『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される   作:プロデューサー科のもの

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46話目

 

 『H.J.I.F』が終わり、少し経った。

 『H.I.F』の見学は非常に有意義なものだった。

 

 特に、『十王星南』が『一番星(プリマステラ)』を取ったあのライブを観れたことは大きい。

 藤田さんが感激して、月村さんに絡みつくしていたのは珍しい構図だった。

 私がいたときは自制できていたらしいが、次の日に事件は起こった。

 

 以下一部抜粋

 

「あの星南ちゃんが…『一番星(プリマステラ)』になったんだよ!」

 

「ことね…その話…今日だけで10回目…」

 

「だって、あのちっちゃかった星南ちゃんが!

 あの星南ちゃんダンスを頑張って踊ってた星南ちゃんが、『Choo Choo Choo』を披露して、『一番星(プリマステラ)』に…!

 まだ全然有名じゃなかったころから追っかけてきたけど、遂に学園最強まで上りつめたんだよ!」

 

「もう勘弁して…」

 

「まりちゃん…」

 

「美鈴! 助けて!」

 

「わたしも……朝からずっと………もう限界です…………まりちゃんだけでも……にげ……て…(ガクッ」

 

「美鈴ー!!」

 

「チーン(轟沈済み賀陽さん」

 

 『H.I.F』が終わった次の日は、こんな感じだったらしい。

 賀陽さんは藤田さんにキスをしようとして、捕まって一番に轟沈したそうだ。

 秦谷さんからヘルプが来たので、藤田さんと話し合いの機会を設けて何とか落ち着かせた。

 

 落ち着かせた決まり手は、月村さんよりもめんどくさくなってますよ、と言ったことだ。

 ショックが大きかったのか、藤田さんは丸々2日間寝込んだ。

 藤田さんから解放されて喜んでいた月村さんが、それを知ってブチギレるのはまた別の話。

 

 そして、重要なことはまだあった。

 それは…中等部で行われたアイドルコースの定期試験結果だ。

 今頃中等部でも発表されている頃だろう。

 

 私は、中等部に担当を持っているので、メールで自分の担当の順位が載っている場所だけ送ってもらうようにしていた。

 

 そのはずだったのに、送られてきた画像は1枚だけだった。

 

『1位 ()()()()()

 2位 秦谷美鈴

 3位 賀陽燐羽

 4位 月村手毬

 5位 花岡ミヤビ

 6位……』

 

 急ぎでほしいのはアイドルコース側の試験結果だけと伝えていたためか、送られてきた写真は上位7位までの画像1枚のみ。

 中を見ると……藤田さんが1位になった。

 

 あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!*1

 おれは落ちこぼれのアイドルをプロデュースして環境を整えただけなのに、たった数ヶ月でいつの間にか中等部のトップになっていた。

 な… 何を言っているのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった…

 

 …思わずポルナレフ状態になってしまったが、ハッキリ言おう、計算外である。

 

 いや、確かに言った。

 あの調子に乗る『SyngUp!(問題児)』をボコボコにしてください、と。

 良い勝負になるはずとは思っていたが……ええ…?

 

 彼女たちは『H.J.I.F』という修羅場をくぐり、そこで上位に立ったアイドル。

 それを…定期試験とはいえ、追い越した…?

 

 十王星南が『一番星(プリマステラ)』になったことで、メンタル面の調子が万全なのはわかっていた。

 体調面も、試験前にわざわざ1週間バイトを休ませて、万全にするように整えた。

 レッスンも、『SyngUp!(彼女たち)』についていけるようになったとは聞いていた。

 『SyngUp!(彼女たち)』も『H.J.I.F』で力を出し尽くしたから、今回の定期試験は流しめでするとは言っていたが…。

 

 ………それにしても、だ。

 本当に、それぐらいしか要素がないと思うのだが……ええ?

 流しめでやっているとはいえ、きっちり上位独占しているということは、同年代の並みのアイドルよりも上になったと言ってもいいぐらいだ。

 

 ……これ、もう私がすること何もないのでは…?

