『SyngUp!』のプロデューサーは足を引っ張ると殺される   作:プロデューサー科のもの

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88話目

 

 あれからも、白草さんを引き連れて高等部の授業、レッスンに参加していた。

 3年生のレッスンにも参加したため、『H.G.F』の本戦に参加した3人も、十王会長と雨夜副会長と同じ目にあっていた。

 白草さんは目ぼしいものが少ないとぼやいていたが、その3人だけは見込みがあると嬉しそうにしていたのが印象的だった。

 

 残念ながら、『3組』の生徒はいなかったため、彼女のお眼鏡にかなう生徒に私は見当がつかない。

 もしいるのであれば、既に『H.G.F』や『H.I.F』で頭角を現しているだろうし………十王会長の()の『一番星(プリマステラ)』は夏の『H.I.F』が終わってから、100プロの所属になって学校を休みがちとも聞いている。

 

 『H.G.F』に参加しなかったのも、それが理由だと()()()()から聞かされていた。

 なんでも、十王会長に負けたと思って気落ちしていたからか、雨夜副会長にも負けて3位で終わったことがよっぽど堪えたのか、自信を喪失していたらしい。

 そんな彼女をスカウトし、100プロに迎え入れてデビューさせて。自信をつけさせている最中とのことだった。

 

 そのため、『H.G.F』には参加()()()()ことにした、と。

 

 賀陽さんが本来の実力を取り戻したら、負ける可能性が0ではないため、再び自信を喪失してしまうかもしれないと言っていた。

 お姉さんを超えた彼女であれば、可能性があると考えてもおかしくはない。

 

 ………非常にメンタルが不安定なアイドルだと思うが、その分実力は凄まじいのだろう。

 十王社長が直々にスカウトし、担当していると聞いているから、その価値があることには想像がつく。

 軽くは調べていたが、参加しないことが確定してからは情報収集は程々にしていたので、実際にどういう人物かはよくわかっていない。

 

 まあ、それはいい。

 

 何が言いたいのかというと、()()()()()()()()()()()()

 

 最初に十王会長と雨夜副会長をぶつけたせいもあってか……他の生徒で彼女が見ていない掘り出し物のアイドルはいなかったらしい。

 そんな簡単にいるわけはないが、光るものを持っている生徒はそれなりにいた。

 

 だが、そもそもの話、彼女のお眼鏡にかなうような人材がいたら既に何かしらの形で、頭角を現していない方がおかしい。

 中等部と違って、高等部のアイドルはプロデューサー科の学生にとって金の卵の群れみたいなもの。

 特別な事情とかがなければ、その才能を見出されてプロデュースされていないとおかしいだろう。

 

 もしくは、私のプロファイルの中に要注意人物として名を残しているはずだ。

 

 だが、結果として午後の授業が終わってからも、私の中の要注意人物リストが増えることはなかった。

 お昼は事務所で担当アイドルを含めて食べて、午後の授業も白草さんと臨んだ。

 最初の2年1組の時はダンスレッスンだったが、その後も他のクラスでボーカルレッスン、ビジュアルレッスンに参加した。

 

 ……なんとか間に合ってくれてよかった。

 

 白草さんが徐々に飽きてきていたのは、見ていて明らかだった。

 興味をなくした相手への対応がわかりやすいので大丈夫か心配していたが、初星学園の特別講師としてレッスンに参加しているためか、外面を取り繕って講師として見本を見せてくれていた。

 放課後が近づいてくるにつれて、少しずつテンションが上がっていたのがわかったのは面白かったが。

 

 

 

 今は放課後。

 白草さんからすれば、待ちに待ったと言ってもいいかもしれない。

 レッスン室を1室借り切って、私の担当アイドル…秦谷さんも含む全員と白草さん。

 そして、()()()()()()()()()()だ。

 

「………プロデューサー?

