『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
「じゃあ次は私ね」
「賀陽さん…そうでした、賀陽さんには数発殴られるんでした」
「あれ、本気で言ってたんですか!?」
藤田さんが驚いているが、仕方ないことだ。
「それで賀陽さんの気が済むのであれば、いくらでも」
「……はぁ、冗談よ。
プロデューサーには貸しも多いけど…返せない程、
「借り…ですか?」
私が賀陽さんにした借り…?
自分で思いつかなかったため、頭を悩ませていると賀陽さんがため息をついてから答え合わせをした。
「私が忘れていたあの感情を、思い出させてくれるきっかけを作ってくれた。
手毬と美鈴と向き合うきっかけを作ってくれた。
私にとって、それは借りなのよ。
あなたがどう思ってもね」
「…なるほど。
本当に、義理堅いんですね」
「それは、『賀陽燐羽』だから?」
「賀陽さんだから、です。
目の前のあなたを見て、関わって、思ったことをそのまま言っただけですよ」
「そ、ならいいわ」
月村さんと藤田さんは、会話の意味が分からないだろう。
だが、秦谷さんは心当たりがあるので、にこにこしている。
「それと、最後にお伝えしたいことがあります。
大事なことを話すので、心して聞いてください」
私が最後に真面目な話をしようとして、場の雰囲気を引き締める。
「…『H.J.I.F』の結果は素晴らしいものでしたが、少々やりすぎてしまいました。
昨日、各方面に優勝ライブをユニットでやってしまったことに対しての、事後処理に回ったのですが、釘を刺されてしまいました。
『H.J.I.F』を私物化しないように、と」
「それは…プロデューサーのせいじゃないでしょ!
私が…私の体力がもっとあれば…優勝ライブも一人でできたし…」
「いえ、そもそもユニットをソロ部門に参加させるように指示したのは私です。
その段階で、既に問題意識がある方は指摘してきましたので。
月村さんの体力の限界は、私はきちんと把握していました。
決勝のライブを見て、
「…私がそれを聞き入れると思ってますか?」
「いいえ、ですが
月村さんの体を壊さないようにするためには。
それを、秦谷さんと賀陽さんに協力をお願いしてまで、やりきってもらったのは……ただの私のわがままです」
「でも、それをやることにしたのは私たちだから!
プロデューサーだけのせいじゃない!」
月村さんは私を庇うようにそう叫ぶが、その叫びには意味がない。
なぜなら。
「『プロデューサー』としては失格、これが『初星学園』からの評価です。
そこに、あなた方の意思は関係ありません」
「…!!」
オブラートに包まないで伝えた言葉に、月村さんはショックを受けている。
自分が招いた結果だから、月村さんがショックを受ける必要はないのだが…。
それに…
「ですが、
同じ状況になった時、私は同じ選択をする自信があります」
「…え?」
あの選択に後悔はない。
寧ろ、あそこで優勝ライブをさせなかったら一生後悔していただろう。
彼女たちの、最高のパフォーマンスを披露する場面を、私が奪うわけにはいかないのだから。
「なので、私は『プロデューサー』として失格なのでしょう。
ですが、あなた方が『ファン』を裏切らない、最高のパフォーマンスをしてもらうには、あれが最善でした」
「プロデューサー…」
「今後も、無茶ぶりをしてしまうと思います。
極力させないようにはしますが…無理だと思ったらできることなら先に言ってください。
当然、そうならないように最大限尽くしますが…今回みたいに無理させてしまうことが、ないとは言えません」
本来、こんなこと言いたくはないのだが、前科ができてしまった以上、先に話しておくべきだと思った。
そして…。
「それと、私に愛想を尽かしてしまったら…その時は見限っていただいて構いません。
結果として、秦谷さんの懸念していた通りになりましたし、賀陽さんが気にしていた通り月村さんに無理をさせすぎることにもなってしまいましたから」
結局、私は大言壮語を繰り返し、秦谷さんと賀陽さんを裏切り、月村さんに無理をさせてしまった。
本人が受け入れてくれたとしても、それに変わりはない。
「…そうですね。
プロデューサーには、また、貸しが増えてしまいました」
懺悔している私の隣に秦谷さんがやってくる。
怒っているかと思っていたのだが、その声色から、それは読み取れなかった。
「ですが…わたしが見限るようなことはありませんよ。
まりちゃんが…無理をするのは、わたしがよく知っています。
それでも、わたしはソロ部門に出場したことが無意味だったとは思いません。
むしろ、得られるものは確かに多かった」
そして、秦谷さんはゆっくりと、噛み締めるように言葉を紡いだ。
「それに…あの優勝ライブは…とても楽しかった……本当に楽しかったのです。