 

 自分の頭の上をヒヨコがくるくる回っている様子を幻視する*2

 確かに、やたら中等部に行った時にトレーナーや先生方から褒められるなとは思っていたけど…!

 

()()

 どうかしたのか?」

 

()か…いや、中等部の定期試験の結果が来たんだが…」

 

 教室で結果を見ていたからか、様子を不審に思った相上が私のもとに来た。

 相上…いや裕と話すのも久しぶりな気がする。

 付き合いが長くなったから、お互いに名前呼びになって久しい。

 

 『H.J.I.F』の期間中にいろいろ手伝ってもらったこともあって、その時期はよくあっていたのだが、最近はあまり話せていなかった。

 講義中とか講義の合間は変わらず仲良くしているが、昼休憩は事務所で過ごすことが増えたことと、講義の合間も秦谷さんがサボっているときは様子を見に行っていたので、話す機会は減っていた。

 

「『SyngUp!』のメンツは問題ないと思うから…もう一人の、藤田ことねさん…だっけ?

 元々成績が悪いって聞いてたけど、試験結果が悪かったのか?」

 

「いいや、逆」

 

「逆?」

 

「アイドルコースの試験限定だけど、『SyngUp!(問題児)』よりも上、1位だった」

 

 私がそういうと、彼は面を食らったように呆けて、少しして再起動したように目を瞬かせた。

 

「……はぁ!?

 え、いや、悪く言うつもりはないんだけど、藤田さんって落ちこぼれって言われてたんだよな!?」

 

「あってる」

 

 やはり、それが普通の反応だろう、やっぱり私がおかしくなったわけじゃあないらしい。

 これぐらいで1位になれる逸材が、今まで放置されてきた事実に震える。 

 

「……今度は何をやったんだ?」

 

「また私が何かをやったと…何もやってないから困ってるんです」

 

「嘘つけ。

 ユニットをソロ部門に出場させた挙句、全員ソロ曲を披露させて、上位を独占させて、ソロ部門の優勝ライブでユニットで歌唱させた…『中等部の黒幕(フィクサー)』が、次は何をやらかしたんだ?」

 

「なんですかそれ、初耳なんですけど」

 

 なんかとんでもないことを聞いてしまった。

 周りで聞き耳を立てているプロデューサー科の同級生も、うんうん頷いているということは、有名な話なのか…?

 もっと悪い噂が回っていると思ったが…いや、悪い噂だ。

 なんだ『中等部の黒幕(フィクサー)』って。

 

 どう見ても悪役…いや、『SyngUp!』が悪の幹部だとしたら…私が黒幕(フィクサー)ってコト?!*3

 …少ししっくりくるなとか思ってしまった自分が嫌だ。

 

「そうなのか?

 結構有名な話だぞ。

 今年は中等部のプロデュースをしている人がいなかったからってのもあるが、やりすぎだったな。

 その上、引き籠りで使い物にならなかった作曲家を、社会復帰させたって噂も聞いたけど」

 

「……それにはノーコメントです。

 ですが、使()()()()()()()()()()は撤回してください。

 彼の才能は、私の担当アイドルが証明しています」

 

「本当なのかよ…。

 いや、悪かった、また変な噂に乗せられたみたいだ」

 

「他にもあるなら聞きますが」

 

 今のうちに私の噂がどの程度で回っているのか聞いておく必要があるかもしれない。

 そう思って尋ねたのだが…指折り数えているあたり、もしかしてかなりあるのだろうか。

 

「う~ん…後は選抜試験(セレクション)の時に関係者席で担当アイドルを口説いていたとか、本戦の時にフル装備オタクが関係者席で号泣してたって話とか、担当アイドルに貢がせてるとか、中等部の先生とトレーナーに手を出してるとか、『H.J.I.F』でグッズ販売にも手を付けて一儲けしたとか…」

 

 思ったよりも数が多いな…。

 周りで聞き耳を立てている人たちもいることだし、この場で弁明しておこう。

 

「担当アイドルを口説いていたのは…彼女のネガティブ思考をポジティブにしてもらうために、彼女の可愛らしいところをひたすらお伝えしていました」

 

「……選抜試験(セレクション)観戦中に?」

 

「正確には開催直前ですが…まあ、似たようなものです」

 

「何やってんの?」

 

 呆れた顔でそう言ってくるが、あれにはやむを得ない事情があった…そう思うことにしている。

 

「信頼関係を育てていくためには、タイミングを見計らいすぎてはいけません。

 あのタイミングは最適だったのです」

 

「……まあ、士野がそう言うならそうなんだろうか…?

