『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される   作:プロデューサー科のもの

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注意:今回の話では、オリジナル設定とオリキャラが多数出現します。
   また、あくまで幕間のため時期系列が多少前後すること、本編への影響は少ないため読み飛ばしてもらっても構いません。
   以上を承知の方は、読み進めていただければ幸いです。


幕間 プロデューサーを尾行しよう!

 

 ピピピピッという目覚ましの音で目が覚める。

 辺りはもう明るく、目覚ましを見ると短針は7を示していた。

 

「ん~~~~~…!

 今日もいい天気だナー。

 今日はバイトもない、完全休養日だし…もう少し寝てもいいけど…ん?」

 

 ルームメイトはまだ寝ているし、もう一眠りしようかと思ったけど、なんかチャットが来てる。

 

「んーっと…え、7時半までに駅集合!?

 マジ!?」

 

 そこにあったのは一方的な通知。

 美鈴ちゃんから、7時半までに『天川駅』に来てください。と、端的な文章が5時に来ていた。

 

「無視してもいいけど…今出たらぎりぎり間に合うナー…。

 ええい、急いでいくかー!」

 

 そうしてあたしはルームメイトを起こさないように、かつ自分が出せる限界ギリギリの速さで、朝の支度をして飛び出した。

 あんまり走りすぎるとレッスンに支障が出るかもしれないから、元が休養日なことも考えてほどほどの速度で走る。

 

 そのまま走り続けて、駅に着くと、そこにはマスクと帽子、グラサンをした『SyngUp!(問題児三人組)』がいた。

 …何やってるんだこいつら。

 

「おっまたせ~~」

 

「遅い」

 

「休みの日に朝の5時に連絡入れんなっての!

 見れるかーー!!」

 

「そうですよ、まりちゃん。

 急に決めたことですから、ことねさんが来れただけありがたいことです」

 

「う…ごめん」

 

 たしなめられた手毬を見て少しスカッとした。

 もっと謝れと言いたいが、そのままだと話が進まないから続きをうながす。

 

「わかりゃあいいんだよ。

 で、何すんの、これ?」

 

「プロデューサーの尾行」

 

「…はい?」

 

 何を言ってんのこいつら?

 

「プロデューサーの尾行だって」

 

「なんで?」

 

「折角みんな休養日だし、プロデューサーの言っていること、確かめたいじゃない?」

 

「あー…仕事先の人と寝泊まりしてるってやつ?」

 

「そう。

 嘘を言っているとは思えないけど…どんな人か、気になるじゃない?」

 

 …確かに、あたしも気にならないって言ったらウソになる。

 だけど、プロデューサーが必要だって思ったら、きちんと紹介してくれると思うんだよナー。

 

「でも、対人能力に難があるって言ってたし、いかない方が良いんじゃないかナー…?」

 

「そっちじゃなくて、()()()よ。

 前に見たときに、ことねが名前に見覚えがあるって言ってたじゃない?

 恐らく、見覚えがあったのは本人じゃなくて親の方ね」

 

「そんなこと言ったっけ…?」

 

「調べたら出てきたのよ。

 あの家は…『五十嵐家』は代々作曲家の家系よ。

 そして、『十王家』とのつながりが深い。

 『158(じゅうごや)プロダクション』って聞いたことないかしら?」

 

「え、学園の曲を結構手掛けてたところだよね?」

 

「そうよ。

 だからか、両親の方は、『初』『Campus mode!!』『標』、そのほかにも学園の楽曲の多くに携わっているみたい。

 契約書の名前…『五十嵐(いがらし) 裕也(ゆうや)』を検索かけたら、普通に出てきたわ」

 

「マジ!?」

 

「ただ、調べてて気になったこともあってね…。

 特に、私たちの作曲、編曲者になっている『五十嵐(いがらし) 大和(やまと)』、彼が他に作曲、編曲している楽曲は見当たらなかったわ」

 

「はぇー…そうだったんだ…」

 

 親御さん…確かに契約書の名前で引っかかった気はするけど、そんな有名な人だって知らなかった。

 

「どんな人物かさっぱりわからないのもあれでしょ?

