで、倒れられても困るのだ。

 

 舞台袖から、秦谷さんと賀陽さんが現れる。

 観客席からは、困惑の声も聞こえるが、それよりも大きい歓声がそれをかき消した。

 

 スタンドマイクからマイクを取った月村さんの隣に、マイクを持った秦谷さんと賀陽さんが寄り添う。

 そして、秦谷さんが歌い始めた。

 

『愛せ、どんな⾃分でも

 Navy⾊に染まるまで

 時間はかかるかもしれないけど 』

 

 歌いながら月村さんを見ているあたり、彼女はこの歌を月村さんに歌っているのだろう。

 どんな自分でも、愛してほしいと。

 そして、賀陽さんにパートが移る。

 

『I know, 輝くしかないこと

 ハイライト、塗り続けるしかない

 真実はちゃんと、⾔わなくちゃね』

 

 賀陽さんも、月村さんに向けて歌を送る。

 私を憧れにしたんだから、もっと輝きなさいと、そう言わんばかりに。

 次は月村さんだ。

 

『⽬に⾒えるものが

 続くと、ずっと

 そう、ずっと 』

 

 噛み締めるかのように、大事に歌詞を紡ぐ彼女からは、先程まで隠していた辛さはもう私の眼からも見えなかった。

 そして、三人で歌いだす。

 

 『『『思いたい』』』

 

『『『君に、半信半疑な素振りして

 ⼼、空回り、遠回り』』』

 

『最低だ、もう⼀回やり直せるのなら』

 

『素直になりたい、なりたい、なりたいと』

 

『願ったジレンマ』

 

『このまま、1⼈じゃ何もできない』

 

『全部、決めるのは、⾃分次第』

 

『初めて背中をみた時に、覚悟を決めた。』

 

 秦谷さん、月村さん、賀陽さん、月村さん、秦谷さん、賀陽さんと、交互にサビを歌い分ける。

 完全に私の好みで割り振ってしまったが…ぶっつけ本番の一発で合わせる辺り、流石だと言わざるを得ない。

 

 そして、ラスサビ前の転調は、賀陽さんと月村さんの二人だ。

 

『『どこまで

 

 いけるのか

 届くのか

 わからないよ 』

 臆病が

 そこに⽴っている 』

 

 最後は月村さんだけで、本心の吐露ともいえる歌詞を紡いだ。

 そして、秦谷さんがそれを引き継ぐ。

 

『3秒前バックステージ

 震える背中を君に預けて』

 

『『『この運命的出会いは

 きっと、そう、きっと

 偶然みたいな 』』』

 

『多分、神様のいたずらです。』

 

 三人の輪唱から、秦谷さんのソロに代わり、次に月村さんと賀陽さんのデュエットになる。

 これは、賀陽さんが月村さんのガイドをしているからで、月村さんには最後のサビは歌い切ってもらうため、温存してもらう意味合いがある。

 

『『どうか、正⼼正銘のこの思いが

 君の⼼(ところ)にちゃんと届くまで

 ここで、私、全⼼全霊で歌うから 』』

 

『待ってる、待っている

 だから、この場所を

 ⼤切にしたいの! 』

 

 秦谷さんの最後のソロパートが終わり、ラスサビのソロ部分は月村さんに歌い切ってもらう。

 

『これが、正真正銘の私だ!

 ⼤丈夫、もう怖くはないわ』

 

『『たまにつまづくことなら、あるけれど』』

 

 賀陽さんと秦谷さんのデュエットが、月村さんを支えるように、彼女を導く。

 

『1番特等席で君の笑顔⾒たいんだ

 私だけの特権

 ⾒えない未来、⼿探り

 今⽇もステージの上で証明して⾒せるから』

 

『『ここにしかないスクリーン

 really! re@lly!』』

 

『君にまだ話せてないことばっかりあるんだ

 聴いて欲しいの 』

 

『『『あのね、』』』

 

 そして、最後は三人でロングトーンを伸ばし切り、歌い切った。

 会場は爆発するような歓声で包まれる。

 

 …最後まで涙を流すのを堪えていたが、もう限界だ。

 隣の藤田さんも号泣しているし、もういいだろう。

 堪えていた涙が溢れてくる。

 

 ここまで長かった。

 『SyngUp!』のライブを完成させたいと思い、もう3か月目に入っている。

 このままいけば、冬の『H.J.I.F』で見たいものが見れるはずだが…それまでは、まだ彼女たちの実力を伸ばしていくことが重要だ。

 

 そして、その一端を今見ることができた。

 覚えがないが、クリスマスプレゼントを心待ちにしている子供はこんな思いなのかもしれない。

 

 ステージの上で、MCをしながら観客に向けて感謝の気持ちを伝えている彼女たちを、万雷の拍手と歓声が包み込む。

 そんな中で、私は最大限の賛辞を拍手にして送りながら、涙で顔がくしゃくしゃになるのを隠せなかった。

 

学マスのストーリーはどの程度進めていますか

  • アプリをそもそも入れていない
  • どのキャラも親愛度10未満
  • 特定のキャラのみ親愛度10まで
  • 特定のキャラのみ親愛度20まで
  • 全キャラ親愛度20まで
  • 特定のキャラのみ親愛度27まで
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