『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
帰路につきながら、今日1日を振り返る。
今日の成果として一番のものは、言うまでもなく一応ではあるが「SyngUp!」のプロデューサーになれたことだろう。
だが、そこに至るまでの過程はとても褒められたものではない。
やっていることは、異世界転生の主人公のように知識チートで無双に感覚的には近いだろう。
先達が作り上げたものを横から搔っ攫って自分のものとして公表するのは、どう考えても褒められたことではない。
何せ、賀陽さんはともかく、他の二人に関しては遅かれ早かれ彼女たちのものになった曲だ。
それを、『SyngUp!』のプロデューサーをしたいという
…
そんなことをしたのにもかかわらず、自分がプロデューサーになることが良かったと思っている自分自身にだ。
まだ4月初めの夜の冷えた風は、私の高ぶっていた心を
あのライブ映像を見てから、勢いだけでここまで来てしまった。
心を打たれたのは確かだが、自分がここまで手段を選ばない行動をとるとは思わなかった。
だが、してしまった以上は責任をもってプロデュースしなければならない。
後悔したところで過去に戻ることはできない。
それに、月村さんと秦谷さんに関しては、ソロ曲がまだ3曲ずつある。
状況に応じてにはなるが、できることなら歌ってほしい。
ファンとしての勝手な気持ちもあるが、プロデューサーとしてもソロ曲を通して表現のバリエーションを増やしてもらうことの利点がある。
…いや、正直に言おう、「月村手毬」の誕生日ミニライブが『学マス』で実装されたときの感動をここでも体験したいだけだ。
『SyngUp!』全員のミニライブとか、ソロ曲オンリーと宣伝しておいて最後にユニットで〆るとか、楽しそう。
ただ、それだけ。
自分の家に向かって歩いているはずなのに、目に映る景色が全て新鮮という不思議な感覚に囚われながら歩き続ける。
その途中でラーメン屋を見つけた。
あまり人が並んでいる様子もなく、すんなり入れそうだったため、そのまま店に入って夕食にすることにした。
「いらっしゃっせー」
50代ぐらいだろうか。
店主の元気な挨拶に会釈して店の中に入った。
ラーメン屋は食券制で、店の入り口にある発券機で購入する形だ。
発券機を見て、とりあえず『おすすめ』と書いてあった「塩とんこつ」にすることにした。
味噌が一番好きではあるが、初見の店はおすすめから食べるのが自分なりのポリシーだからだ。
食券を購入し、カウンターの席に座る。
食券を店主に渡して、いつもの癖でスマホを取り出した。
スマホを見るが、馴染みのソシャゲがないことに寂しさを覚える。
だが、プロデューサー業をする上でソシャゲをしている余裕はあまりないだろう。
少なくとも、今の余裕がないような状態でインストールするのは憚られる。
そこでふと、思った。
私は以前いた場所は、「天川」ではない。もっと田舎の方だ。
時期も、まだ9月の秋口だった。
そう考えていくと、よく考えたらもっと重要なことを忘れていることに気づき、顔から血の気が引いていくのが自分で分かった。
今住んでいる場所の家賃、水道光熱費はどうなっているのだろうか。
私が今日起きた部屋…マンションの一室を借りている以上、家賃や水道光熱費を収める必要がある。
昨日までと同じなら、引落しになっているが、今も同じとは限らない。
それに、管理人が私の知らない人になっている可能性も高い。
下手なことをして部屋から追い出されてしまった時の宛がない。
以前は社会人だったが、今は学生である以上、保証人になっている人がいるはずだ。
それすらも誰かわからない状態だということに気づいてしまった。
そんなことを考えているうちにラーメンが置かれた。
豚骨の匂いが鼻いっぱいに広がり、食欲を刺激する。
だが、私の頭の中には、今後のことでいっぱいいっぱいだった。
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「あざーっした」
砕けた店主の挨拶を背に、店を出た。
時刻は既に20時過ぎ。
明日のことを考えると、あまり遅くまで出歩くと支障が出てしまうため、最低限の買い物だけコンビニで済ませて帰ることにした。
