『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される   作:プロデューサー科のもの

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幕間 大人と子供

 

 美鈴と手毬が二人で仲良くベッドで寝息を立て始めて、燐羽と話し始めていたころ、メイドさんが入ってきてお茶とお茶菓子を五十嵐さんが言った通り、置いてくれた。

 このお茶菓子がいくらするのかとかは考えないことにしよう…。

 

「おいしいわね、このお茶菓子」

 

「お茶もおいしい!

 美鈴ちゃんが淹れてくれるのもおいしいけど、これはまた別のおいしさだよナ~」

 

「手毬たちの分も残しておきましょう。

 美鈴はともかく、全部食べちゃって手毬にバレたら面倒よ」

 

「そういえば、手毬って食べ物に関してだけはうるさいもんナ~」

 

「そこが可愛いって美鈴は言うけどね」

 

「とか言って~。

 燐羽も同じこと思ってるクセに」

 

「な、なに言ってんのよ!?」

 

 そう言えば…燐羽に聞いておきたいことがあったんだった。

 いい機会だから聞いちゃおう。

 美鈴も手毬も寝てるみたいだし。

 

「今だからわかるんだけど…燐羽がアイドルやめようとしてたときに、すぐにやめなかった理由ってあいつらでしょ?」

 

「……何を根拠に言ってるのかしら?」

 

「だって、燐羽が本気でやめる気になったら、即断即決ですぐにやめるじゃん。

 無意味に長引かせるぐらいなら、すぐに引退ライブしてやめるでしょ?

 その方が、ファンに対する誠意でもあるだろうし」

 

「……続けて」

 

「そうじゃなかったってことは…よっぽどあいつらが好きだったってことだロ~?

 もしくは…プロデューサーみたいな誰かに託したかったとか?」

 

「……はぁ…なんでこうもバレるのかしらね」

 

「その口ぶりだと、プロデューサーにも言われた?」

 

「正解よ。

 ……出会って次の日にね」

 

「はっや!

 え、嘘でしょ!?」

 

「声が大きい」

 

「あ…ごめん」

 

「あまりうるさくすると起きちゃうじゃない。

 …ことねが言っていることは…まあ、概ね正解よ。

 あの子たち、見てて危なっかしいでしょ?

 だから、出来る限りは面倒見てあげようって思っていたわ」

 

「…本当に燐羽って義理堅いナ~。

 普段の喧嘩っ早い感じが嘘みたい」

 

「うっさい、それは関係ないでしょ。

 …この話はおしまい、これ以上は恥ずかしいわ」

 

「う~い。

 ま、後はごろごろしてますか~」

 

 そうしてあたしたちは、美鈴ちゃんたちが寝てない方の布団に寝そべって、携帯をいじったり雑談したりして時間を潰した。

 

 ……燐羽は気づいてなさそうだけど、さっきの話をしている途中で、美鈴ちゃんが布団の中で動いてたのが見えちゃった。

 ……多分、聞いてたと思うけど…秘密にしておこう。

 

 そうしてしばらくした後…部屋がノックされた。

 

「はーい」

 

「失礼します。

 お食事の用意ができましたので、ご案内させていただきます」

 

「あ、わっかりましたー!

 チョーッと待っててくださいね」

 

 メイドさんに声をかけられたので、燐羽と二人で手毬と美鈴ちゃんを起こす。

 手毬はまだ眠そうにしていたけど、美鈴ちゃんは思ったよりすぐに起きたから、やっぱり起きてたみたい。

 

 二人とも寝る時に変えていた髪型が崩れるから、髪をほどいていたこともあって、髪型を普段通りに戻している。

 よく考えたら、もう髪型を変える理由もないから、あたしも元に戻した。

 燐羽と二人で髪を戻し終わったぐらいで、美鈴ちゃんと手毬も準備が整ったみたい。

 とりあえず全員起きたから、メイドさんに誘導されてさっきの食堂?に行った。

 

 誘導されると、プロデューサーが普段通りの格好でお父様の隣に座っている。

 ネクタイもいつの間にか締めて、普段通りのプロデューサーだ。

 あれ…?

 でも大和さんがいない…。

 

「プロデューサ~!

 お疲れ様で~す!」

 

「お疲れ様です、皆さん。

 髪型、戻してしまったんですね」

 

「あれは尾行用の変装で~す。

 そういうプロデューサーだって、元のスーツに戻っちゃったじゃないですかー」

 

「裕也さんもいますからね。

 こういう場では、スーツの方がいいでしょう。

 …先程の髪型も似合っていましたよ」

 

「もう~~~!