 だから、せめて両親から話を聞いてやろうかと思ってね」

 

「ということですので、はい。

 ことねさんの分のマスクと帽子とサングラスです」

 

「え、あたしもこれつけるの!?」

 

 美鈴ちゃんから変装セットを貰ったけど、あたしはこんなの着けたくないんだけど!?

 

「当たり前でしょ。

 あなたのそのキレイな金髪、そのままだったら一発でばれるわよ」

 

「うへー…。

 あたしも変人3人組の仲間入りか…」

 

「へ、変人3人組!?」

 

「どうみてもそうでしょ。

 隠しすぎて逆に怪しいって」

 

「じゃあどうすればいいの?」

 

 手毬から言われて、あたしは前に見たネットの情報を思い出す。

 

「んー…美鈴ちゃんと手毬は、髪色がそこまで目立つタイプじゃないから髪型を変えて、普通の眼鏡をするだけで良いと思う。

 燐羽も髪型は変えた方が良いかな、髪型が変わると、結構気づかれないって聞いたことあるし、あたしもバイト先で人を覚える時に髪型から覚えること多いから」

 

「なるほど…連れてきて正解だったわね」

 

「まるで変装のプロみたい」

 

「バイト先でバレない様に、少し調べたことが…」

 

「ああ、そういう理由なんだ」

 

 そして、あたしは髪を全部下ろしてセミロングにしたうえで帽子をかぶった。

 美鈴ちゃんと手毬は怪しすぎるサングラスとマスクを外して、美鈴ちゃんは短いツインテールに、手毬はサイドアップ。

 燐羽はポニーテールに髪型を変えて、帽子はしたまま。

 

 とりあえず、これでぱっと見で怪しい集団には見られない…はず…!

 

「で、この後どうするの?」

 

「プロデューサーがもう少しで来ると思うから、ここで見張ってついていくのよ」

 

「切符とかってどうするの?

 あたし、その辺あまり知らないのと、あんまり高いと困るナーって」

 

「はい、無記名ICカード。

 これに2万入れといたから、どこでも行けるはずよ」

 

「…はい?」

 

「ICカードよ。

 これを改札口にかざせば、大体どこでも行けるわ」

 

「いやいやいやいやいや、そうじゃなくて、そんなの受け取れないって」

 

「私が言い出したわがままに巻き込んだんだから、これぐらい払うわよ。

 気にするんなら、将来稼いだら返してもらおうかしら?」

 

「うへー…とりあえず貰っておくけど、残った分は返すし、あんまり高かったらちゃんと返すから」

 

「気にしなくていいわよ。

 これでも、中等部ではトップの稼ぎよ」

 

「あたしが気にするの!

 友達とお金のことでトラブルとか嫌だし!」

 

「…本当にかわいいわね、キスしたくなってきちゃった」

 

「せめて学園の中にしてね…」

 

 燐羽には学園の中だともう数回、頬にキスをされてる。

 最初は抵抗があったが、最近は慣れてきちゃって受け入れつつあるあたしがいる。

 プロデューサーに見られた時は恥ずかしかったんだけど、プロデューサーが百合営業もありですねって言って否定しなかったから、とりあえず満足してもらうことにしちゃった。

 

 燐羽には、歌を教えてもらったり、レッスンを見てもらったりしてくれてるから、ちょっと負い目があるからナー。

 でも、流石に外でやられると最悪ネットに流出されたら勘弁…。

 

 そんなことを考えてたら、美鈴ちゃんが何かに気づいて声を上げた。

 

「!

 まりちゃん、りんちゃん、ことねさん、プロデューサーがいました」

 

「尾行するわよ!」

 

「えーい、もう何とでもなれーー!!」

 

「ことねうるさい」

 

 そうして、あたしたちはプロデューサーの乗った電車の隣の車両に乗った。

 プロデューサーはキャリーケースとリュック、後お土産袋を持っている。

 行くときは毎回お土産持って行っているのかな…?

