『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
成果は順調そのものではあったが、私は後処理に奔走され、学園の各方面の方々に謝罪して回ることになった。
アレを演出として受け入れてくれた方もいたが…『H.J.I.F』は『
本当は本戦が終わった後に、彼女たちを労うつもりだったのだが、月村さんが優勝ライブが終わって控室に戻った瞬間に崩れ落ちるように気絶したのだ。
そのため、彼女の介抱と後処理を同時にしなくてはいけなくなってしまい、見かねた秦谷さんがこっちはお任せくださいと言ってくれたので、その言葉に甘えてしまった。
幸い、極度の緊張と過度な体力消耗によるもので、休めばよくなると言われた点だけは救いだろう。
やはり、あの限界を越えつつあったライブを2回もやった後にライブをやるのは、かなり無謀だった。
得られるものも多かったが…月村さんに無理をさせすぎてしまったことは、『プロデューサー』として失格だ。
彼女としてはその方が嬉しいかもしれないが、限界を見極めてストップをかけるのが私の役割なのに、それを全うできなかった。
いや、
…本当に自分が嫌になる。
「吐き気を催す『邪悪』とはッ!
なにも知らぬ無知なる者を利用する事だ……!!*1とは言うが…本当にその通りだ」
事務所代わりの教室の中で自嘲する。
おかげで彼女たちの悪評にさらに箔がついてしまった。
彼女たちに罪がない…と言えば嘘になるかもしれないが、
…さて、反省はこの辺にしておこう。
もうそろそろ、彼女たちが事務所に来る予定の時間になるので、あまり弱気を見せてはいけない。
昨日、彼女たちを労えなかった代わりに、今日は事務所に集まってもらうことにしたのだ。
何せ、彼女たちに溜めに溜めた借りを『清算』しないといけない。
…………最悪を考えて、常日頃から遺書をしたためてはいるが、今日が命日にならないことを祈ろう。
借りが多すぎて、心臓を捧げよ!*2とか言われたら、文字通りくり抜いて渡さなくてはいけなくなりそうだ。
そんなことを考えているうちに勢いよく事務所のドアが開いた。
すっかり元気になった月村さんが、ドアを開けて入ってきたのだ。
「プロデューサー!
私、優勝しました!!」
「ええ、知ってますよ。
おめでとうございます」
「ふふん。
これで、私が名実ともに中等部ナンバーワンアイドルで、『SyngUp!』で一番上になったんです!
美鈴に勝ったんだから、美鈴に負けた燐羽にも勝ったと一緒です!
私が、『SyngUp!』で一番上です!」
そう言って鼻高々に勝ち誇る彼女は微笑ましいが、後ろにいる賀陽さんが凄い顔をしている。
秦谷さんはにこにこしているが、目が笑っていない。
藤田さんはゲッソリだ。
賀陽さんがひきつった顔をしながら口を開く。
「プロデューサー…昨日、手毬はあれから眠り呆けて、今日の朝起きてからずっとこれよ…。
勝って嬉しいのはわかるけれど、こうも明け方からずっと勝ち誇られると、流石に辟易してきたわ…。
このままだと、明日登校したときもこの調子かもしれないわよ」
「朝の4時に鬼電かけてきたと思ったら、自慢話を永遠に聞かされるハメになりました~…。
明け方から長電話したせいで、ルームメイトの子にも怒られるし…」
「……まりちゃんは可愛いですが…ここまで自分の発言が恨めしいと、思ったことはないです…」
既に多大な迷惑をかけているらしい。
朝からずっとダルがらみされている3人。
秦谷さんはそれだけなら我慢できただろうが、煽るかのように以前に自分が言ったことを返され続けて、流石に心に来ているらしい。
これは見てないところで散々煽られたに違いない。
この分だと『私が上で、美鈴が下! ついでに燐羽も下だから!』ぐらい言ってそうだ。
昨日、熱心に月村さんを介抱していたのは秦谷さんなのに、なんて不憫な…。
「月村さん」
「なんですか?
この『SyngUp!』ナンバーワンで、中等部ナンバーワンアイドルの月村手毬に、何か?」
月村さんはそう言ってまた胸を張った。
張りすぎてのけ反りそうになっている。
まだ私は彼女たち程聞いていないのに、少しイラっときた。
「あんまり調子に乗っていると、今日のお祝い会はピーマンのピーマン詰め食べさせますよ」
「なんでですか!