 プロデューサー~あたしたちのこと好きすぎ~~!!」

 

「うわぁ…ことね、五十嵐さんもいるんだから、

 もうちょっとちゃんとして」

 

「わかってるって~。

 あれ、大和さんは来なかったんですね」

 

「大和は……興が乗ってしまったようで、今はほとんどトランスモードに入っています。

 あの状態だと、声をかけても反応しないので、書置きだけおいてこっちに来ました」

 

「それって大丈夫なんですか?」

 

「よくあることです。

 私が曲のインスピレーションを誘導して、そして大和が曲を組み立てる。

 ……いつまで、()()()()()ができるのかはわかりませんがね」

 

「はへー…プロデューサーってそんなこともするんですねぇ」

 

「いや、プロデューサー君ぐらいだよ。

 ほとんどはイメージや希望をヒアリングして、そして私たちが曲を作って、調整しての繰り返しだ。

 最初から、ほとんど完全な完成イメージを持ってきて、それを曲にするようなことは珍しい。

 まるで…()()()()()()()()()()()()()()()かのようにね」

 

「申し訳ありません、裕也さん。

 余計な詮索はしないでもらえると」

 

「はっはっは、すまない。

 私もどうも、気が大きくなっているようだ。

 さて、準備ができているから、さっそく昼食にしよう」

 

 お父様がそう言うと、メイドさんたちが料理を運んできた。

 ワゴン車に乗せられている料理は、あまり見たことないような料理もあるけど、とんかつとか唐揚げとかの見知ったものもある。

 ……これは…プロデューサーが要望を出してそう。

 手毬が好きなメニューに寄せてる。

 

 案の定、隣で手毬が目をキラキラさせてる。

 …あたしも余計なこと考えないで、ご飯を楽しむことにした。

 

「テーブルマナーとかは細かく気にしなくて良い。

 堅苦しくても、食べづらくなるだろう。

 さて、乾杯をしてからさっそくいただこう」

 

 そう言ってお父様がグラスを手に持った。

 プロデューサーも合わせてグラスを掲げているのを見て、あたしたちもグラスを手にする。

 中に入っているのはジュースだと思う。

 少なくともアルコールの匂いはしない。

 

 ……プロデューサーが前に言ってた通り、乾杯って結構やるんだナー。

 

「それでは、プロデューサー君と担当アイドル君たち、そして私たちの今後の良き縁を願って、乾杯」

 

「「「「「乾杯」」」」」

 

 そして、あたしたちはご飯を食べ始めた。

 

 

 ご飯はとても美味しくて、おかわりできるなら思わずしたくなっちゃうぐらいだった。

 手毬があんまり美味しそうに食べるものだから、プロデューサーが自分の分を手毬に半分あげてるぐらい。

 手毬も最初は断ってたけど、後で大和さんとプロデューサーは別で食事を食べるみたい(多分大和さんに付き合って軽くつまむぐらい)で、明日のレッスンで取り戻せばいいんですよと言われていた。

 ……その後のプロデューサーの顔はちょ~っと引いちゃうぐらい悪い顔してたのは、手毬には黙っておこう。

 燐羽も気づいて顔を青くしてたけど…多分、あたしも付き合わされるんだろうな…。

 

 そんなこんなで、ご飯が食べ終わり、食器をメイドさんが片づけ始めたころ、プロデューサーが切り出した。

 

「それで、何故皆さんはこちらに?

 先程はつけてきた、と言っていましたが、どういう目的かを聞いてもよろしいですか?」

 

「プロデューサーが休日にお会いする仕事の方が気になったので…少々つけてしまいました」

 

「つけてしまいました、ではありません。

 秦谷さんにはどちらかというと止めてもらいたかったのですが…」

 

「発案はりんちゃんですよ」

 

「同意したのは全員でしょう。

 裕也さんが温厚な方だったからよかったものの…もっと自分を大事にしてください」

 

「うぐっ、ごめんなさい、プロデューサー…」

 

「藤田さんは巻き込まれた側なのは想像つきますが……いえ、そもそもの話、私が情報を小出しにしたのがよくありませんでした」

 

「そうよ、正直に全部白状しなさい」

 

「賀陽さんはもう少し反省してください。

 …裕也さんはどの程度まで話を?」

 

「私が話せるようなことは大体話したよ。

 大和のことも…引き籠ってしまった理由もね」

 

「……どこまで話しているのか少し疑問でしたが、全て、なら話しすぎです。

 彼女たちは比較的普通に成熟してきたばかりの未成年。

 それも、義務教育を受ける年齢です。

 少々刺激が強いとは思いませんでしたか?」

 