 

 30分ぐらい電車で揺られて、プロデューサーが降りる駅で降りた。

 気づかれないように、後ろからついていく。

 

「ねぇ、この後ってどうするの?」

 

「プロデューサーについていけばいいでしょ」

 

「歩いて行ける所ならいいけど…げ!」

 

 そう思って駅から出ると、タクシー乗り場でプロデューサーがタクシーではない、車に乗っていった。

 

 送迎車!?

 金持ってそうとは思ったけど、出迎えまであるの!?

 

「タクシーを呼んだから、これに乗りましょう!」

 

「流石燐羽!

 運転手さん!

 あの車を追ってください!」

 

「……そんなこと言って乗ったお客さん、5年ぶりだ………ハハハ*1

 

「バレない様に、慎重にお願いね」

 

 そうしてあたしたちはタクシーで30分ぐらい走って、かなり大きめの屋敷の前に着いた。

 既にプロデューサーは中に入って、屋敷の中に送迎車は入っていったが、敷地内なのでタクシーではここまでしかいけないみたい。

 

 タクシーの料金は燐羽が全部支払ってた。

 後で金額を聞いておかないと…!

 

 タクシーが去って、あたしたちは玄関の門の前で立ち往生した。

 

「ここからどうしよう…?」

 

「インターホンを押すしかないでしょ。

 ここまできて帰るわけにはいかないわ」

 

「そうですね。

 手っ取り早く進めてしまいましょう」

 

「ま、まだ心の準備が」

 

 そう言っているうちにもう美鈴ちゃんがインターフォンを押した。

 

『…はい、どちら様でしょうか?』

 

「先程、この屋敷に来たプロデューサーの担当アイドルの秦谷美鈴と申します。

 急な来訪で申し訳ありません。

 わたしたちの担当プロデューサーの件と、作曲関係の件で、いろいろお話を聞かせていただきたいと思い、参上いたしました」

 

『……少々お待ちください』

 

 そう言われて待つこと5分ぐらい。

 変な緊張感があって、みんな一言も話さなかった。

 

『お待たせいたしました。

 只今ご案内いたしますので、少々お待ちくださいませ』

 

「ご丁寧にありがとうございます」

 

「やった…!」

 

 手毬が隣でガッツポーズしているのが見えた。

 あたしも同じ気持ちだけど、まだインターフォンが繋がっている可能性があるからこらえた。

 

 少しして、メイド服を着た女性が現れる。

 家がこれだけ豪邸だから、そうだろうとは思ったけれど、まさか本物のメイドさんが来るなんて…。

 

「大変お待たせいたしました。

 こちらへどうぞ」

 

「お邪魔しますね」

「お邪魔しまーす」

「「お邪魔します」」

 

 メイドさんに連れられてお屋敷の中を歩く。

 手毬と一緒にきょろきょろ周りを見るけど、どれもこれも高そうなものばかりでめまいがしてきた…。

 万が一、落として壊しでもでしたら……。

 間違っても触らない様にしよう。

 

 歩いていくこと数分。

 美鈴ちゃんはメイドさんのすぐ後ろについていて、あたしたちの誰よりも先頭にいたのに欠片も緊張しているように見えないのが凄い。

 度胸があるっていうのかな?

 誰にも物怖じしない点は、あたしも見習わないといけないかもナー。

 

 そうして案内されて、大きな扉の前に着いた。

 

「こちらで旦那様がお待ちです。

 どうぞお入りください」

 

 そう言ってメイドさんが大きな扉を開ける。

 そこは、物語でしか見たことないような会食?できるような空間だった。

 奥には、人のよさそうなおじさん…って言ったら怒られるかも…?