 フル装備で号泣していた件は?」

 

「事実ですね。担当アイドルが立派にライブしているところを見ると、涙が込みあげてくるのも当たり前でしょう。

 裕も、担当アイドルを持ったらわかると思いますよ」

 

「そうなのか?」

 

「少なくとも私はそうだったよ。

 他のプロデューサー科の人に聞けば、全員とは言わなくても何人かは同意してくれるはずです」

 

 周りで頷いている者と、首を横に振る者で分かれたが、頷いている者もいるのだから正しくはあるだろう。

 

 同級生で既に担当を持っている人は何人かいる。

 というのも、元々プロデューサーをしていた人が、初星学園のプロデューサー科に入学することは珍しいことではないからだ。

 

「貢がせてるのは…否定したいが、秦谷さんにお弁当を作ってもらっている以上は否定できない…。

 誓って、食べ物以外の物や現金を貰ったことはない」

 

「あー…大方、食事抜いてるのバレたからとか、そういうのだろ?」

 

「何でバレたし」

 

「それまで一緒に昼喰ってたのに、『H.J.I.F』の2回目の選抜試験(セレクション)あたりからか?

 あまり一緒に飯行かなくなったから、抜いてるんじゃないかとは思ってた。

 …まぁ、担当アイドルにバレたんじゃあ世話ないな」

 

「ぐぬぬ…」

 

 周りで噴出している人もいれば、目を逸らしている人もいる。

 後者は食事を抜く同類だろう。

 

 プロデューサー科の生徒が時々アイドル科の生徒とミーティングと称して食事を一緒に取っている光景は、きわめて珍しい…というわけではない。

 担当アイドルの体調管理を行っているようなプロデューサーなら、食事を極力一緒に取るようにしている者もいる。

 

 念には念を入れて、食事をとる際は事務所で人に極力見られないようにしているので、証拠を握られる可能性は低い。

 …そのせいで、最近は昼休みの事務所は『SyngUp!』と藤田さんの溜まり場と化していることは置いておこう。

 

「中等部の先生とトレーナーの件は?」

 

「『SyngUp!(問題児)』の件で、ほとんど毎日呼び出されてただけですよ。

 なんなら、それを秦谷さんに見られてガン詰めされたこともあります。

 因みに、私は担当アイドル含めて、プライベートの時間で『初星学園』の生徒、教職員と会わないようにしています。

 考えたくもありませんし、先の発言と矛盾するかもしれませんが、スキャンダルだけはあってはならないことです」

 

「そういえば、休日に会う約束とかはしてないな。

 グッズの件は…まぁ、俺も一枚噛んでたから、事実だな」

 

 そう、グッズ販売の件は増産した以上、販売員の不足を予想していたため手伝えそうな人を見繕った。

 その結果、プロデューサー科の人に声をかけてくれたのは裕だった。

 本人も販売員として参加してくれた。

 

 当然、バイト代は出したし、打ち上げ…は私が行くと雰囲気が悪くなるだろうと思って、費用として5万渡した。

 くればよかったのにと言われたが、生憎当日は事後処理で、次の日も担当アイドルのケアを優先したので実際行くのは無理だっただろう。

 

「その節はありがとう。

 足りなかった販売員を埋めてくれたのは助かった」

 

「いいって、打ち上げ代も出してもらったし、おかげで事務方の人とも仲良くなれたから、『H.I.F』の席の用意も都合つけてもらったしな」

 

「君は、本当に人と仲良くなるのが上手い。

 それは、プロデューサーとして明確な強みになるよ。

 …私はその部分で少し失敗したからね、現にプロデューサー科で他の友人もいないし、助かってる、ありがとう」

 