「確かに君の言うことも一理ある。

 だが、わざわざ君のことを知りたくて、自分たちで乗り込んでくるような子たちだ。

 正直に話す方が筋というものだろう。

 ましてや、大和の間接的な恩人だ」

 

「なるほど…そういうことであれば…まあ、いいでしょう。

 …であれば話は早いですね、先ほど見ての通りですよ。

 土日は仕事と息抜きを兼ねて、ここで彼と曲を作ったり、ボーカルトレーニングしたり、バカやったりしてます」

 

「仕事をしているから、見ないでほしいと言っていたから見ないようにしていたが…まさか、あんなことを毎回やっていたのかね?」

 

「ええ、どの素材の紙で紙飛行機を作ったら一番遠くまで飛ばせるか試したり、小学生向け玩具のコンプリートセットを用意して遊んだり、ベーゴマを買い占めてどのベーゴマが一番強いか最強決定戦をしたり、知育菓子を大量に買って全部混ぜて最強の知育菓子を作ったり」

 

 本当に何やってるんですかこの人!?

 

「本当に何をやっているんだね!?

 って、以前持ってきた大和が作ったって言ってたアレは、それか!?」

 

 食べたんだ、お父様。

 

「私がやったことは、頭を空っぽにして楽しめるようなことをやったり、少し変なことを教えたり…人間、一人でいる時は考えすぎてしまうものです。

 なので、考えなくても済むようなことから始めて、音楽以外の趣味でも見つけられればと思ってますよ」

 

「……いきなり真っ当なことを言うね。

 いや、信頼していなかったわけではないのだが…」

 

「私にできることはそれぐらいでしたので…できることを、できる限りでやろうとして模索して、挑戦してきました。

 最初は断られ、拒絶されることもありましたが…それでも、大和は受け入れてくれた。

 ……本当に変わりたいと思っているのは、大和自身ですよ」

 

「…そうか……」

 

「さて、皆さんに答えましょう。

 ここには…趣味と実益を兼ねて来ています。

 見ての通り少々特殊なところがある大和の才能を光らせ、あなた方にマッチした楽曲を用意してもらうためには、彼のメンタルケアは必須です。

 あなた方と同様に…彼の才能は素晴らしい。

 多少の無茶ぶりにも応えられ、他の仕事よりも私の方を優先していただける。

 こんなに都合のいい案件はそうそうありません」

 

 うわぁ…お父様が複雑そうな、すごい顔してる…。

 プロデューサーも大概言葉選びが悪い…いいや、これ多分わざとだ。

 あたしが声を上げようとしたけど、美鈴ちゃんも察したみたいで美鈴ちゃんの方が早かった。

 

「……プロデューサー、その言い方ですと、少々外聞が悪いですよ。

 恥ずかしいのはわかりますが、もっと正直に話してください。

 誰も、否定はしませんよ」

 

 美鈴ちゃんがそう言ったら、プロデューサーは観念したように大きく息を吐いた。

 

「………大したことではありません。

 ただ……目の前の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それが…子供ともなれば…」

 

「大和は君より年上だが」

 

 え?

 そうだったの!?

 

「精神の話です。

 環境の変化がなければ、人は精神的に停滞してしまう。

 それは、裕也さんがよくご存じでは?」

 

「……そうだな、その通りだ」

 

「それに…私も時にはストレス解消したいので、そういう意味での趣味と実益です。

 ですが、あまりこういった姿を見せてしまうと、『プロデューサーは魔法使いであれ』というプロデューサー科の教えに反してしまいますし…担当アイドルの前では、かっこつけていたいので、詳細に話す気になれなかった。

 ……以上が、私が隠していた理由ですよ」

 

「ふふふ、プロデューサーが正直に話してくれて、うれしいですよ。

 そういうことでしたら、今後、この件に関しては詮索しません。

 皆さんも、それでよろしいですか?」

 

「……そうね。

 でも、たまには付き合わせなさい。

 いつまでも、あなたの相手だけしていても成長しないでしょうし…お礼はきちんと言いたいわ」

 

「プロデューサーがどうしてもっていうなら、たまには付き合ってあげてもいいよ?」

 

 …本当に手毬は素直じゃないなぁ。

 

「手毬はおいしいご飯食べたいだけだろ~?」

 

「べ、べ、別にそんなんじゃないから!

 お礼を言いたいのは私も同じ気持ちってこと!」

 

「最初からそうやって素直に言えばいいのに~」

 

「!