 なぜ、この人たちがいるのでしょうか?」

 

 秦谷さんの当然の疑問に答えたのは、私じゃなく白草さんだった。

 

()()と燕は私が呼んだ。

 さっきの授業の時にな。

 折角だ、まとめて鍛えてやる」

 

「こういうわけよ。

 今日は本当は『H.G.F』の後処理をしなくちゃいけなかったのだけど……」

 

「……後で行こうと思っていたのだが、放課後になった瞬間、生徒会室に乗りこんできおった。

 他の生徒会役員と先生方から、こっちは何とかするから早く行けと追い出されてな」

 

 最後の授業が終わった後、私はレッスン室を借りるための手続きで職員室に向かった。

 その間に……彼女がしていた暴挙を知ったのは、最後の授業をしていたレッスン室に戻った時。

 彼女がレッスン室にいなかったため、私が彼女を迎えにどこにいるかをチャットで聞いた時だ。

 

 『今生徒会室にいる』

 

 端的に返ってきたチャットの文章を見て、私は彼女を一人にしたことの失策を感じとった。

 そして、生徒会室についたと思ったら、生徒会室前で中から追い出されたらしい十王会長と雨夜副会長が、私を睨んでいた。

 私も知らなかったんですと伝えると、二人とも諦めて私についてきて……今に至る。

 

「……お疲れ様です」

 

「こ、ことね!

 わかってくれるのね!」

 

 二人の疲れ切った顔を見て、藤田さんは彼女たちを労ったのだが、それに感極まった十王会長が抱き着こうとする。

 藤田さんはそれを躱して、賀陽さんの後ろに回った。

 

「な。なんで避けるのかしら!?」

 

「避けるに決まっているだろう!?

 スキンシップが過激だと自覚しろ」

 

「そ、そんな!?」

 

 十王会長はまたショックを受けているが……藤田さんは恥ずかしがっているだけで、たぶん順序を間違えなければその望みは実行できるかもしれないことは黙っておこう。

 別に藤田さんは十王会長が嫌いなわけではないし、『学マス』の時のように()()過剰なアプローチをしているわけではない。

 教室に無理やり押しかけに行ったり、バイト先に凸したりは聞いていないので、間違えなければ多少のスキンシップは許されそうだ。

 

 問題を上げるとすれば、十王会長はその選択肢を大体間違えるし、パルコ・フォルゴレのファン並みに飛びついてくるので、藤田さんの警戒ゲージがうなぎ上りになっていることだろう。

 

 関わっていない時の方が好感度の上昇が高いことを知れば、彼女はどんな顔をするだろうか。

 『H.G.F』のライブで上げた株を、勝手に自分で落としている。

 そのままいけば、藤田さんに触れることは叶わなくなるだろう。

 

 そんな彼女たちを後目に、賀陽さんは諦めたように呟いた。

 

「……はぁ。

 そういうことなら仕方ないわね」

 

「『一番星(プリマステラ)』とプロのアイドルとレッスンができるなら、願ってもない機会です。

 よろしくお願いします」

 

 月村さんが礼儀正しく頭を下げると、十王会長と雨夜副会長は意外そうな表情を浮かべた。

 普段の過激な言動で誤解されがちだが、彼女は誰にでもあのような言動をとるわけではない。

 キチンと敬意を払うに値した人には、そうやって対応することができる。

 

 だが……隣の二人を常日頃から見ているせいか、その基準が高すぎるのかもしれない。

 

「いい気概だ。

 先程も星南たちには言ったが、私は教えるのは得意ではない。

 見て勝手に覚えろ」

 

「はい!」

 

「………え?」

 

 白草さんの宣言に、元気よく返事をしたのは月村さん。

 私と同じように彼女を見たのは、賀陽さんだった。

 秦谷さんたちも同じように私を見ている。

 恐らく思っていることは同じだろうが…。

 

「白草さんはこう言っていますが、見て学べることも多いです。

 ()()()1()()()()()()()()

 いつも通り、マイペースに行きましょう。

 あなたたちのペースで、彼女の全てを奪い取って、吸収していきましょう」

 

「まぁ、それは楽しそうですね」

「はぁ……本当、面倒な」

「そういうけど~、燐羽、顔がにやけてるぞ~?」

「にやけてないわよ」

「今度こそ、勝ってやります…!」

 

「ほら、燐羽!