 40代ぐらいの男の人で、プロデューサーみたいにスーツ…とはまた違うけど、スーツみたいなかっちりした服を着ていたけど、雰囲気は柔らかく微笑みを浮かべていた。

 

「ようこそ、わが家へ。

 親愛なるプロデューサーの担当アイドルの皆様。

 どうぞこちらへお座りください」

 

 メイドさんに誘導されるままに、あたしたちは彼の前に並んだ。

 本来なら一番奥に、この家の主人である彼が座るのだろうが、そうなるとL字で座ることになってしまい、話しづらくなるからか、対面に座りなおしていた。

 全員座ったのを見計らって、さっそく話し始めた。

 

「さて…知っているかもしれないが、私は五十嵐(いがらし) 裕也(ゆうや)

 この屋敷の主人です」

 

「お初にお目にかかります。

 プロデューサーの担当アイドル、秦谷美鈴と申します」

「つ、月村手毬です」

「藤田ことねです」

「賀陽燐羽よ」

 

「…まずなぜ来たのかを本来は聞くべきなのだろうが、先に言わせてもらいたいことがある」

 

 目の前の五十嵐さんの気迫に、思わず圧倒されてしまう。

 やっぱり突然来たのはまずかったのか、怒っているようにも見えたので、あたしは、いやあたしたちは声が出なかった。

 

 でも、その()()()()()()()()

 

「君たちには…いや、()()()()()()()()()()()には感謝してもしきれない。

 そんな彼の話を聞くと、何でも担当アイドルのためにしたのだと言って、お礼を受け入れてくれないのだ。

 だから、言わせてほしい。

 本当に、本当にありがとう」

 

 そう言ってあたしたちがいきなり押し掛けたのに、目の前の中高年ぐらいの男性が、突然頭を下げたんだから、あたしたちは逆にどうすればいいのかわからなかった。

 燐羽でさえ固まっていたんだけど、美鈴ちゃんだけは冷静だった。

 

「感謝とは、わたしたちの作曲をしていただいた方の件であっておりますか?」

 

「……そうだ。

 君たちの作曲、編曲をしているのは私の息子だ。

 ……突然ですまないが、君たちはどの程度まで知っているのかね?」

 

「プロデューサーがわたしたちの曲を編曲してもらったことと……学園内の噂の一つに、ひきこもりの作曲家を更生させた、というものがあります。

 それがどこまで真実かは、わたしたちは存じておりません」

 

「ちょ、ちょっと美鈴ちゃん!」

 

 美鈴ちゃんが隠しもしないでストレートに言うもんだから、思わず声を上げてしまった。

 機嫌を悪くしてないか心配したが、五十嵐さんは微笑んでいたからセーフみたい。

 

「ふふふ、中々の胆力だ。

 少しも物怖じしない、その態度。

 流石は彼の担当アイドルと言ったところかな?」

 

「お気に召されたようなら光栄です。

 ……わたしたちが突然押し掛けた理由は、わたしたちの担当プロデューサーが休日に何をしているのか詳しく知りたかったことと、ここに頻繁に通う理由、それと息子さんがどういう人物なのかを聞きたいと思ったからです。

 お答えいただけますか?」

 

 美鈴ちゃんと、五十嵐さんのやり取りにあたしと手毬は置いてけぼりになっている。

 燐羽は普段通りにしてるけど、手毬は露骨にそわそわしているし、あたしも気持ちが落ち着いてない。

 

「………いいだろう。

 プロデューサー君が息子と何をしているのかは…後程、案内するとして、ここに頻繁に通う理由と息子がどういった人物かは、私から説明しよう」

 

 そう言った、五十嵐さんは先程の柔らかい雰囲気はなくって、どことなく悲しそうな表情をしていた。

*1
バクマン。の10巻の一幕より




皆様、明けましておめでとうございます。
今年も、よろしくお願いいたします。

さて、形式的な挨拶はここまでにしておいて、以前から温めていた幕間を投稿させていただきました。
お年玉ということで、3日までの計4話の予定です。

今更の話ですが、オリジナル設定が多数あります。
今回は幕間ということもあり、自由形のいい子は好き放題しています。
気になるところも多数あるかもしれませんが、目を瞑っていただければ幸いです。

幕間では、本編に深くかかわらない程度に、キャラの深堀りをできればなと思っております。
お正月休み中のお暇つぶしに一躍買うことができれば嬉しく思います。
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