 こ、ことね~~!!」

 

「はいはい。

 で、あたしは…二人と同じ意見で~す。

 あたしの方もソロ曲作ってもらうことが多くなりそうだし、どこかできちんとお礼はしたいです」

 

「………わかりました。

 今日はもう難しいですが、後日きちんと予定を合わせることを約束しましょう。

 秦谷さんも、それでいいですか?」

 

「ええ、これで満足ですよ」

 

「それでは皆さん、また月曜日に会いましょう」

 

 ……ん?

 

「え?

 なんで?」

 

「なんでって、明日はレッスンでしょう?」

 

「あ、プロデューサー。

 あたしたち、今日はみんなでここに泊まることにしました~!」

 

「………………裕也さん?」

 

「ま、待ちたまえプロデューサー君。

 これは彼女たちのことを思ってだね」

 

「…………言いたいことは山ほどありますが、家主が許可した以上は…まあいいでしょう。

 私の部屋はいつも通りですよね?」

 

「うむ。

 きちんと、彼女たちの部屋を隣にしておいたぞ」

 

「…………もし、次の機会があったら必ず部屋を離してください。

 じゃなければ、大和にありったけの罵詈雑言を仕込んで裕也さんに会うたびに言うようにしますよ?」

 

「なんて怖いことを言うんだね!?」

 

「え~!

 プロデューサ~、あたしたちの近くは嫌なんですか~?」

 

「『距離感の基本』*1がなってないという話です。

 同じ屋根の下で寝泊まりするだけでも頭が痛いのに…皆さん、ここでのことは必ず秘密にしてください。

 でなければ、私は最悪退学で、あなた方も停学は固いと思ってください」

 

「え!?

 そこまでいきます!?」

 

「いく可能性が高いんです。

 だから、私は距離感に気を付けるようにしているのに…いえ、そもそもの原因は私にあるので今日は大目に見ます」

 

「す、すまなかった。

 近くの方が良いと思ったのだが…余計な気遣いだったようだね」

 

「全くです。

 ですが、私がつけられてそのまま連れてきてしまったのが一番悪いので…申し訳ありません、裕也さん。

 お手数をおかけしてしまい」

 

「気にすることはない。

 …これからも、大和をよろしく頼むよ。

 プロデューサー君に、秦谷さん、賀陽さん、月村さん、藤田さん」

 

「ええ、お任せください。

 今後も、良き関係を築いていきますので」

 

「期待しているよ。

 さて、ではこの場はいったんお開きにしよう。

 プロデューサー君はどうするかね?」

 

「大和の様子を見に行ってきます。

 食事もついでにもっていきますよ。

 皆さんは…そうですね、ボーカルレッスンができる部屋があるので、嫌でなければそちらに案内しましょう。

 カラオケ感覚で使ってください」

 

「…そうですね。

 夕食までずっと寝ていてもいいですが…まりちゃんは、もうその気になってしまったみたいです」

 

「燐羽、一緒に歌おうよ!

 ことねも、『世界一可愛い私』ちゃんと聞きたいから、歌ってよ」

 

「おー!

 ことねちゃんのかわいいところ、見せてあげるからコーレスちゃんとするんだゾ~」

 

「それは嫌」

 

「こ、こいつ~~~!」

 

 そうして、食堂内が笑いに包まれた

 その後、あたしたちはプロデューサーに連れられてカラオケ機器の置いてある部屋に案内された。

 なんでも、曲作りの兼ね合いでプロデューサーがボーカルレッスンをするときに用意してもらったものらしい。

 時々、大和さんと二人で歌うこともあるみたいだ。

 

 

 そして、あたしたちは五十嵐家に泊まり、ボーカルレッスンと称してカラオケをしたり、プロデューサーと話をしたりした。

 何もしない休養日のはずが、気づいたら予定が盛りだくさんの日になって、ちょ~っと疲れたりもしたけど、本当に楽しかった。

 またみんなでこうやって泊まりとかしたいナ~。

 

 ……泊まり明けに体重が増えてしまったのは手毬だけではなく、美鈴ちゃん以外の全員が走り込みをすることになったのは、プロデューサーには秘密にしよう。

 

*1
学園アイドルマスター、『初』レジェンドで出てくる基本カード




いつも誤字報告、評価や、感想、ここすきなど、誠にありがとうございます。
とても励みになりますので、今後ともお暇なときにお付き合いいただければと思います。

これにて幕間はいったん終わりです。
お付き合いいただきありがとうございました。

明日は通常通り本編となります。
また、お暇なときにお付き合いいただければ幸いです。

追記:読み返していたら文章の抜けがあったため修正しております。
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