って、ピーマンのピーマン詰め!?」
「ピーマンの中をくり抜いて、中に細切りにしたピーマンを詰めるんです。
ピーマンの味をダイレクトに味わえて、おすすめですよ」
月村さんの献立を組み立てる上で一番重要なことは、ピーマン…もとい、嫌いな野菜を入れないことだ。
入れるとしても、気づかれないように混ぜたりしてばれないようにしないといけない。
顔を青くした彼女は、頭を振って叫んだ。
「ぜっったいに嫌です!!」
「でしたら、自分の発言を省みてください。
昨日のライブは確かに素晴らしかったですが…最後のライブは、秦谷さんと賀陽さんの協力があったからこそです。
なのに、自分だけが優勝したと、二人を煽り散らかして良いと思っていますか?」
そう言うと月村さんはたじろいだ。
彼女の気持ちもわからないでもないが…限度はある。
「うぐ……。
でも、ここで勝ち誇っておかないと…今まで散々子ども扱いされてきたし……」
そう言ってふてくされている彼女を見かねたのか、賀陽さんが割って入った。
「はぁ…。
手毬、そもそも、なんであなたが子ども扱いされているのか、わかってる?」
「…実力がないからでしょ。
それで、燐羽と美鈴の足を引っ張ってたから…」
「そんなこと関係ないわよ。
そもそも本当に実力がないなら、いつまでもメインで歌わせるわけないでしょ。
それに、最近は歌に関して文句を言った覚えはないわ」
賀陽さんの言葉で、月村さんは頭を捻った。
本当にそれが答えだと思っていたのだろう。
自分の実力が足りないから、彼女たちに子ども扱いされていると。
……だが、そうではない。
もしかしたら最初はそうだったかもしれないが、今の彼女を見て実力が足りてないというものは、そうそういないだろう。
「…じゃあどうして」
「はぁ…。
あのねぇ、
……まあ、実のところそれに尽きる。
如何に秦谷さんがお世話好きだとしても、それに甘えて何でもしてもらってたら、子ども扱いされても文句は言えないだろう。
「あ…」
月村さんは、それが当たり前だっただけに言われると納得してしまったのか、そう言って口を開いたままだ。
もっと言うとそれだけではない。
「この前だって、燐羽ぁ…雷止めてぇ…って泣きついてきて、無茶を言ってきたじゃない」
「うぐっ」
「ことねにだって、教室でトラブルになりそうになった時に助けてもらって、迷惑をかけてるじゃないの」
「うっ」
「そんなことしておいて、一人前に見てほしいなんて、図々しいんじゃないかしら?」
「うう…」
要するに、周囲に迷惑をかけまくって、自立できない人間を一人前と見ることはできないという話だ。
月村さんの場合は…環境的要因も十分あるだろうが、それにしても甘え方が堂に入っている。
『やったか?』と言わんばかりに少し覗き込んで、折れそうなことを察した上で『ありがとう燐羽! 大好きっ!』というあのシーンは、普通なら同い年の友達にやっていいことではないだろう。
『母親に駄々をこねる娘』と言われた方がしっくりくる。
「まあ、美鈴も美鈴で甘やかしすぎているところがあるのは確か。
でも、そもそもあなたがだらしないから、そうなったのは自覚しておきなさい」
「…燐羽だって美鈴に掃除してもらってるくせに」
「別に頼んだ覚えはないわ。
勝手に美鈴がやってるのよ」
「でも部屋の片づけできないじゃん」
「…言うようになったじゃない。
手毬のくせに生意気」
ふてくされた月村さんは、むくれて賀陽さんにぼやいている。
賀陽さんは鬱陶しそうにしているが、痛いところを突かれているのは自覚しているらしい。
「いつまでも言われっぱなしじゃないから。
……さっきはごめんなさい。
美鈴も、ことねも…ちょっと調子に乗りすぎたみたい」
そうやって暫くふてくされていた月村さんだったが、反省したのかきちんと謝罪した。
「あれでちょっと?」
「いいんですよ。
わたしも…ちょっとりんちゃんにいじわるしすぎましたね。
ごめんなさい、りんちゃん」
月村さんの言動を見て、我が身を振りなおしたのか、秦谷さんも謝った。
「別にあれぐらいなら気にしてないわよ。
手毬みたいに、朝からずっと言わなければね」
「うぐっ」
「りんちゃん、気持ちはわかりますが、あんまり、まりちゃんをいじめたらだめですよ」
「美鈴まで!?」
「美鈴ちゃん、結構手毬に怒ってるんだナ~」
藤田さんの言葉は多分あっている。
お灸を据えないといけない、の方がニュアンスは近いだろうが。
満足したのか秦谷さんが私の方を見た。
「…さて、それではプロデューサー。
本題に入っていただけますか?