 素直に彼の尊敬する部分だ。

 誰とでも仲良くなれる、というのはそう簡単なことではない。

 藤田さんもそうだが、人と仲良く…この人と一緒に何かをしたいと思わせる人柄というものは貴重だ。

 

 とりわけ、こういう人間関係が物を言う仕事では。

 

 だから、彼との縁を切らないように、大切にしていた。

 そんな打算全開だったのだが、彼は気にするなと言わんばかりに手を振る。

 

「こっちこそ、先生に聞いたらもう少しで担当を持ってもいいって言われたからな。

 その前準備のいい機会だ。

 …今の段階で、誰か注目しているアイドルっているのか?」

 

 周囲で息を呑んだ音がする。

 他のプロデューサー科の生徒も気になっているのかもしれない。

 

 隠してもいいのだが……素直に言ってしまおう。

 

「担当がついていない、という前提で話すけど、中等部なら『花岡ミヤビ』。

 高等部なら『十王星南』『雨夜燕』『有村麻央』『姫崎莉波』あたりかな…。

 でも、正直、こういうのは自分で関わって調べた方が良い。

 私も、『SyngUp!』をスカウトしたときは、直接レッスン室に赴いたから」

 

 『学マス』でのネームドと、プレイアブルの生徒の名前を伝える。

 今は誰も担当がついていないことは確認済みだ。

 

 …私が全員担当することは不可能である以上、これで担当がついて少しでも救われるアイドルが増えた方が良いだろう。

 もっとも、闘ったとしても、私の担当アイドルは負けんがね。

 

 それに、名前を挙げたが担当を買って出るということは容易なことではない。

 事前に下準備を入念にすることが前提条件だ。

 

 …その点、私はもう少し調べるべきだったかもしれないことは否めないな。

 

「確かに、直接関わった方が良いってのはあるか…。

 高等部と中等部の見学でもしてみるかー」

 

「それが良い。

 アイドルとプロデューサーだと、また勝手も違うのと…プロデューサーと関わる時の顔と、アイドル同士の時の顔はまた違うから、見てスカウトしたいと思えるアイドルがいるかもしれない」

 

「よし、そうと決まれば講義終わったら許可貰いに行ってくるかー」

 

 そうして、私は講義を受けた。

 昼休みは、最近恒例となっている事務所で担当アイドルたちとの食事だ。

 見ていて楽しい反面、時間をよく見ないと講義に間に合わなくなりそうで怖くなる。

 

 今日は、藤田さんが定期試験で1位だったので、他の三人を煽り散らかしていたのが印象的だった。

 なお、筆記試験の方は赤点だったため、それで逆に月村さんに煽られていた。

 

 藤田さん自身、1位を取れるとは思っていなかったようで、要因と言えるようなものはやはりメンタルの安定と休息程度だったらしい。

 珍しく、秦谷さんと賀陽さんがドン引きしていた。

 

 …この分であれば、藤田さんの単独ライブを開催することもできるだろう。

 最初は単独でやって、そのあとで『SyngUp!』との対バン形式とかも面白いかもしれない。

 花岡さんが良いなら、打診してみるのもいいかもしれない。

 

 そうこうしているうちに昼休みも終わり、午後の講義も何事もなく終わった。

 放課後は担当アイドルはレッスンに、裕は中等部に見学に行くとのことで、別れることになった。

 

 …高等部に行くのであれば、途中まで一緒に行けたんだけどな。

 

 そう、私は今、高等部の生徒会室前に立っている。

 当然、高等部の職員室に寄って許可を得てからだ。

 事前にアポも取ってある。

 

 ドアをノックする。

 

「入っていいわよ」

 

「失礼します」

 

 そうして、私が生徒会室に入ると、そこに真正面から構えていたのは、奇麗な金髪を腰ほどまでウェーブさせて伸ばし、おでこが見える前髪が真ん中から分かれている髪型。

 奇麗な顔立ち、座っていてもわかる凄まじいスタイルの良さ。

 『H.I.F』優勝者、『一番星(プリマステラ)』…十王星南が、そこにいた。

 

 

…To be continued.

 

*1
ジョジョの奇妙な冒険3部、ポルナレフより

*2
ポケモンで言う混乱状態

*3
ちいかわ

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