コンビニに寄って、明日の朝食用のパンをカゴに入れる。
世界が変わってもコンビニは偉大で、大体同じようなものが置いてあった。
それと、飲み物をいくつかいれ、昼食用の菓子パンも追加で買うことにした。
会計を済ませ、家に向かう。
コンビニから数分歩き、自分の家に戻った。
見慣れない風景の中、何故かマンションだけは私が知っている通りの外観をしており、暗い空の中でも輝いて見えた気がした。
家につき、冷蔵庫に飲み物を入れてからシャワーを浴びる。あるはずのものはなかった。
シャワーを浴びてさっぱりし、一息ついたところで、私は再度この部屋の中を細かく捜索することにした。
シャワー室にあった『縄』は見ないことにした。
『首』にあった『跡』からも目を逸らした。
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結論から言うと、家賃や水道光熱費に関しては引落しだった。
記憶がない昨日までの
また、保証人に関しては親戚がしているようだった。
親戚がしているということは、両親とはよっぽど仲が悪いのか、亡くなっているかのどちらかだろう。
真実を探るつもりもないので放置することにした。
とりあえず保証人がいることさえ分かればいい。
余裕ができたら連絡を取って、どんな関係か探りを入れたほうがいいだろう。
直近の危機が去ったところで、一息ついて気を引き締めなおす。
明日に備えて準備をしておく必要がある。
今日はノートパソコンを持っていかなかったが、やはり持って行った方がいいと感じたので忘れずに鞄にしまう。
明日の朝、早めに家を出られるように机の上にパンを用意しておく。
ルーズリーフを持って行っていたが、ノートも欲しくなったのと手帳もあったら便利だと思ったので、忘れずにしまい込んだ。
後は、今日の振り返りと今後の方針をざっくり決めておこう。
色々あって、『SyngUp!』のプロデューサーになったが、いくつか疑問に思うところがあった。
特に、「賀陽燐羽」がレッスンを見てかないのかと言ったこと、解約の可能性はあるもののプロデューサーをすんなり決めたことには違和感があった。
本来、プロデューサー契約はもっと慎重に検討するものだろう。
特に『SyngUp!』のようなすでに有名になっているユニットでは。
にも拘わらず、すんなりプロデューサー契約まで決めたのは違和感があった。
さらに言うと、彼女は義理堅い性格で、約束や契約は必ず守るようにしている。
その背景には、恐らく彼女の姉との関係によるものがあると予想できるが、この辺りはまだ『ストーリー』でも詳細にはなっていなかった。
彼女にとっては解約ができるとはいえ、プロデューサー契約というものは重たいものだったと思う。
それをたった数時間で決めてしまったということは、もしかしたら
これは
正確には、自分が憧れを追い抜いてしまい、憧れが憧れじゃなくなってしまうことの恐怖や絶望といった感情が生まれてしまった。
「大好きだったレッスンにも、二度と熱中できない」
「秦谷美鈴」が言っていたそれが事実であるならば、彼女が受けた精神的ダメージは大きい。
現にトラウマを植え付けられた彼女は、中等部でアイドル引退を考えてしまっている。
恐らく、『ストーリー』では「月村手毬」がきっかけで解散した流れになっていたが、そうじゃなくても遅かれ早かれ解散していた可能性が高い。
なにせ、ユニットリーダーが解散を望み、アイドル引退を考えているのだから。
どこかのタイミングで、「賀陽燐羽」がアイドルを引退することを伝えた段階で、「月村手毬」と喧嘩になって解散話になるか、喧嘩しているところを撮影されて拡散されることが予想できる。
…もしかしたら、彼女は
ふとそんな思考が頭をよぎった。
彼女の予定では、中等部卒業と同時にアイドル科ではなく、普通科への進学か他の学校への転校を考えているかもしれない。
そうなったときに、今まで自分が面倒を見ていたメンバーを任せられるような人がいれば、安心して引退できる。
…義理堅い彼女のことだから、本当にその可能性がある気がしてならない。
彼女たちがアイドルになるきっかけのライブで出会い、『
自分が引退しても、彼女たちはアイドルを続けるだろうから、面倒を見てくれる人がいてほしい。