『プロデューサー』失格だと周りの方がおっしゃったとしても、わたしの、わたしたちのプロデューサーは、あなたです。
……絶対に、逃がしませんよ」
「…ありがとうございます。
最後の一言は聞かなかったことにします」
秦谷さんを勝たせられなかった、月村さんに無理をさせてしまった、この二つは明確に私の責任なのだが、彼女にはそれよりも他の要素が勝ったのだ。
そう言ってもらえて嬉しい反面、聞きたくないことを聞いた気がしたが、気のせいだろう。
「絶対に逃がしませんよ」
「言い直さないでください」
わざわざ聞かないふりをしたのだからスルーしてほしかった。
逃げるつもりは元からないが、逃がしてもらえないのは聞いてない。
そして、今度は賀陽さんが私に向かい合う。
「諦めなさい。
……あなたには、足を引っ張ったら殺すって前に言ったわね」
「え、そんなこと言ったの?」
「そういえば、藤田さんはまだいませんでしたね。
ええ、よく覚えています」
「『SyngUp!』のプロデューサーが『プロデューサー』失格なんて言われるようなこと、足を引っ張る以外の何物でもないわね」
「それは…そうですね」
ぐうの音も出ない。
私が彼女たちの足を引っ張ってしまうことなど、あってはならないことだ。
遂にクビだろうかと覚悟を決めて次の言葉を待った。
「だから…成果で返してもらうわ。
私が諦めようとしてたものを、諦めさせなかった責任を取ってもらうまで、殺すのは後にしてあげる。
精々、頑張りなさい」
「賀陽さん…ありがとうございます」
どうやらまだクビにはならなくて済んだらしい。
冷汗が流れるが、最大限取り繕って、今度は月村さんの方を向く。
「…プロデューサーが『プロデューサー』失格だと言われても、私を…私たちをここまで引っ張ってくれたのはプロデューサーです。
私は必ずトップアイドルになって見せる。
だから…最後までついてきてください、プロデューサー。
足を引っ張ったら…殺すから」
月村さんはそう言ってドヤ顔した。
全員から即答されたのは嬉しい限りだ。
なのだが…。
「月村さん…気持ちは非常に嬉しいのですが、秦谷さんが激おこですよ」
「なんで!?」
「まりちゃん…りんちゃんの言葉をなんでもかんでも真似してはいけないと、いいましたよね?」
「それは…だって、言ってみたかったんだもん…」
月村さんはそう言うとしょぼくれてしまった。
そんな状態の月村さんに追撃するような秦谷さんではないので、今度は矛先が賀陽さんに向く。
「りんちゃん」
「私のせいじゃないわよ」
「そんなことを言っても、まりちゃんはりんちゃんの真似ばっかりしているんです。
少しはその自覚をもって、言葉を選んでください」
「なんで私が…それは美鈴の役目でしょう。
しっかり自分で判断させなさいよ。
何でもかんでも甘やかすから、こうなるのよ」
「聞いてくれないから言ってるんです。
でしたら、見本となるあなたがしっかりしてくれればいいだけでしょう」
気づいたら二人で言い合っている。
どっちにも言い分はあるだろうが…後のことを考えると、自分で判断した方が良いとは思う。
二人が言い合っている間に、藤田さんがいつの間にか隣に来ていた。
「…プロデューサー、これって子供の教育方針でもめる夫婦喧嘩ですか?」
「概ね間違っていません。
子供が気持ち大きい気もしますが…まあ誤差でしょう」
「子ども扱いしないでくれる!?」
「いや、無理だろ」
「
「こ、この~~~~~~…!
美鈴! 燐羽!
子ども扱いしないでってば!!」
そう言って月村さんは夫婦喧嘩の中に突撃していった。
夫婦喧嘩に子供が混ざって、さらにカオスな状況になっている。
もう放っておくしかないだろう。
「…藤田さんはよろしいのですか?」
「ん?
何がですか~?」
「私があなたのプロデューサーでいることにです。
先程も言いましたが、私が付くことが悪い評価につながる可能性が出てきました。
それは、藤田さんも例外じゃないでしょう」
…藤田さんは、まだプロデューサーとしてついたものの、大したことはできていない。
今ならまだ引き返せる範囲だと、そう思った。
「ん~…確かに、プロデューサーの評判が悪くなるのは困っちゃいますねー」
「そうでしょう」
「なので、あたしが頑張って、プロデューサーの株を上げてあげます!
ここまでしてもらったのに、今更さよならなんてダメですからね!」
まだそんな大したことはしていない。
私じゃなくても、『プロデューサー科の生徒』であれば、誰でもできるようなことしかできていない。
そう思って、口にしたのがまずかった。
「まだ何もしていませんよ?」
「…は?」
彼女の口から零れた声は、普段よりもかなり低く、ヤクザの脅しかと思うほど。
目は漆黒で塗りつぶされており、どこか秦谷さんを彷彿させる。
「ヒェッ」
普段の藤田さんのギャップもあって、私は思わず悲鳴を上げてしまった。
そして、次の瞬間に藤田さんは爆発した。
「何もしてない?
本気で言ってるんですか?
自覚がないなら言いますよ。
プロデューサーが今まで何をしてくれたのか。
プロデューサーからしたら大したことないことかもしれないけど、あたしにとっては大切なことだったんだよ!」
…確かに、そうかもしれない。
今までの彼女を考えると、環境が悪かったと言えば簡単だが、それを変えるためには『プロデューサー』がつかなければいけないことには変わりはない。
……いけないな、後処理の時に謝罪周りをしすぎて、ネガティブ思考になっていただろうか。
もっと自分の評価を客観的に見ていく必要があるかもしれない。
「…失礼しました。
少々卑屈になっていたようです」
「少々じゃないんで、もっと自覚してくださ~い」
「大分卑屈になっていたようです。
そうですね…拾い上げた責任は取らなければいけないと、決めたばかりだったのに…。
本当に失礼しました」
「次同じこと言ったら、ぶん殴りますからね☆」
「肝に銘じます」
キラッとつきそうな言い方に似合わない物騒な物言いに、彼女もやる時はやるタイプだと思い出す。
華奢なので殴られて肉体的なダメージは少ないとしても、精神的にダメージを負いそうだ。
遠巻きの家族喧嘩が白熱しつつあるが、そろそろ仲裁に入る。
それなりに話してて、良い時間になってきたからだ。
全員集めなおして、話し合いを再開する。
「さて、話が脱線しすぎてしまいました。
皆さんに覚えておいてほしいことは、『H.J.I.F』で文句を言われても、プロデューサーにやれと言われたからやった、で通してほしいということです」
「なぜでしょうか?」
「無理に敵を増やす必要がないからです。
あなた方の想いは受け止めましたが、それと対外向けの言葉は違う、ということです。
「下手な自己犠牲精神ならぶん殴るけど…そういうわけではなさそうね」
「世の中には、評価が悪いからこそできることもあります。
なので、それを今のうちに済ませておこうかと」
アイドルの悪評は勘弁してほしいものだが、私の悪評に関しては悪いことばかりではない。
むしろ、学内での知名度が向上したことは明確な利点だ。
良い評判じゃないため、多少の嫌がらせを受ける可能性はあるが、無名でいるよりはいい。
そう思って彼女たちにお願いしたのだが…。
「あ、そう。
考えがあるならいいけど…聞くかどうかは別ね。
考えといてあげるわ」
「同じく。
プロデューサーが何と言おうと、あれは私が選んだ道です。
あなただけにその責任を押し付けたくない」
「いつもどおり、好きにさせてもらいますね」
聞いてくれるような様子ではなかった。
…確かに、自分を大切にできない者が、他人を大切にできるとは思えないと言われればそれまでだ。
「……まあいいでしょう。
必要であれば、プランを修正するだけです」
「できるなら最初からそうしてくださーい。
プロデューサーはもっと自分を大切にした方が良いですよ~」
藤田さんからの言葉の棘が痛い。
……まあいいでしょう。
最後に、今後のスケジュールと目標を共有することにした。
「それでは最後に、今後の確認です。
『H.I.F』の本戦が近いので、それの見学の席を用意しています。
これは全員参加してもらうので、予定を開けておいてください」
「え、プロデューサー!
いいんですか!?」
月村さんがまた目を輝かせている。
準備した甲斐があったというものだ。
「来年、
皆さんには期待しているので…見て、学んでください」
「「「「はい」!」」」
「それと、『H.I.F』が終わった後は定期試験があります。
アイドルコースの定期試験は、通常の筆記試験とは別に、ダンス、ボーカル、ビジュアルの観点での試験もあります。
手始めに、これで上位を独占してください」
「「「「はい」!」」」
「特に藤田さんには期待していますよ。
今のあなたなら…3人といい勝負ができるはずです」
「わっかりましたー!
まだ自信は足りてないけど…やってやりますよ~!!」
「さて、それでは昨日はできなかった打ち上げをしましょうか。
チャットでお伝えしていましたが、いきたい場所はありますか?」
「ラーメン!
ラーメン屋が良いです!」
「アイドルがご飯食べに行く選択肢で、最初に出ていいものじゃねーだろ!」
「まりちゃんはラーメンが大好物なんですよ」
「……こいつ、太りやすいもの好きすぎだろ。
前の焼肉の時といい…とんかつとからあげも好きなんだっけ?」
「わ、悪い!?
私がラーメン好きだったら…!」
「悪くはないケドさ~。
ま、美鈴ちゃんとプロデューサーがカロリー計算しているから大丈夫か~」
「はぁ…これじゃあ、いつまでたっても独り立ちなんてできないわね…」
そうして、全員引き連れてまたラーメン屋に行くことになった。
初めて入る店のはずだったが、月村さんが慣れた手つきで『カタメコイメアブラマシマシ!』と注文しているのを見て、私は頭を抱える羽目になる。
藤田さんは月村さんのラーメンを見て爆笑していた。
……次の日から月村さんのランニングメニューが増えたのはいうまでもない。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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アプリをそもそも入れていない
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どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX