『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される 作:プロデューサー科のもの
3限目が終わった後、相上に別れを告げ、中等部に向かう。
中等部の職員室で、レッスン室を借りる手続きを行い、鍵を借りてレッスン室に向かった。
向かう途中、3人に借りたレッスン室の名前をチャットで残し、先にレッスン室で待つことを伝える。
現在は15時を少し回った頃。
中等部では、まだ授業中らしく校内を歩いても生徒に会うことはほとんどなかった。
先にレッスン室に着いた私は、備え付けてあった椅子に座ってノートパソコンを開き、彼女たちが来るまで見れる範囲で彼女たちのライブを見ようと考えた。
『初星学園』には、校内にフリーWi-Fiがある。
また、プロデューサー科の生徒は学園のサイトにアクセスし、学生番号と設定したパスワードを入力することで、公開範囲の過去のライブ映像を見ることができる。
これはプロデューサー科で初めて仲良くなった相上から聞いたことだった。
昼食を一緒に食べていたことから察しているかもしれないが、彼とはお互い呼び捨てになる程度には打ち解けることができた。
同じ学部で同じような年の同性が少なかったため、わだかまりがなくなった後は打ち解けるのに時間はかからなかった。
おかげで、この学園のことについていろいろ聞くことができたため、今後も仲良くなれるようにしていこうと思っている。
因みに、彼は1つ年上で1年浪人して合格したらしいが、業界人が多く入学してくるプロデューサー科で1年の浪人で合格できたのは、非常に優秀な人物なのだろう。私とは違って
ライブ映像の件は講義終了後に、ライブの映像資料はどこかで見れるか聞いたときに、呆れた顔で教えてくれたのだ。
曰く、入学した初日に教えられたらしい。
昔は図書館に行ってDVDなどを借りる形だったらしいが、近年の電子化の波によってこうなったようだ。
勿論、学外の人に無断で見せるようなことは許可されておらず、破ると厳しい罰則があるという。
また、図書館の需要がなくなったかというとそんなこともなく、図書館では公開期間が終了しているものも一部取り扱っているとのことだ。
しかし、『SyngUp!』のライブは去年と一昨年のものしかないため、公開期間が終了していることはないだろう。
伊達にお金をかけただけはあるなと感心しながら、ありがたく恩恵を受ける。
以前の私は相当やる気がなかったのか、初期パスワードのまま(学生番号と同じ)でログインした形跡がなかったため、覚えやすい内容でパスワードを変更した。
彼女たちが来るまで、HRの時間も考慮しても、1時間はないだろう。
とりあえず見ておく必要があるところを探すことにする。
見たいのは、結成当初のライブ、1年の後半のライブ、2年の前半のライブ、2年の最後のライブだ。
ライブ全体を見る時間はとてもないので、各ライブ1、2曲だけ見るつもりだ。時間がどこまで許すのかは怪しいが、見れる範囲で見ていこう。
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目当てのライブを探し当てるまでに、それなりの時間を使ってしまったため、それぞれ1曲分しか見れなかった。
ライブは結成当初のものは見つからなかったが、1年後半のライブで「初」。
2年になってからは「標」と「Campus mode!!」のライブを見ることができた。
感想としては、1年生の段階からかなり完成度が高く、2年生になってからは更にレベルが上がっているのが見てわかった。
しかし、1年目生と2年生で全体的に完成度が上がっているのだが、「賀陽燐羽」だけ1年生の時のほうが前に出ていたように見える。
正確に言うと、1年生の時の方が2年生の時より『全力』であったように見えた。
2年生に入ってからの彼女は、『本気』でも『全力』でもないように見えてしまったのだ。
予想通りではあった。
秦谷美鈴のストーリー通りであるなら、1年生の時が最後に本気で歌ったと言っていた。
つまり、彼女が憧れを追い抜いてしまったのが1年生の最後の話なのだろう。
そこからレッスンに熱が入らなくなってしまったと考えると合点がいく。
…そうなると、「Campus mode!!」解禁の件は1年生の時に起こった気がしてきた。
1年生の段階では流石にと思っていたが、本気の「賀陽燐羽」じゃないと卒業生には勝てないだろう。
それに手を抜いていたとしても、他の中等部の生徒と比較して考えたら十分すぎる力量だ。
恐らく気付いている人が少しはいそうなものだが、それでも周りがそこまで騒ぎ立てないのは、未だに『SyngUp!』を超える者が中等部にいないからだろう。
もっと言うと、本気を出さなくても賀陽燐羽のパフォーマンスは中等部どころか、高等部でも通用する。
卒業生を打ち倒すことで、下手な高等部の生徒よりも上であろうことが証明されてしまっていることもあり、彼女たちに勝てると思っている者は、ほとんどいないと思う。
…プロデュースしていくには、彼女たちの意向や話を詳しく聞いて問題を浮き彫りにしないといけない。
だが、いきなり話して欲しいと言っても、信頼関係が築けていない時では逆効果になってしまいかねない。
何事も段階を踏むことが必要だろう。
今後の流れは、今のところ以下のような形で考えている。
1、レッスンをしてもらいながら、目標を設定する
→これまで、ユニット曲の練習を積んできた彼女たちだが、今はソロ曲を渡している。これまでと同じ練習ではなく、ソロ曲を歌いきれるようにしていかなければならない。
2.個別のプロデュース計画を立てつつ、個別で話をする時間を作り、今後どうしていきたいか段階的に確認していく
→特に賀陽さんは今後どうしたいのか、しっかり話をしなくてはいけない。それに、秦谷さんも賀陽さんの問題について薄々感づいているころだろう。
これらの問題を解決しないことには、『
なるべく早めに解決させたいが、すぐに解決するような問題ではない…。
3.ユニット全体のプロデュース計画を立て、『
→個別の話を踏まえて、改めてユニット全体で目的意識を確認し、レッスンをしていく。
その上で必要になるもの…可能ならば、同年代のライバルが必要だろう。
こんなところだろう。
これに並行して、ソロ曲の音源作成や、中等部でのライブイベントへの挑戦などがある。
考えたことを忘れないように、 膝の上でノートを開き、ざっくりとした流れを書き込みながら、個別のプロデュース計画の雛形を作成し始めた。
大まかに月毎に区分けしていた辺りで、レッスン室の扉が開く。
『SyngUp!』の三人がレッスン室に入ってきた。事前に待っていると伝えていたため、レッスン着に着替えてから来たようだ。
「待たせたわね」
「いえ、そこまで待ってませんよ。
早速ですが、昨日お話ししたプロデュース契約の書類になります。
記入をお願いする場所には、付箋を貼っているので、確認してから記入してください。
学園が用意した書類ではありますが、契約内容はよく読んでおいたほうが良いでしょう」
「了解よ」
契約書が入ったファイルと下敷き代わりのバインダーを賀陽さんに渡す。
受け取った賀陽さんは、ファイルから書類を取り出し、他の二人にも見せながら契約書を読み始めた。
最初は一緒に契約書を眺めていた二人だったが、少しして月村さんがソワソワし始める。
「燐羽! 先にレッスンしてていい?」
「あなたもきちんと読みなさい。
契約書に不備があったり、私たちに都合が悪いことが書いてあったらどうするつもり?
いつまでも面倒見れるわけじゃないんだから、自分で確認する癖をつけなさい」
我慢できずに賀陽さんにそう言った彼女だったが、敢え無く轟沈してしまった。
涙目になりながら秦谷さんの方を向く。
「ええー…美鈴ぅ」
「ふふ…まりちゃん、わたしがきちんと読んでおきますから、先にレッスンしてていいですよ」
「やった! ありがとう美鈴!」
涙目でおねだりされ、即答する秦谷さん。
月村さんは嬉しそうに飛び跳ねて、奥のレッスン用スペースに走っていく。
賀陽さんは呆れた顔で彼女たちを見ていた。
「美鈴…あなたねぇ…」
「秦谷さん、あまり月村さんを甘やかしすぎてしまうと賀陽さんが危惧しているように、将来月村さんが詐欺に引っかかってしまうかもしれませんよ?」
これは本心だ。
それに、させたくはないが、もしも『ストーリー』通りに『SyngUp!』が解散してしまった時、月村さんの周りにフォローしてくれる人はいない。
それを考えると、今のうちから甘やかさないようにする場面も必要だろうと思った。
しかし、彼女は悪びれなく私の方を見て言った。
「まあ…既に三人も引っ掛けておいて、酷い言い草ですね」
「私は詐欺師じゃないので…いや、うら若い乙女の青春を自分の目的のために浪費させていると考えると詐欺師も同然なのでは…?」
言い返すつもりだったが、思わず痛いところを突かれてしまったことに気づく。
自分のしていることが、詐欺師とそう変わらないのではないかと、ふと思ってしまった。
言い淀んでいる私に、賀陽さんが鋭い目を向ける。
「ちょっと、あなたは自信をもって違うって言いなさいよ。
この契約書、破かれたいのかしら?」
「それだけは勘弁してください」
とんでもない話が出たことで、思わず姿勢を正して頭を下げた。
そんな私たちを見て、くすくすと秦谷さんが笑う。
「ふふふ、面白いプロデューサーですね」
「秦谷さんのせいですよ」
「まあ、人のせいにするなんて、いけない人」
そんな話をしていると、賀陽さんが息を吐きながら契約書を秦谷さんに回す。
「はあ…契約の内容は見た限り、問題なかったわ。
私が書ける場所は書いたから、美鈴も中身を見てからサインしなさい」
「ええ、わかりました」
そう言って、秦谷さんは碌に契約書の中身も見ないでサインする。
「ちょっと美鈴、中身見なさいって言ったでしょ」
「リーダーがきちんと見ていたんですから、わたしが見る必要もないでしょう?