 早く一緒にやろうよ!

 月花さんが見本見せてくれるって!」

 

「はいはい。

 じゃあ、早速見せてもらいましょうか。

 『一番星(プリマステラ)』より上っていう、()()の実力をね」

 

「いいだろう。

 よく見ておけ」

 

 彼女の合図を受けて、私は練習用の音源をかけ始めた。

 

 彼女は、今日一日ずっと午前の授業からダンス、ボーカル、ビジュアルのレッスンをしていた。

 それは主に見本として、他の生徒たちに見せてきたのが主で、求められれば何度でも見本を見せていた。

 にも拘らず、彼女が見本として披露しているダンスは未だに疲れを感じさせず、高いレベルを見せつけていた。

 

 私の担当アイドルはレベルの高い動きに感嘆の声を上げたりしているが、授業でも見ていたはずの高等部の二人も驚きを隠せていない。

 今日の彼女の運動量を考えればそれも当然だろう。

 

 彼女の見本が終わり、今度は見本を基に彼女たちがダンスを始める。

 白草さんも再度同じように、彼女たちの前でダンスをしているが、全員含めても一番動きが良いのが白草さんなのは流石と言わざるを得ない。

 今日のこの流れだと、ダンスをメインにやっていくのだろう。

 

 そうして、彼女たちがレッスンをしている傍らで、私は今後のプランの見直しをすることにした。

 イベントやライブに向けて明確な方針を決めてレッスンをするならまだしも、基礎能力を高めるためのレッスンであればプロデューサーが四六時中付き添うのはやりすぎだ。

 

 そのため、事務所で進めてもよかったのだが、折角白草さんが来てくれているので、万が一があってはいけないので事務所に戻るのはやめてくことにした。

 大丈夫だとは思っているが、誰も彼も口が悪いので下手に拗れないように見張る形だ。

 

 さて……『H.G.F』を経て私の担当アイドルたちの今の立ち位置が概ねわかってきた。

 

 計算に入れづらい『3組』を省いて、高等部を含めても私の担当アイドルたちは『初星学園』の中でかなり上位の実力になっている。

 タイミングが悪く、まだ担当アイドルたちに見せていないが、『H.G.F』の講評も既に私の元へ届いていた。

 

 項目によって多少の差異はあれど、全体的に……十王会長がトップで、後に続いたのが()()()()()()()()()()()()()()

 藤田さん、花岡さん、『クーホリン』の二人がほとんど同じ評価ぐらい。

 その少し後に雨夜副会長と、天城さんが続く形だ。

 これが知らされるのは、『H.G.F』に参加した参加者とそのプロデューサーだけだ。

 表に出たら学園中で騒ぎにはなってもおかしくないぐらいのものだった。

 

 中等部の生徒が、高等部の生徒たちよりも、ほとんど全員上にきている。

 

 これは『H.G.F』を見ていた人たちは薄々察しているかもしれないが、これが明確に表に出てしまうとまずい。

 ただでさえ、十王会長が『一番星(プリマステラ)』になってから、今の3年生の評判はあまりよくない。

 『H.G.F』のライブを見ていた人たちは、相手が悪かったと思ってもらえるかもしれないが『初星学園』の高等部の生徒は、中等部の生徒に負けてしまうような人たちだと思われるのも癪だ。

 

 このまま来年になり、夏の『H.I.F』になったと仮定して……私の担当アイドルたちが参加するのは確実で、誰かが『一番星(プリマステラ)』になる自信はある。

 十王会長も雨夜副会長も、今よりもさらに実力を伸ばしてくれて強敵となってくれるだろう。

 

 だが………仮に、『学マス』の他の生徒たちが入学して、()()()H().()I().()F()()()()()()()()()()()

 

 『学マス』のストーリー、STEP3は、『十王星南』のストーリー以外、夏の『H.I.F』では敗北する運命にあった。

 そういう意味で見れば、別にいなくてもいいのだろう。

 だが、彼女たちの成長は『H.I.F』の格を高め、その先の『一番星(プリマステラ)』の価値を高めたことは間違いない。

 

 私は幸運なことに、中等部の彼女たちをプロデュースをできたことで、夏の『H.I.F』を獲る算段は立てられている。

 

 そもそも、無茶があると思う。

 入学して、プロデュースして、夏の『H.I.F』に臨む。

 期間としては、『選抜試験(セレクション)』も込みで考えると、2~4か月とかぐらいか?

 それで、学園トップの称号である『一番星(プリマステラ)』を獲りに行くとか、どう考えても期間が短すぎるだろう。

 

 ………『初星コミュ』の『Re;IRIS』のプロデューサーが如何に化け物かがよくわかるな。

 

 私では到底無理だ。

 無理なことが分かっているからこそ、経験を積んでもらう必要があった。

 その結果、私の担当アイドルたちはそれ相応の実力をつけてきている。

 それに間違いはない。

 

 だが………このままでは、『一番星(プリマステラ)』の格がトップアイドルの格と言えるかどうかは微妙なところだ。

 十王会長がトップアイドルの方々にケンカを売ったので、そこで勝ち続ければ格は上がるかもしれないが……本戦の最後の優勝争い以外が、見どころのないような『H.I.F』では、折角の『一番星(プリマステラ)』も格が知れてしまう。

 

 星々が輝いている学園の中の『一番星(プリマステラ)』ではなく、暗闇の中で『一番星(プリマステラ)』だけが輝くのでは、意味が異なってしまう。

 

 ソロ部門とユニット部門で部門分けされていることも、それに拍車をかけるだろう。

 『SyngUp!』が参加するのは、ユニット部門だが彼女たちが参加するころには、目ぼしい敵対勢力がいなくなってしまう。

 

 ……で、あれば、やはり方針は『初星学園』の実力の向上か。

 

 それも、十王会長や雨夜副会長経由でアドバイスを送れて、自力で成長できるような人材。

 

 尚且つ、私の担当アイドルたちの成長に寄与できること。

 

 ………手を付けたくはなかったが、そうも言ってられないかもしれない。

 先に彼女たちに許可を取ってからになるが、もう曝け出してしまって次の段階に行くしかない。

 夏の『H.I.F』までにと考えると、入学してきた彼女たちへの対応をすることも考え、今のうちにできることをする。

 そう考えると、このタイミングしかないだろう。

 

 新たなプランは決まった。

 ピークを来年夏の『H.I.F』にすることを想定し、そこに至るまでに『初星学園』の全てを()()させる。

 彼女たちの成長を加速させ、夏の『H.I.F』をさらに質の高いものにする。

 

 そう、このプランに名を冠するなら。

 

「名を冠するなら、『メイド・イン・ヘブン』」

 

 私がいずれ臨む場所が『天国』であるというなら、その道筋を歩むために、これほどふさわしいものはない。

 彼女たちがめきめきと、白草さんの技術をものにしていくのを見て、私はそう呟いた。

 




誤字報告、評価や、感想、ここすき、お気に入り登録など、誠にありがとうございます。
とても励みになりますので、今後ともお暇なときにお付き合いいただければと思います。

そろそろ新章です。
以前も記載しましたが、章分けを行いますのでご了承ください。
また、幕間も(したた)めているので、どこかのタイミングで投稿させていただきます。

学マスの推し(担当)は誰ですか?

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