完全休養日の今日、わたしたちを呼び出した理由を」
その言葉で、場に緊張が走る。
話を聞く姿勢が整ったことを感じ取り、私も本題に移ることにした。
「まずは、月村さん、秦谷さん、賀陽さん。
オーダー通り、『H.J.I.F』の上位入賞を果たしてくれましたね。
あらためて感謝を、あなた方は私が見込んだ以上のアイドルです」
「当然の結果です」
「期待に応えられたみたいで何よりです」
「少し不満はあるけど、まあリハビリにはちょうどよかったわ」
「藤田さんもお付き合いいただいてありがとうございました」
「気にしないでいいですよ~。
あたしも勉強になりましたし、とっても楽しかったです!」
「それであればよかった。
今日は…『H.J.I.F』を優先して後回しにしていたごたごたを『清算』させようと思って集まっていただきました。
本当であれば、昨日すぐにしたほうが良かったかもしれませんが、流石に皆さん疲労困憊でしたので」
主に月村さんがだが、賀陽さんと秦谷さんも、あの状態で話をしてもあまり身に入らなかっただろう。
そして、月村さんは心当たりがあったのか思いついたように、賀陽さんの方を向いた。
「『清算』…あ、燐羽、あの話、聞かせてくれるんだよね?」
「………そうね」
話を振られた賀陽さんは、諦めたようにそう呟いた。
『SyngUp!』の面々が神妙な雰囲気になっているのを察して、藤田さんだけが動揺して周りを見回している。
「え、え、何の話?」
「そういえば、ことねは知らなかったわね。
まあ…簡単に言うと、私が1年生の最後の時より、実力が落ちてるって話よ」
「あれで!?」
驚いている藤田さんを見ると、まあ普通はそういう反応になるよなと、場違いな感想を抱いた。
そんな藤田さんに、月村さんは呆れたように説明した。
「当たり前でしょ。
燐羽は、あの時、卒業生とのライブでも勝って…燐羽のお姉さんとの勝負でも勝ったんだから。
元『
「そんなことしてたの!?
卒業生の方は聞いてたけど…あれが本当ってだけでもおかしいのに、それより上が出てくることある!?」
「りんちゃんはすごいんですよ。
わたしとまりちゃんに歌を教えてくれたのもりんちゃんですから」
「この二人に!?」
「それ以上は恥ずかしいからやめなさい」
顔が赤くなってきた賀陽さんが可愛らしい。
もうちょっと攻めてみたくなってしまう。
「ちなみに、その頃の賀陽さんは今みたいにグレてない、キレイな賀陽さんですよ」
「グレてない燐羽!?」
「ちょっとプロデューサー!
なんであなたがそれを…!?」
「あなた方の担任の先生から、過去の資料を見させてもらいました。
ほら、とても素直で可愛らしい、賀陽さんの入学写真もありましたよ」
そう言って賀陽さんの入学当時の写真を藤田さんに見せびらかす。
そこにいる賀陽さんは、髪の色も今とは違い、メイクもナチュラルメイクに近く、刺々しい感じがない。
先程よりも顔を真っ赤にした賀陽さんは露骨に狼狽えて、写真を撮り返そうととびかかってくる。
「な、なんであなたがそれを…!
よ、よこしなさい!」
「お断りします。
あまりない貴重な当時の資料ですので」
身を翻し、彼女の貴重な写真を盗られないように大事に胸ポケットにしまった。
「こ、この…!」
「はぇー…燐羽ってすごいナー…」
「ことねさんが、虚空を見つめて……大丈夫ですか?」
「一気に情報を過剰摂取した弊害でしょう。
暫くしたら戻ってきます」
『宇宙猫』みたいな顔になって、目をぐるぐるしている藤田さんを脇に置いて、話を戻す。
「賀陽さんが、実力を落とした…その原因に関して、賀陽さんから説明してもらいましょう」
「何事もなかったかのように始めるんじゃないわよ…。
はぁ、いいわ」
そう言って意を決してた賀陽さんを、正気に戻った藤田さんも含めた全員で見守る。
そして、賀陽さんは重い口を開いた。
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