りんちゃんが契約を大事にするのはよく知ってますから」
そう言われた賀陽さんは苦虫を嚙み潰したように、秦谷さんを睨む。
約束は必ず守る彼女だ、それに準ずる契約を自分できちんと確認しなかったことの苛立ちと、賀陽さんを信頼してるからと平然と言ったことに対しての複雑な気持ちがせめぎあっている、そんな感じだろう。
「何でもかんでも人任せにしないで。
あなたのそういうところ、嫌いよ」
「わたしはりんちゃんが大好きですよ」
「全くあなたは…はい、後は手毬のサインだけよ」
ストレートに好きだと言われると、キッパリ拒絶できないあたり、彼女の根がやさしいことがわかる。
…こうやって今までも流されてきたんだろうなと、そして何だかんだ月村さんが甘やかされてきたんだろうなと、これまでのことがわかるやり取りだった。
…だから月村さんがいきなり一人で放り出されて、増量して不調になるんですね…
私はファイルに入った契約書を受け取り、記載内容に漏れがないかを確認した。
彼女が言っている通り、月村さんのサインが必要な個所以外は記入が終わっていることを確認した。
「ありがとうございます。今は…」
そう言って彼女の方を向く。
彼女は、「Luna say maybe」を熱唱していた。
元の音源すら知らず、私が1度歌ったきりだというのに、彼女の歌は形になっていた。
それにライブではないのに、まるでライブかのように全力で歌っていた。
全力で歌いすぎて、2回目のサビを迎える前に息切れしつつあるのが、彼女の欠点だろう。
『集中力が高まりすぎて、本来の実力以上の力を発揮してしまう。』
その結果として、
ユニット曲の歌唱では他の二人がフォローしていたため、そこまで気にならなかった欠点が、ソロ曲の練習を行うことで露呈していた。
まだ中等部の3年生になったばかりで、『ストーリー』から1年前ということもあるかもしれない。
練習でここまで疲弊しているようであれば、まだまだライブで披露することは難しいだろう。
そんな彼女の歌に聞き入っていると、隣に賀陽さんがきた。
「あの子、今日の授業中、歌詞を見て鼻歌を歌って怒られてたわ。
よっぽどあなたが用意したソロ曲が嬉しかったみたいね」
…罪悪感がのしかかるが、一時的に心の奥底に埋める。
「それは光栄ですね。
ですが、アイドルとして授業をきちんと受けるのも重要です。
次からは保護者として止めてください」
「誰が保護者よ」
「次からは止めますね」
私の言葉に、賀陽さんと秦谷さんはそれぞれ違う反応で返した。
さっきのやり取りも、完全に親が教育方針でぶつかっているようなやり取りだったが…まあ、いいでしょう。
そんな彼女たちを横目に、月村さんの方へ赴く。
既に限界が近い彼女の歌を、正面からきちんと聴くためだ。
学マスのストーリーはどの程度進めていますか
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アプリをそもそも入れていない
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どのキャラも親愛度10未満
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特定のキャラのみ親愛度10まで
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特定のキャラのみ親愛度20まで
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全キャラ親愛度20まで
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特定のキャラのみ親愛度27まで
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解放可能なキャラ全て親愛度MAX