そう考えているのかもしれない。
『ストーリー』では1年目だけユニット活動が楽しかったと彼女は言っていた。
逆に言うと、残りの2年間は他のユニットメンバーとファンへの義理で続けていたとも言いかえることができる。
…いや、本当は彼女もアイドルを続けたいのかもしれない。
憧れが憧れじゃなくなってしまうのが嫌なだけで、アイドル自体が嫌いになってしまったわけではないはずだ。
本当にアイドルが嫌いになってしまったのであれば、幾ら義理とはいえ中等部卒業までユニット活動に付き合うこともないだろう。
それに、他の二人同様に彼女もソロ曲の歌詞を渡したときは、歌詞を食い入るように見ていた。
ライブをすることの楽しさを失ってしまったわけではないはずだ。
私がこれからするべきことは、彼女が『SyngUp!』を解散させないように努めること、彼女がアイドルを引退
もし、彼女が月村さんと秦谷さんの新しい保護者を探しているのなら悪いが、私は『SyngUp!』を解散させたくない。
そうなると、必然的に賀陽さんには引退してもらっては困る。
私はまだ彼女の
高等部でプロデューサーが付いた「秦谷美鈴」が、中等部1年の本気の時なら勝負はわからないというほどの、彼女の本気の歌を聞きたい。
それをライブで披露し、『SyngUp!』がトップアイドルだと証明したい。
そのためには、彼女のデリケートな問題を解決させていかなければならない。
信頼関係を築いていき、引退したくならないような環境づくりを行っていく必要があるだろう。
まず、しばらくは信頼関係を築いていくことを優先しよう。
明日は、プロデューサー契約の書類を記載してもらい、近いうちに個別で話せる機会を作る。
賀陽さんもそうだが、月村さんと秦谷さんからも、今後どうしていきたいのかやプロデュースのプラン、これまでのユニット活動について聞き込みを行い、今後のプロデュースの方針を決めていきたい。
正直、『SyngUp!』は現状中等部では敵なしの状態だ。
賀陽さんと秦谷さんがやる気を全然出していない状態でも、No.1ユニットの座が揺らぐことはないだろう。
だから、暫くは内々の問題を解決していく方針で動こう。
それと並行して、情報収集は常に行っておく必要がある。
予期していない強敵がいる可能性はあるし、他校の同年代のアイドルでライバルになれるような相手がいたら尚いい。
現状はそういった相手がいないため、二人がやる気を出さなくても勝ててしまっている状況だ。
月村さんが実力をさらにつけていくこともそうだが、賀陽さんと秦谷さんも、サポートに回るだけではなくそれぞれの強みを生かしていけるようなライブをしていく必要がある。
……今後の方針がおおよそ決まったところで、時刻が11時近くなっていることに気づいた。
明日は朝一で、根緒先生のところに行く必要がある。
とりあえず、就寝準備をして布団に入った。
布団の中に入って目を瞑ったが、頭の中ではまだ思考がぐるぐる回っている。
色々確認したいことがあることと、音楽関係の人を紹介してもらえないか聞いてみなければならない。
できることなら、私が自分で編曲できればいいのだろうが、残念ながら知識が全くないため一から勉強する必要がある。
彼女たちのプロデューサーになったばかりで、まだそこまで時間を取ることができない。
だが、彼女たちのソロ曲を仕上げて音源を作らないと、彼女たちのソロ曲をライブで披露することは夢のまた夢だ。
私のイメージ通り…前の世界で聞いていた通りの楽曲に編曲できる人を探さなければならない。
そう考えているうちに、思っていたよりも疲れていたのか、だんだん意識が遠くなっていく感覚を感じながら、私は意識を手放した。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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アプリをそもそも入れていない
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どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX